ABW

2021.04.27

ABWとは?そのメリットとデメリットを解説

ABWとは?そのメリットとデメリットを解説

働き方改革の影響もあり、在宅勤務やテレワーク、ノマドワーキングなど、ひと昔前よりも多様な働き方が見られるようになりました。そんななかで注目されている形態のひとつが、ABWです。

ここではABWとは一体どういうスタイルなのかを、フリーアドレスとの違いも含めて解説。ABWを導入するうえで知っておきたい、メリット・デメリットについても説明します。

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オランダ発信の新しい働き方「ABW」

ABWとはアクティビティ・ベースド・ワーキングの略で、働く場所や時間を、それぞれの仕事に合わせて自由に選べる働き方を意味します。ABWの考え方は、もともとはオランダで誕生しました。その後世界的にも知られるようになり、近年では日本でも導入する企業が見られます。

ABWでは、個人での作業や少人数でのミーティング、複数人での情報整理など、そのときどきの仕事内容に合わせて場所や時間を選べるのが特徴です。そのためABWを導入するには、個人で集中できる場所や大人数での作業に適した場所など、多種多様なワークスペースが必要になります。

なおABWと類似した働き方として挙げられるのが、フリーアドレスです。フリーアドレスは、オフィス内に各自の決まった席を設けず、毎回好きな席で仕事を行うスタイルを意味します。

ABWとフリーアドレスは「働く場所を自由に選べる」という点では共通していますが、フリーアドレスはあくまで、オフィス内で仕事をする際の座席の選択に限定されたものです。

一方でABWの場合は、働く場所がオフィス内に限定されず、場所も時間もより自由に選べるという点で大きく異なります。

ABWのメリットは?

ABWの働き方には、次のようなメリットが期待されます。

生産性のアップ

まず挙げられるのが、ABWの主な目的のひとつでもある生産性の向上です。最初にご説明した通り、ABWでは仕事の内容に合わせて働く時間や場所を選べます。たとえば、1人で作業に集中したいときは1日中個室で、複数人でフランクに意見交換をしたい場合はカフェスペースでと、目的に合った場所と時間に働けるのです。そのときどきによって最適な環境で仕事ができるため、業務効率のアップが望めます。

オフィスコストの削減

ABWの導入が、オフィスコストの削減につながる場合もあります。ABWでは働く場所をオフィスに限定しないため、在宅勤務などとの併用によりオフィスを従来の規模より小さくすることも可能です。

また、ABWでは社員が仕事をしやすいと感じる場所を選ぶため、逆に仕事をしづらい場所やなくてもいいスペースが自然と明確になります。こうした「使われないスペース」を排除してレイアウトも見直すことで、無駄なオフィスコストのカットにもつながるでしょう。

ワークライフバランスの実現

ワークライフバランス、つまり仕事と生活の調和が実現しやすくなることも、ABWのメリットです。ABWでは働く場所や時間を選ばないため、たとえば育児中であれば在宅勤務を選んだり、家族の状況に合わせて都合のよい時間に仕事を進めたりと、自由な働き方ができます。各自がそのときどきの自分に合った働き方を選べるので、ワークライフバランスも実現しやすくなるのです。

従業員の満足度とモチベーションのアップ

ワークライフバランスの実現とも関係しますが、従業員の満足度アップが期待できるのもABWのメリットと言えるでしょう。それぞれが自分に合った働き方を選べることで、仕事への満足度の向上が期待できるのです。

またABWでは、仕事をする場所や時間を自由に選ぶことで、仕事に対する自主性も生まれやすくなります。仕事満足度に加えて自主性も高まることで、仕事に向かううえでのモチベーションのアップにつながる場合もあるでしょう。

優秀な人材の獲得

ABWの直接的なメリットではありませんが、ABW導入の結果として、優秀な人材を獲得しやすくなることも考えられます。ABWの導入によってワークライフバランスの実現に適した環境整備が進み、従業員の満足度も上がれば、自ずと働く人にとって魅力的な会社になるでしょう。こうした魅力ある会社になることで、国内外の優秀な人材もより集まりやすくなることが期待できるのです。

ABWのデメリットは?

