2021年4月23日

パナソニック汐留美術館「サーリネンとフィンランドの美しい建築展」 2021年7月3日(土)~9月20日(月)

パナソニック株式会社の企業美術館、パナソニック汐留美術館は「サーリネンとフィンランドの美しい建築展」2021年7月3日(土)~9月20日(月)まで開催いたします。

■ 開催趣旨

美しい森と湖で知られる北欧の国フィンランド。日本でもファンの多いフィンランドのモダニズムの原点を築いたのがエリエル・サーリネン(1873-1950)です。サーリネンはヘルシンキ工科大学在学中に出会ったゲセリウスとリンドグレンと共同で設計事務所を設立し、1900年パリ万国博覧会フィンランド館の建築が好評を博して、みごとなデビューを果たします。 初期の作風は、ナショナル・ロマンティシズムと称される、アール・ヌーヴォーの影響をうかがわせながらも民族の独自の文化的ルーツを表現した建築で、当時、独立を求めていたフィンランドの人々を鼓舞させるものでした。 3人はやがて、静かな自然のなかで暮らしながら協働し、芸術家たちと交流できる理想の生活の場として、ヘルシンキの西の郊外の湖畔に、設計事務所兼共同生活の場ヴィトレスクをつくります。(3人の共同建築設計事務所は1896-1905年) 住宅、商業建築、公共建築、駅や都市のデザインと、次第に幅を広げていくサーリネンの設計活動は、20世紀前半の近代化と手と携えていました。その作風は、多様な文化を受け容れつつ民族のルーツを希求した初期のスタイルから、独自の形態を通じて新しいフィンランドらしさを提示しようというモダニズムへと展開します。1923年に活動の展開を求めてアメリカに渡ってからは、自ら設計したクランブルック・アカデミー・オブ・アート(美術学校)で教鞭をとるほか、同じく建築家となった息子のエーロ・サーリネン(Eero Saarinen, 1910-1961)と建築事務所を設立し、ともに設計に励みました。 本展は、渡米までのフィンランド時代にスポットをあて、図面や写真、家具や生活のデザインといった作品資料の展示を通して紹介します。つねに革新を求めつつ、自然や風土に根ざし、光と陰影をとりこんで豊かな表情を見せるサーリネンのデザインは、生活のあり方を一歩立ち止まって考え直す時を迎えている今の私たちの心に深く語りかけるでしょう。

■ 企画展概要

名称
「サーリネンとフィンランドの美しい建築 展」
会場
パナソニック汐留美術館東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F JR「新橋」駅より徒歩約8分、東京メトロ銀座線・都営浅草線・ゆりかもめ「新橋」駅より徒歩約6分、 都営大江戸線「汐留」駅より徒歩約5分
会期
  • 2021年7月3日(土)~9月20日(月)
主催
パナソニック汐留美術館
後援
フィンランド大使館、フィンランドセンター、一般社団法人日本フィンランド協会、
一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会、港区教育委員会
協力
日本航空
企画協力
株式会社キュレイターズ
会場構成
久保都島建築設計事務所
休館日
水曜日、8月10日~13日
開館時間
午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで) ※8月6日(金)、9月3日(金)は夜間開館 午後8時まで(ご入館は午後7時30分まで) 
入館料
一般:800円/65歳以上:700円/大学生:600円/中・高校生:400円、小学生以下:無料 ◎障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。

本展はいわき市立美術館に巡回します。【2021年11月6日(土)~12月19日(日)】


入館方法
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、予約サイトでの来館日時指定予約にご協力をお願いします。
詳しくは当館ホームページをご覧ください。

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お問い合わせ先

報道関係者様
パナソニック汐留美術館 倉澤  (電話:03-6218-0078
お客様
ハローダイヤル050-5541-8600
関連サイト
https://panasonic.co.jp/ew/museum/

■展覧会の見どころと特徴

1.フィンランドの独立の足がかりを築いた1900年パリ万国博覧会フィンランド館

サーリネン達が設計したフィンランド館はセーヌ右岸の万国通りに建てられ、東西約40メートル、幅約10メートルという規模で、中世の教会のような外観を呈していました。建築を装飾するのはクマ、カエル、リスといった自然界の仲間たち。本展ではCGと新規制作模型(縮尺1:100)で、このフィンランド館をご覧いただきます。

