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ローカル5Gとは?特徴やプライベート5Gとの違い、事例を解説

更新日:2025/11/28
ローカル5Gとは?特徴やプライベート5Gとの違い、事例を解説
ローカル5Gは、企業や自治体が自営で構築できる次世代の通信インフラとして今大きな注目を集めています。従来のパブリック5GやWi-Fiでは実現が難しい安定性、セキュリティ、柔軟性を兼ね備え、産業現場や自治体運営に新たな価値をもたらします。本記事では、ローカル5Gの仕組みや他の通信技術との違い、メリット・デメリット、活用事例や導入の流れなどについて解説します。ローカル5Gの導入をご検討の担当者様はぜひ参考にしてください。
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ローカル5Gとは?3つの類似技術との違いを解説

ローカル5Gとは、企業や自治体が自ら免許を取得し、自社の敷地内などに構築できる独自の第5世代移動通信ネットワークです。パブリック5Gやプライベート5G、Wi-Fiと異なり外部に依存せず、安定した通信を実現します。

  • パブリック5G:通信事業者が全国展開。免許不要で利用可能。
  • プライベート5G:通信事業者が構築し、専用エリアで提供。免許不要。
  • Wi-Fi:免許不要・低コストだが、干渉や不安定さが課題。

パブリック5Gとの違い

パブリック5Gは、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクなどの通信事業者が全国的に整備している5Gネットワークです。スマートフォンやタブレットなど、一般消費者向けサービスが主で、動画視聴やダウンロードなど下り通信を重視した設計になっています。

一方、ローカル5Gは企業や自治体が自営で構築する専用ネットワークであり、上り・下りの比率を自由に設定できる点が特徴です。工場や病院、大学など特定エリアにおける安定通信に向いています。

パブリック5G ローカル5G
運営主体 通信事業者(キャリア) 企業・自治体など
カバーエリア 全国(公共エリア) 自社敷地など限定エリア
セキュリティ 公衆網を共有(一般的なセキュリティ) 自営網(もっとも高セキュリティ)
免許取得 キャリアが取得 利用者側が自ら取得

プライベート5Gとの違い

プライベート5Gは、通信事業者が企業や自治体の要望に応じて特定エリアに構築・提供する専用の5Gネットワークです。利用者側で免許を取得する必要はなく、通信事業者が保有する周波数帯を使用します。そのため、導入・運用のハードルは低い一方、通信障害時にキャリアの影響を受ける可能性があります。

ローカル5Gは、利用者自身が免許を取得し、自営で運用・管理します。通信仕様を柔軟に設定できることや専用のセキュリティ設計ができることなどが特徴です。

プライベート5G ローカル5G
運営主体 通信事業者(キャリア) 企業・自治体など
カバーエリア 通信事業者が提供する限定エリア(企業拠点や工場など) 自社敷地など限定エリア
セキュリティ 通信事業者の専用網を利用(高セキュリティ) 自営網(もっとも高セキュリティ)
免許取得 キャリアが取得 利用者側が自ら取得

Wi-Fiとの違い

Wi-Fiは、IEEE 802.11規格に基づく無線通信技術です。免許不要で導入でき、家庭からオフィスまで幅広いシーンで利用されています。導入コストが安価で対応機器が豊富なのがメリットですが、電波干渉が多く、通信品質が不安定になりやすい点が課題です。

一方、ローカル5Gは免許制で専用帯域を使用するため、他の電波の影響を受けにくく、安定した通信が可能です。工場や病院、スタジアムなど、多接続・低遅延が求められる産業用途に適しています。

Wi-Fi ローカル5G
通信範囲 一般的には数十m程度 数百m~数kmまで拡張可能
安定性 電波干渉を受けやすい 電波干渉が少なく安定
多接続・遅延 同時接続で速度が低下 多数接続でも低遅延を維持
用途 家庭・小規模向け 製造・物流・医療など産業向け

