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カワイイファクトリー進化し続ける”包装”〜松下の包装技術〜
電池交換のちょっとした悩み


ポータブルプレーヤーやテレビなど家電のリモコンが電池切れになるたびに交換しなければならない乾電池は、今や生活に無くてはならない必需品だ。蛍光管などと同様、突然切れたときのためにも、手元に予備がないとすごく困ってしまう。だが、この予備電池というのが、ちょっとやっかい。

乾電池って、たいていは4本、8本のパックで買い、一部を予備としてとっておく。だが、いったん開封してしまうと、乾電池はバラバラとなり、古いものと混ざってしまうことも少なくない。そして、いざ交換する段になって、どれが未使用なのかがわからなくなる事態がしばしば起こる。

新旧乾電池の混合は、漏液の恐れがあるため、電化製品の説明書にもこれを避けるようはっきりと記されている。確実に、しかも簡単に見わけるためにはバッテリーチェッカーなどで乾電池の残量を調べることぐらいしか、有効な方法がないのが現状だ。しかし、そんなものを常時持ち歩くことなど、あり得ないし、チェッカーで調べても目安しかわからない。

新たな機器を必要とせず、簡便な方法でこの問題を回避するためにはどうしたらいいか? 幾多の試みを検討した末に、松下の開発スタッフが導き出したのが、「見わけるパック」というアイデアだった。

世に出てみると、この「見わけるパック」、灯台もと暗しというか、かゆいところに手が届くようなパッケージだ。シュリンクパック※1に入ったミシン目に沿って、乾電池を包装フィルムごと1本ずつ切り離すことができ、未使用乾電池と使用済み乾電池とを瞬時に見わけることができるのだ。それはまさに、「おNEWの電池を見わけるパック」というキャッチコピーのとおりだ。

乾電池の性能なんてどこのもいっしょ、と思っていた私たちも、この便利さゆえに店頭で「見わけるパック」につい手が伸びてしまう。実際、このパッケージに変更して以降、松下の国内における乾電池のシェアは従来の36パーセントから最高40パーセントまで伸びたという。包装おそるべし、だ。

ちょっと便利な包装が製品に付加価値を与えた典型とも言える「見わけるパック」。その開発の経緯を追うとともにこのパックの構造のどこがすごいかを検証してみたい。





松下電池工業を訪ね、取材を行う筆者ら。「見わけるパック」の話の前に、乾電池需要の推移や、過去の包装における取り組みなどの話を伺う。



雑誌媒体向けに制作された「見わけるパック」の広告。「開けやすいミシン目で、電池を小分けにできるパッケージ」と謳っている。

※1シュリンクパック
プラスチック製のフィルムで品物を包み、圧縮包装したもの。電池は2本、4本の単位をひとかたまりとして薄いプラスチック製のフィルムでパッケージングされている。


20世紀最後を飾る、パッケージ開発の始まり


乾電池のパッケージとしては世界初の試みとなった「見わけるパック」は、松下の電池部門を担う松下電池工業で開発され、20世紀最後を飾る画期的なパッケージとして2000年3月に発売された。

「新旧乾電池の混合をパッケージの改良によって防ぐためのアイデアは、1998年ごろから検討していました。未使用と使用済み乾電池の区別をできるようにしてほしいという消費者の要望は、環境問題に次いで高いものでしたから。試行錯誤の末、実現可能なレベルに落とし込めそうだという構想案が固まったのは、発売の半年前でした」。こう語るのは、開発スタッフのひとりである、機械設備グループの小山裕子さんだ。

電池工業ではこれまでも、この課題を解決するために乾電池の+極に樹脂キャップを付けたり、1本ずつ切り分けられるブリスターパック※2を世に送り出してきた。しかし、脱塩ビであることや同一素材パッケージで分別せずに廃棄できること、などを開発目標に掲げていた松下にとって、これらはどれも環境対応という面で決して納得のいくものではなかった。新たなパッケージ開発を担ったスタッフには、これらの問題解決に加え、コストを現状のパッケージよりも上げてはならないという課題も横たわっていた。
お客様に喜ばれ、かつ、コストをかけず、そのうえ業界初のシンプルなものを――この目標を実現させるために、さまざまな知恵を絞ったと、小山さんは言う。+極に「NEW」と印刷されたシールを貼ることも考えたが、このアイデアも子供が間違ってはがしてしまう恐れがあるという理由から、実現の運びには至らなかった。現状の製造ラインを活かし、何とか設備投資を最小限に押さえたいとの思いとともに、試行錯誤の日々が続いた。





機械設備設計担当の小山裕子さん。「見わけるパック」の開発では、プロジェクトの発足当初から、開発チームに加わる。



乾電池の+極に樹脂製キャップをかぶせたパッケージ(左)と、一本ずつ切り分けられるブリスターパック。新旧乾電池を見わける取り組みの一例。

※2ブリスターパック
プラスチックフィルムで品物を包装し、台紙に固定したもの。


キットカットのようにパキッと美しく割りたい!