 

2.英国アーツ・アンド・クラフツがかかげた理想を、
  北欧で現実のものとしたサーリネンの暮らしのデザイン

19世紀後半に、イギリスのウィリアム・モリスが理想とした中世風の手仕事による美しい暮らしの環境の実現は、その高い理想がゆえに矛盾をはらんでいました。しかし、サーリネンらの北欧デザインは、豊富な森林資源を背景に芸術と産業の協働をみごとに実現しました。 家具や陶磁器、テキスタイルなど北欧の様々な暮らしのデザインをご覧いただきます。

 

3.アアルトもあこがれたエリエル・サーリネン。彼が築いたフィンランドのモダニズムの原点

近代建築の巨匠アルヴァ・アアルト(1898-1976)に代表されるフィンランドのモダンデザイン。その原点を築いたのが、エリエル・サーリネンです。フィンランド人に愛されるその格調高いデザインを、ドローイング、家具デザイン、都市・建築に、多角的にご紹介します。

「その建築ドローイングは私に決して消えることのない印象を残した。 それからずっと、エリエル・サーリネンの作品は私にとって特別なものになった。」 アルヴァ・アアルトのことば、1946年  Albert Christ-Janer Eliel Saarinen, Finnish-American Architect and Educator, 1948

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エリエル・サーリネン 《ヴィトレスクのサーリネン邸の寝室の椅子》 1902-1903年頃、 製作:おそらくフィンランド手工芸協会、 フィンランド国立博物館

  

建築家エリエル・サーリネンの肖像写真、 Photo : Daniel Nyblin / Finnish Heritage Agency, 1897

 

プロローグ
サーリネンの建築理念を育んだ森と湖の国、フィンランド

サーリネンは生涯、自然との調和を大切にしました。展覧会の導入として、彼の建築理念を育んだフィンランドの成り立ちと歴史、文化、自然を紹介していきます。フィン人は1155年以後スウェーデンの支配下にあり、「フィンランド」(フィンランド語では「スオメン・タサヴァルタ」通称「スオミ」)としてロシアから独立し建国を果たしたのは1917年のことでした。建国を後押ししたナショナリズムの高まりは、同時に、独自の文化と芸術を築こうとする情熱にもつながりました。サーリネンをはじめ芸術家たちにインスピレーションを与えた、壮大な民族叙事詩『カレワラ』に関する作品資料も展示します。

 

第1章 フィンランド独立運動期
 「スオミ」の建築家エリエル・サーリネンの誕生

20世紀の幕開けに大々的に開催された1900年パリ万国博覧会において、サーリネンは共同設計事務所の仲間ゲセリウス、リンドグレンとともにフィンランド館の設計を担い、一躍スポットを浴びました。本展では文献・資料調査をもとに模型をあらたに制作しフィンランド館をご紹介いたします。加えて、民族叙事詩『カレワラ』から着想された独特な建築装飾が美しいポホヨラ保険会社ビルディング(1901年竣工)や、貴重なオリジナル図面の展示でご紹介する、ナショナル・ロマンティシズムの代表的作品フィンランド国立博物館(1912年竣工)といった初期の大作もご覧いただきます。 1900年パリ万国博覧会フィンランド館、 ラハティ市立博物館

ポホヨラ保険会社ビルディングの中央らせん階段 Photo ©︎ Museum of Finnish Architecture / Karina Kurz, 2008

 