ローカル5Gを導入する3つのメリット

ローカル5Gを導入する3つのメリット

ローカル5Gは、企業や自治体が自営で構築できる次世代ネットワークです。公衆網に依存せず、用途に合わせた高品質な通信環境を整備できるのが魅力です。ローカル5Gを導入することで得られる主なメリットが以下の3点です。

  • 高速大容量・超低遅延・多数同時接続の通信
  • 用途に応じた柔軟なエリア構築
  • 外部から遮断された高セキュリティな環境

メリット1:高速大容量・超低遅延・多数同時接続の通信

ローカル5Gは「高速大容量」「超低遅延」「多数同時接続」という5Gのメリットを最大限に活かせる通信基盤です。

自社専用のネットワークを構築するため、他の利用者による混雑や電波干渉の影響を受けず、安定した高速大容量通信が可能です。たとえば、製造現場では4K・8Kなどの高精細カメラ映像をリアルタイムで送信し、遠隔地から作業支援や検査をおこなうことができます。物流現場では数百台規模のAGV(無人搬送車)やセンサーを同時接続し、データを瞬時に集約することも可能です。また、医療現場では遅延の少ない映像通信を活用して遠隔診療を行うなど、従来のWi-Fiや4Gでは実現が難しかった応用が広がっています。

メリット2:用途に応じた柔軟なエリア構築

ローカル5Gは、企業や自治体が通信エリアを自由に設計することができます。敷地の形状や利用目的に合わせて、必要な場所に必要な通信品質を実現できる柔軟性はローカル5Gの大きなメリットだと言えるでしょう。

免許制によって特定の周波数帯を独占利用できるため、必要な範囲に最適な無線環境を構築できます。たとえば、工場では広い敷地全体をカバーする無線ネットワークを整備でき、ラインのレイアウト変更や機器の移動にも柔軟に対応可能です。建設現場や空港・港湾など、従来のWi-Fiでは対応しきれなかった大規模な屋外エリアでも安定した通信を確保できます。また、教育機関や自治体施設では、キャンパス内や庁舎内のみをカバーする構成も可能です。

メリット3:外部から遮断された高セキュリティな環境

パブリック5Gは多数のユーザーが同一の通信経路を共有するため、一定のセキュリティリスクが伴います。

一方、ローカル5Gはインターネットやキャリアの公衆網とは切り離された「閉域ネットワーク」で運用されます。企業や自治体は、自らネットワーク構成や認証ルール、アクセス権限を管理でき、外部に依存しない安全な通信基盤を構築できるので、外部からのサイバー攻撃や不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。通信にはSIMによる端末認証が用いられ、登録済み端末以外の接続を防ぐことでデータの機密性を確保しています。製造や医療、行政など、機密情報を扱う現場でも安心して利用できるのはローカル5Gの大きなメリットだと言えるでしょう。

ローカル5Gの2つのデメリットと注意点

ローカル5Gの2つのデメリットと注意点

ローカル5Gは、高速大容量通信や高セキュリティなど多くの利点がありますが、デメリットがないわけではありません。高額な導入・運用コストがかかることや、対応するデバイスが限定的であることなど、ローカル5Gの注意点も押さえておきましょう。

デメリット1:高額な導入・運用コストがかかる

ローカル5Gを導入する際には、免許申請からネットワーク構築、設備設置、運用保守まで多くのコストが発生します。

まず、総務省への無線局免許申請には、申請手数料や電波利用料(基地局1台あたり年間数千円程度)が必要です。また、基地局や通信設備の導入費はもっとも負担が大きく、初期費用として数千万円から1億円程度かかるケースもあります(構築規模などによる)。アンテナ、コアネットワーク、サーバー、制御装置などのハードウェア費用に加え、設計、施工、検証などの費用も必要です。加えて、システム監視や障害対応、アップデート対応など、年間で数百万円規模の運用・保守コストが発生します。

