ここから本文です。

パナソニック・ホーム 現在のページは、isM トップ > の中の速く、美しく、乾かすということ。〜ヒートポンプ技術〜 > の中の其の三 圧縮機(コンプレッサー)を知る。のページです。

※過去に掲載された記事になります。内容は公開時のものであり、最新の情報とは異なる場合がございます。

速く、美しく、乾かすということ。〜ヒートポンプ技術〜

  • 出会い。
  • 最新を知る。
  • ヒートポンプを知る。
  • 圧縮機を知る。
  • 技術力、融合。

其の三
圧縮機(コンプレッサー)を知る。

いま、私の目の前には、色とりどりの物体が並べられている。これらはヒートポンプユニットの心臓部とも言える、圧縮機(コンプレッサー)の断面を表した模型だ。これだけ数が揃うと、なかなか壮観である。

ずらりと並べられた圧縮機の写真

松下では、いわゆる「完成品」だけではなく、それらを構成している部品の販売もしている。例えば、「エアコン」を出荷するかたわら、その部品にあたる圧縮機だけを他メーカーに売る、そんな場合もあるのだ。

其の二」で、松下は空調用の圧縮機で世界トップ*1のシェアを持つと述べた。その台数はというと、世界で初めて*2、生産累計2億台を達成したほどである。
*1 2007年2月5日発表。
*2 2006年8月29日現在、松下電器調べ。

地球をぐるりと取り囲む圧縮機のイメージ
仮に幅20cmの圧縮機なら、約4万キロメートル・・・ちょうど赤道に沿って地球を1周するほどの物量に!

それほどの実績を持つ松下の圧縮機は、他メーカーとは違うどんな強みを持っているのか。入社以来、圧縮機の開発一筋に取り組んでおられる吉田氏と金城氏にお話をうかがった。

吉田 裕文(よしだ ひろふみ)
松下電器産業株式会社 松下ホームアプライアンス社
技術本部 冷熱空調研究所
デバイス開発第1グループ デバイス第2チーム 主任技師
よしだ ひろふみ氏の写真
金城 賢治(きんじょう けんじ)
松下電器産業株式会社 松下ホームアプライアンス社
技術本部 冷熱空調研究所
デバイス開発第1グループ デバイス第3チーム 主任技師
きんじょう けんじ氏の写真

圧縮機は、その名の通り冷媒を圧縮(Compress)する役割を持つ。圧縮されると、冷媒の温度は上がり、その後、熱交換器で放熱して液化する。そのときの放熱エネルギーを有効利用することで、部屋を暖房したり、洗濯物を乾燥する温風を作ったり水をお湯に変えたりできる。つまりヒートポンプユニットの中で、熱エネルギーを生み出す肝心かなめの部品、それが圧縮機なのだ。

「圧縮」で生まれる、エネルギーとは?
気体が高温になる様子を見てみよう
(クリックすると動画が再生されます。約24秒間・1,829KB)

シリンダーの下に、あらかじめ小さい綿をセットしておく。ピストンで、シリンダー内の空気が圧縮された瞬間、温度が急激に上昇し、綿が発火。狭い空間に大きな熱エネルギーが生じたのが見てとれる。
上の実験の、シリンダーの中の「空気」を
ヒートポンプユニットの圧縮機に送られる「気体状の冷媒」
ピストンを
圧縮機

として見てみよう。ごく限られた空間にある冷媒は、圧縮機の動作によって圧力をかけられ、急激にその温度を上げる。そこで生まれた熱エネルギーは、圧縮機の先にある配管へと押し出されていく。

ちなみに、圧縮機のなかで冷媒にかかる圧力は、MPa(メガパスカル)という単位で表される。

平地とヒートポンプユニットで生まれる圧力の違い
平地(大気圧)の場合は、0.1MPa。これは、1cm2に1kgの荷重がかかっている状態だ。冷蔵庫に使われている圧縮機では平地の約6倍、ヒートポンプ給湯機「エコキュート」では約120倍の荷重がかかっている。小さな圧縮機の中で、これほどのエネルギーが生まれているとは驚きだ。

圧縮機の種類を知る。

「圧縮機にはいろいろなタイプがありますが、冷媒に圧力をかけて高温にし、続く配管へ押し出していくしくみは、基本的に同じです」

ホワイトボードに書込む吉田氏の写真

と吉田氏。「でも、それぞれに長所、短所がありましてね・・・」と、表を書きつつ教えてくれた。

圧縮機の特徴と用途(種類別)
種類 用途/搭載機器 長所 短所
レシプロコンプレッサー
レシプロコンプレッサーの写真
・冷蔵庫
・自動販売機
・小能力
・高効率
・冷凍、冷蔵向き
・大能力が必要な用途には不向き
レシプロコンプレッサーの冷媒圧縮イメージ
シリンダー内をピストンが往復運動することで、冷媒の吸入と圧縮を行う。
ロータリーコンプレッサー
ロータリーコンプレッサーの写真
用途/搭載機器 長所 短所
・エアコン
・除湿機
・洗濯乾燥機
・自動販売機
・能力範囲が広い
・低コスト
・振動が大きめ
ロータリーコンプレッサーの冷媒圧縮イメージ
シリンダー内を筒状のピストンが回転することで、冷媒の吸入と圧縮を行う。
スクロールコンプレッサー
スクロールコンプレッサーの写真
用途/搭載機器 長所 短所
・エアコン
・給湯機
・高効率
・低振動
・低騒音
・コストが高め
スクロールコンプレッサーの冷媒圧縮イメージ
渦巻き状の固定羽の周りを、同形の可動羽が旋回することで、冷媒の吸入と圧縮を行う。
スクロールの仕組みをさらに詳しく >>

