2020年10月23日

パナソニック汐留美術館「香りの器 高砂コレクション展」 2021年1月9日(土)~3月21日(日)

パナソニック株式会社の企業美術館、パナソニック汐留美術館は「香りの器 高砂コレクション展」2021年1月9日(土)~3月21日(日)まで開催いたします。

■ 開催趣旨

古代オリエントの香油壺にはじまり、近代ヨーロッパの生活を華やかに彩った陶磁器やガラスで作られた様々な香水瓶など異国の香りの器。あるいは香道の道具類にみられる贅を極めた漆工芸品、また陶磁器、金工品による香炉や香合といった我が国の伝統的な香りの器。 本展では、高砂香料工業株式会社が長年にわたり収集してきたこれらの香りにかかわる質の高いコレクションから、およそ240点を選りすぐり展観いたします。香りとその器の歴史は人類の誕生とともに始まったとも言われます。古今東西の香りに関する工芸作品を鑑賞することは、奥深い香りの歴史と文化に触れることに他なりません。加えて、東京会場である当館の展示では、国内の美術館からの特別追加作品を迎えて、香りを想起させる貴婦人の肖像画や、アール・デコ時代を象徴するような作品をご紹介します。 香りの器が、同時代の絵画やデザインと深く関連付くものであることも実感いただけるでしょう。

■ 企画展概要

名称
「香りの器 高砂コレクション展」
会場
パナソニック汐留美術館東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F JR「新橋」駅より徒歩約8分、東京メトロ銀座線・都営浅草線・ゆりかもめ「新橋」駅より徒歩約6分、 都営大江戸線「汐留」駅より徒歩約5分
会期
  • 2021年1月9日(土)~3月21日(日)
主催
パナソニック汐留美術館、東京新聞
後援
在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、港区教育委員会
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特別協力
高砂香料工業株式会社
企画協力
岡村印刷工業株式会社、株式会社求龍堂、株式会社アートワン
休館日
水曜日
開館時間
午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで) ※2月5日(金)、3月5日(金)は夜間開館を実施致します。午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)。
入館料
一般:1000円/65歳以上:900円/大学生:700円/中・高校生:500円、小学生以下:無料 ◎障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。

お問い合わせ先

報道関係者様
パナソニック汐留美術館 倉澤、杉本  (電話:03-6218-0078
お客様
ハローダイヤル03-5777-8600
関連サイト
https://panasonic.co.jp/ew/museum/

■ 展覧会のみどころ

1.古代から20世紀まで、世界各地の香りの器のご紹介

紀元前10世紀キプロスの香油壺や紀元前6世紀のギリシアの香油瓶から、古代オリエントのガラス製容器、マイセン、セーブルなど欧州の名窯で焼かれた陶磁器製香水瓶やポプリポット、アール・ヌーヴォーおよびアール・デコ様式によるガレやドーム兄弟、ラリックなど有名デザイナー達の香水瓶など多様な香りの器を展示いたします。 さらに、化粧道具セットや香水メーカーの華やかな広告ポスターもご紹介いたします。

2.香道具を中心に、日本の香りの文化を伝える、多様な作品群のご紹介

香席で用いられる伝統的な香道具、香木や香道伝書などの史料も展示いたします。 また、明治期の薩摩焼や芝山細工、七宝の香炉から、古典研究のもとに独自の作風を発展させた近現代の工芸家の作品までをご紹介いたします。

3.国内の美術館からの特別出品による絵画や家具が登場!

