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パナソニック株式会社の企業美術館、パナソニック 汐留ミュージアムは「日本の民家一九五五年 二川幸夫・建築写真の原点」展を2013年1月12日(土)から3月24日(日)まで開催いたします。
「日本の民家一九五五年」展は、1959年に毎日出版文化賞を受賞した同名の写真集(『日本の民家』全10巻写真・二川幸夫、文・伊藤ていじ、美術出版社)に収められた日本各地の民家を写した280点の写真から、再度2012年に約70余点を 選び出して、最新のデジタル出力技術により新たにプリントをおこし紹介する展覧会です。展覧会と同時に二川幸夫自身による新たな編集で、再版を重ねるたび高く評価されてきた同書の“決定版”も出版されます。
二川幸夫は確かな評価眼を通して見たものを建築写真として表現し、自ら主宰する編集・出版社を中心に60年に
わたって発表してきました。フランク・ロイド・ライトの全作品集を始め、近現代の名建築を撮った写真は世界で高く評価されています。80歳を越えた現在も年の半分近くを海外取材に費やしています。彼にとって建築写真とは建築を記述・記録する手段であり、優れた建築しか撮らないというゆるぎない信条により、「未来の建築史」をかたちにしてきたといえます。
世界中を駆け巡ってきた二川幸夫の原点は、日本の古典を解釈しようと日本各地を歩いて回った学生時代の旅にさかのぼります。大学在学中に建築史教授の田辺泰の勧めで岐阜・高山の民家を訪ね、強い印象を受けたのをきっかけに二川幸夫が撮り進めていった日本の民家の記録は、美術出版社の社長に見出されました。そして俊英の建築史家・
伊藤ていじを書き手に得て、全10巻の『日本の民家』として出版されました。民家の美しさをあますことなく引き出したこの写真集は、当時第一線で活躍する建築家たちからも高く評価され、ただちに毎日出版文化賞受賞の栄誉に輝きました。
自分は写真家ではないと言い切り展覧会という媒体を拒んできた二川幸夫が、本展を開催することを承諾した経緯――それは民家がまだ美しかった国土で自然と人々の生活とともに生きていた1955年、という時代を限定してタイトルに付け加えるのであれば、という条件付きでした。そして国内美術館では初の展覧会を実現する運びとなったのです。
完璧な構図とディテールの素晴らしさと気品、民家の本質的な美しさと大地に根を張った民家の逞しさを引き出す新しい視点、そして若き日の二川青年が自らの直感を頼りに歩き、体当たりで撮ったダイナミズムは見る者を強く惹きつけます。今のような情報網も交通網もない時代、その旅は、まさしく人づてに情報を得ながら見ず知らずの美しい民家を求めてひたすら歩き、ときに野宿をしながら約7年間続けられたといいます。その後、国・県文化財指定を受けた数々の一流の民家。日本人なら誰しも心を打たれる今日稀少となった日本各地の自然風景のなかに美しく溶け込んだ民家の姿をご覧ください。
名称: | 日本の民家一九五五年 二川幸夫・建築写真の原点 展 |
会場: | パナソニック 汐留ミュージアム 東京都港区東新橋1-5-1パナソニック東京汐留ビル4F JR・東京メトロ銀座線・都営浅草線・ゆりかもめ「新橋」駅より徒歩6〜8分、 都営大江戸線「汐留」駅より徒歩4分 |
会期: | 2013年1月12日(土)〜2013年3月24日(日) |
主催: | パナソニック 汐留ミュージアム、日本経済新聞社 |
特別協力: | A.D.A. EDITA Tokyo Co.,Ltd.,GA photographers 技術協力:エプソン販売株式会社 |
後援: | 一般社団法人日本建築学会、社団法人日本建築家協会、港区教育委員会 |
休館日: | 毎週水曜日、(3月20日は開館) |
開館時間: | 午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで) |
入館料: |
一般:700円 大学生:500円 中・高校生:200円 小学生以下:無料 5歳以上の方で年齢のわかるもの提示:600円 20名以上の団体:各100円引(65歳以上は除く) 障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで:無料 |
担当学芸員: | 大村理恵子 |
