パナソニック スポーツ

2020-10-07

Meet Athletes

001. 稲垣啓太選手 × 清水邦広選手

写真:稲垣啓太選手 × 清水邦広選手

Panasonic Sports サイトリニューアル記念のスペシャル企画として、パナソニック ワイルドナイツ稲垣啓太選手とパナソニック パンサーズ清水邦広選手とのビッグ対談が実現しました。競技の壁を越え、同じアスリートとしての共感が多く生まれた対談となりました。スーパースターでありながらおちゃめな素顔を垣間見せつつ、プロのアスリートの心構え、熱い思いが強烈に伝わる驚きの発言も満載です。どうぞ、お楽しみください。

稲垣啓太選手
関東学院大学から2013年パナソニック ワイルドナイツに入団。今シーズンは8年目。ポジションはプロップ。2014年に日本代表初キャップを獲得。
2019年、日本開催のワールドカップで代表初トライ。「笑わない男」として日本で知らない人はいないほどの知名度を誇る。

清水邦広選手
東海大学からパナソニック パンサーズに2009年に入団。今シーズンは12 年目。
ポジションはオポジット。2007年から日本代表に選出。2008年の北京オリンピックに出場。大怪我を乗り越えて日本代表として2019年シーズンも活躍。
来年の東京オリンピック日本代表入りを目指す。


ラグビー、バレーボールとスポーツのジャンルは違っても、同じパナソニックという名前を背負ったアスリート二人が語る、スポーツの面白さ、厳しさ、楽しさをぶっちゃけトーク!さあ、スタートです。

清水緊張しますね。
というか初めましてですよね。

稲垣はい、初めましてですね。
緊張しますけど、この初めましてのやりとりが初々しいなぁ。
出だし好調の予感がしますね。

最近のトレーニングやコンディショニング

稲垣いま、コロナ禍でちょっと活動がなかなか難しいと思いますが、最近のトレーニングやコンディショニングとかどうですか?どんな感じで過ごされていましたか?

清水そうですね。
緊急事態宣言が出されている時は、やはりバレーボールはチームスポーツなのでなかなか思うように練習はできませんでした。しかしその分、ウェイトトレーニング重視でやっていました。
稲垣選手の方は、どんな感じでしたか?

稲垣そもそもラグビーは人との接触がメインのコンタクトスポーツですから、まあ練習はできないですよね。
自宅でできるコアトレーニングや、ウェイトトレーニングに時間を割いていました。
でもワールドカップ後、怪我とかを抱えていたので、そういった意味で、緊急事態宣言のときはケアもしながらトレーニングもできるという、いい時間でしたね。
けっこう、プラスに捉えられる時間が多く持てて僕的にはよかったですね。
清水選手もそういう時間が大切だったりしませんか。

清水ほんとそうですね。
ラグビーのトレーニングって、コンタクトスポーツだから相撲のぶつかり稽古みたいに、めちゃくちゃトレーニングするんじゃないですか?
バレーボールはジャンプをするスポーツなので、ジャンプトレーニングをします。1m20cmのBOXの上にジャンプして上がるトレーニングなんですがラグビーの選手はしないですよね。

写真:トレーニング中の清水選手

稲垣そうですね、BOXジャンプの練習を実は一昨日しました(笑)。

清水えっ〜ラグビー選手もジャンプ練習をするんですか!(驚き)

稲垣実はBOXジャンプするんですよ(ニヤッ)

清水えーそうなんですね(驚き)

稲垣でも僕はさすがに1m20cmは飛べないですけど。
せいぜい1m5cmですね。
BOXジャンプやった経験者ならわかると思うけど、スネが削れました。

清水飛べなくて!?

稲垣そう、飛べなくてスネがもう・・・痛くて!

清水ありますよね〜、結構。
えっと、ラグビーならではのトレーニングってありますか?

