監督からのメッセージ
MESSAGE
全員が戦力、圧倒的な強さで
二大大会に挑む
金森新監督の指揮のもと、ベテラン勢と若手の戦力を融合し「全員で戦う」と掲げた2023シーズン。監督は選手と同じく熱い心で、かつコーチ陣との綿密な連携でチームを導いた。結果は都市対抗野球、社会人日本選手権共に2回戦敗退。だが、経験豊かな投手陣のリードが光り、シーズン後半は各ポジションで若手が頭角を現すなどの収穫があった。そして新たに選手とマネージャー合わせて10人が合流し、始動した新チーム。金森監督が感じる現時点の手応えと、二大大会優勝を見据えて描くビジョンとは。
日々の進化こそ、
パナソニック野球部の宿命
昨シーズンは、都市対抗野球、日本選手権共に予選で苦戦を強いられました。都市対抗野球は「今年は出場を逃せない」というプレッシャー。日本選手権は「26回連続出場を絶やしてはならない」というプレッシャーの中での戦いでした。「ここで負けたら終わり」という局面までいき、そこで底力を見せられたのも事実です。若い選手を中心に個のスキルが生き、ベテラン勢を含む気迫あふれる1プレー、1プレーで、本大会への切符をもぎ取りました。代表争いが熾烈(しれつ)な地域で、二大大会とも本戦出場を獲得するのは簡単なことではありません。大会中、試合中にも進化していくことが、パナソニック野球部の宿命と考えています。
私自身、監督として現役時代やコーチ時代とは違う重圧を感じました。「なんとか勝たせてやりたい」という気持ちが強く、采配がうまくいった時もあればそうではない時もありました。しかし、野球人としてのやりがいは、とても大きなものを感じています。
圧倒的な強さを生む“準備の大切さ”
課題はなんと言っても得点力。昨シーズンの平均得点は前年より上昇しました。しかし、締めくくりとなった日本選手権2回戦のように、大事な試合でゼロに抑えられたのが非常に悔しい。その印象はすぐに拭い去りたいところです。相手がいくら良いピッチャーでも、そこから点をとっていかなければ上には行けないのですから。プレッシャーを感じる場面で、それを楽しむレベルで立ち向かえるようにと、選手たちを鼓舞しています。
そのために必要なのは、準備です。われわれの戦いは、打てなかったから練習をする、エラーをしたから練習する、という順ではありません。この日、この時のための万全なる準備と、さらに実力に加えてどんな力が発揮できるかが、トーナメントでの一発勝負を決定づけます。試合に向けてはもちろん、日頃から「○日後の測定に向けて」とターゲットを設定し、よい準備をする意識づけを行っています。打撃に限ったことではなく、選手たちは皆、けがをしないためのアップや体づくり、ピークを合わせる練習、ひいては日頃の過ごし方まで各自が考え、行動しています。それが、試合で堂々とマウンドやバッターボックスに立つ姿につながる――。私は常に、意気揚々と勝負する選手たちの姿を描いています。
判断基準も、さらに厳しくしていきます。いつでも全員が準備できているはずですから、それぞれの状態を厳しく判断し起用していく。試合中の状況判断も同じくです。「次のカウント次第で、こう動かそう」と想定するよりも、チームが勝つためにやるべきことを先手で次々と講じていく。そうした圧倒的な強さを見せたいと思います。
激しいポジション争いで、
相乗効果を生む
投手で榎本亮、與座健人、この2人は成績もさることながら名前だけで対戦相手を威圧できる、そういう域に達したのではないでしょうか。加えて2年目になる小倉悠史、定本拓真の勢いにも注目です。昨シーズンの悔しい経験も含めて、どう生かしていくかは監督・コーチ陣の仕事でもありますが、やはり最終的には本人にかかっています。「期待している」と一人一人にしっかり伝えた上で、爆発的な成長を望んでいます。さらに3年目の井奥勘太なども大いに存在をアピールしてくれるでしょう。ベテラン勢は、そう簡単にポジションを譲るはずもなく、例年にも増して激しい競争が予想されます。