展覧会の構成は『日本の民家』の当初の編集に基づいて展開します。まず、日本で最も早く都市文化が形成された「京・山城」にはじまり、「大和・河内」「山陽路」「四国路」「西海路」と南下します。そして本州北端の「陸羽・岩代」に移り、再び「武蔵・両毛」「信州・甲州」と南下し、最後は二川幸夫の民家の旅の起点であった「高山・白川」でしめくくります。二川幸夫は最初は一人で民家を訪ね歩きますが、伊藤ていじが書き手に決まった後に二人でまた2、3年かけて日本中を廻りました。カメラはドイツのフォクトレンダー製のベッサUが主に用いられました。
日本の民家は、自然条件や歴史的背景と結びついて地域ごとに特色のある民家が生み出されました。
それらの民家を記録した二川幸夫の視点を追いかけます。
この地域は日本で一番早く発達した町屋建築で知られています。都市の細分化された敷地を活用して、長い通り庭の土間に沿って部屋を配置する間取りや、商店の店先に据え付けられた折りたたみ式の物売り台「ばったり床机(しょうぎ)」など、調和のとれた京都独自の町並みがとらえられています。
水田耕作地帯の広がる大和盆地中央部の高塀造り(大和棟)が特有の民家形態として知られています。
一向宗の門徒が周囲に濠を巡らせて建設した今井町を二川幸夫は訪れています。独自の自治権を守り、商業都市としても発展した今井町では、城郭のような豪華な造りを特徴とする八棟造り(やつむねづくり)の「今西家住宅」が知られています。また戦前より国宝指定(現在の重文)されていた「吉村要治郎邸」(吉村家住宅)もとらえられています。
初版で紹介された瀬戸内海沿岸の兵庫、岡山、広島各県の民家から、本展では岡山県倉敷市に絞って紹介しています。運河のほとりに蔵と住宅が並び、瓦を貼り白漆喰で仕上げた意匠が美しい地方色を醸している景観は、後年1970年代に伊藤ていじが伝統的建築物群調査を行いました。伝統的建造物群保存地区に指定されています。
愛媛県の西南端の豊後水道に突き出た半島にある石垣の漁村外泊(そとどまり)、 そして四国中でも最も山深い地方にある美馬郡の民家を紹介しています。外泊では台風と季節風から家屋を守るため慶応年間以後、高い石垣が築き上げられ、独特の景観 をつくり出しています。
二川幸夫《愛媛県南字和の外泊の瓦屋根》 1950年代 ©Yukio Futagawa |
佐賀県の草葺民家に特有の「クド造り」は屋根の棟がクドのように「コ」の字型で、かつて炊事棟と居住棟が分かれていた形式のなごりです。宮崎県北端の高千穂は、日本の神話の「天孫降臨」の地として知られ、神棚のある主室では毎年伝統の神楽が奉納されます。
山形、岩手、秋田、福島の各県の民家を紹介しています。雪国の家のつくりである「中門造り」、主屋と馬屋がL字形に接続した南部(岩手)の「曲り家」は、寒冷な気候と豪雪という厳しい自然条件から発展した独自の民家の形態がありました。千葉哲雄邸(千葉家住宅)は重要文化財に指定(2007年)されています。山形県の庄内地方から内陸部に通じる街道の宿場町として発達した田麦俣(たむぎまた)の集落は、養蚕農家に特有の「兜造り(かぶとづくり)」がかつては多数見られました。
二川幸夫《蔵王村民家の妻破風とニグラハフ》 1950年代 ©Yukio Futagawa |
埼玉と群馬、両県の町屋と民家を紹介しています。この地域は養蚕業が発達し、民家の屋根や棟の形は、その生業を反映しています。関東の農家に広まった三峰信仰にゆかりの村落もとらえられています。江戸風の防火構造である黒塗の分厚い土蔵造りの店舗を備えた「店蔵」が並ぶ川越市は伝統的建築物群保存地区に指定されています。
山々に囲まれた山梨県、長野県では荷を運ぶ馬追いや旅人が峠を行き交い、宿場町が栄えました。蔦木宿、本山宿、郷原宿はその代表的な地名で、旅籠屋や茶屋が多く見られました。巨大な自然木の大黒柱を持つ「高野宅美邸」は、江戸時代、高野家が薬草である甘草を栽培して幕府に納めていたことから別名「甘草屋敷」と呼ばれ、重要文化財に指定(1953年)されています。
海岸地方の滋賀、石川、新潟の民家を紹介しています。「時国宏邸」は平大納言時忠の末孫と伝えられる時国家の所有で重要文化財に指定(1963年)されています。象徴的な大黒柱のある27.5坪もの土間ニワでは使用人を使って大掛かりな千歯こき(脱穀)が行われていました。新潟県岩船郡の「渡辺万寿太郎邸」は米沢街道沿いにある庄屋であり、また造り酒屋として、民家最大の偉観を誇り、重要文化財(1954年/1978年)に指定されています。
二川幸夫《能登、時国宏邸の大黒柱》 1950年代 ©Yukio Futagawa |