とはいえ、総務省の「地域社会DX推進パッケージ事業」など、国や自治体はローカル5Gの導入を後押しするため、補助金・助成金制度が整備されています。ローカル5Gの導入コストは高額ですが、こうした補助金・助成金制度を活用することで初期投資を抑えることが可能です。

デメリット2:対応するデバイスが限定的である

ローカル5Gのもう一つの課題は、対応するデバイス・端末がまだ限られていることです。

ローカル5Gは専用の周波数帯(4.6〜4.9GHz/28GHz帯)を使用するため、一般的なスマートフォンやノートPCでは通信できない場合があります。現時点では、対応するスマートフォンやルータ、IoT機器の種類は決して多いとは言えず、選択肢が限られています。特にビジネス用途では、産業機器や監視カメラなどに専用モジュールを組み込む必要がある場合もあります。もちろん、通信キャリアやメーカー各社はローカル5G対応デバイスの開発を進めているため、今後は対応デバイスの増加・多様化やコストダウンが進むと見込まれています。

ローカル5Gの活用事例【業界別】

ローカル5Gは、高速大容量通信や低遅延などの特徴を活かして、様々な業界でDX推進の基盤となっています。製造や建設、物流などの現場では、人手不足や安全対策、業務効率化といった課題解決に貢献しています。製造業、建設業、物流業という3つの業界におけるローカル5Gの活用事例をご紹介します。

製造業:スマート工場の実現

製造業においては、ローカル5Gの導入によってスマートファクトリー化が加速しています。

これまで有線LANでつながっていた設備やロボットを無線化することで、レイアウト変更の柔軟性や生産効率の向上を実現できます。たとえば、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)の遠隔制御が可能になるため、製品搬送の自動化や作業員の負担軽減につながります。また、AIを活用した検品システムでは、高精細カメラ映像をローカル5G経由で瞬時に送信し、不良品の自動検出や品質の均一化を実現しています。

このように、製造業がローカル5Gを導入することでライン停止や人的ミスが削減され、生産性向上と品質向上の両立が可能になります。

建設業:建設現場の安全性と生産性向上

近年の建設業では、熟練技術者の減少や危険作業への対応が大きな課題となっています。ローカル5Gの導入により、こうした課題を解消し、安全で効率的な現場運営が可能になりました。

たとえば、ローカル5Gの導入によって重機や建機の遠隔操作が可能になれば、リアルタイムで高精細な映像を送受信しながら、離れた場所から精密な操作をおこなうことができます。これにより、災害現場や高所など危険エリアでの作業を最小限に抑えられ、作業員の安全確保・事故防止につながります。また、建設現場の映像をリアルタイムで共有することで、本社や遠隔地から施工状況を確認でき、現場と管理者の間で即時の意思決定が可能になります。これにより、施工品質の均一化や作業効率の向上につながります。

このように、建設業がローカル5Gを導入することで安全性と生産性の両立が促されます。

物流業:倉庫内業務の自動化・効率化

近年の物流業界では、人手不足や需要変動への対応が大きな課題となっています。ローカル5Gを導入することで倉庫内業務の自動化・効率化が促進され、安定した供給体制を実現できます。

たとえば、ローカル5Gを導入すれば、ピッキングロボットやAGV(無人搬送車)の連携による自動搬送において、多数のロボットが同時に稼働しても通信遅延が少なく、リアルタイムでの経路制御や作業指示が可能になります。これにより、作業時間の短縮や誤ピッキングの削減につながります。また、在庫管理システムの自動化では、商品に取り付けたRFIDタグやセンサーからのデータをローカル5Gネットワーク経由で即時に収集し、入出庫状況を一元管理できます。低遅延かつ安定したローカル5G通信により、人の手を介さず在庫数を正確に把握できるため、棚卸の効率化や欠品防止につながります。

