テレワーク

2021.07.30

テレワークにはメリットとデメリットがある!双方を理解して活用しよう

テレワークにはメリットとデメリットがある!双方を理解して活用しよう

政府による働き方改革の推進に加え、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で急速に広まったのが、テレワークです。テレワークの普及により、日本のオフィスは大きな変貌を遂げようとしています。

今回は、テレワークを導入することで、どのようなメリットやデメリットがあるのか、企業側と従業員側それぞれの視点から、詳しく掘り下げていきます。さらに、テレワークを活用するためにはどのような取り組みを行うと良いのかも、併せて紹介します。

テレワークが広まった経緯を紹介

日本でテレワークが広まったのには、いくつかの要因が重なったことが挙げられます。それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。

地価の高騰で都心部のオフィス確保が困難に

1984年に、NECが東京吉祥寺にサテライトオフィスを開設しました。これは、日本のみならず、世界でも初のサテライトオフィスでした。

このサテライトオフィスは、コンピューターと通信を融合させるC&C(Computer&Communication)システムの実験を行うために設置されました。そのため、当時は普及に至ることはありませんでした。

1980年代の後半から1990年代の前半にかけて、日本ではバブル経済の最盛期でした。バブルの影響で、全国で地価が高騰したため、都心部に大規模なオフィスを構えることが難しかったのです。その影響で、サテライトオフィスの普及が進んでいきました。 ただ、テレワークのインフラ状況は充分とは言えなかったため、在宅勤務を行うことはできませんでした。

生産性の向上を目指した取り組みが増えていった

1998年以降、パソコンやインターネットが一般的に使われるようになり、テレワークが再び注目を集めるようになりました。当時のテレワークは、BPR(業務や組織の再構築)の一環として、効率的な働き方を模索していました。

その後バブルが崩壊し、企業に生産性が求められるようになったことから、サテライトオフィスを中心としたテレワークが広がり、在宅勤務の認識が高まり始めました。

2006年に、当時の安倍総理が所信表明演説を行った際、テレワーク人口の倍増を目指すと宣言しました。さらに、2010年までにテレワーカーを就業者人口の2割にするという目標を掲げたのです。しかし、2010年に国土交通省が行ったテレワーク人口実態調査によると、狭義でのテレワーカー率が16.5%であり、目標の2割には至りませんでした。

働き方改革の一つとして注目を浴びた

日本における労働力を確保するために、2018年に働き方改革関連法が成立し、翌2019年4月から順次施行が始まりました。この時に、重要な施策の一つとして、テレワークが大きな注目を集めました。

テレワークの導入による効果は大きいものの、ツールの導入やルールの策定など課題も多く、本格的な稼働までには時間がかかります。そのため、導入に慎重な姿勢を見せる企業も多く見られました。

新型コロナウイルスで広がりが急加速

2020年に猛威を振るい出した新型コロナウイルスの感染拡大は、テレワークの導入を推し進める大きな要因となりました。出勤人数の削減と人との接触を防ぐ目的で、急速にテレワークの導入を行った企業も多く、戸惑いながらも手探りでテレワークを進めた人も多かったと思います。

パナソニックEWネットワ―クスの「意識調査レポート2021」によると、新型コロナウイルスが収束した後もリモートワークの利用は変わらないと思うと回答している人が、実に4割を超えています。テレワークは、時間や場所を有効に活用できる働き方として、今後も継続する人が多いと予想されています。

参考:「コロナ禍に求められるオフィスとは?意識調査レポート2021」資料ダウンロード

テレワーク導入における企業側のメリットやデメリットとは

テレワークが広まった経緯を確認できたところで、次はテレワーク導入によるメリット・デメリットを見てみましょう。まず、企業側の視点から解説します。

メリット:生産性や企業イメージの向上

テレワークの導入により、毎朝通勤のために満員電車に乗る必要がなくなります。今まで通勤時間に充てていた時間を、他のことに費やせるようになり、時間にゆとりができることで生活の質の向上につながります。

また、家庭などの事情により、外で働けない場合でも、テレワークなら業務が可能だという人もいます。これにより、多様な働き方ができる企業だという印象を与え、企業イメージの向上にもつなげられるでしょう。

メリット:BCP対策への取り組み強化

BCPとは、「Business Continuity Plan」の略であり、事故や災害時などに事業を継続させるための計画をさします。

中小企業庁が定めている「中小企業BCP策定運用指針」の中でも、次のように定義しています。

「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと」
(出典:中小企業BCP策定運用指針

また、2009年に制定された「新型インフルエンザ対策ガイドライン」の中で、在宅勤務(テレワーク)はBCP対策の一つとして、はっきりと取り上げられています。これらのことから、テレワークを積極的に活用することで、新型コロナウイルスの感染拡大を始め地震や台風などの自然災害やテロなどの非常事態が発生しても、オフィス以外で働くことで企業の事業が継続可能となるのです。

メリット:離職率低下につなげられる

家庭の事情で仕事が続けられないと考えていた従業員も、テレワークの導入により仕事の継続ができる可能性が高まります。これにより、従業員の離職を防ぎ、優秀な人材の確保につなげることができると考えられます。

デメリット:勤怠管理が困難になる

テレワークは、オフィスでの勤務とは異なり、従業員が仕事をしている風景をこまめに確認することができません。出退勤や在籍中・離席中などの把握もしづらいため、勤怠管理が難しくなってしまいます。

遠隔でのマネジメントも大変困難であり、長時間労働になっていても指摘することが困難です。

デメリット:万全なセキュリティ対策が必要

テレワークでは、本来企業の中でのみ扱う情報を、企業の外に持ち出して取り扱うことになります。そのため、企業が保有する個人情報や機密情報は、厳重に扱わなくてはなりません。