ABWの導入にはさまざまなメリットが期待できますが、一方で注意するべきデメリットもあります。

上司が部下を管理しづらくなる

ABWのデメリットとしてまず挙げられるのが、働く場所や時間を固定化しないことで、上司が部下の働き方を管理しにくくなるという点です。在宅勤務やテレワークはもちろん、同じオフィス内にいても離れた部屋やデスクで仕事をすることが増えれば、上司の目が行き届きにくくなるケースも考えられます。

このため、「見ていなくても大丈夫」だと上司が部下を信用できる関係が不可欠です。また日頃の仕事ぶりを確認できないため、仕事の評価方法自体を見直したほうがよい場合もあります。具体的には、勤務時間や勤務態度を重視する評価方法ではなく、成果主義的でかつ部下も納得できるような評価方法に切り替えるなどの工夫が必要になるでしょう。

コミュニケーションの低下につながる

働く場所や時間がバラバラになることで、チーム内や従業員同士のコミュニケーションの機会が減る可能性や、一部だけに偏るケースも考えられます。特にチーム内でのコミュニケーションが不足すると、認識にすれ違いが生じたり、ときには仕事の進捗に影響が出たりする場合もあるでしょう。

こうした問題を回避するには、同じチームのメンバーが定期的に交流を持てるよう、一緒に仕事を進める日を設定するなどの方法があります。なお、チームに限らず会社全体で従業員がコミュニケーションを取る機会を増やせば、会社への帰属意識の希薄化を防ぐことにもつながるでしょう。

従業員や備品の位置を把握しづらい

ABWでは働き方が自由な反面、従業員のいる場所を他の人が把握しづらくなるというデメリットがあります。「今日は出社していることは分かっても、どこで仕事をしているかが分からない」といったケースが考えられるのです。また誰がどこにいるかを把握できないことで、「その人が使用している備品を次に借りたいけど、どこに取りに行けばいいか分からない」といったケースの発生もあるかもしれません。

ABWの働き方を導入するには、こうした人や物品の場所をすぐに特定できる環境をあらかじめ整えておくことが大切です。人や物の位置をWEB上で確認できるツールなどを利用して、より効率的なシステムを作っておくとよいでしょう。

ペーパーベースの会社には不向き

ABWは働く場所を選ばないので、ペーパーレスでも可能な仕事の進め方が求められます。そのため、書類の多くがペーパーベースの会社での導入は難しい点もデメリットと言えるでしょう。

この問題を解決するには、会社の管理体制をペーパーベースからペーパーレスに切り替える必要があります。ABWの導入を検討しているなら、まずは書類のデジタル化と、それに伴うセキュリティ体制の構築が不可欠です。

考え方がうまく浸透しなければ、結局働き方が変わらない場合も

ABW導入の直接的なデメリットというわけではありませんが、目的をしっかり共有しておかないと社内にうまく浸透しない可能性があることも難点と言えるでしょう。ABWは従業員の自主性や自立性に依るところが大きく、従業員がABWの意義を理解したうえで自主的に動く必要があるからです。この点が欠けていると、結局みんないつも通りの時間に決まった席で仕事をするようになり、せっかくABWを導入しても効果が得られないといった状況になりかねません。

こうした失敗に陥らないためには、ABWを導入する目的を従業員にきちんと理解してもらうことが大切です。あわせて、従業員の自主性や自立性を上手に引き出せるような指導方法もより求められるでしょう。

まとめ

ABWの導入は、生産性向上や従業員の満足度アップなど、会社にとってさまざまなメリットが期待できます。一方でABWならではのデメリットもあるので、まずは問題を回避するための社内環境を作ることが大切です。ABW導入企業のなかでも成功を収めているオフィス事例などを参考に、ABW導入に向けた環境づくりから始めてみるとよいでしょう。

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