チーム
2022-23Vリーグ
開幕直前インタビュー/
山内晶大キャプテン

2022年10月20日

山内晶大選手 2022-23Vリーグ開幕直前インタビュー 山内晶大選手 2022-23Vリーグ開幕直前インタビュー

昨年はキャプテン1年目「まさか自分が」と戸惑うも、心がけたのは「世代をつなぐコミュニケーション」

昨シーズン、キャプテンをやってほしいと言われた時は「まさか自分が?」というところからのスタートでした。本音を言うと、それまではチームのために、というよりもまず自分のプレーをどう磨くか。パフォーマンスをどう高めていくか、ということに焦点を当ててきたので、チームのことはキャプテンやベテランの選手たちについていく、という考え方でした。
とはいえ自分もチーム内で経験を重ね、もう若手という年齢、立場ではなくなり、先輩方もいる代わりに後輩も増えた。自分のことばかりでなくチームのことも考えて行動しなければならない、ということを"キャプテン"という立場になって改めて考えさせられました。
僕にはこれまでチームのキャプテンを務めてきた深津(英臣)さんや白澤(健児・現コーチ)さんのような強いリーダーシップを発揮することはできないので、自分は自分らしく何ができるか。そう考えた時、少なからずプレーや発言で見せていくことは重要ですが、まず大切だと思ったのはいかにチームメイトとコミュニケーションを深めるか、ということでした。
試合の時だけでなく、日頃の練習や、その前後、何気ない時にもコミュニケーションを取る機会を増やし、それぞれがどんなことを考えているのかを知る。たとえば試合中になかなかうまくいかない、ミスが多いことを悩んでいるならば、改善するために、試合中のプレーが不安定にならないために周りはどんなサポート、アクションが起こせるか。言葉のかけ方や接し方も人によって違うので、言い方を考えながら、同じ世代ばかりでなく、上の世代や後輩たち、自分と年齢が同じぐらいの中堅世代、それぞれの世代が考えていることや問題だと思っていることをすくいあげる。上と下のクッションではないですが、それぞれの世代の目線で、たとえば若手に対しては「そう思うのはわかるけれど、上の人たちはこう思うことがあるから、こうやっているんだよ」と話したり、先輩方には「若い子たちもこんなふうに考えているみたいですよ」と伝えることで、できるだけチームに向けるフラストレーションを減らし、目の前の試合、相手に集中できる環境をつくる。もちろん僕1人でできるわけではありませんし、副キャプテンの永野(健)さん、清水(邦広)さんにサポートしてもらいながら、少しずつできることをする。いつまでも若手の気持ちでしたが、会社にたとえるならば中間管理職のような立場になったのかもしれませんね(笑)

アラフォーから18歳、異なる年齢、経験を持つ選手が揃う「多様性」もパンサーズの魅力

Vリーグで戦うチームの中でも、パンサーズは年齢層が幅広く、上から下まで本当にバランスよくいろいろな年代、経験を持つ選手が揃うチームです。さかのぼれば、僕が大学生の頃「パンサーズに行きたい」と思った理由は、永野さんと一緒にプレーしたい、この人と一緒にプレーができたらもっと選手として成長できるのではないか、と考えたからでした。
僕だけでなく、今でもパンサーズへ入団する若い選手たちにとって、永野さんや清水さん、深津さん、クビアクという存在は「この人と一緒にやりたい」と思わせてくれる指標となる存在です。そしてそのベテラン選手からすれば、若手が加わることでさまざまな刺激を受ける。僕たちのように間に挟まれた中堅世代にとっては、追いつきたい、追いかけたい先輩がいて、まだまだ負けられないぞと思える若い選手がいることで刺激も加わる。チームのためにもプラスの力が生まれます。若手だけ、ベテランだけ、中堅だけ、と世代が偏っているとなかなかこの空気感は生まれてこないので、パンサーズはとても恵まれた環境だと思いますし、僕が若い頃に先輩方から学んだことをチームの伝統として若い選手たちにも教え、つないでいきたいですね。
特に昨シーズンは年明け(22年1月)から、現役大学生の大塚(達宣・早稲田大)、ラリー(エバデダン・筑波大)、高校生の牧(大晃・筑波大)が加わりました。大塚とは日本代表でも一緒にやっているので、どんな性格でどんなプレーをするのかという特徴もわかっていましたので、僕が心がけたのは彼らが余分な気をつかうことなく思い切りプレーできる環境をつくること。ああしろ、こうしろ、とは言わずにプレッシャーなくやりやすい環境をつくって、そこでベストパフォーマンスを発揮してもらえたら、ということだけ考えていました。若手だから、新人だからといって委縮する必要は全くないですし、余分な気をつかうことでアピールポイントやストロングポイントが消えてしまうのはチームにとってもマイナスです。できるだけのびのびやってくれたら、と思っていたのですが、彼らはそもそも物怖じしないので、堂々としているんです(笑)。僕の若い頃と比べるまでもなく、プレーも振る舞いも、どっしりしていました(笑)。
能力も高く、可能性も大きな若手選手たちで、チームにとって大きな力でもありました。とはいえ1人の選手としては、やはりみんな負けたくないし、いくら力があるとはいえVリーグの選手として簡単に大学生や高校生に負けるわけにはいかない。僕自身もゲーム形式の練習時から「簡単に決めさせない」「簡単にブロックさせない」という気持ちを持っていましたし、チーム全員が練習中はいい刺激と緊張感があり、切磋琢磨しながらお互いを高め合うことができました。

