ジョルジュ・ルオー《老兵(アンリ・リュップの思い出)》 を初公開! ルオー・ギャラリー  テーマ展示「ルオーと人物像」  会期:	前期 2022年7月9日(土)― 9月25日(日)	後期 2022年10月29日(土)― 12月18日(日)

当館のルオー・ギャラリーにおいてご覧いただけるテーマ展示「ルオーと人物像」(前期 2022年7月9日―9月25日、後期 2022年10月29日―12月18日)では、昨年、当館のコレクションに新たに加わったジョルジュ・ルオー《老兵(アンリ・リュップの思い出)》を初めてお披露目します。

《老兵(アンリ・リュップの思い出)》は、1946 年(ルオー75 歳)頃の作品で、長らくルオーの家族のもとに大切に保管されていた隠れた名品です。青を基調とした背景に、老齢男性の斜め横顔が光に照らされて浮かび上がるように描かれています。何層にも重なる絵具で表現されたマティエールや、ステンドグラスを連想させる黒い輪郭線は、1920 年代以降、次第に強まる画家の造形的特徴で、人物の内面性を巧みにとらえ、印象的な光の効果を生み出す役割を果たしています。本作は、ルオー作品では珍しく、実在の人物を描いたものです。描かれているのは、ギュスターヴ・モローの友人アンリ・リュップ(1837-1918)。リュップは、モローの死後、包括受遺者となり、モロー美術館の立ち上げに尽力した人物です。縁のない帽子や、豊かな髭はこの人物の特徴を捉えたものです。モロー美術館の初代館長を務めたルオーは、リュップと親しい関係にあり、本作は、この二人の交友関係を語る貴重な作品といえます。

また、本作は、1900 年頃に描かれた別の肖像画(本作の第一段階)の上に、後年重ねて描いた作品(第二段階)としてカタログ・レゾネに記載されています。ルオーの家族には、本作の描き直しに関する興味深い逸話が語り継がれており、この度当館では、この逸話についてルオーの孫フレデリック・シェルシェーヴ氏(1938 -)にインタビューを行うことができました。さらに、下層にあるとされる肖像画の存在を確かめるために調査を実施しました。本展示では、作品の公開とともに、その調査結果も紹介しております。

映像「《老兵(アンリ・リュップの思い出)》~逸話と作品検証~」(約5分)

ルオーの孫フレデリック・シェルシェーヴ氏(1938 -)に語っていただいた《老兵(アンリ・リュップの思い出)》(1946年頃)にまつわる逸話と、本作の調査にご協力いただいた森絵画保存修復工房の森直義氏による作品検証を映像にまとめました。

企画:パナソニック汐留美術館 
制作:カッテンカビネット

エッセイジュヌヴィエーヴの記憶は正しかったのか?
-ルオー作《老兵(アンリ・リュップの思い出)》を読み解く-

森 直義(森絵画保存修復工房 代表)

本作の下層に隠された絵の存在を、調査、検証に協力くださった森直義氏にエッセイを寄稿していただきました。

森 直義氏