このように、ローカル5Gは物流・倉庫DXを支える重要な通信インフラとして期待を集めています。

ローカル5G導入の主な流れ3ステップ

ローカル5Gを導入するには、目的の整理からエリアの検討、免許取得、設備の構築・運用まで、計画的に進める必要があります。ローカル5G導入時の基本的な流れとして、以下の3ステップを押さえておきましょう。

  • ステップ1:要件定義と計画策定
  • ステップ2:無線局免許の申請と取得
  • ステップ3:システム構築と運用開始

ステップ1:要件定義と計画策定

ローカル5G導入の第一歩は、「どのような目的で、どの範囲に、どのような通信を実現したいのか」を明確にすることです。たとえば、製造現場での遠隔監視や自動搬送、教育現場での高速映像配信など、業務上の目的を整理し、それに合わせて通信要件(通信速度、遅延許容、同時接続数など)を設定します。

次に、利用予定エリアの面積や環境条件、利用機器を考慮し、基地局やアンテナの設置計画を立てます。通信事業者やベンダーとコミュニケーションを図りながら、構築方式や機材選定の方向性を定めます。また、初期コスト・運用コストから費用対効果を試算することも重要です。計画段階で目的や費用を明確にすることが、ローカル5Gの導入に失敗しないための鍵になります。

ステップ2:無線局免許の申請と取得

ローカル5Gを運用するには、総務省が定める無線局免許を取得する必要があります。申請の際は、「無線局事項書」「工事設計書」など、基地局の構成、利用目的、通信範囲を記載した書類を提出します。これらの書類は無線局免許手続規則に基づいて審査されます。

無線局免許の申請から交付までは、約1〜2ヶ月が目安とされています。審査では、他の電波との干渉リスクや、法令に基づく安全基準の適合性などが確認されます。また、免許の申請は企業が自らおこなうパターンと、ベンダーや通信機器メーカーが代行するパターンがあります。特に、ローカル5Gを初めて導入する企業は、申請書類の不備を防ぎ、スムーズに手続きを進めるためにも、事業者のサポートを受けることをおすすめします。

ステップ3:システム構築と運用開始

ローカル5Gの無線局免許を取得できたら、ネットワークの構築と運用準備に進みます。まず、基地局やアンテナ、コアネットワーク装置などの機器を選定・設置し、想定エリア全体で電波強度や通信品質を確認します。その後、PoC(概念実証)を実施し、映像通信やIoTデバイス接続など、実際の業務環境で性能検証をおこないます。これにより、遅延や通信切断、干渉などの課題を事前に把握でき、本稼働前のチューニングが可能となります。

ローカル5Gの運用開始後は、通信ログの分析や機器の保守、障害対応体制の整備をおこない、安定稼働を維持します。また、ネットワーク管理者の育成やセキュリティ運用ルールの策定も重要です。

まとめ

ローカル5Gは、企業や自治体が自社環境に最適化した通信ネットワークを構築できる点が最大のメリットです。ローカル5Gの導入には、決して少なくないコストがかかり、免許取得などのハードルもありますが、補助金制度や支援サービスの拡充により、今後は広く導入が進んでいくと見込まれています。製造、建設、物流などの現場では、すでにDXの中核としてローカル5Gの活用が始まっており、今後のデジタル社会に欠かせない通信基盤となることが期待されています。

よくある質問

ローカル5Gはなぜ普及しないのですか?

ローカル5Gが普及しない主な理由としては、導入コストが高いことや運用の難易度が高いことなどが挙げられます。ローカル5Gを導入するためには免許取得や基地局設置が必要で、高度な専門知識と高額の初期費用が必要になるため、中小規模の事業者にとってはハードルが高いのが現状です。

ローカル5Gの導入費用はいくらですか?

ローカル5Gの導入費用は、ネットワークの規模や運用形態によって大きく異なります。一般的な初期費用としては、数千万円〜1億円程度が目安になるでしょう。ただし、小規模導入の場合などは月額数十万円規模で運用できるサービスも登場しており、導入ハードルは下がりつつあります。

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