あれこれ考えるうちに辿り着いたのが、今あるシュリンクパックに、ミシン目を入れるというアイデアだった。
「キットカットというチョコレート菓子がありますよね。あれが理想のイメージでした。あのお菓子、パキッときれいに切り離すと気持ちいいし、切れ目も美しい。この切れ味を乾電池のパッケージに応用できないか」。
口で言うのは簡単だが、実現は難し。

例えば、実際にシュリンクパックに切り目を入れてみると、簡単にはちぎれない。強引に引っ張ると今度はフィルム全体が破れてしまう。だれもが容易に1本ずつ切り離すことができ、なおかつ最後の1本になってもシュリンクが乾電池と一体となって保持されることが重要だ。もちろん、シュリンクされた状態で落としてもフィルムが破れない強度を持たせなくてはならない。





フィルムの切れのよさ、切れた後の見栄えのよさが、開封性の向上を目指すうえで大きな課題となった。目標は「キットカット」の切れ味。


図面を引いてはディスカッションを重ねる


そんな矛盾だらけの複雑な条件を同時に満たすことができるのか。不可能じゃないかと、普通なら最初からあきらめてしまうところだろう。だが、彼らは違った。開発チームはいく通りもの図面を引き、専用の部品をつくり、量産化に結び付けるために製造ラインの機械を何度も調整した。

「発想としては、今ある機械を無駄なく使いたかったのです」と小山さん。さらに、「特殊なミシン目ですから、刃も自作しなければなりませんでした」と、続ける。

プロローグでも述べたが、“無いものは自作する”のが松下の真骨頂。開発チームはまず実験機をつくり、刃の形状やミシン目を入れるスピードを数百のバリエーションで試した。それでも実験機の成功を実際のラインにそのまま転用できるほど、“量産”は甘くない。何しろ単3乾電池が1分間に数千本も包装されるラインに乗せるのだから、並大抵の刃ではすぐに摩耗してしまう。刃の形状やミシン目を入れるスピードの微調整は、最後の最後まで続いた。

とは言え、異例のスピードで新パッケージ実現にこぎ着けることができたのは、発想から設計、機械設備までのすべてを社内で行い、スタッフが一丸となって開発していったからこそ。スタッフの間で「できる」「いや、できない」「こういう方法ならできる」といったやりとりがスムーズに重ねられ、いくつもの課題が確実にクリアされていった結果だ。





未使用と使用済みとが外観では判断できなかった乾電池だが、この細かいミシン目を入れることで、見わけが容易となった。


「見分けるパック」には企業秘密の隠し技が満載


手元に「見わけるパック」があれば(手元にない人は今度買ったときにでも)、とくと見てほしい。例えば単3乾電池。2本あるいは4本で1つにまとめられているのがパックの基本形だ。

パックの両端は、ギザギザのカットラインによりフィルムが楕円状に切り抜かれている。この楕円のサイズもかなり微妙だ。ライン上でシュリンクパックを行うために、長いロール状の1枚のフィルムを熱を使って乾電池に装着させ、2本あるいは4本単位で確実に切り離さなければならない。切り口のサイズが適切でないと、乾電池はバラバラになってしまいシュリンクできなくなってしまう。

さらに細かく見ていくと、このミシン目は、パックの前(ロゴ面)・後ろ・上(+極)・下(−極)に入っていながら、ひと繋がりになっていないことがわかる。あえて全体にミシン目を回さないことで、落としても破れにくく、なおかつちぎりやすいという微妙な効果を生み出しているのだ。

このミシン目は人間の手では絶対に入れられないという。しかも、製品に傷をつけることなく1工程で入れることなど、まず他社では不可能だとも。自作の包装機械だからこそできる、とっておきの隠し技の1つだ。

フィルムの印刷も見てみよう。+極にきちんと「NEW」と入り、後ろ側に記された「見わけるパック」の説明文も、まっすぐと読みやすい。フィルムはすべてこの「見わけるパック」に合わせたPETを原材料とする脱塩ビ素材を用い、熱によって伸縮させるながら、乾電池を包み込む。そのため、印刷される文字やデザインもこの伸縮具合に合わせ、読みやすい位置にきちんと印刷されるよう計算し、設計されている。