ご覧のように、それぞれのコンプレッサーに得意分野、苦手分野があり、搭載に適した機器がある。ふと、金城氏が、レシプロコンプレッサーの長所の欄に「小能力」と書いたのが気になった。

「レシプロは、ロータリーやスクロールのように一気に大量のエネルギーを出すことは苦手ですが、ある一定のパワーをじわじわと効率的に送り続けることができる。これをあえて小能力と呼んでいますが、れっきとしたメリットのひとつなんです。特に、冷蔵庫のように『ほぼ同じ温度帯を維持して冷やし続ける』場合には、最適の方式なんですよ」

除湿機用のコンプレッサーを示す吉田氏の写真

さて、ここに小さな圧縮機がある。他と比べると、ひときわ小さい。これは、除湿機用のロータリーコンプレッサーだ。実はこの圧縮機が、「ヒートポンプななめドラム洗濯乾燥機」の圧縮機の原形なのだという。

「除湿機で培った小型化ノウハウがあったからこそ、いざ洗濯乾燥機に入れる圧縮機が必要だ、となったときにも、『ああ、あれをベースにすればいけるな』ということで、スムーズなモノづくりが実現できました」

松下に長年積み重ねてきた実績がなかったら、ヒートポンプ技術を応用した洗濯乾燥機はいまだこの世に生まれていなかったかもしれない。

松下の強みを知る。

世の中に星の数ほど存在する圧縮機メーカーのなかで、こうした様々なタイプの圧縮機をすぐに供給できるメーカーは、実は世界中で5本の指で数えられるほどしかなく、松下電器はそのうちの1社なのだという。

「『もっと高性能に』『もっと安価に』『もっと小さく』・・・といったお客様からのさまざまなオーダーに、1つひとつ丁寧に応えていった結果、今のようなバリエーションが構築されました」

と、吉田氏。長年にわたり地道にモノづくりに取り組んできたからこその豊富な製品バリエーション。これは松下の強みのひとつだろう。

きんじょう氏と吉田氏の写真

品質の良さもご好評いただいています。品質確保に向け、多種多様な条件で耐久試験をはじめとするさまざまな試験を365日行っています。圧縮機としての完成度を調べることはもちろん、ヒートポンプユニットとしてのテストも行い、最終的にベストの状態に仕上げていっています」

これらに加えて、松下には、さまざまな専門分野を受け持つ技術者が意見や情報を交換し、協力してモノづくりを進めていく「組織力」もある。

これまで見てきたように、ヒートポンプ技術が用いられた製品は多種多様であり、その生産拠点も国内や海外に点在している。用途や応用製品が違えば、それぞれのフィールドに属する技術者どうしの交流は図られにくいようにも思えるが、今の松下は違う。

どんな製品でも新たなモデルを開発する際は、試作を行う。その試作には、実際に試作品を製作するという「モノからのアプローチ」と、コンピュータを使って計算を行い、得られる結果を予測する「シミュレーションからのアプローチ」のふたつがある。どちらのアプローチも試作において欠かすことができないが、担当する技術者のご専門や経歴、個性によって、「モノ…」が得意なかたもいれば、「シミュレーション…」を得意とするかたもいるのだそうだ。

その両方のタイプの技術者が、異なる観点から意見し、助言し合ったりすることで、より効率のよい試作が行えるようになるという。吉田氏が語る。

「私はここ滋賀県・草津で、主にスクロールコンプレッサーを担当しています。かつては、『あのアイディアをカタチにしてみるか』という感じで、本物に近い試作品を作り、データを集めることが多かった。吉田氏の写真ところが組織統合後、金城さんの所属する神奈川県・藤沢のチームを訪ねてみると、我々が少ししか踏み込んでいなかった、他社には真似できないようなハイレベルなシミュレーションによる開発を得意としていたんです。こちら側のアナログなやり方でこそ掴める部分もあるにはあるんですが、彼らのデジタルなモノづくりのスタイルは大変いい刺激になりましたね」

それを受けて、金城氏が答えた。

きんじょう氏の写真

「普段は藤沢でレシプロコンプレッサーを担当していますが、今は、草津のロータリーやスクロールの専門家たちと、いつでも好きなときに相談しあえる環境にあります。私たちレシプロの専門化がこれまで採用してこなかったような手法についても、前向きなビジョンを示してもらえたりして、皆、技術者として世界が広がったように感じています」

技術組織の統合によって、たとえ立地が離れていても技術者同士の心理的な距離は縮まり、ひとり一人の能力が「足し算」されるだけではなく、それらが相乗効果となり、さらに大きなモノづくりのチカラへと発展していく。常に新たな課題に取り組み、市場のニーズに応えていく人々の情熱。お二人の話を通して、そんな松下の姿が見えてきた。

次回は、「ヒートポンプななめドラム洗濯乾燥機」に話を戻し、松下の技術力・組織力が、最新型洗濯乾燥機の開発にどのように生かされたのか、その製品化に取り組んだ技術者のかたの声を交えながらご紹介していこう。