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ピックアップフェイス

山本隆弘

パンサーズはもちろん、全日本のスーパーエースでもある山本隆弘選手。
昨シーズンは膝の故障などで、思い通りのパフォーマンスを見せることができなかった。
それだけに、オリンピックイヤーの今シーズンにかける意気込みは、並々ならぬものがある。

まずはコンディショニングを整えることが大事

まだ記憶に新しい2007年ワールドカップバレー。山本は昨年のV・プレミアムリーグ戦終了後に膝を手術した影響もあってか、本調子とは程遠いできだった。それでも後半戦になると存在感がアップ、スーパーエースの片鱗を見せつけた。パンサーズにもどった今、何を考えているのか、どう戦うつもりなのか、本音に迫った。

「優勝できると思いますよ。合流していっしょに練習をしてみて、去年とは練習に取り組む姿勢が格段に違っていましたから。新しいコーチも加わり、練習方法が効率的になった面もあるでしょう。しっかりとコミュニケーションとっていければ、絶対いいチームになります」

だがリーグ戦開幕当初、彼の名はスタメンになかった。

「開幕の数試合は、ケガの具合がよくなくて監督やドクターとも相談して出場を見合わせました。除々に良くなっているので、近いうちに元気な姿をお目にかけることができると思います。えっ、ケガの場所ですか、それは秘密です(笑)」

松下電器とプロ契約して4年になる今、体調不良で試合に出られないことが、彼のプライドを傷つけていることは容易に察しがつく。

「まずは、コンディショニングをしっかりすることが、僕のなかで一番大事なことですね。パフォーマンスを上げるために、身体をベストの状態へもっていく。対戦相手も練習と調整を厳しくやってくるのですから、中途半端な状態では、いいパフォーマンスができるはずはありません。ケガをした場所は、とくに血流状態が悪いから、いろいろな形でケアをしている最中です」

かつて、サッカー界のスーパースターが使用して有名になった“高気圧酸素のカプセル”に入るなど、早期の回復を目指している。当然、食事に対する気づかいも怠りない。
「トレーニングをやっていても、食事が悪いと筋肉がつかないんです。食事によって、疲労回復の度合いも違ってきますし。僕も試合が近づくと脂身は一切摂りません。結果で評価される世界ですから、身体を壊せばそれまでで、バレーが続けられなくなりますからね」

バレーボールが人生の同伴者となるまで

2001年にパンサーズに入って以来、日本のバレーボール界を牽引してきた山本。だがバレーをはじめたのは遅く、中学2年生のときだった。しかも友人に誘われて、陸上部から転身したのだという。

「ある日友人が、バレー部にいま部員が1人しかいないから、入ってくれないか、と言ってきたんです。最初は何も分からなくて、女子バレー部のマネからはじめました」

最初は2人だけのクラブだったが、次第に人数が集まり6人の人数が揃う。中学在学中に30cmも身長が伸び、3年生のときは190cm 近くに達していた山本は、徐々に注目をあび、鳥取県の名門・鳥取商業の監督の目にとまる。

「高校時代は、厳しかったけれど、楽しかったですね。1年の春からレギュラーとして試合に出してもらい、3年連続でインターハイ出場を果たしました。高校時代一番の思い出は、全日本ユースの合宿に参加したことです。俺についてこい、というタイプの監督で、何でも無理矢理でしたが(笑)、それが自分には良かったと思います」

そこで出会った精鋭の技術はさすがに高く、眼を見張らされるばかりだった。山本は初めて、燃えるような闘志を抱いた。

「自信は全然なかったけれど、誰にも負けんぞ!と思いましたね」

そんな、エリート集団でも、サウスポーのアタッカーは彼の他にいない。高校の監督の勧めで日体大に進んだころには、はっきりと頭角をあらわし注目を集めていた。山本もバレーに自分の夢を賭けようと、心が決まった。そんな彼が大学卒業後、身を委ねたのが松下電器のバレーボール部である。

「高校のときから声をかけてくれていたし、チームの雰囲気なんかが自分に一番合っているように思えたからです」

2001年に入部し、2004年4月からプロ契約となった。自分のハングリー精神を保つためと、日本のバレーボール界のレベルアップのために、山本が決断した道である。

「アマのままでは強くなれません。さらに踏み込んで、人生を賭けるために確かな基盤をつくらなければ。その基盤づくりをしたいと思いました。だから、会社にプロ契約へのお願いをして、理解をしていただいたのです。ホント、会社には感謝しています」

まずはV・プレミアムリーグで1位に!

北京へ!―――これが、いま山本の頭にある最大の目標だ。ただ、パンサーズの一員として彼はこう語る。

「国内の3大大会のタイトルをすべて獲得したい。まずは1つを取って、自信をバネにいろいろな大会に勝っていきたいです。今のチームには優勝経験者がまったくいないんです。だからまず、優勝の喜びを味わって、優勝したらチームがどう変わっていくのか、そういうことをみんなが実感できれば、さらに勝っていけるはずですから」

勝つためには、自分たちが何をしなければならないか。かつて監督の強い指導力の下で考えたその問いへの答えが、いまは山本自身の内部から自然に湧き上がってくる。

「僕個人としては、どんなにブロックにこられても、それを突き破る勢いでスパイクを打つこと。それに、サーブの精度を上げることですね。チームとしては、速さのある正確なコンビバレーを完成させたい。後はしつこいくらいつないでいく。今はセッターへぴったり返していく意識ができている。これはどこにも負けないと思います」

いつの間にか、スーパーエースの表情には、精悍さや力強さとともに、風格すら浮かんでいた。

「北京への出場権を得るために、リーグ戦が重要です。世界と戦うための課題を、僕やセッターの宇佐美はリーグ戦で克服していかなければなりませんから。ポイントはサーブレシーブ。レシーブがきっちりセッターへ返らなければ、リーグ戦の優勝も、北京の切符もあり得ない。年齢的にも、最後のオリンピックチャンスになると思うので、バレーボール人生の総決算のつもりで戦いますよ」

最後にパンサーズファンへのメッセージを。

「会場でバレーを見て、その迫力を知ってください。ファンの声援の後押しがあれば、世界との差を一気に縮めて追い越すような、素晴らしい戦いがきっとできますから。よろしくお願いします」

チームで優勝して、全日本で五輪に出場することは、
バレーボール人生の“有終の美”を飾ることになる。
そんな確信を胸に抱いて、山本は今日もコートに立つ。

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