稲垣ラグビーはさきほど言ったようにコンタクトスポーツなので、首を鍛えるんですよ。相手にぶつかるときや、タックルしたとき、僕でいうとスクラムを組むときなんかに、首にすごい負荷がかかるんです。
スクラムを組んだときなんて、首に1.5トンの負荷がかかるって言われているので、鍛えてないと折れてしまいますから。
首を鍛えることがケガの防止になりますし。

写真:稲垣選手

清水だからラグビー選手は、みんな首が太いのかぁ。

稲垣ラグビー選手って、ほんとラグビー選手だなって体型ですよね。
みんな似たような体になってくる。

清水確かに!すごいですね。

意外、稲垣選手のバレーボール愛!

稲垣いやでも、バレーボールのジャンプ力はすごいですよ!
実は僕バレーボール大好きなんですよ。

清水えーっ、そうなんですか!

稲垣両親が昔バレーボールをやっていまして、たぶん地元のクラブチームだと思うのですが、小さい頃よく連れていってもらって、バレーボールをやってました。

清水えーっ、バレーボールを知ってるんですね。

稲垣ほんとに好きで、そのときは親父がスパイクしたボールが僕の顔面を捉えてブチ切れるということが起こったんです。しかしそのあと、手加減されてさらにブチ切れました。

清水あはははは。

写真:清水選手

清水しかしすごいですね、バレーボールやってたんや?
稲垣さんのご両親はいつ頃までやってらしたのですか。

稲垣たぶん高校までやっていたのかな。
僕の小さい頃の記憶なかには、両親がバレーボールをやっていたという、印象が強く残っていますね。
バレーボールの試合があるときなんか、家族全員がテレビで観てましたからね。
だから僕は、清水さんのこと、かっこいい選手だなーと思っていたんですよ。

清水ありがとうございます(ちょっと照れ気味で)

稲垣今日はドキドキしています❤︎(笑)

清水僕の方がドキドキしていますよ〜❤︎(笑)

これが聞きたかった「笑わない男」の秘密

清水稲垣選手は、なんで笑わないのですか?
僕はすぐ笑っちゃいますね、どっちかというと。
だから、疲れないのかなーとか、本心で笑うことができないのかなーとか、そのあたりを聞きたくて。

稲垣あのですね・・・。
極論でいうと、事故なんです。

写真:稲垣選手

清水ええええ〜っ、事故!(大笑)

稲垣ことの始まりはですね、僕は写真が得意じゃなくて、カメラを向けられるとなんか身構えしまうのです。毎回身構えていたら、そこをクローズアップされてしまい、まあ、「笑わない男」という異名がついたという訳です。
でもまあ、日常生活でもそこまでゲラゲラ笑うかというと、まあないですね。
試合とか練習中は特にないですし。

後輩に怖がられる二人

清水あぁ、それじゃ、めちゃくちゃ怖い存在ですねー。

稲垣いやほんと、後輩からしたら、とっつき難いですよね。

清水僕も正直、怖がられるんですよ。
すごく怖いイメージがついていて、プラス人見知りなので、後輩たちとは1年間ぐらい喋れなかったりしますね。
パンサーズの後輩たちも1年経つ位まで、僕とあまり話さないですね。それぐらい距離があるというか・・・。

稲垣けっこうな距離ありそうですねー(笑)
ところで、僕は今年30歳で、清水さんは?

清水34歳です。

稲垣清水さんは、仲良くなると人によくいじられるそうですね。

清水はい、いじられますね。
あと、言い間違いがすごく多くて、なので、そこをよく突っ込まれるというか・・・。
今日も少しでも言い間違いがあったら、即突っ込んでください。

稲垣言い間違い、ちょっと面白そうですねー。
いままでの経験だと、どうですか、これ間違えてやっちゃったー的なことはありました?

