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IPv6とは|IPv4との違いや仕組み・メリット・デメリットを解説
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IPv6とは何か
IPv6(Internet Protocol Version 6)は、インターネット上でデータ通信をおこなうための最新の通信規格(プロトコル)です。
従来のIPv4は約43億個のIPアドレスしか利用できず、インターネットの急速な普及によってIPアドレスの不足が問題視されるようになりました。IPv6は128ビットのアドレス体系を採用し、約340澗(かん:兆の1兆倍の1兆倍)個という膨大なアドレスを扱うことが可能です。世界中のあらゆる機器に固有のIPアドレスを割り当てられる通信規格として注目されています。
IPv6が生まれた背景
IPv6が誕生した背景には、IPv4アドレスの枯渇問題があります。IPv4は、2の32乗=約43億個のアドレスが存在し、当初は十分であると考えられていました。しかし、1990年代以降、インターネットが急速に普及したことで、個人や企業が複数の端末を利用するようになり、アドレス需要が急増しました。さらに、スマートフォンやPCだけでなく、センサーや家電、自動車など、あらゆるモノがネットに接続される「IoT」時代が到来したことで、膨大なIPアドレスが必要となりました。
IPv4アドレスは地域ごとに割り当て済みで、新たな機器やサービスが増えるたびに、既存のアドレスを共有する「NAT(ネットワークアドレス変換)」などの暫定的な仕組みで対応してきました。しかし、これではシステム構成が複雑化し、通信効率やセキュリティ面で課題が生じます。こうした状況を抜本的に解決するため、より多くのアドレス空間を持ち、シンプルかつ安全な通信を実現できるIPv6が策定されたのです。
IPv4とIPv6の主な違い
IPv4とIPv6は以下のように、アドレス数だけでなく通信方式やセキュリティ構造にも大きな違いがあります。
| IPv4 | IPv6 | |
|---|---|---|
| アドレス体系 | 32ビットで約43億個のアドレス。地域ごとに枯渇が進行。 | 128ビットで約340澗個のアドレス。ほぼ無限に近い空間を確保。 |
| 通信方式 | NATを用いて複数機器が1つのアドレスを共有。設定が複雑。 | 各端末に一意のアドレスを自動割り当て。シンプルで効率的。 |
| セキュリティ | 通信暗号化は任意設定(IPsecはオプション)。 | IPsecが標準化されており、安全な通信を前提とした設計。 |
IPv6の大きな特徴が次の3点です。
- より広大なアドレス空間を持ち、機器ごとに固有の識別が可能。
- NATを不要とし、端末間の通信が効率化。
- セキュリティ機能を標準化し、安全で安定した通信を実現。
IPv6はIPv4の単なる拡張版ではなく、次世代のネットワーク基盤として通信の効率化と安全性を両立させた新しいプロトコルだと言えるでしょう。
IPv6の接続方式
IPv6には、主に「PPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)方式」と「IPoE(Internet Protocol over Ethernet)方式」という2つの接続方法があります。いずれもインターネットに接続する仕組みですが、以下のように通信経路や速度、安定性に大きな違いがあります。
| PPPoE方式 | IPoE方式 | |
|---|---|---|
| 接続経路 | 終端装置を経由 | 直接インターネットに接続 |
| 通信速度 | 混雑しやすく低下しやすい | 安定・高速通信が可能 |
PPPoE方式による接続
PPPoE方式は、従来のインターネット接続で広く採用されてきた通信方式です。これは、電話回線時代に使われていたPPP(Point-to-Point Protocol)を、イーサネット(LAN環境)上で利用できるようにした仕組みです。