世界で戦うために備えた武器、キャプテンとしてファイナル3で見せた涙

ミドルブロッカーとして、チームが勝利するために何ができるか。サーブ、ブロックも武器ではありますが、やはり攻撃面でもっと貢献できるようになりたい。昨シーズンは攻撃力の向上もテーマに掲げ、深津さんにも「もっとトスを上げて下さい」と自分から要求しました。さまざまな状況や、全体の展開を考えてセッターも組み立てをしているのですが、アタッカーとしては自分の調子を上げるためにできればたくさん打ちたいし、ミドルの打数や決定本数が増えれば結果的にサイドも楽になる。そのために日頃の練習から深津さんとはさまざまな状況を設定しながら、コンビを合わせて攻撃を通すための練習を重ねてきました。
パンサーズに入った頃や、日本代表に選ばれたばかりの頃は練習や周りについていくことが精いっぱいで、こんなことをやってみたい、とか、これもできるかな、と考える余地もなかったのですが、今は少しずつ余裕も出てきた。いい意味で"遊び"のプレーを取り入れてみたい、と考えるようにもなりました。動画で海外選手のプレーを見て、こんな(攻撃への)入り方もあるんだな、こういうプレーもできるんだ、と参考にして、実際取り入れてみる。パンサーズはクビアクが来てから、彼の素晴らしいプレーを見て、一緒にやっていく中で、特にそういう発想が強くなったのかもしれませんね。
少しずつ幅も増えて、パンサーズだけでなく日本代表でもセッターの関田(誠大・ジェイテクト)選手に「もっとトスを上げてほしい」と要求してきたので、今シーズンは攻撃面でも少し、存在感を示すことはできたかもしれませんが、世界を見ればまだまだ。ベスト8をかけて臨んだ世界選手権のフランス戦も、自分自身のプレーを振り返り、もっとああできたんじゃないか、こうすべきだったんじゃないか、という反省や課題が残りました。世界のミドルブロッカーと渡り合うためには、やらなければならないことばかりです。
振り返ればVリーグでのシーズン、日本代表でのシーズンは本当にあっという間なのですが、昨シーズンのVリーグ、僕らにとって最終戦となったファイナル3のサントリー戦のことは今でもはっきりと覚えています。とにかく勝たなければならない試合で、最初から全力で挑んだ結果、ファイナル3の初戦には勝つことができたけれど、レギュラーラウンドのアドバンテージを持つサントリーにゴールデンセットで勝つことができなかった。 負けたことも悔しかったですが、チームを勝たせてあげられなかったこと。キャプテンとなって、会社の方々や枚方市、京阪グループなどさまざまなサポートして下さる方々と顔を合わせ「今シーズンは優勝していい報告をしますので、ぜひ試合に来て下さい」と言う機会も増えた中、その約束を果たすことができなかった。たくさんの方々が支援し、応援して下さっているのに申し訳ない、ごめんなさい、という気持ちが溢れて涙が出ました。自分でもびっくりしましたし、周りからも「泣いていたでしょ」「いや、泣いていないよ」とごまかしましたが(笑)、あんな風に人前で泣いた経験はほとんどありません。今でも、あの時の感情ははっきり覚えていますね。 またすぐにVリーグが始まり、今シーズンは周りのチームを見ても西田(有志・ジェイテクト)選手や関田選手など、海外でプレーした選手が加わったチーム、各国ナショナルチームの中心となる選手が加入するチーム、監督が代わるチーム、全体的に新しく変わる印象が強いです。
その中でパンサーズは特別大きな選手も、絶対的エースと呼ばれるような選手もいないかもしれませんが、引き出しの多さやディフェンス、細かなプレーの質はどこにも負けない自信があります。レギュラーラウンドの戦いも、昨シーズン以上に熾烈だと思いますが、常に目の前の1試合1試合に集中して、全力を出すこと。たとえそこで負けたとしても、すぐ切り替えて次に挑む。上からバーンと打って簡単に決めるのではなく、エンターテイメント性の高い、見ていて面白いプレーを、パンサーズの楽しいバレーをたくさんの方々に見ていただきたいです。

山内選手のサイン