大学4年生春のリーグ戦、私は全く調子が上がらず、開幕時に3番だった打順は6番にまで下がり、歯痒い日々が続いていました。打順が下がること自体、初めてで悔しく、「この試合で打って絶対に元の3番に戻る!」。そう自分に言い聞かせて大阪学院大学との試合に臨んだものの、正直、調子が戻る確信などありませんでした。
1打席目、いきなりチャンスが巡ってきました。場面は1アウト満塁。私は、「多分、モノにできないだろうな…」と、弱気な考えに支配されながら打席に入りました。その時ベンチにいたチームメイトの声が聞こえてきました。
「お前なら絶対打てる!」
その瞬間、私は目覚めました。「自分のためではなく、チームのために打つ!」。こう決めて全部の球に必死に食らいつくんだと決意しました。直ぐに2ストライクに追い込まれましたが、絶対に三振はしない! 意地でもバットに当てようと思った3球目。とらえた打球はレフトオーバーのツーベースヒット。2人のランナーを生還させました。
続く2打席目。今度はノーアウト満塁のチャンスでした。前打席でタイムリーヒットを放ち、少し気が楽になったこともあって初球を狙ったところ、三塁線を破るツーベースヒット。またも2点を叩き出しました。
3打席目もまたまたチャンス。2アウト1塁、3塁。せめて3塁ランナーだけでも返そうと思い打席に入り、初球を打つと、ライト前のタイムリーヒット。
2アウトランナーなしで回ってきた4打席目こそ3球三振しましたが、4打席を終えて、5打点を挙げる快調さ。自分では、さらに集中力が増していく感覚がありました。
5打席目、またしてもチャンスの場面で私に打席が回ってきました。
1アウト満塁、しかし2球で追い込まれました。
その時、突然タイムがかかり監督が私の元に走ってきました。「1試合最多打点がかかっている打席だぞ」と監督。私は意味が分かりませんでした。「ランナーを全員返したら連盟記録だ!」と重ねて言われて、ようやく今置かれている状況を理解しました。
私は連盟新記録を樹立しようと決めました。ランナーを全員返すには長打必要です。「大きい当たり狙いでいってやろう」と打席では考えていました。
カウント2ストライクから迎えた3球目。思い切り振り抜いた打球は右中間へ。フェンスまで届いた打球に相手野手の打球処理がもたついている間、走者一掃の3点タイムリースリーベースヒット。あれほど調子を落としていた私が、連盟新記録となる1試合8打点を樹立した瞬間。ベンチのチームメイトからは割れんばかりの歓声が聞こえてきました。
「お前なら絶対打てる!」と私を奮い立たせ、何度もチャンスの場をつくってくれたチームメイト。私を不調のどん底から救ってくれたのは、間違いなく彼らです。今も思い出す度、あの仲間の支えに対して、感謝の気持ちがわいてきます。
- 植田 勝至
- ・所属:インダストリアルソリューションズ社 人事センター 人事戦略部
・球歴:興國高-大阪商業大
・プチ情報:今シーズンからなんと左打ちに転向!自慢の快足を活かした打撃にも注目! - ⇒ 詳しいプロフィールはこちら