EPISODE 1

【#8 片山勢三】場の空気を支配し、
強烈なインパクトを与える長距離砲

2023-10-10

勝負を楽しんでいる――。バッターボックスの片山選手を見て、そう感じる瞬間がある。積み上げてきた技術、巧みなバットコントロールと力みのないスイング、大きなフォロースルーでその場の空気を支配する長距離砲。学生時代から、アーチをかけて数々のドラマを生んできた片山選手。社会人球界に入って最も心に残る一打を振り返ってもらいました。

#8 片山勢三

[Seizo Katayama]

DATA

  • 福岡県出身
  • 小学校3年生からソフトボールを始める。
  • 門司学園中学校時代では軟式野球部に所属
  • 門司学園高校では1年生夏から外野手として出場し、
    同秋からは4番打者として活躍。
    2年生秋からは主将・捕手として、福岡県大会準優勝、
    3年生夏の大会では、チームをベスト4に導き、高校通算32本塁打を放った。
  • 九州共立大学に進学後は、1年生春から出場し、
    福岡六大学リーグで通算93安打・14本塁打を記録。
    4年生時には主将をつとめ、チームを明治神宮野球大会ベスト8に導いた。
  • パナソニックへ入社後は、持ち前の豪快なバッティングを活かし、
    2018年に社会人ベストナイン(DH)を獲得。
片山選手
片山選手

意地のアーチ

「社会人野球」の世界は、祖父が元JR九州の選手だったのでずいぶん前から知っていました。大学4年生の時は、東京ドームで都市対抗野球を見ていたし、次の年に、自分がその場でホームランを打ったのは、ちょっと鳥肌ものでした。パナソニックでは初陣のJABA大会で2本塁打。勢いよくスタートできたのに、その後の都市対抗予選はプレッシャーに押されてしまい。初めての感覚だったので、「結果を出さないと」と、予選中は毎日ビクビクしていました。結果、本戦ではスタメンから外れ……。代打でチャンスをもらい、「この一打席しかない」と腹をくくった時に一発が出ました。わずか半年で、さまざまな経験をしました。これが社会人野球、メンタルもフィジカルも、新境地へ行くための序章だったと思います。

片山選手

無我の笑み

その都市対抗予選の打席を動画で見返すと、タイミングもフォームもめちゃくちゃ……。そこで良いイメージを追うだけでなく、悪い時も振り返るべきだと、改めて感じました。自分のベストのスタイルはと自問すると、ゆっくりとタイミングをとってバッターボックスに入り、ピッチャーを待たせる感じ。良くない時は、ピッチャーに合わせていたんです。そして、「打つぞ」と闘志をむき出しにするより、ぼ~っと自分の世界に入るほうが、研ぎ澄まされた感覚になります。よく「打席で笑ってる」と言われるんですけど、そのつもりはなくて。ただ、余裕を見せるようには意識しています。でもきっと相手ピッチャーは、追い詰められた打者が笑っているように見えたらやりづらいかもしれませんね。

片山選手

優先すべきは

打席でのルーティンや、フォームは意識し過ぎるとうまくいかないこともある。だから僕は、細かな動きを決めるのではなく「時間を長く使おう」「ゆっくり入ろう」と簡単なことだけ考えるようにしています。あとは無意識で動くのが理想です。他の選手にアドバイスをすることがあっても、「まずこうして、次はこう」とはあまり言いません。考えることで0.5秒でも動作が固まってしまうと、流れに影響しますから。結果を出したいのはもちろんですが、力を出し切ることが優先です。社会人野球は、さまざま経験や引き出しを持つ選手同士の戦いぶりが面白い。打席は、それを楽しむぐらいの気持ちで挑みたいと思っています。

野球選手としての掟

  1. ① すべてにおいて楽しむ
  2. ② 準備を大切にする
  3. ③ 徳を積む
片山選手

NEXT 2.バックネット裏で試合を見守る、アツ~いファンは誰?