第2章 ヴィトレスクでの共同制作
 ゲセリウス・リンドグレン・サーリネン建築設計事務所

ヴィトレスク(1902年)は、彼らの設計事務所兼共同生活の場として、ヘルシンキ西方の美しい湖畔に設計されました。ヴィトレスクは自然のなかの暮らしの理想を体現しており、また、建築と暮らしのデザインが融合した総合芸術の作品でもありました。そこには英国のアーツ・アンド・クラフツ運動の影響もうかがわれます。ここはサーリネンの建築の原点であり、三人のうち唯一彼だけは、フィンランドを離れるまでの約20年もの間、自邸兼アトリエとして家族と住み続け、渡米後もほぼ毎年帰省しています。 本展ではメインルームや寝室で用いられていたサーリネンのデザインによる家具を展示、加えてダイニングルームを空間再現し、ヴィトレスクを紹介します。
「ヴィトレスクは私たちにとって“家”というものが意味するものの全てだった。 そこでピプサンとエーロが育ち、ロヤと私は、愛情を育み精神的に団結した。」

エリエル・サーリネンのことば Albert Christ-Janer Eliel Saarinen, Finnish-American Architect and Educator, 1948


ゲセリウス・リンドグレン・サーリネン建築設計事務所 《ヴィトレスク、リンドグレン邸の北立面(左)、 スタジオの断面が見えるリンドグレン邸の南妻面(右)》 1902年、フィンランド建築博物館

ヴィトレスクのサーリネン邸のダイニングルーム Photo : Ilari Järvinen / Finnish Heritage Agency, 2012

 

第3章 住宅建築
 私的な空間へのまなざし

サーリネンがフィンランド時代に手がけた住宅作品をとりあげます。ここには優美なインテリアデザインと、近代的な合理性が調和する、快適な内部空間の追求が見られます。室内装飾も含めたトータルデザインが意識されていたことは詳細に描きこまれた彩色の美しい室内の透視図からも、うかがわれます。3人の共同建築設計事務所が手がけたウーロフスボリ集合住宅・商業ビルディング(1902年)やエオル集合住宅・商業ビルディング(1903年)の他、個人の邸宅を、写真や図面、建築ドローイングといった資料で紹介。またテーブルウエア、テキスタイル、家具といった暮らしを彩るデザインを併せてご覧いただきます。

エリエル・サーリネン 《スール=メリヨキ邸、広間の透視図》1902年、 フィンランド建築博物館

   
  エリエル・サーリネン
《椅子「コティ」》1897年、
製作:フィッティネン村の家具職人、
フィンランド・デザイン・ミュージアム
   エリエル・サーリネン
《バラのタペストリーのスケッチ》
1904年、フィンランド・デザイン・ミュージアム

 

第4章 大規模公共プロジェクト
 民族性と公共性の融合

ヘルシンキ中央駅の駅舎は、1904年の設計競技でサーリネンが個人名で1等を獲得したものの、ナショナル・ロマンティシズムの作風による外観への反発によりデザイン論争が起きたため、10年以上もかけて設計変更を加えながら完成されました。中央の大きなアーチを持った入口、その両側のランタンを捧げ持つ巨人像、時計台などの造形からは、新しいフィンランドらしさの表現を、サーリネンが獲得したことが分かります。サーリネンはこの中央駅の設計に並行して駅周辺の整備にも携わり、これは独立国家となってからヘルシンキ市全体の都市計画に繋がっていきます。また国会議事堂計画案、紙幣のデザインといったサーリネンが携わった国家プロジェクトも紹介します。
「デザインとは、ひとまわり大きな枠組みから考えるもの。 椅子は部屋から、部屋は家から、家は周辺の環境から、その環境は都市計画から考えるのです。」 エリエル・サーリネンのことば Eliel Saarinen, The City: Its Growth, Its Decay, Its Future, 1943

夜のヘルシンキ中央駅玄関、 エーミル・ヴィークストロムによる彫像《ランタンを持つ人》 Photo ©︎ Museum of Finnish Architecture / Foto Roos

 

エピローグ 新天地アメリカ~サーリネンがつないだもの

1922年に実施されたシカゴ・トリビューン本社ビルの国際設計競技で、サーリネンは2等を獲得、不況の母国を離れ1923年にアメリカへ渡ると、サーリネンはモダニズムの潮流のなかで新たなデザインを模索し始めます。そしてG.ブースが創設したクランブルック・エデュケーショナル・コミュニティでは、15年かけて施設全体の設計に携わります。その中の実験的アートスクールの先駆、クランブルック・アカデミー・オブ・アートでは、教鞭をとり、1932年には学長に就任しました。その建築教育の成果は、息子であるエーロ・サーリネン(1910-1961)に継承されます。このセクションでは、サーリネンの渡米後の作品に建築思想の完成形を探る他、アメリカを代表する建築家の一人となるエーロ・サーリネンによる家具を展示します。

