ここから本文です。
工場のネットワーク機器の熱対策とは?トレンドや課題、熱による影響を解説
スイッチングハブ、ネットワークシステム構築に関するお問い合わせはこちら
工場ネットワークのトレンドとは?
近年、工場ネットワークは従来の単純な情報伝送基盤から、IoTやスマートファクトリーを支える中核インフラへと進化しています。生産設備や検査装置をネットワーク化することで遠隔監視や自動制御が可能になり、生産性向上や品質管理の強化が実現しています。加えて、深刻化する人手不足対策の一環としてAIを活用した運用も拡大しつつあります。
このように、IoT化やスマートファクトリー化が進展するなかで、ネットワーク機器は24時間稼働が前提となり、熱による障害リスクが顕在化しているのが現状です。安定した通信環境を構築するうえで、熱対策の強化は一つの重要なテーマとなっています。今後は、通信・制御・セキュリティに加え、熱対策まで含めたネットワーク設計が求められるようになるでしょう。
工場ネットワークにおける課題
工場ネットワークは生産性の向上や品質の安定化に貢献する一方で、運用上の課題も抱えています。こちらでは、工場ネットワークにおける主な3つの課題について解説します。
生産ラインの停止
工場ネットワークの高度化にともない、新たな課題として問題視されているのが、生産ラインの停止が増加していることです。従来は、機械単体でのトラブル対応で済んでいましたが、IoT化や自動制御システムの導入により、一つのトラブルがネットワーク全体に波及するリスクが高くなっています。たとえば、ネットワーク機器の熱暴走により通信が遮断されることで生産ライン全体がストップするという事例も見られます。こうして度々、ダウンタイムが発生すると、逆に生産性の低下や納期遅延を招くなど、重大な経営リスクになります。
サイバー攻撃
工場のネットワーク化が進むことで、生産ラインや制御システムは外部からのアクセスが可能になるため、遠隔管理や一括管理が実現し、業務効率化が大きく推進されます。一方で、サイバー攻撃のリスクも増大しています。サイバー攻撃の標的になり、生産ラインの停止やデータの改ざん・漏洩といったトラブルがあると、工場運営は深刻な打撃を受けることになります。多くの工場はセキュリティ対策を強化していますが、サイバー攻撃の手口も高度化しており、依然としてリスクと隣り合わせの状態にあります。
ネットワーク機器の誤作動や故障
工場のネットワーク機器は、設置環境の過酷さゆえにトラブルを招くケースが増えています。工場によって差はありますが、高温、多湿、粉塵、振動、油煙など、ネットワーク機器にとって厳しい条件が存在します。特に、空調設備を導入できず、常に高温の工場においては、ネットワーク機器の内部温度が上昇することで熱暴走を起こし、誤作動や故障のリスクが高くなります。熱暴走の結果、ネットワークの停止や通信遅延が発生すると、生産ラインに大きな影響が及びます。
工場ネットワークの課題を解消する方法
工場ネットワークの安定稼働を図るうえでは、十分な対策によってトラブルを未然に防止することが大切です。こちらでは、工場ネットワークの課題ごとの対策をご紹介します。
生産ラインの停止を回避する方法
工場の生産ラインの停止を防ぐには、ネットワーク機器の安定稼働とトラブルの早期検知がポイントになります。まず、信頼性の高いネットワーク機器を選定し、過負荷や老朽化に備えることが重要です。加えて、IoTを活用して機器の状態の「見える化」を図ることで、異常や不具合の兆候をリアルタイムで把握できるようにしましょう。また、ネットワークの二重化や冗長構成を採用することで、一部の障害が全体に波及するリスクを最小限に抑えることも大切です。
サイバー攻撃に備える方法
工場ネットワークの信頼性と生産ラインの安定性を守るためには、サイバー攻撃対策が欠かせません。業務用と制御用のネットワークを分離し、不正アクセスの影響範囲を限定するのは重要な取り組みです。また、ファイアウォールや侵入検知システム(IDS)の導入など、外部からの攻撃を早期に検知・遮断する対策も必要です。ネットワーク機器のソフトウェア更新やパスワード管理の徹底も欠かせません。ネットワーク全体の可視化と定期的なセキュリティチェックなど、リスクを最小限に抑える体制づくりが求められます。
ネットワーク機器の誤作動や故障を防ぐ方法
高温、多湿、粉塵、振動、油煙といった過酷な環境下において、ネットワーク機器を安定稼働させるためには、まず耐環境性に優れた機器を選定することが基本になります。たとえば、動作温度範囲が広い機器や、防塵・防水規格(IP規格)に準拠した機器、筐体が防振構造を採用している機器などです。環境によっては、密閉型の筐体やファンレス設計によって外気や粉塵の侵入を防ぐことも大切です。ネットワーク機器の設置場所を工夫することや定期的に清掃・点検することも、トラブル防止のためには欠かせません。
工場のネットワークを構築する際は機器の熱対策も重要
多くの工場では、高温・多湿・粉塵といった過酷な環境下でネットワーク機器が昼夜を問わず稼働しています。このような環境下では、機器内部の温度が異常に上昇しやすく、適切な対策が施されていない場合、熱暴走が起き、処理能力の低下、通信エラー、制御異常などの不具合が生じるリスクが高まります。実際に、熱暴走によるネットワーク機器の障害によって工場の生産ラインが停止し、多大な損失が発生する例も報告されています。
信頼性の高い工場ネットワークを長期にわたって維持するためには、ネットワーク機器の熱対策が不可欠だと言えるでしょう。