清水そうですね。
例えば、ずいぶん昔ですけど、QRコードってあるじゃないですか。
それを僕は「URコードを読み取って」、とずっと言っていて、後輩に全然伝わらなくて。
「清水さん、何言っているのですか」って後輩に指摘されて初めて気づいたりして。

稲垣それで通しておきましょう!
いや、それちょっとわかりますよ。
ホームページのアドレスのURLとコードが混ざったら、ほらURコードでしょ。いや〜オッケーですよ。

清水ありがとうございます!

それぞれのオフの過ごし方

稲垣ところで、清水選手はオフとかどう過ごしてますか?
インドア、アウトドアいろいろあると思いますが。

清水僕は夜ふかしが好きで、オフの前夜におばけの動画とか、心霊動画とかを借りてきて観るというのが大好きなんです。それを見ながら真夜中に一人、これは本物か、偽物かを一晩中検証したりしています。
これめちゃくちゃ怖いな、というのもあるんですけど、でも作り物みたいだなー、というのを考えながら模索してますね。
稲垣選手の休日はどんな過ごし方ですか?

稲垣僕はけっこう一人で外出するのが好きなんです。
一人の時間が好きですね。
僕、朝が早くて、休日でも朝は6時とか7時には起床します。
起きると、ぱぱっと身支度して、知り合いのカフェにお邪魔して、コーヒーを飲みながらぼぉーっとしてますね。

清水(すごく感心して)へえー。

稲垣いや、ほんと、変な人と思われていますよね。
こんなのが一人でコーヒーですよ。
でも、知り合いがやっている馴染みの店なので、仲間はここに僕がいると知っているから、みんなが集まってくるんですよね。
それが、僕にとってすごくいい時間なんですけど。
いまはね、新型コロナウイルス等の影響でなかなかそういうことも難しいから、家でコーヒーを一人で入れて飲んでいます。

清水稲垣さんがラテアートに挑戦していると噂で聞きましたけど。

稲垣僕、エスプレッソマシンを持っているんですよ。
それをおもちゃのようにいじくって、コーヒーを入れてるんですけど。
これがまた、楽しいですよね。
ぜひ、清水さんも、いつか飲みに来てくださいよ。

写真:稲垣選手のラテアート

清水ぜひ!行きます。
僕もコーヒー大好きなので。
実は、僕、昼間もけっこう遊びに行くタイプなんです。
いまの時期は難しいけど、以前は友達と遊園地に行ったりとか。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンとかは好きでよく行きます。

稲垣僕、人生で1回しかそういうところには行ったことがないですね。

清水ええええええ〜。
それって人生損してますよぉ!

稲垣それも唯一行ったのが中学生の頃で、学ラン着て、坊主頭で、開園と同時に東京ディズニーランドに駆け込んで、幼稚園児とかを全速力で抜き去って、ファストパスをゲットしました。

清水乗り物とか怖い方ですか。
ジェットコースターとか乗ってみたいなぁ、とかありますか?

稲垣僕が得意か得意じゃないかというよりも、隣に座る人がかわいそうかなと思ってしまって・・・。ああいう絶叫系って安全装置のベルトみたいのが、降りてくるじゃないですか、ガッチャンみたいな。一人ひとりのベルトならまだいいんですけど、僕は中1から今くらいの体型で、3人掛けにみんなと一緒に座ると、隣の小さな友達は、僕の体のところでベルトが固定されるから、ゆるゆるなんですよ。このまま走り出したら、ぶっ飛んでしまうんじゃないかと思って・・・
だから僕はできるだけぎゅうぎゅうに安全装置のベルトを自分の体に押し込むわけです、すると足が鬱血しそうになってもう大変で!

写真:清水選手

清水あははは(大笑)
ああ、それからあまり乗らないということですか。

稲垣はい、まわりに気を使うから。

清水僕、大阪なんでユニバーサル・スタジオ・ジャパンはよく行くんですが、ディズニーランドは東京なんで行く機会がなくて・・・

稲垣じゃ、僕が東京ディズニーランドを案内しますよ!