エリエル・サーリネン 《シカゴ・トリビューン本社ビル国際設計競技応募案 透視図》 1922年、フィンランド建築博物館

 

■関連催事

講演会 
「1900年パリ万国博覧会フィンランド館 ― 芸術家たちのネットワークと込められたメッセージ」

1900年パリ万博フィンランド館は、人と人との交流と多大な努力によって成功をおさめました。それは建築、工芸、デザイン、美術、音楽が一体化し、真のフィンランドらしさを表現する総合芸術となりました。 偉大な成功を導いた芸術家たちの情熱的な連携のプロセス、そしてフィンランド館の建築と諸芸術に込められた意味を探ります。 講師:アンナ=マリア・ウィルヤネン(美術史家、フィンランドセンター所長) 日時:7月4日(日) 午後2時~午後3時30分(開場午後1時30分) 会場:パナソニック東京汐留ビル5階ホール 要予約(定員50名) ※英語による講演、逐次通訳つき。なお開催後、講演要旨をホ―ムページにて公開します。  講演会は無料ですが、本展の観覧券が必要です。小学生は無料。

 

「講演会」の予約方法

《お申し込み方法》 ●ハローダイヤル(050-5541-8600)へお電話にてお申し込みください。 ●6月1日(火)より受付開始(受付時間:午前9時〜午後8時) ●必要事項 ①イベント名 ②参加人数(一度に2名までお申し込みいただけます)   ③氏名(全参加希望者) ④住所 ⑤電話番号 *簡単なアンケートにご協力いただきます。 *当日は予約時にお知らせする整理番号を活用してご入場いただきます。 *お申し込み時にいただいた個人情報は、本イベントの受講管理の目的でのみ使用し、  参加希望者はこの目的での使用に同意したものとします。 *講演会については未就学児はご遠慮ください。 *予約受付は先着順、定員になり次第締め切ります。 *定員に達しなかった場合、当日受付をする場合があります。 *イベント実施につきましては、事前にホームページにてご確認ください。

 

Onnea!みんなで祝おうエリエルとエーロ、サーリネン親子の誕生日、8月20日!

エリエル・サーリネンと、ニューヨークのJFK国際空港TWAフライトセンターで知られる息子エーロ・サーリネンは建築家の親子。二人の誕生日は共に8月20日です。お誕生日メッセージをSNSで投稿しよう! 会場内にも特設撮影コーナーを設けます。オンネア!(フィンランド語でおめでとうの意) #サーリネン誕生日 #サーリネン親子おめでとう

 

学芸員によるオンライン・スライドトーク「展覧会のツボ👍」

【配信予定日】  7月22日(木)お昼12時30分~  7月25日(日)午後3時~  7月27日(火)午後7時~ ご自宅のパソコンやスマートフォンからご視聴いただけます。 詳細は公式ホームページからご確認ください。

 

8月6日(金)と9月3日(金)は夜間開館のため午後8時まで開館! (ご入館は午後7時30分まで)

ご参考

■ パナソニック汐留美術館 概要

展示室: 面積:333㎡ 天井高さ:3.7m ルオー・ギャラリー:フランスの画家ジョルジュ・ルオーの作品を常設展示。           ルオーは独特の太い描線、厚く塗り込められた絵の具、ステンドグラスを想わせる光り輝く色彩で、           道化師や裁判官、聖書風景などを描き続けました。           当館の所蔵作品よりテーマ展示を行います。(ジョルジュ・ルオー所蔵作品数:約240点) ミュージアムショップ: パナソニック汐留美術館オリジナルグッズをはじめ、各展覧会に合わせた関連書籍、グッズなどを販売。           ショップのみのご利用も可能です。