高砂コレクションに追加して国内の美術館より、香水瓶を携える貴婦人の肖像画や、マリー・ローランサンによる名画、アール・デコ時代の瀟洒な椅子や照明器具が東京会場のみ特別出品作品として追加されます。 19世紀以降、香りとその器は一般の人々の装いや暮らしにも、ますます欠かせないものとなり、それぞれの時代の美意識を反映していることが、特別出品作品を通じてもご覧いただけることでしょう。

第1章 異国の香り

 香りの歴史は、紀元前3000年頃の古代メソポタミアやエジプトにまで遡ることが出来、古くから宗教的な儀式の中で香油や乳香、没薬などが使われただけでなく、王や貴族などが生活の中でも用いていたと考えられています。古代ギリシア・ローマ時代には香料や香油が普及し、ギリシアでは陶器の、ローマではガラス製の香油壺や軟膏壺が数多く作られました。特にローマン・ガラスは、技術革新によって容器のデザインが多様化しました。中世から近世にかけて、オリエント、イスラーム世界では蒸留技術の開発のおかげで多くの香水が作られ、ガラス容器に保存して利用され、西ヨーロッパでは、ポマンダーという容器に入れられた練り香が中心でした。  時は移り、17世紀に入ると、アルコールによる精油の抽出が行われるようになり、香水文化が一気に花開きます。18世紀には、王侯貴族が主導的役割を果たしつつも、庶民の間でも香水を楽しむ習慣が普及し、マイセンやウエッジウッドなどの陶磁器による優美な香水瓶が人気を博しました。  19世紀以降は、市民社会の成熟とともに香水文化は洗練の度合いを高め、香水瓶もボヘミアン・ガラスやアール・ヌーヴォー、アール・デコの作家たちによるガラス工芸の粋を集めた作品によって、華やかな世界を演出するようになります。20世紀には、香水メーカーが、売り出す香水にふさわしいデザインをラリックなどの作家に依頼するようになり、香水瓶の量産時代を迎えました。  なお、本章では、「特別出品作品」として、国内の美術館所蔵の絵画、家具、調度作品も展示いたします。これらの作品は19世紀後半から20世紀前半の制作になり、描かれているモチーフや造形のテーマに深い関連性が認められる香水瓶や化粧道具の近くに展示いたします。

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赤絵式把手付香油瓶 前6世紀 高砂コレクション

 

マイセン 色絵香水瓶「子犬」 19世紀 高砂コレクション

 

ルネ・ラリック 香水瓶「ユーカリ」 1919年 高砂コレクション

       

ラリックの香水瓶の中でも、著名な作のひとつ「ユーカリ」である。 栓に用いられたユーカリの伸びた葉は、すっきりとした瓶の左右に、底部に届くほどの長さで大胆に表現される。こうした栓は「ティアラ形」と呼ばれ、さまざまな香水瓶に、形を変えて流用された。


本章の構成
   ● 古代の土器・陶器・石製容器
● 古代オリエントのガラス製容器
● イスラーム世界
● 携帯用の香水瓶
● 陶磁器製の小さな香水瓶
● ボヘミアン・ガラスの香水瓶
● アール・ヌーヴォーとアール・デコの香水瓶
● ルネ・ラリック
● 香水メーカーの香水瓶
● さまざまな化粧道具
● カタログ・ポスター

第2章 日本の香り

 日本の香りの歴史は、仏教が伝来した6世紀以降に始まったとされます。紀元前からの歴史を持つ古代オリエントや、その影響を受けたヨーロッパ諸国と比べ、日本の香りへの関心は決して早かったとはいえないながらも、日本の香り文化は瞬く間に開花し、他国にはない独自の展開を見せるようになります。  宗教儀式や宮中などで香りが用いられるようになると、やがてそれは儀式だけにとどまらず、上層階級を中心に日々の暮らしの中で使用されるようになりました。平安時代には、香りを聞いて競い合う「薫物合たきものあわせ」など優雅な遊びへと発展し、さらに室町時代には、香りは「香道」という芸術へと高められます。それとともに、香を焚き、聞くための道具作りが盛んとなり、江戸時代の大名道具などの漆工品を中心に、香道具のための逸品が次々と製作され、日本の香り文化は絶頂期を迎えます。  そして、明治という新しい時代になると、日本の工芸品製作は、近世以前の職人たちによる分業制から、個人作家が美術作品を制作するという、新しい概念へと変化しました。香道具の製作も、近世のような豪華な逸品製作は激減した一方、一点ものの香炉や香合は、実用だけでなく、鑑賞品としても捉えられるようになり、大正期以降続々と登場した個人作家たちの格好の制作対象として、数多くの名品が制作されました。