パックの+極側見える「NEW」の表示。小分けにした後もフィルムが巻き付いたままとなる。包装材は、環境対策として「非塩ビ材」を使用。



ロール状になった加工前のシュリンクパック用フィルムシート。印字された表示類は、熱処理による伸縮率を計算し、レイアウトされている。


さらに、隠し技があった


松下の乾電池にしか見られない大きな特徴は、さらにつづく。
フェイシングと呼ばれる、ブランド名をすべて同一方向に並べる包装技術だ。品質とともに品格も重視したいとの思いから、この手法は10年前から採用されている。

量産のラインを流れる際、乾電池の向きを合わせる技術だが、その方法は残念ながら企業秘密だという。ようやく他社が最近追いつくことができるようになったというほど、高度な技術なのだそうだ。そう言われてみると、松下の乾電池は確かにブランドロゴなどが同一方向を向いている。見事な技だ。実に、気持ちがいい。開発リーダーの熊倉勝彦さんは、「このようなきめ細やかなモノづくりと、ブランドを大切にする想いを、従業員のひとりひとりがこうしたかたちで行動に移すことで、新たな企業価値が生まれる」と語る。

「見わけるパック」の包装仕様は現在マンガン、アルカリ各乾電池において採用されている。また、新発売されるオキシライド乾電池への採用も決まっている。その製造は、フェイシング→シュリンク→バーコードシールの3工程で1ラインを形成し、単3形4本パックを1分間に 数百パックもつくり出しているというのだ。実は、ここにも隠し技が潜んでいた。何と、バーコードシールに入ったミシン目を、シュリンクに入れられたミシン目に合わせて貼り合わすことで、開封を容易にする、といった配慮が成されていたのだ。

「見わけるパック」には、店頭でお買い得パックと呼ばれる8本組、12本組のパックもあるが、こちらは2本組、4本組シュリンクを組み合わせたものだ。ベースとなるシュリンクパックのミシン目を壊さないで、外側のフィルムを開封できるよう、実はこのフィルムの正面と後ろ面に数個の針穴が開けられている。また、店頭では縦にも横にも並べられるよう、縦組みと横組みの2種のデザインをそれぞれ前後に印刷するといった、販売店向けの気配りも忘れない。

細かいところまで考えられた製造ラインだが、非公開ということで残念ながら見学は叶わなかった。ミシン目もフェイシングも関係者すらめったに見ることができないほどの秘中の秘、厳重な企業秘密なのだ。





包装された乾電池すべてのブランドロゴが、同一方向に揃うのが松下の特徴。ブランドロゴを大切に扱っている、その姿勢の表れといえる。



バーコードシールに入ったミシン目。シュリンクパックのミシン目に合わせて貼り合わされている。



8本組のお買い得パック。矢印の箇所に穴が開けられており、穴面と反対方向に折ると外側のフィルムが簡単に破れる仕組みとなっている。


ユーザーの視点に立った包装


2000年3月に発売された「見わけるパック」は、同年のパッケージ業界の賞を総なめにした。木下賞、グッドパッケージング賞、ジャパンスター賞、ワールドスター賞、グッドデザイン賞などだ。

「ものづくりはユーザーの視点に立って」が合い言葉だという、松下電池工業のパッケージ企画チームの、たゆまぬ努力が実を結んだ結果が受賞に結び付いたと言える。

また、「見わけるパック」は、近年松下が全社を挙げて取り組んでいるユニバーサルデザイン(以下、UD)という要素を含んでいる点も見逃せない。
熊倉さんは言う。「ユーザーの視点で使いやすいパッケージにすることが、ひいてはUDを達成することになるんです」と。

新旧電池が一目で見わけられるということが、これほど使い手のストレスを減らしてくれるものとは思わなかった。そしてその恩恵が、包装からもたらされているとは。つくづくパッケージの役割は奥深い。そんな画期的パッケージだからこそ、製造されている現場を、やはり見てみたかった。非公開の部分にはきっと、あっと驚くアイデアが隠されているのだろう。そんな思いを残したまま取材を終えるのは無念だが、いかんともしがたい。筆者らは、次の取材に向かった。





開発リーダーの熊倉勝彦さん。生活者視点としてのUDと、地球環境への視点としてのECOを、今後のパッケージ開発の重要課題に上げる。




使い手の立場に立った包装。製品と同じくらい創意を凝らし、考える。松下の電池包装には、そんな試みが「見わけるパック」以外にもたくさんある。
次回は、「見わけるパック」の後を追うように、2002年9月に誕生した「補聴器用電池パッケージ」をリポートする。こちらは、さらにUDに真っ向から取り組んだ包装だ。乞うご期待!

第2回 「補聴器用電池パッケージ」へつづく




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