清水あっ、じゃ僕はユニバーサル・スタジオ・ジャパンを案内します!
一緒にいきましょう。

稲垣ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで僕ら二人が歩いていたら、なんか面白いことになりそうですね。

清水なりますね!インスタ映えスポットもたくさんありますから。
二人で写真撮ったりして!
193cmの僕と183cmの稲垣さんと並んで歩くんですよ!

稲垣これは熱いデートになりそうですよ。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを熱い、一番ホットな街にしましょう。

男たるもの、デートの心得

清水あの、ところで稲垣さんはデートとかはしないのですか?
まぁ、デートというか、そういうのがあるのかなぁ〜と。
オフの過ごし方として・・・。

稲垣いや、男たるもの女性をエスコートするのは務めですから(キッパリ)
いや、そりゃデートするとなったら、デートプラン考えますよ。

写真:稲垣選手

清水やっぱり、アウトドアですか。

稲垣そうですね、アウトドアなことが多いかな。
遊園地とかはいきませんよ。
一緒にコーヒーを飲んだりとか。
僕、けっこう、服とかジュエリーとか好きなので、そういうのを見に行ったりとか。
アウトドアなんですが、ゆったりした時間を一緒に過ごせたらなぁと思いますね。
清水さんは女性に対してどういう感じでエスコートしていきますか?

清水僕はですね、やっぱり遊園地に行っちゃいますね、すぐ。

稲垣遊園地に行けば間違いないと思ってませんか!

より高いパフォーマンスを支える食事法と体重管理

稲垣日常生活では僕らアスリートだから食生活とかすごい気にするじゃないですか。食べるもの、自分の体に入れるもの、サプリメントとか。清水さんはどうですか?
僕は食事はすごく気を使いますね。サプリメントもたくさん摂りますし。
でもやっぱりそれは、選手としてずっと高いパフォーマンスを出したいから、栄養にもこだっているわけで。
「わ〜面倒くさいね」ってことも普通の人から思われたりもするんですけど、清水さんは食事とかに気を使う方ですか?

清水僕も食事には気を使いますね。
トレーニング期のときは、しっかりタンパク質のある食事を摂ったり、試合期には糖質を抑えて、炭水化物を多めに摂ったりします。

写真:清水選手 料理風景

稲垣やっぱり似てますね。
僕もトレーニング期はタンパク質を多めに摂取するようにします。
試合の周期に入ると、前日くらいから炭水化物で糖質を少しずつ入れていって貯め込むようなイメージですね。
アスリートのなかでも、とくにラクビー選手って「めちゃめちゃご飯たべるんでしょ」と思われがちなんですけど。

清水あっ、いま僕も聞こうと思っていました。
めちゃくちゃ食べるんじゃないですかって。

稲垣もちろん一般の方よりは、たくさん食べますよ。
僕は1日の食事の回数を多くしてるんです。
朝、昼、晩の三食は当然摂りますが、それプラス補食、間食ですね。
朝食前、朝食と昼食の間に1回。
昼食と夕食の間に1回、そして夕食。
多いときは寝る前とか。体重はいま118キロあるんですけど。
試合が続くと体重を維持するのが難しくて。
だから、そういうときは寝る前とかにも補食としてプロテインスムージーとかを入れたりしますね。

清水へぇ〜、すごいっすね。
僕は体重が増えやすい体質で、増えるとジャンプに影響してしまうから、どちらかというと太らないように、食生活は気を使っています。

稲垣なるほど〜、僕は逆に体重が増えない体質なんです。
なんか、めちゃくちゃ食べる時期を経験してから、いまの食生活で落ち着てきたのですが、体重を増やすということがすごく難しいんですよね。
トレーニングとの比率もありますが、トレーニング、食事、試合と重ねていくと、体重維持が全くできない時期があって、これはどうにかしないといけないという思いもあって、栄養やサプリメントのことを勉強し始めたんです。体重がすぐ増える人がうらやましいですね。

