2019年の都市対抗野球2次予選近畿大会、第6代表決定戦は、いつまでも私の記憶に残る試合です。
パナソニック野球部は、この第6代表決定戦に行くまでに1勝4敗と負けが続き、この試合に負ければ都市対抗本選に出られない、後の無い状況に追い込まれていました。
相手はミキハウス。
この予選大会で一度、完封負けを喫している相手でした。
当日は朝起きたときから緊張していました。
「絶対に本戦に出られる」「俺らなら出来る」と自分自身に何度も言い聞かせ、緊張を紛らわしながら球場に向かいました。球場に着いてスターティングメンバーが発表されると、私はベンチスタートでした。この予選、途中出場が多かった私はいつも通り、普段と変わらないウォーミングアップをして試合に備えました。
午前10時。いよいよ試合が始まりました。
1回表、パナソニックの攻撃は三者凡退に終わり、その裏ミキハウスに四球からチャンスを作られ、いきなり1点を先制されます。
3回表、パナソニックも四球からチャンスを作り、法兼がヒットでランナーを返し同点とします。
しかし、そこからは投手戦が続きスコアボードに0が続きます。
私は「接戦になれば必ず自分の出番が来る」と思い、イニングの合間には体を動かし、いつ交代を告げられても行けるよう万全の準備を心がけました。
そして8回表1アウト2塁で代打を告げられます。
「絶対に打つ」と心の中で何回も言い聞かせました。2ボールからの3球目甘い変化球を捉えきれずショートゴロ。続く打者も打ち取られ、結局この回もスコアボードには0が入ります。次の1点を取ったチームがそのまま勝つような雰囲気のまま試合は9回裏を終わり1-1の同点で延長戦に入りました。
延長10回表1アウトから松根がエラーで出塁し、続く法兼がヒットでつなぎ1アウト1・3塁で私に打席が回ってきました。
途中出場でチャンスが2回も回ってきたので「この試合のキーマンは俺だ。ここで決める!」との強い思いで打席に入りました。
ボール、ボールと続き3球目はストライク、4球目に1塁ランナーの法兼が盗塁を決め、投球はボール、3ボール1ストライクとなり、5球目真ん中付近の変化球がファウルとなったことで、フルカウントになりました。
監督のサインを見ると、(*)ギャンブルスタートのサインが出ました。
フルカウントになった時点でなにかサインが出ると心得ていたのでそれほど驚きもせず、しかもギャンブルスタートの練習はチームで繰り返し行っていたので自信もあり、しっかり頭を整理して打席に戻りました。
運命の6球目はアウトコース。私は思いっきり叩きつけました。
ボールは高く弾み、ピッチャーが捕ってホームに投げたときにはランナーはホームに生還。遠かった1点が入り、遂に勝ち越します。
その裏、ミキハウス打線を0点に抑え、無事に都市対抗本選出場を勝ち取りました。
パナソニック野球部に入って以来、私にとって精神的にも、肉体的にも1番きつかった試合でした。
(*):打者が打つ瞬間に打球方向や高さに関わらず3塁ランナーがスタートを切るプレー
- 諸永 秀幸
- ・所属:インダストリアルソリューションズ社 デバイスソリューション事業部
・球歴:鎮西高-東京農業大北海道オホーツク
・プチ情報:グローブにこだわりがあり、遠征の際は専用のケースで、必ず手持ちでグローブを持っていく。 - ⇒ 詳しいプロフィールはこちら