PPPoEでは、ユーザーがプロバイダに接続する際に、ユーザー名とパスワードを用いて認証をおこない、その後、ネットワーク終端装置(NTT局内などに設置)を経由してインターネットに接続します。この終端装置が通信の通り道となるため、利用者が集中する時間帯にはデータが渋滞し、通信速度の低下を招くことがあります。
特に、オフィスや学校など多数の利用者が同時にネットワークを使用する環境では、いわゆる「輻輳(ふくそう:回線が混み合ってつながりにくい状態)」が発生しやすく、安定した通信が難しくなるのが課題でした。また、PPPoEでは接続のたびに認証が必要で、設定や管理に手間がかかるのも難点でした。こうした課題を解決するために開発されたのが「IPoE方式」であり、現在の主流となりつつあります。
IPoE方式による接続
IPoE方式は、IPv6通信の特性を活かした新しいインターネット接続方式です。PPPoEのようにネットワーク終端装置を経由せず、プロバイダの設備を通して直接インターネットに接続する仕組みです。そのため、回線の混雑が起こりにくく、安定した高速通信を実現できます。さらに、ユーザー名やパスワードによる認証が不要で、機器を接続するだけで自動的に通信が開始されるため、設定も簡単です。帯域幅の広い通信路を確保できるので、大容量のデータ通信やテレワーク、映像配信などに最適です。
なお、現在はIPv4対応のWebサイトも多く存在するため、IPv6だけではアクセスできないという課題がありました。これを解決する技術が「IPv4 over IPv6」です。IPv4 over IPv6は、IPv6回線を利用しながらIPv4通信も可能にする技術で、利用者は両方式を意識することなくインターネットを利用できます。IPoE方式とIPv4 over IPv6を組み合わせることで、快適さと互換性を両立した通信環境が実現します。
IPv6のメリット・デメリットについて
IPv6は、従来のIPv4では実現できなかった高速・安定通信を実現できる次世代プロトコルですが、導入時には対応する回線や機器の準備が必要になります。IPv6導入による2つのメリットとともに、導入時の準備についても押さえておきましょう。
- メリット:通信速度が向上する
- メリット:セキュリティが強化される
- 準備:回線や機器を確認する
通信速度が向上する
IPv6の大きなメリットの一つが、通信速度が向上することです。従来のIPv4はPPPoE方式によってネットワーク終端装置を経由して通信をおこなうため、利用者が集中する夜間などには回線が混雑し、速度が大幅に低下する傾向がありました。これに対し、IPv6はIPoE方式を採用することで、ネットワーク終端装置を経由せずにプロバイダの設備から直接インターネットに接続します。そのため、回線の混雑を避けられ、通信速度が安定します。
たとえば、一般的な光回線(1Gbpsプラン)において、IPv4 PPPoE方式では混雑時間帯に平均20~50Mbpsまで速度が低下することがありますが、IPv6 IPoE方式では同条件でも200~800Mbps前後を維持できるという例が報告されています。IPv4のように、業務が集中する時間帯や夜間でも速度低下が起こりにくいため、Web会議やクラウド利用、大容量のデータ通信など、ビジネスにおける生産性向上にもつながります。
セキュリティが強化される
IPv6は、通信内容を暗号化して安全性を高める「IPsec(Internet Protocol Security)」が標準で組み込まれています。IPv4でもIPsecは利用できましたが、オプション扱いであり、設定などが複雑なため、それほど普及していませんでした。IPv6はすべての通信においてIPsecの利用が推奨され、データの改ざんや盗聴を防ぐ仕組みが備わっています。この機能により、端末間通信の認証・暗号化・整合性確認が自動的におこなわれるため、悪意ある第三者による攻撃を未然に防止できます。
特にビジネス利用においては、リモートワークやクラウドサービスの利用拡大に伴い、通信経路の安全性確保が重要です。IPv6を導入することで、社外からの接続や拠点間通信をより安全に実現でき、VPNやファイアウォールと組み合わせることで多層的なセキュリティ環境を構築できます。また、IPv6はNATを必要としないため、アドレス共有によるセキュリティ上のリスクも軽減されます。
【準備】回線や機器はIPv6に対応しているか?