清水稲垣さん的には、何キロぐらいまで落ちるとヤバイと感じるのですか?
いま118キロじゃないですか。

稲垣115キロがひとつの目処ですね。
でも夏場の試合って、ひと試合で3、4キロってざらに落ちるんですよ。

清水えっ、ひと試合で!(驚)

稲垣まあ、ほとんどは汗、水分ですけど。
あせりますよね、ひと試合で4キロ。
そのときは、もう寒気して手足カタカタ震えていますね。
脱水みたいな感じですかね。
だから、試合後のサプリメントとか、すぐに口に入れるものとかは、すごく気を使いますね。

清水じゃあ、お菓子とかは食べたりはしませんか?

稲垣お菓子は食べませんね。僕は甘いものが好きじゃなくて。
小さい頃は甘いものとかも食べていました。
大学のときに急性胃腸炎みたいなのになって、そこから甘いものを口にすると気分が悪くなるようになってしまいました。
まあアスリートとしては、よかったのかなと思いますけど、甘いもので息抜きしている選手もよく見かけるので、ちょっと僕は息抜きの仕方を忘れちゃったかなと。

清水僕は大好きなんですよ、甘いものが!
パフェとかもそうですし、チョコレートやケーキもそうですし・・・。
甘いものは全般に好きなので、当然試合期には食べないようにしてますけど、オフのときとかは、息抜きで食べたりしていますね。

稲垣じゃ今度、僕の地元の果物を送りますよ。
チームメイトと一緒に食べてください。

清水ありがとうございます!

トップアスリートならではの、厳しい怪我からの復帰

稲垣食事とか体のメンテは、怪我をしたりすると、さらに気を使うようになるかと思うのですが、そのあたり清水選手はどうですか?
これまで大きな怪我だったり挫折であったり、またその克服方法とかを先輩の清水さんにいろいろお聞きしたかったんですよね。

清水僕は怪我が多いですね。
ジャンプの着地に失敗して、前十字靭帯断絶と内側靭帯断絶、半月板損傷と軟骨損傷という4ついっぺんに大きな怪我をして、膝が曲がってしまいました。

稲垣なかなかないですよね、4つもいっぺんにというのは。

清水とくにバレー選手はないですね、聞いたことがないです。
そのときのことはほんとに、ジャンプして着地した瞬間に誰かに蹴られたんじゃないかと思うほどの衝撃で、まわりの選手を疑いましたね。
足を見たら違う方向に曲がっていて、診断を受けたんですが、もうリハビリをする気持ちにもなれませんでしたから、正直、引退しようと思っていたほどなんです。でも、ほんとに周りのたくさんの人に助けられて、とくにチームメイトに支えられたことで、もう一度這い上がることができました。
手術も4回して、入院生活も4ヶ月したんですが、まわりの人たちにほんとに助けられて復活することができました。

写真:清水選手 リハビリ風景

稲垣いや、あまりに深すぎて、僕がこれから話そうとしたことを見失ってしまいました。

清水でもラグビー選手ってコンタクトスポーツだからバレー選手より絶対に怪我は多いと思うんですけど。何か怪我とかされたことありますか?

稲垣もちろんどんなに気をつけていても、一発でいってしまうというのはラグビーの世界でありますね。そのなかでも僕は、あまり怪我をしなというので通っているんですよ。

清水へえ〜(驚く)

稲垣両肘の手術とかはしてますが、クリーニングの手術なので何かが折れた切れたということはでないんですよ。

清水稲垣さん、これまで骨折したことはないのですか?

