当時、奈良学園大学のエースとして全日本大学野球選手権に出場していた私は、1回戦で1失点完投勝利、2回戦でも2失点完投勝利を挙げていました。準々決勝では登板が無かったもののチームは準決勝へと駒を進め、優勝も見える段階にまで来ていました。
準決勝の対戦相手は、強豪亜細亜大を破ってきた中京学院大で、この大会で最も勢いのあるチームと言っても過言ではないチームでした。
試合は初回から2点を先取されるも、すぐさまその裏に2点を取り返す展開に。4回に勝ち越しタイムリーが出ると、6回にも1点を追加し4-2としました。
この試合で先発投手の私は、8回までピンチを背負いながらも要所を締め、2失点で相手打線を抑え、残りは9回の1イニングを残すのみ。回を重ねるごとに調子を上げていた私は9回の先頭打者を三振に打ち取り、あと2人抑えると大学史上初の決勝進出だと意気込んでいました。
続く打者にはヒットを打たれ1アウト1塁。「まあ、一人ぐらい大丈夫」と、余裕があったのも束の間。そこから連打を浴び1アウト満塁のピンチを招いてしまい、内野ゴロの間に1点を返されて4-3に。
続く打者を敬遠し2アウト満塁としたところで、相手打者は4番の石坂。彼は非常に勝負強い打者で、3年生ながら全国上位チームの主軸として活躍している選手でした。
私は最後の力を振り絞り、この試合最速の145キロのストレートで2ストライクに追い込みました。
この状況で最後に私が勝負球に選んだボールは、フォークボールでした。
疲労からか握力が弱っていた手から放たれたボールは、無情にも真ん中付近へ…。
やはり強豪校の四番打者。失投を見逃してはくれず、打球はセンター前にポトリ。この一打が逆転の2点タイムリーとなり、そのまま敗戦となりました。
“後悔しない選択をしなければならない”
逆転タイムリーを打たれた場面、フォークボールという選択は間違いではなかったと思います。しかし、絶対の自信を持って投げた1球ではなかったのは確かでした。私が本当に自信を持っているボールは、ストレートです。究極の場面では自分のベストボールを信じてキャッチャーミットに投げ込む。厳しい場面だからこそ上手くかわそうとするのではなく、シンプルに真っ向勝負をすることが大事だと痛感させられました。
また、この経験は自分のストレートを見直すきっかけにもなりました。狙っても打てないストレートを目指してフォームの修正やトレーニングの見直しなどを行ったことが、今の投球スタイルにつながっています。
これからも自分が信じるボールを、自信を持って投げ込んでいきたいと思います。
- 鈴木 佳佑
- ・所属:グローバル調達社 集中購買センター 集中購買戦略企画部
・球歴:履正社高-奈良学園大
・プチ情報:OFFの日にもトレーニングは欠かさない!チーム随一の努力家 - ⇒ 詳しいプロフィールはこちら