IPv6を利用するには、回線や機器がIPv6に対応している必要があります。まず確認すべきは、プロバイダがIPv6 IPoE方式に対応しているかどうかです。次に、利用中のルータやネットワーク機器(スイッチ、ファイアウォールなど)がIPv6に対応しているかどうかを確認します。IPv6対応ルータには「IPv6対応」「IPoE対応」「v6プラス」などの表記があります。
IPv6に対応していない機器を使用すると、IPv4通信しかおこなえず、IPv6の高速通信の恩恵を受けられません。なお、古いルータはIPv6に対応していても、速度面で性能が不足している場合があるため、ビジネス利用の場合は1Gbps以上のスループットに対応した製品を選ぶことをおすすめします。さらに、社内ネットワーク全体でIPv6を活用する際は、ファームウェアの更新やセキュリティ設定の見直しも必要です。
IPv6にする方法を解説
IPv6は、利用環境を整えて設定をおこなうだけで導入できます。利用開始までの簡単なステップは以下のとおりです。
契約中の回線・プロバイダがIPv6 IPoE方式に対応しているかを確認します。
IPv6対応ルータを用意し、管理画面で、契約しているプロバイダのIPv6サービスに対応した接続方式を選択します。
通信状態をチェックし、IPv6通信が有効になっているか確認します。
IPv6対応ルータについて
IPv6を利用するためには、「IPv6 IPoE方式」に対応したルータが必要です。古いIPv4専用ルータでは通信できない場合があるため、製品に「IPv6対応」「IPoE対応」「v6プラス」などの記載があるかを必ず確認しましょう。
IPv6に対応したルータを選ぶ際のポイントは以下の3点です。
①通信性能
1Gbps以上のWANポートに対応し、高速通信を安定的に処理できるモデルを選ぶ。
②同時接続数
オフィスなどで複数端末を接続する場合は、高負荷でも安定する仕様が望ましい。
③セキュリティ機能
ファイアウォールやアクセス制限など、内部ネットワークを守る機能があるものを選ぶ。
設定は、ルータの管理画面にアクセスし、契約しているプロバイダのIPv6サービスに対応した接続方式を選択します。一般的には、「IPv6 IPoE」「v6プラス(またはIPv6+IPv4方式)」、あるいは「自動判別(オート/自動設定)」を選択します。
IPv6の接続確認方法について
IPv6接続が有効になっているかどうかは、簡単に確認できます。以下の方法で、パソコンやスマートフォンからチェックしてみましょう。
①Windowsの場合
- キーボードで「Windowsキー+R」を押して「ファイル名を指定して実行」を開く。
- 「cmd」と入力してエンターキーを押す。
- コマンドプロンプトで「ipconfig」と入力。
→ 表示された結果のなかに「IPv6アドレス」があればIPv6接続が有効になっています。
②Macの場合
- 「アプリケーション」→「ユーティリティ」→「ターミナル」を開く。
- 「ifconfig」と入力。
→ 表示内容に「inet6」とあればIPv6接続が有効になっています。
③確認サイトを使う場合
ブラウザから以下のような確認サイトにアクセスする方法でも確認できます。
IPv6接続が有効になっている場合、確認サイトを開くと、「IPv6で接続しています」などと表示されます。
まとめ
IPv6は、インターネットの将来を支える基盤技術として不可欠な存在です。広大なアドレス空間とIPoE方式による高速通信、標準搭載されたセキュリティ機能など、数多くのメリットを享受できます。対応ルータなどの準備が必要になりますが、IPv6への移行が正しくできれば、格段に快適で安全なネットワーク環境を構築できます。加速するデジタル化、IoT化に適応するためにも、早めのIPv6対応をおすすめします。
よくある質問
IPv6が普及しない理由は?
IPv6は高速かつ安全な通信を可能にしますが、導入時は対応ルータや回線契約の変更が必要になります。また、IPv4のみに対応したWebサイトも多く、完全移行が進まないことが普及の遅れにつながっています。
IPv6をオフにするとどうなる?
IPv6をオフにすると、回線が混雑しやすいIPv4接続(PPPoE方式)に戻るため、通信速度が低下することがあります。また、IPv6対応サイトに接続できなくなる場合があります。