稲垣骨折は後から判明したというのが多いですね。
最近わかったんですけど、ここ何年かでケツの筋肉が張ってくるなと思ったら、中学の頃、野球で開脚したときに尾骶骨(びていこつ)が折れていたというのが判明して。レントゲンとCTで撮ったら、異様な形になっていましたね。
あっ、これが張らせている原因かと、でもまったく気づかなかったんです。
まあ、しいて言うなら、額を切ったときぐらいですかね。
ここ(右の額を指して)、もうだいぶ傷は消えてきたのですが、傷があるのがわかりますかね、実は50針縫ってるんです。

写真:稲垣選手 50針縫うケガ

試合中、相手と接触したかと思いきや、実は味方にぶつかってしまって、ここがパックリ割れたんです。
顔を切ったときって、あまりわからないんですけど「わぁ、あったかいな」と思ったら、血だったというのがよくあります。
でもこのときはやった瞬間、まぶたが落ちて、手をかざそうとしたら噴水のように血が飛び出てきたので「こんなことあるんだ」と思いながら次のプレイに走っていってました。

清水そんなときって痛いとかないんですか?

稲垣ないんですよねこれが。でもこの傷のせいで、神経も切れてしまったみたいで、僕は右頭皮の感覚がほぼありません。
美容室にいって、シャンプーとかしてもらうと気持ちいいじゃないですか。痒いところないですかと言われても、わかんないですぅって、半分感覚がぶっ飛んでしまっていて、なんていうと、そんなこと美容師さんは知らないじゃないですか、だから何を言ってるんだ、と思われてたみたいですね。

清水そのめちゃめちゃ切れたときって、命の危険を感じなかったのですか?

稲垣いや、そこまでは感じなかったですね。もう、すごく血がでているのですけど、ラグビーってプレイが止まらないんですよ。

清水えっ!そうなんですか(驚)

稲垣そのプレイが一旦切れるまでは、継続されるので、僕が血を流してやばかろうが、プレイは継続しているんですね。僕がそこで止まったら、ラグビーは15人対15人の競技なので、15人対14人になると凄いアドバンテージが生まれるわけですよ。そう考えると血まみれでも走りますよね。あれは、トラウマになるくらい血出ていたんですけど。けっこう、ファンの人からのちのち、あれは酷かったと連絡がきましたね。

清水超人ですね(驚き)

スポーツをやっていて一番楽しいと思える瞬間

稲垣でもそうやって、怪我とか乗り越えてきて、今年僕も30歳だし、清水さんも34歳。チームのなかでは二人ともベテランのポジションだと思うんですけど、トップレベルを維持するために、いままでしてきた苦労だったり、どんな思いをしてトレーニングしているのかとかを、僕は個人的に聞きたいですね。

清水苦労ですか。
うーん、そうですね、やっぱり勝つ瞬間を味わうために、苦労があって、辛い時期もあるわけで、ほんとに勝つために辛い練習や辛い時期を乗り越えていますね。だから、結果としてあれが苦労だったなとは感じなくて。
そうですね、逆に苦労とかあります?

稲垣いやー、ないですね!
清水さんの考えに似ているのかなと。
なんのためにスポーツをやっているかと言うと、それって勝つためなんですよ。
なんのためにって、というともちろん、いろんな目的もあるわけですけど。例えばスポーツを通してメッセージを伝えたいとかもあるでしょうが、スポーツをやっていて一番楽しいと思える瞬間は、勝ったときですよね。

清水そうですよね、それは言えます。

写真:稲垣選手と清水選手

稲垣勝たなきゃ、負けたときなんて最悪な気分で、グランドやフィールドを去るわけですから、なんか結果を残していかないとファンの方にも何かしら返せないでしょうし。結果がスポーツの世界では重要視されるというのは、僕も理解しているので、ということは勝つためにやっていますよね。
一番気持ちいいし、いままでやってきたことが報われる。

清水勝つことがあれば、辛いこと、苦労したことは苦じゃなくなるので、僕は勝つことがあるから、苦労は記憶に残らないですね。

稲垣やっぱり、似ていますね、そのあたりの考えが!

