モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展

展覧会レビュー

エントランスサイン

「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」展は、高崎市立美術館発の展覧会として昨2019年1月に開幕し、東北歴史博物館への巡回を経て、当館が最終会場として開催した展覧会です。1930年代の昭和戦前期から第二次世界大戦をはさみ1960年代までの日本の建築とデザインに影響を与えた海外の建築家やデザイナー、および彼らと交流した日本人、計7人の活動と作品を紹介いたしました。 「モダンデザイン」とは、近代工業による大量生産品に呼応して生まれた、新しい美の概念であり、合理的な機能美や、シンプルな造形を特徴とします。ヨーロッパからはじまり、世界に伝播していったモダンデザインは、各地で土着の文化と融合し、その土地ごとの固有のかたちとなって発展していきました。本展では、ドイツの建築家で思想家のブルーノ・タウトが、群馬県高崎でデザイン指導し、地元の職人の手仕事によってつくり出した「竹皮編み」の工芸品や、アントニン&ノエミ・レーモンド夫妻が確立した、日本の風土に根ざした独特な建築作品を、日本独自のモダンデザインとして紹介しました。その他、工芸品,家具,美しい手書きの図面,模型,写真など作品資料約160点を、5つの章に分けてご鑑賞いただきました。

さらに、日本初の国立のデザイン指導機関である仙台の工芸指導所で、タウトとその教えを受けたインテリア・家具デザイナー剣持勇との師弟関係や、建築家の丹下健三の紹介によって、剣持と家具を協同制作することとなった彫刻家のイサム・ノグチとの交流など、新しいデザインが普及する背景にある人と人とのネットワークも、本展の魅力のひとつとなりました。家具デザイナーのジョージ・ナカシマも戦前にレーモンドの設計事務所で吉村順三らと製図台を並べて建築家修業を積み、井上房一郎もタウトやレーモンドと深く親交を結びました。彼らは建築から美術や工芸の領域を横断し、幅広くマルチジャンルに活躍し、多くの優れた作品をのこしました。一方で、タウトの著述を支えた有能な秘書でもあったパートナー、エリカの貢献や、住宅のトータルデザイン「レーモンド・スタイル」を夫とともに実現したノエミ・レーモンドなど、女性の活躍にも関心が寄せられました。

また、井上房一郎、ブルーノ・タウト、レーモンド夫妻、剣持勇、ジョージ・ナカシマ、イサム・ノグチの出品作家の他、上野伊三郎、城所右文次も加え、彼らが手がけた家具を多数展示し、皆様にご好評いただきました。これらの家具には、素材やモチーフに伝統をとりいれるといった日本独自のモダンデザインのありようがうかがわれました。

会場デザインは、清々しい白木を基調とし、柱・梁・床で構成される日本の伝統的な建築をモチーフにデザインされました。数寄屋建築を思わせる雁行した道行によって目の前の光景が次々と変わっていく視覚体験や、住宅のスケールで設計された居心地のよさ、床の異素材の組み合わせなどに見られる日本建築の現代的な再解釈など、展示空間そのものにも様々な見どころがあり、優れたデザインが賞賛を集めました。また展示資料と「生活・暮らし」とのかかわりを詳らかにするため写真を多用し、グラフィックのデザイン・レイアウトにも細やかに配慮しました。

この時代までは、デザインとひとの手と生産は、お互いに近い関係にありました。その後、高度成長期に入りその状況は一変しました。ものづくりがマス・カスタマイゼーションの時代を迎える現在、モダンデザインはふたたび関心をよんでいます。デザインは「日常」を「非日常」に変える力を持っており、私たちを魅了してやみません。

人気の高いモダンデザインをテーマとしていることと、タイトルにある「暮らし」という身近なキーワードのため男女年齢問わず幅広い層にご好評いただいておりましたが、新型コロナウィルスの世界的な拡大により会期半ばにして閉幕を余儀なくされました。

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