Panasonic Sports

ピックアップフェイス

白澤健児

2007-2008リーグで新人賞を獲得し、
実力も知名度もアップしている白澤。
だが、彼の本当の魅力は“あくなき向上心”だ。
その向上心が生まれてきた過程とは?

偶然に生まれたバレーボールとの出会い

福岡県宗像市出身の白澤は、バレーをプレーし始めたのが中学1年生からと、やや遅い方である。しかもきっかけは、何とも偶然なもの。

「部活は何にしようかと考えていて、友達とハンドボール部の練習を観に行ったんです。その時たまたま休憩中だったんで、バレー部の練習でものぞいてみようと。それが、バレーを始めたきっかけなんです。もしハンドボール部が練習中だったら、そのままハンドボールをやっていたかもしれませんね」

白澤はそれから、寮生活をしながらだんだんバレーに夢中になっていく。とはいっても、入部当初はパスの構えだけを何十分もやらされるという、キツい練習だったそうだ。

「監督がかなり厳しい人だったんですよ。寮生活も規則や上下関係が厳しくて、最初は大変でした。でも先輩たちとの仲はよくて、今考えるといい経験をしたと思います。」

厳しい練習を重ねた結果、チームは県大会でベスト4という成績をおさめる。この頃から、白澤の中では“高校でもバレーを続けたい”という気持ちが膨らんでいたようだ。
「勉強が不得意だったのでバレーで進学しなきゃ、という考えでもあったんですけどね! たまたま福岡大付属大濠高校の練習を見に行く機会があったんですけど、練習の雰囲気が全然違うことに驚いたんです。アリーナに入った瞬間に、何というか……すごい気迫を感じたんですよね。それで、ここでやってみたいなあ、と思いましたね」

福岡大付属大濠高校は、すべての運動部が全国大会に顔を出すほどスポーツの盛んな学校だ。特にバレー部は国体や春高バレーの常連校として知られていて、元日本代表監督の南将之氏の出身校でもある。白澤はここで3年間、バレーに没頭。2年の時には春高バレーでベスト8に入るなど、チームの活躍を支えた。

果たせなかった日本一の夢を持ってパナソニックへ

そして迎えた進路決定の時期。白澤は強豪校の多い関東への進学を考えていたが、それを思いとどまるニュースが舞い込んでくる。地元の福岡大が、関東のチームに勝ってインカレベスト8になったのである。

「地元の大学でも、関東のチームと互角以上の勝負ができることを知ったんです。家族はぼくに“自分のしたいことをしなさい”といってくれていたので、地元でじっくりバレーをしようと。それで、福岡大に進学しました」

ところが入学後、白澤を待っていたのは高校レベルを遥かに超えるハードな練習だった。 「かなりハードでした。こんなにキツい練習をしても全国でベスト8にしかなれないんだったら、辞めてもいいんじゃないか!?とも思いましたよ。でも、4年生の先輩たちと出場したインカレで、ぼくは何もできずに負けてしまったんです。そのとき、最後のインカレで負けてしまったことを悔しがる先輩たちをみて申し訳ない気持ちに……。それからは気持ちを入れ替えて、自分に厳しくするようになりました」

その後、大学ではインカレでベスト16の成績に終わったものの、能力の高さが認められて複数の社会人チームから声がかかった白澤。考えた末に決めた進路が、パナソニックパンサーズだ。自らのレベルの向上を常に意識していた彼にとって、パンサーズにかける思いは大きなものだったようである。

「大学では日本一になれなかったので、社会人で日本一になりたいと思ったんです。パナソニックにはいい選手がたくさんいたので、パナソニックの一員としてプレーしたいという気持ちが高まりました」

パナソニックパンサーズの選手は、見た目がクールな(?)選手が多いからか、外部からは“冷静沈着”なイメージで語られることが多く、実際に白澤もそんな印象を持っていたようだ。

「でも入ってみて、ちょっとびっくりしました。みんなめちゃめちゃ面白くて、仲がいいんですよ。だから、すんなり溶け込むことができましたね」

すべてはチーム、そして南部監督のために

パナソニックパンサーズは、2007年度に悲願のリーグ制覇と黒鷲旗優勝の2冠を達成。周囲は大いに涌いたが、実は選手1人1人はとても冷静。南部監督を中心に、自分たちの実力を見極めたうえで着実な練習を重ねているという。

「監督は2007年度の優勝のことを、“圧倒的な強さで手に入れたわけじゃない”といって、チームを引き締めてくれています。監督はまるで親みたいな存在ですよ。選手1人1人とのコミュニケーションを大切にしてくれるし、節目節目できっちりと目標を意識させてくれる。練習はかなりハードですけど、チーム全員がすごくまとまって練習できている気がします。個人的には、プレーの細かな部分でまだまだ詰めていかないといけない課題があるので、そのあたりを重点的に鍛えていっている最中ですね。チームが劣性の時に流れを変えるプレーができるような、そんなプレーヤーを目指しています」

決して口数は多くない白澤だが、こぼれる言葉のひとつひとつに力強さがある。その理由を聞くと、白澤はにこやかにこう語ってくれた。

「このチームが大好きなんですよ。だから、2009年度はリーグ奪還と黒鷲旗3連覇のチャンピオンフラッグを並べ、南部監督を喜ばせたいですね」

拮抗したレベルでのしのぎあいが続くリーグ戦では、“南部監督を中心としたチームの結束力”がチャンピオンになる上で大きな大きな武器となるにちがいない。白澤自身も2007年度に新人賞を獲得する活躍を見せたが、そうした実績や身に着けたテクニックにとらわれることなく、さらに前へと進んでいる。これから、どんどん頼もしくなる存在である。

偶然のきっかけからバレーの道を歩むことになった白澤だが、
今ではその力はチームに不可欠なものとなっている。
南部監督のもとでさらに成長した彼の姿を見るのが楽しみだ。

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