監督からのメッセージ

MESSAGE

改革 ~愛される強いチームとは~

「殻を破ろう」。そう発信し続けて、選手は自ら改革に乗り出した。
圧倒的な強さをまとい、地域に愛され続けるために
今やるべきことは――。
田中篤史監督が見つめるのは選手のスキルではなく、「姿」そのもの。
いかに自分と向き合っているか、チームのベクトルを捉えているか。

ターニングポイントで出した結果は

田中監督

昨シーズン、JABA大会の出足は投打ともに歯車が合いませんでした。ある程度の自信を持って臨んだはずが、どこかかみ合っていない。コールド負けを喫した試合もあり、選手たちも焦りを感じたと思います。5月の九州大会に向けて、私は「次が今シーズンのターニングポイントになる」と伝えました。そして迎えた初戦、投手は與座が鋭い立ち上がりを見せ、打撃でも小峰の先制本塁打が飛び出しました。タイブレークにもつれ込み「ここをものにできれば」とあがきましたが、勝ち星はつかず。

ここで意気消沈するのか、まさにターニングポイントだったと思います。続く試合で、特にバッター陣がチームの自信を打席で体現し、「こうも変わるか!」と驚かせてくれました。試合ごとに大量得点を重ね、コールドゲームでの勝利も。九州大会の優勝で、日本選手権大会本戦の切符をつかみました。

そして二大大会。日本選手権、都市対抗野球の本戦はいずれも1-3で初戦敗退。私たちの力を試すには、これ以上ない対戦相手でした。「打てば勝てる」という確信がある。にもかかわらず、同じ結果を繰り返してしまう。相手の策をかいくぐるには、あと何が必要か、ピッチングの粘りを見せるには……。課題を痛いほど感じるシーズン。そこに全社としての体制変更が実施の時を迎えました。

九州大会優勝時の集合写真

九州大会優勝時の集合写真

ありたい姿を一致させ、行動で示す

事業会社制を導入したパナソニックグループは大きな転換期にあります。この4月、パナソニック スポーツ株式会社が誕生し、野球部を含む各スポーツチームは、これまで以上に存在意義が問われることになりました。改めて野球部への会社の方針も明示されました。われわれの目指すべき姿は「地域・社員に愛される強いチームを作る」こと。まずはチームが一体となって、この目標を見据えようと、選手らに呼びかけました。

「強いチームを作る」ための最上級の志とは――。選手やコーチ陣から挙がったのは、「常に打ち勝つ打撃」「取られたら取り返す」「常に負けない投球をする」というワード。どんな局面でも試合を優位に運び、圧倒的な強さを身に着ける。コールドゲームからイメージを発展させた「CALLED PLAY」を戦い方のテーマとしました。

「地域・社員に愛される」を実現するためには、選手の評価基準となる「BLUE PROMISE」を策定。①常に自己アピール、②常に諦めない前向きな姿勢でいる、③常に見られていることを忘れない、選手たちは自らこの3つを約束すると掲げました。「その行動・その活動は今、地域の人に愛されるものか」という視点で互いを評価していきます。選手と一緒に「どういうチームでありたいか」を言語化する機会を作ったことで、方針の浸透力が増しました。

わがチームのスローガンは、選手たちが考えます。これは、自主性を重んじるパナソニック野球部の特徴の一つです。今年のスローガンは「徹底的に愛し、圧倒的に勝つ」。このシンプルな言葉の中にも、「地域・社員に愛される強いチームを作る」 ことへの選手の思いが表れており、かつてない強い意志を感じました。キャンプ中から、皆の目の色が違いました。「変わろう」という意識が見えました。

地域や会社の中で存在価値を高める

コロナ禍が続き、野球部があるのは「当たり前じゃない」と、改めて感じる場面が多々ありました。キャンプやオープン戦など、選手が力を発揮できる機会に恵まれています。私自身も地域や会社の人たちの理解があって、今この野球部が存在していることが身に染みました。
だからこそ地域で行うスポーツ教室や、社会に貢献できる活動が大切なのです。われわれの活動をどうやって見てもらえるか。自らアピールをして、存在意義を生み出していく時代です。SNSで主体的に発信する選手らも出てきました。「強いパナソニック」、その象徴となるのは大前提。同時に地域や社員の皆さまの理解を得らえる活動や一人一人の行動が、応援してくれる皆さんとの一体感を醸成するのです。