悔しさを原動力にして、世界の壁をぶっ壊す!

清水バレーなら背が高いとか、ラグビーなら分厚い、重い人たちと戦うわけですけど、世界の壁って必ずしも毎回勝てるわけでもないですよね。稲垣選手は、それをどうやって乗り越えて喜びに変えていきますか。

稲垣もちろん団体競技ですから、仲間とともに乗り越えるということが多くの場面でありますね。そもそも、苦しいから練習をやらないとか、逃げ出したいという感覚で僕はラクビーをやっていないので、自分を鍛えて当たり前、勝つためだったらそんなことは普通だと思っています。
それが仲間がいると、何倍にもその効果があらわれます。15人のスポーツですが、個人の集合体ですから、それぞれの能力が成長しないと15人集まったときに発揮はされないでしょうし、だから僕はラグビー選手全員がライバルだと思っています。切磋琢磨しながら頑張れているというのが、自分の原動力のひとつかなと思いますね。

写真:稲垣選手 練習風景

清水僕もほんと、世界の壁というのは感じますね。だから、感じたときにどうするのかという打開策があるのなら、すでに世界で1位になっているわけですよ。それがないからこそ、いまもがいているわけで、それは日本だけでなく、現在世界一位のブラジル以外の国の選全員がもがいているわけです。そのなかで僕たちがやっていかないといけないのは、日本人ってやはり身長が世界最小なわけで、じゃあ、そのなかでどうするのかというのを、見出して、見出して、新たな戦法で攻略して世界と戦っていかないといけない。日本特有の攻撃スタイルをこれからも考えていけば、少しずつ打開策を見出せるのではないかと思います。
そういう意味でまだまだ、もがき続けるんだろうと思いますね。

写真:清水選手 トレーニング

稲垣でも世界に出てみると、いままで通っていた。
常識が壊される瞬間ってありますよね。

清水はい、ほんとそれはありますね。
僕は二度オリンピックの出場権を逃しているんですけど、その時というのは試合で戦って実力がなくて負けてしまい、覆されたときってほんとうに絶望感を感じました。次の試合もあるんですけど、ご飯も喉を通らない。でも次の日に試合があるから食べないといけない。無理に食べ物を胃に流し込むんですが、全部もどしてしまったり、頭の中に悪いイメージが残っていて、ベッドに入っても眠れなくて・・・
僕はだいたい福澤選手と同室なんですけど、僕がもどしてしまったあと、彼もトイレに駆け込んだりと、お互い寝ていてもプレッシャーに打ち負かされそうで、でも試合は待ってくれる訳でもなく、これを乗り越えないと日本は勝てないし、成長も見えてこないから必死でした。
いま僕は34歳ですが、まだまだ伸びしろはあると思って練習に取り組んでいます。世界でも通用するプレイヤーになるまではやめないで頑張っていきたいと思っています。
稲垣選手は何歳ぐらいまで選手をやりたいですか?

稲垣いや僕はもう、決めてないですね。
やるだけやって、散る。自分が選んだ道で、しかもラグビーというスポーツを職業にした以上、できるところまでやらなきゃ、もったいないじゃないですか。

清水もったいないですね、僕も同じ考えです。それと僕は、競技人生の中で怪我がめちゃくちゃ多かった。3年前の前十字だけでなく、怪我して3ヶ月休んだり、半年休んだりとか、リハビリの時間を合わせると、たぶん3年くらいバレーボールやってない時間になるので、みんなが引退するよりも3年は意地でもやりたいっすね。