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鶴蒔絵香枕 江戸時代 18世紀 高砂コレクション

 

浜松塩屋蒔絵十種香箱 明治時代 20世紀 高砂コレクション

 

七宝花鳥文香炉 明治時代 高砂コレクション

伽羅枕きゃらまくらともいい、寝ている間に髪に香を焚きしめるために用いられる枕。内に香炉を置く抽出ひきだしが収められている。 外側は全体を濃密な梨子地に仕立て、薫煙を出すための透かしをえぐり、金高蒔絵に朱描を交えて飛鶴文ひかくもんを描く。また、内の抽出にも黒漆地に鶴が研出とぎだし蒔絵で表わされている。

 

十種香は室町時代に始まる最古の組香くみこう。十種の香木から四種を選んで焚き、その香りを聞いて香木の種類を当てるという遊戯だが、そこで用いられる道具をまとめて収めたのが十種香箱である。 全体に金粉を密に蒔き付け、金銀の高蒔絵に研出蒔絵、さらに小さな方形に切った金の板をちりばめて室町以来の古典的な文様を表わす。豪華な仕上がりをみせる香道具箱である。

 

全体を有線七宝の技法で装飾したかなえ形の香炉。七宝とは銅や銀の素地にガラス質のうわぐすりを焼き付けて文様をあらわす技法。特に細い線状の金属を文様の輪郭線に用いるものを有線七宝という。本作は全体を黒地とし、唐草文や七宝繋文つなぎもんを有線七宝であらわす。 側面二ヶ所には窓枠の中に梅樹に小禽図、菖蒲に鷺図を描く。二つの花鳥図はそれぞれ春夏の情景となっており、桃色の釉薬が黒地に映えて美しい。蓋には香孔あなを透かし、摘みは紫の菊花をかたどる。

本章の構成
  

● 香道具  ● 香炉/香合  ● 香木  ● 香道伝書等

高砂香料工業と高砂コレクション

高砂香料工業は1920年2月、創業者の甲斐荘楠香かいのしょうただかにより合成香料を製造する会社としてスタートしました。 現在は、合成香料のほか、食品などに使われるフレーバーや、化粧品、トイレタリー用品向けのフレグランス、そして触媒技術をコアにさまざまな分野に用いられるファインケミカルの開発・製造を行う世界有数の総合香料会社です。 一方、高砂コレクションは、高砂香料工業が1964年に水戸徳川家伝来の「梅松蒔絵十種香箱」を譲り受けたことをきっかけに始まりました。その後、洋の東西を問わず香りにかかわる質の高い作品を広く収集し、古代の香油瓶から20世紀の香水瓶、日本の香道具や香木、さらには香りに関する絵画やポスターといった、多様な時代と地域、形態の収蔵品から構成されています。

■関連イベント

オンラインギャラリートーク「展覧会のツボ👍」を配信予定です。 詳細ならびに、他のイベントについては決定後、当館ホームページでお知らせいたします。

ご参考

■ パナソニック汐留美術館 概要

展示室: 面積:333㎡ 天井高さ:3.7m ルオー・ギャラリー:フランスの画家ジョルジュ・ルオーの作品を常設展示。           ルオーは独特の太い描線、厚く塗り込められた絵の具、ステンドグラスを想わせる光り輝く色彩で、           道化師や裁判官、聖書風景などを描き続けました。           当館の所蔵作品よりテーマ展示を行います。(ジョルジュ・ルオー所蔵作品数:約240点) ミュージアムショップ: パナソニック汐留美術館オリジナルグッズをはじめ、各展覧会に合わせた関連書籍、グッズなどを販売。           ショップのみのご利用も可能です。