私が1番思い出に残っている試合は2010年、春の選抜高等学校野球大会の1回戦です。
対戦相手は富山県代表の高岡商業高校でした。数ある高校時代の試合の中でもなぜ、一番思い出に残っているかと言うと、恩師の高嶋先生(智辯和歌山高校、高嶋仁監督)の甲子園通算最多勝利数がかかった重要な試合だったからです。
前年、夏の甲子園の際には最多勝がかかった試合に敗れ、翌年へとお預けになってしまい、その時から私たちは「次のセンバツで決めてやるぞ!」という気持ちになっていました。
もちろん、監督の最多勝だけのために野球をしていたわけではありません。最多勝記録の更新が話題になっていた中で、変なプレッシャーがかかるので「早く勝って気持ちを楽にしよう」という考えが正直なところありました。
そして迎えた試合当日、私は先発ピッチャー! あ、実は高校時代はピッチャーをしていました。当時からあまり、あれこれ物事をよく考えない性格でしたが、その日は妙な緊張感がありました。しかも、試合当日は土砂降りの悪天候…。私自身も左肩を肉離れしていたなか強行出場での試合で、到底ベストコンディションとは言えない状況でした。
しかし、いざ試合が始まると味方が先制、中押し、ダメ押しと、たくさん点を取ってくれたので、非常に投げやすい展開で、私自身はのびのびとピッチングができました。結果は6対1での勝利。個人としても1失点完投勝利のピッチングで、最多勝記録更新に少し花を添えられたかなと思います。
試合が終わり、高嶋先生からは「ありがとうな。」の一言。しかし、最多勝利数更新(監督通算59勝)のウイニングボールを先生に手渡すと、今まで見た事のない照れ笑いをしていました。いつもは厳しい先生がグランドで初めて見せる表情だったので、鮮明に覚えています。
余談にはなりますが、それ以降も先生からは「土砂降りで良かったな。雨が降っていたおかげで変な力が抜けたやろ。」と、10年以上が経った今でも言い続けられていて、雨の日の試合では当時のことを思い出します。
- 藤井 健
- ・所属:インダストリアルソリューションズ社 人事センター メカトロニクス人事・総務部
・球歴:智辯和歌山高-奈良学園大
・プチ情報:使用する野球道具は派手な色を好み、練習用バットはド派手なピンク色! - ⇒ 詳しいプロフィールはこちら