野球教室での様子
野球教室での様子

いろいろな枝を持ち「打ち勝つ野球」を

今シーズンは、「圧倒的な強さを身にまとったパナソニック」になる――。「われわれはできるんだ」「強いんだ」という誇りを全面に持とうと、選手たちに熱く語りました。徹底した準備をして、試合ではその強さを持って楽しむ。「対戦相手がこの投手なら、こっちはこのバッターでいこう」「相手がこの作戦なら、この作戦で迎え打とう」と楽しむように対抗していく。いろいろな枝を持ち、どんな状況でも打ち勝つチームへと進化したいと考えています。

技術はどのチームも日々向上しています。そこで「勝ちたい」「うまくなりたい」とどれだけ強く思えるか。思えば思うほど、行動に出てくるものです。そして必ず結果へとつながるはず。昨シーズンから取り組んでいるメンタルトレーニングも、効果がどう表れるか楽しみです。自分を知り、変わるというのは、これまでのことを覆されるため、拒否反応があってもおかしくありません。しかし怖気づかず、自ら私やコーチ陣にアイデア持ちかける積極的な姿も見られます。

2022年、選手層はさらに厚みを増す

強化しているのが、4年目以下の選手の戦力アップです。昨シーズンはスタメンで試合に出ることはあっても、絶対的なレギュラーではありませんでした。社会人野球は1年目からもどんどん活躍できる。先輩たちに頼る気持ちは持たず、「自分がやってやる」と思うべきです。打者では植田、上田の飛躍が楽しみです。植田が左打ちに変えたのは勇気ある決断でした。努力したからといって試合に出られるわけではありませんから。パナソニックの中で自分がどのピースになるのかを考え、そこで実力を出してこその世界です。ルーキーや2年目の三宅は、定位置をつかみとってチームを引っ張る力を発揮してほしい。楽しみにしています。

植田選手

植田選手

上田選手

上田選手

三宅選手

三宅選手

投手陣も自分の武器、生きる道を考えてレベルアップしています。若手は試合経験がなかなか積めない中でも、頼もしく感じる場面が増えてきました。しっかりアピールしてほしいですね。正捕手の三上は、経験値がありながら“若手の気持ち”でやっていますから、捕手のポジション争いはし烈です。大坪を中心に互いに高め合うことができるチームワークがあるので、ルーキーを交えて課題を克服し合い、総合力を高めてくれることでしょう。

新しく就任した鳥谷敬コーチの存在も大きい。プロの世界を戦い抜いてきた彼からは、これまでにない攻守の目線とアドバイスがあり、皆が必死で耳を傾けています。

全体的に「どの選手でいこうか」と思えるような期待感があります。今シーズンはいつも同じ顔ぶれで戦うパナソニックだけでなく、「おっ、新しいな」と思われる、そんな場面をたくさん作り出せたらと思います。

鳥谷氏就任時の写真

鳥谷氏就任時の写真

「なぜならば」を明確にした練習を

私は「試合しか見ない」と宣言しています。試合やオープン戦での姿を重視しているのです。技術面はコーチ陣へ基本的には任せています。たまに「何を考えて今この練習をやっているのか」と選手に尋ねることがあります。その時に、自分の考えをしっかり言葉にできるかどうかが一つの答え。練習をする際に「なぜならば」を自分で示しながら、マインドと技術を一致させていくことがとても大切です。
口酸っぱく言うのは、自分の時間を大切にすること。自主練習の内容、時間の使い方をしっかり考えてもらいたいと思っています。監督の言うことが正しいとは思っていません。私の役割は「その気にさせること」「気づきを与えること」だと思っています。社会人野球ですから、何をするかは自分たちが責任を持つべきです。

2021年度は困難な情勢の中、東京オリンピック・北京オリンピックが開催されました。スポーツの力を改めて感じると共に、われわれもその一員として胸を張ってやっていきたい。「野球っていいよなあ」と感じてもらえる姿をお見せしたいと思います。これまで歯を食いしばってやってきたことをいかに表現できるか。選手たちの全力のパフォーマンスをぜひ熱く見守ってください。

円陣の写真

(取材日:2022年3月4日)