認証システムの導入や、従業員のみが情報を操作できるシステムの構築、紙の資料の持ち出し禁止など、セキュリティ対策を万全にしておくことが必要です。

デメリット:組織力低下の懸念

オフィスでの業務に比べて、テレワークでは従業員同士のコミュニケーションが減る傾向にあります。このことで仲間意識が薄れてしまい、組織力や生産性が下がってしまう恐れがあります。

テレワークにおいても、オフィスと同じようなコミュニケーションが取れるように、コミュニケーションチャットやWeb会議などができるITツールの活用を進めていきましょう。

テレワーク導入における従業員側のメリットやデメリットとは

企業側から見たテレワークのメリットやデメリットを確認したところで、続いて従業員側からのメリットやデメリットを見てみましょう。

メリット:ワークライフバランスが実現できる

ワークライフバランスとは、仕事と生活のバランスを上手に取りながら生活することを言います。テレワークを行うことで、今まで通勤時間としていた時間を仕事以外のことに費やせるため、ワークライフバランスが実現でき、プライベートの充実につながります。

さらに、テレワークは働く場所を選ばないので、自然がある郊外や海外など自分が住みたいところに移住した上で、それまでと同じ仕事を続けられる可能性も高まります。

メリット:子育てや介護などと両立しやすくなる

仕事を続けたいと思っていても、出産や介護などやむを得ない事情で、退職を余儀なくされる人もいます。また、病気や障害などにより、オフィスに通勤することが困難な人もいるでしょう。テレワークはそのような人々でも仕事を続けられることが、大きなメリットです。

メリット:通勤時間が削減できる

テレワークを行うことで、通常時間を削減することができ、またこれはワークライフバランスの実現にもつながります。満員電車に乗り何時間も通勤される日常からの解放や、移動時間を減らせることなどにより、ストレスを軽減する効果が期待できます。

デメリット:仕事とプライベートの区別がつけにくくなる

テレワークは、プライベート空間である自宅で仕事をすることも多々ありますが、この場合仕事とプライベートの区別がつきにくくなるデメリットがあります。仕事以外のものに目がいってしまったり、家族に話しかけられたりすると、集中力を保つことが難しくなるのです。

デメリット:コミュニケーションが取りづらくなる

テレワークは、基本的にオフィス以外の場所において1人で仕事をするため、周囲とのコミュニケーション不足を懸念する声も多く聞かれます。面と向かって話せばすぐに聞けるような問題点でも、テレワークでは聞くタイミングを逃してしまうものです。

テレワークの導入前に、Web電話やチャットなどのコミュニケーション方法を、きちんと確保しておく必要があります。

デメリット:労働時間が長くなりがちになる

テレワークでは時間の管理を全て自分で行わなくてはなりません。自分で決めた時間で仕事が終わらなくても、周囲に同僚がいないとそのまま続けることができるので、プライベートの時間まで仕事をする結果になってしまいます。ひいては長時間労働を招く恐れがあります。

さらに、オフィスに出社しないので出退勤時のタイムカードを打刻することもなく、休暇申請も提出を迷ってしまうでしょう。これらの対応方法は、事前に企業に確認しておく必要があります。

テレワークを活用するための有効的な取り組みとは?

テレワークのメリット・デメリットを詳しく紹介しました。これまで紹介したメリット・デメリットをふまえながら、テレワークの仕組みを最大限に活用し、業務をスムーズに行うには、どのような取り組みをしたら良いのでしょうか。

勤怠管理を厳格にする

テレワークにおいても、オフィスでの業務と同様に、企業は従業員の労働時間を適切に管理しなくてはなりません。最も分かりやすい方法は、パソコンの稼働時間を確認することです。業務の効率を上げるためのテレワークが、逆に長時間労働を招かないように、勤怠管理を厳格に行いましょう。

就業規則を明確にする

テレワークの導入時には、導入の目的をはっきりさせた上で、従業員の就業規則を作成しておかなければなりません。さらに、オフィスでの勤務同様、雇用契約書において勤務条件を明記する義務があります。

労働時間に関しては、厚生労働省のガイドラインに基づいて導入を検討すると良いでしょう。

情報セキュリティ体制を万全にする

テレワークを行ったことで情報漏洩が起きてしまっては、企業の存続問題につながりかねません。テレワークで考えられるセキュリティリスクとして、端末の紛失、マルウェアへの感染、公衆Wi-Fiを利用したことによる情報漏洩、自宅のインターネット回線からの情報漏洩、フィッシング詐欺システムへの不正アクセスなどが挙げられます。

個人情報や機密情報を保護するためには、万全なセキュリティ対策を施さなくてはなりません。ルール策定、研修の実施、セキュリティソフトの導入、パスワード管理の徹底、VPNやクラウドサービスなどの利用、ハードディスクの暗号化などが効果的であり、企業が業務環境を整えると同時に、従業員の取り組みで防ぐことができます。

コミュニケーションツールを活用する

ITを使ったコミュニケーションツールを活用し、テレワークにおいてもオフィスと同じようにコミュニケーションを活発化させるのも重要です。コミュニケーションを取るには、オンライン会議やチャットなどのツールを使うことが一般的です。

会議は、事務連絡に関するコミュニケーションですが、チャットは雑談が可能なコミュニケーションとして、雑談がしにくいテレワークにおいて重要視されています。

まとめ

テレワークは、今や日本の企業にとって、重要な働き方の一つに位置づけられています。今回紹介したメリットやデメリットなどを参考にしていただき、より良い業務を進めていただければと思います。

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