野手は新人が7人、ずいぶん入れ替わりました。全選手に「どのポジションでも力を発揮できるように」と伝えてあります。皆がレギュラーを取るため、試合に出るため、そして勝つために何をするべきかを考えているはずです。デカい1発も、コツコツ小技を重ねていくのも、相手に与えるダメージは同じ。チームのためにいかに点をもぎ取るかを徹底して考え、確信を持ってプレーすることが大切です。今年選手からコーチに就任した松根優が度々口にしている「犠牲心」をどう体現できるかですね。
松根と共にコーチに加わった大坪直希も、選手と一緒に体を動かして取り組んでいるので、よい見本になります。鳥谷敬統括コーチも含めて、一緒にランニングをして、ノックを受けたり、バッティングをしたりしながら得ることは、口頭でのアドバイスの比ではありません。皆の視野が広がり、引き出しも増えているはずです。
クリーンアップを担っている久保田拓真、三宅浩史郎、山本ダンテ武蔵は頼もしいですが、新人が入ってよい緊張感や危機感が生まれているはず。ルーキーでは左バッターの浦和博はオープン戦からよい成績を残していますし、スタメン入りすればメンバーは大きく動きます。バッティングがよく足も使える小山翔暉など、役者はそろっているので、どう形になるか皆さんにも楽しみにしていただきたいです。
選手と監督が深く理解しあえば
最高の動きになっていく
チームづくりに違う風が吹いたと感じたのが、キャンプで実践した紅白戦です。「新人&2年目」VS.「3年目以上」の対戦を行いました。自ら打順を組み、若手の勢いと中堅・ベテランの意地がぶつかってかなり白熱した試合になりました。細かなバントなどの動き、ヒットを打った後のガッツポーズ、思い切ったヘッドスライディングなど、「絶対に負けられない」という気持ちが表れていて、見る側も心から楽しめる試合でした。
こういう雰囲気が欲しいのです。自身が日本ハム時代に優勝したチームのムードがよみがえります。キーになる選手が出てきたり、ミラクルが起きたり。「どんな展開からでもひっくり返せる」という空気が充満していて、そのうち対戦相手が勝手に焦りだすなど、何をしても勝利を引き寄せるムードになるというか。全力で野球を楽しんでいる感覚になるものです。
今年も、春季キャンプ中にパ・リーグをV3したオリックスバファローズを訪ねて中嶋聡監督に話を伺いました。すると「選手が勝手に動いてくれる」と。監督がしっかりと選手の能力を理解し、選手たちは監督のやりたいことを理解して動いている。そこまで意思疎通ができているから圧倒的なのだと感じました。サインを見て動くよりも、その前に一歩を踏み出している感覚。それはまさにパナソニックが目指すべき姿です。
応援してくれる人目線が大事
われわれは門真市をホームとする企業所属のチーム、勝つこと、結果を出すことに意義があります。試合を観に来てくれた人に、ホームランやタイムリー、よい投球を見せて喜んでいただくのが一番。また、どんな状況でも最後まであきらめない姿をみてもらうことで、いつも応援してくれている社員・地域のみなさま、家族への恩返しになるのではないかと。
応援してくれる人の目線に立ったファンづくり、それは私がプロ時代に学んだことです。パナソニックは各地に社員がいて、各地で応援に来てくださる人がいますが、その人が試合を観に来られるのは年に一度、その日だけかもしれません。その時に「強くてかっこいい」「応援したい」と思ってもらえる、心を揺さぶるチームでありたいと思います。
応援してくれる人がいてこそのパナソニック野球部です。皆さんに、勇気を与えられる試合をします。この一年、全メンバーで戦うパナソニックにどうぞご期待ください。
(取材日:2024年3月8日)