二川幸夫が民家を記録するきっかけとなった日下部(くさかべ)邸、吉島邸を紹介しています。二川幸夫は特に梁組の美しさをとらえています。飛騨加須良(ひだかすら)は今日はもう見ることのできない集落です。
会場構成は2012年のヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で金獅子賞を受賞した日本館の参加建築家のひとりである藤本壮介が手がけます。藤本壮介は、若手建築家の国際的な登竜門であるAR Awardsを2005年から3年連続で受賞。2011年の国際設計競技で「ベトンハラ・ウォーターフロントセンター」(セルビア共和国)、「台湾タワー」で最優秀賞を受賞。代表作に武蔵野美術大学図書館など。いま、最も注目されている若手建築家のひとりです。
二川幸夫(ふたがわ・ゆきお)
略歴 1932(昭和7)年、大阪市生まれ。
大阪市立都島工業高校を経て1956年早稲田大学文学部卒業。在学中に建築史教授の田辺泰の勧めで民家と出会い撮影を始め、1957-59年、美術出版社から『日本の民家』全10巻(文:伊藤ていじ)として発表する。1959年同著で毎日出版文化賞受賞。1970年、建築書籍専門の出版社A.D.A.EDITA Tokyo Co.,Ltd.を設立し、今日に至るまで世界の建築を撮影し発表している。1975年アメリカ建築家協会(AIA)賞、1985年国際建築家連合(UIA)賞、1997年日本建築学会文化賞など多数受賞、1997年紫綬褒章、2005年勲四等旭日小綬章受章。
伊藤ていじ(いとう・ていじ)
略歴 1922(大正11)年−2010年。岐阜県安八郡北杭瀬村(現大垣市)生まれ。本名、伊藤鄭爾。
1945年東京帝国大学建築学科卒業。同大学助手、東京大学生産技術研究所特別研究員、ワシントン大学客員教授、工学院大学学長、文化財保護審議会委員、文化財建造物保存技術協会理事長を歴任する。1961年日本建築学会賞(論文) 受賞。主要著書に『中世住居史―封建住居の成立』(東京大学出版会)、『日本デザイン論』(鹿島出版会)、『日本の民家』、『重源』(新潮社)など。
なお、本展にあわせて、鹿島出版会より『民家は生きてきた』が再刊される予定です。同書は、『日本の民家』(美術出版社)の本文のみを1冊にまとめて巻頭に概説を加え、増補改訂したもので、1963年の刊行以来、10版以上重ねたベストセラーです。
【展覧会記念講演会】
二川幸夫が出版し、国際的に愛読されてきた建築雑誌『GA』=Global Architecture という書名の通り、世界中を旅して名作建築を追い続けてきた二川幸夫氏が、現代の若者に伝えたいこと。
2012年のヴェネツィア・ビエンナーレ国際展で金獅子賞受賞、いま、最も注目されている若手建築家が自身の作品を語る。
日本の民家研究のなかで、実証的、芸術的、思想的な側面で独自の体系を築いた建築史家・伊藤ていじの 再評価を試みる。
◆ 申し込み方法 ◆
2012年11月1日(木)より申し込みの受付を開始します。下記の(A)(B)(C)いずれかの方法でお申し込みください。受付は先着順、定員になり次第締め切らせていただきます。
問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600
展示室 |
: | 面積:450m2 天井高さ:3.7m |
ルオーギャラリー |
: |
フランスの画家ジョルジュ・ルオーの作品を常設展示。 |
ミュージアムショップ |
: | パナソニック 汐留ミュージアムオリジナルグッズをはじめ、各展覧会に合わせた関連書籍、グッズ等を販売。2012年10月に新装開店。ショップのみの利用も可能になりました。 |
会期 |
展覧会名称 |
内容 |
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2013年4月13日(土)〜8月25日(日) |
開館10周年記念特別展 |
「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助(1894‐1989)と日本の伝統文化との関わりを紹介する展覧会。美術作品を収集したり、日本工芸会の役員を務めるといった文化支援活動を続けていた松下幸之助ゆかりの工芸作品が一堂に会します。 |
ハローダイヤル 03-5777-8600
関連サイト:http://panasonic.co.jp/ew/museum/