工場のネットワーク機器の熱対策をしないリスク
工場に設置したネットワーク機器の熱対策が不十分な場合、内部温度の上昇によって熱暴走を招き、通信障害や故障が起きるリスクが高くなります。ネットワーク機器が突発的にダウンすると、生産ライン全体が停止するおそれもあります。また、トラブルが表面化しなくても、内部に蓄積された熱は徐々に部品を劣化させ、ネットワーク機器の寿命を縮める原因となります。
工場のネットワーク機器の熱対策
工場のネットワーク機器を安定稼働させるためには、熱対策が欠かせません。こちらでは、一般的な7つの熱対策について解説します。
①部品配置の見直し
工場のネットワーク機器の熱対策として基本的なのが、部品配置の見直しです。ネットワーク機器のなかでも発熱の大きい部品を風上から遠ざけ、熱の流れを妨げない位置に配置することで、全体の放熱効率を高めることができます。また、熱に弱い部品を高温部から離すことで、熱による劣化や故障のリスクを軽減できます。さらに、空気の流れを意識したレイアウトにすることで、自然対流やファンの効果を最大化し、機器全体の冷却性能を向上させることが可能です。
②筐体材質の見直し
工場のネットワーク機器の熱対策として効果的な手法の一つが、筐体材質の見直しです。機器内部の熱は筐体を通して外部に放熱されるため、その材質によって放熱性能が大きく変わってきます。特に、プラスチック製の筐体では熱がこもりやすいため、トラブルのリスクが高くなります。一方、熱伝導率に優れたアルミニウム製の筐体は効率的に放熱できるため、ネットワーク機器の安定稼働につながるとされています。
③風穴、冷却ファンの設置
工場のネットワーク機器の熱対策としては、風穴や冷却ファンを設置するのも効果的です。ネットワーク機器の筐体上部に風穴を設けることで自然対流が促され、機器内部の熱が効率良く外部へと排出されます。さらに、冷却ファンを併用して強制的に空気を循環させれば、大幅に冷却性能を向上させることが可能です。ただし、冷却ファンを導入する際は、設置スペースの確保や騒音、消費電力の増加といった課題をクリアにする必要があります。
④ヒートシンクの取り付け
ヒートシンクとは、ネットワーク機器の発熱部に取り付けることで、効率的に熱を吸収・放熱するパーツのことです。放熱面積を広げるためにフィン状の構造になっており、主にアルミや銅など熱伝導率の高い素材でつくられています。工場のように高温で連続稼働が求められる環境では、ヒートシンクの有無がネットワーク機器の安定性を大きく左右します。特に、ファンレス設計のスイッチやルーターの熱対策としてはヒートシンクが効果的で、熱暴走のリスク軽減につながります。
⑤ヒートパイプの取り付け
ヒートパイプとは、高温部から低温部へ効率的に熱を移動させるパーツのことです。内部に封入された作動液が高温部で蒸発し、低温部で凝縮することで熱を伝達するのがヒートパイプの仕組みです。この蒸発・凝縮のサイクルにより、ネットワーク機器内部の熱が効率良く拡散され、温度上昇を抑えることができます。工場のネットワーク機器にヒートパイプを導入することで安定した温度管理が可能になり、熱暴走の抑制や機器の長寿命化につながります。
⑥断熱シートの使用
断熱シートは、熱に弱い電子部品を高温から守る有効な手段であり、工場に設置するネットワーク機器の熱対策としても一定の効果が見込めます。特に、回路設計上、どうしても発熱部品の近くにネットワーク機器を配置せざるを得ない場合、両者の間に断熱シートを挟むことで熱の伝導を抑制し、機器の安定性を確保できます。また、筐体の表面温度を下げるために断熱シートを活用するのも効果的です。断熱シートを導入する際は、断熱性能はもちろん、柔軟性や加工の容易さにも配慮しましょう。
⑦TIM(熱界面材料)の使用
工場に設置するネットワーク機器の放熱効率を高める手段の一つが、「TIM」の活用です。TIMは「Thermal Interface Material」の略であり、日本語では「熱界面材料」と訳されます。発熱部品とヒートシンクや筐体などの放熱部材の間に挟むことで、両者の接触面に生じる微細な隙間を埋め、熱抵抗を低減させるのがTIMの役割です。隙間があると空気が介在し、熱伝導が妨げられるため、TIMによって確実な熱伝導経路を確保することが重要です。
TIMにはいくつかの種類がありますが、代表的なのが「サーマルグリース」です。これは、粘性のあるペースト状の材料で、価格も比較的安価です。ただし、塗布ムラや長期劣化の懸念があるため、定期的なメンテナンスが必要です。「熱伝導シート」もよく使われるTIMで、取り扱いが容易であることや繰り返し使用できることがメリットです。「PCM(フェーズチェンジマテリアル)」は密着性に優れたTIMで、熱抵抗の低減に効果的ですが、コスト面ではやや高価です。
これらのTIMを適切に選定・活用した熱対策をすることで、ネットワーク機器の温度上昇を抑え、熱暴走のリスクを低減することができます。
工場のネットワーク構築ならパナソニックEWネットワークス
まとめ
工場のネットワーク機器は、24時間体制での稼働が求められる一方で、熱の影響による故障リスクと常に隣り合わせです。熱対策が不十分だと、生産ライン全体の停止や大きな損失につながる可能性があります。ネットワークの信頼性を確保するためには、ネットワーク機器の適切な熱対策が欠かせません。本記事で解説したポイントを参考に、現場の環境に合わせた熱対策を検討し、ネットワーク機器の安定稼働と長寿命化を実現しましょう。