稲垣いや、いきましょう!いけるところまで。年齢なんてただの数字ですから。

清水嬉しいなぁ。

写真:練習風景

稲垣ところで、また、世界の話にもどっちゃうのですが、僕は日本代表として世界と戦ったときに、あの8人対8人でやるスクラムで世界との壁を感じたんです。
やはり海外の選手はもっと体も大きいですし、合計体重でいうと8人で1トンを超えてくるチームなんてざらにあります。
そういったチームに対して、そこまで体重が重くない日本人がどうやって対応するのか。いろんなプランを作ってもらい、提示してもらって、試していったんですけど、なかなかうまくは回らないことも多々あって。全否定されるかのような戦いもありました。でもすごい、腹立たしいくらいそのチームに勝てないわけですから、それは死ぬ気で解決法を探しますよね。
解決法を探して、探して、また試して、試して、そうやって少しずつ積み重ねていったものが、いまの自分のスタイルなんです。
やっと昨年のワールドカップで、日本のチームがスクラムで戦うことができるという証明ができたと思うのですが、でもやはり、世界のトップとの差は感じます。とくに南アフリカに準々決勝で負けたのは、僕はスクラムが原因だと思っています。
やはり責任を感じますし、同時に悔しさというのが消えることはないですね。
もっともっと模索して、相手を倒せるまでやり続けないといけない。
終わりはないですよね、極論、突き詰めていけるわけだし。

清水その悔しさがあるからこそ、頑張れますよね。

稲垣そうですよね、そこ忘れたらいけないですよね。
どんなことにも、これはいえることですけど、スポーツ以外でも日常生活でも。
嫌だから、辛いから逃げ出すんじゃなくて、逆に悔しいと思う気持ちがあればやってやろうと思う気持ちに僕はなるんですけどね。
だって、やられっぱなしじゃ、恥ずかしいじゃないですか。

清水今日は本当に稲垣選手と話ができてよかったなぁ。
もうそろそろ終わりみたいですよ。
ファンのみなさんへメッセージをとカンペがでていますね。

ファンのみなさまへ

清水じゃあ、僕からいきますね。
10月17日から2020-21V.LEAGUE DIVISION1MENが開幕します。
みなさん、ぜひ観にきてくださいね。僕ももっともっとレベルが高いところで、試合をしていきたいと思いますし、みなさんに感動を与えるようなプレイをしていきたいと思います。
そして、ラグビーを観に行きたいと思います!

稲垣おっ、ありがとうございます!
僕もバレーボールを観に行きます。
ラグビーは来年の1月、ジャパンラグビートップリーグ2021が開幕します。まだまだ時間がありますから、先に開幕するバレーボールを僕は応援したいと思います。

清水ぜひ、会場に来ていただいて、始球式がありますので、そこでサーブなんかを打ってもらえるといいなぁ。

稲垣おもしろそう。じゃ、盛大にトライしようかな。

清水あはははは、サーブじゃなくて、トライしちゃってください!

稲垣肘がずりむけるくらい、トライしようかなー。最後、自分でモップもかけるんで!
実は僕、Vリーグの試合、一人でチケット買って観に行くんです。

清水そうなんですか!(驚)うれしいな!
僕もラグビーを観てみたいですね、やっぱり、生で観るのって全く迫力が違うからぜひいきたいですね。

稲垣ぜひ、来てください!
体がぶつかり合うって、こんな音がするのっていうぐらいの迫力です。
僕はバレーボールを生で観ていて、あの迫力はすごいなと思いますね。
スパイクが床につき刺さる音なんか本当にすごいですから。

清水僕は稲垣選手の真横にスパイクを打つこともできますから!(笑)

稲垣そのときは僕、顔面で受け止めにいきますから!

清水あはははは(爆)
ほんと稲垣選手と僕、考え方も似ているし、応援したいなと思いました。
というか僕は友達になって欲しいなぁ。

稲垣友達になりましょう!

清水友達になりましょう。やっぱりデートしないとな!

稲垣それじゃ、まずはユニバーサル・スタジオ・ジャパンから。

清水時間をかけて仲良くなって、いろんなことを発信できればいいなと思います。

稲垣ぜひ!よろしくお願いします!

写真:二人の正面写真 対談動画より