本展はアール・デコの照明器具などアール・デコと光の関係に焦点をあてた、これまでにない視点の展覧会です。アール・ヌーヴォーからアール・デコへの変遷は、曲線から直線への変換といった様式的に語られることがほとんどですが、そこには電球の発明など文明の発達も大きく関係していました。本展はドーム、国立セーヴル製陶所、ラリックなどのアーティストが手がけたデザイン性豊かな照明器具を中心に、それらが置かれていたであろう室内に合うイスや花瓶などを加えた約110点を展示し、アール・デコの未来志向性と新しい時代の予感を体感いただきます。
第一部では「カラフル」をテーマに、パート・ド・ヴェール技法の照明器具を紹介します。この技法は、古代エジプトに起源を持つ、砕いたガラスを鋳型に入れて窯の中で熔かして焼き上げる特殊な製法で、アール・ヌーヴォー期に再興され、1920年代のアール・デコ期に花開きました。本展では、アルジィ=ルソーの照明器具を中心に、アール・ヌーヴォーと共通の自然主義に基きながら、様式化されたアール・デコの特徴をもつ、カラフルで色鮮やかな作品を紹介します。
第二部は「シック」をテーマとし、サロンの再現展示を中心に、フランスのアール・デコの粋ともいえる作家ジャン・デュナンの漆芸パネル、光を透過する「磁器」の特性を利用した照明器具など、優れたデザイン性に加え、当時ならではの素材使いにより、興味深い作品を紹介します。
第三部では、ラリック作品を中心に、初公開の天井灯とオリジナル・セットによるテーブル・セッティングなど、食の空間に関連する作品を紹介します。ルネ・ラリックは透明ガラスを利用したモノトーンでシックな光の演出により、ラグジュアリーの概念を塗り替えました。「光とスピード」と題したエピローグは「レディエンス」をテーマとし、光とスピードを主題にしたオブジェとポスターを展示します。電光や稲妻を連想させる放射線やジグザグ文様は、スピードと躍動感を表す、アール・デコの象徴的モチーフでした。
このように本展は、硬質で眩しい光を、優れた芸術感覚により生活の中に取り入れた、20世紀初頭の知恵とセンスに出会う新しい体験となるでしょう。
» さらに詳しく当館学芸員が展示内容を解説します(申込不要)
「アール・デコ、あるいはマチエールの誘惑」
1920年代を中心にしたデザイン様式「アール・デコ」の照明器具を中心に、
当時一般家庭にも普及し始めた電気の明かりに照らし出されて
クローズ・アップされたマチ工ール(材質)の魅力、
ガラス、磁器、漆、金属にやどる素材の質感を表現に高めた
アーティストたちの洗練と創意に迫ります。
2012年6月1日(土)午前10時より申し込みの受付を開始します。
下記(A)(B)(C)のいずれかの方法で お申し込み下さい。
受付は先着順、定員になり次第締め切らせていただきます。
問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600