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オーダーメイドデジタル補聴器

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ページタイトル。「聞く」をサポートしたい。 オーダーメイドデジタル補聴器 職人技!個人仕様の「聴こえ」とカタチ

先進の補聴器は「オーダーメイド&デジタル」

補聴器の国内市場は約42万台(2003年度 日本補聴器工業会調べ)。その潜在需要は軽度難聴者まで含めると約600万人(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会調べ)に達します。65歳を超えると3人に1人は難聴になるという調査結果もあり、高齢化の波が押し寄せる日本では、今後ますます補聴器の需要が増えると予想されています。

最近の補聴器は、その人の耳の形・聴こえ方に合わせてオリジナルで作るオーダーメイドが主流だそうです。松下電器では、1985年からオーダーメイドの生産をスタートしているそう。松下が補聴器を製造しているということ自体、初耳の私。いったいどんな方達がどんな現場で作っておられるのか、お話を聞きに伺いました。

横浜市の緑ゆたかな郊外に位置する松下電器産業・ヘルスケア社。今回の説明を担当してくださるのは医用システム事業部の吉住さん。いかにも技術者らしく、理路整然と話される姿が印象的です。

吉住 嘉之氏の写真
吉住 嘉之氏
ヘルスケア社 医用システム事業部 技術グループ 第5チーム チームリーダー
1987年入社。中央研究所にて、ろうあ児童のための発声発語訓練装置で音声特徴抽出方式を開発。1990年以来デジタル補聴器の開発ひとすじ。信号処理技術を中心に新製品開発に携わる。

「これが最新のオーダーメイドデジタル補聴器“彩(AYA)PLUS(アヤプラス)”です」

そこに差し出された丸いケースには、小さな補聴器と付け替え用の6色の電池カバーが、まるでアクセサリーのように収納されていました。補聴器でカラーバリエーションを楽しむという発想にまず驚きましたが、もっと目を奪われたのはその小ささ!どれもみな、小指の先ほどの大きさしかありません。私にとって補聴器といえば「耳かけ形」のイメージが強かったのです。いつのまにかここまで小さくなっていたなんて!

オーダーメイドデジタル補聴器“アヤプラス”の写真 2004年3月発売。男性・女性それぞれの好みの色を3色ずつ、電池カバー色として採用。本体はあえて茶系にし、カバーの色とのコントラストを演出。「見せる補聴器」という新境地を提示した。

「小型化が進んだのは80年代半ばからですね」

ここで吉住さんは補聴器の歴史を簡単に教えてくださいました。

補聴器の概念は古くからあり、その昔は貝殻やラッパを耳にあてて聴力の衰えをカバーしていたそうです。かのベートーベンはトランペット型の補聴器を愛用していたとか。19世紀の終わりには世界初の電気式補聴器が登場し、ほどなく日本にもたらされましたが、ラジオ並の大きさで、庭付き戸建て住宅に匹敵するほど高価なものだったそうです。現代の補聴器に近いものが登場したのは1950年代。「箱形」もしくは「ポケット形」と呼ばれるもので、本体を胸ポケットに入れてイヤホンをつける形で使われていました。1960年代にはイヤホン部も一体になった「耳かけ形」が登場。イヤホンのコードからは解放されたものの、耳の後ろ側にマイクがあるため音の方向感が掴みにくいという難点がありました。そして1990年代に入って、マイク、アンプ、レシーバを耳孔の中にすっぽり入るケースに全て組み込んだ「耳あな形」が開発されました。それと時を同じくしてオーダーメイドシステムも普及し、現在ではオーダーメイドが市場の約55%を占めているそうです。

箱形補聴器の写真
’50年代〜。イヤホンを付けて聞く、昔のトランジスタラジオに似た箱形補聴器。
耳かけ形補聴器の写真
’60年代〜。耳の付け根部分に引っ掛けて使う、耳かけ形補聴器。これの登場でイヤホンのコードの煩わしさから解消された。
1986年の新聞広告の写真
1986年の新聞広告。まだ「耳かけ形」や「ポケット形」が主流のころ。

松下電器の補聴器も「箱型」の時代からすでに45年を超える歴史があると伺い、またもビックリ。長い長い時間を経て、先ほど見せていただいたカラフルでコンパクトな「彩(AYA)PLUS(アヤプラス)」にたどり着いたわけです。吉住さんにこの最新モデルの小型化の秘密を伺いました。

「ここまで小さく、かつ高性能化できたのはデジタルのおかげなんですよ」

’90年代に入って、DSP(ディー・エス・ピー。Digital Signal Processor)と呼ばれるデジタル信号処理のICが格段に小型化。おかげで、耳孔に隠れてしまうほど小さな補聴器の製造が可能になったのです。また、DSPの導入によって、個人の「聴こえ」に応じたチューニングの精度が格段に向上しました。従来のアナログ型補聴器でも多少の調整はできたそうですが、その人にぴったりフィットする音響特性を出すという点において、デジタルの比ではなかったそうです。

小型タイプ補聴器の写真 現在の主流、オーダーメイドも聴力の違いによって、サイズが変わってくる。こちらはすっぽりと耳穴に隠れる小型タイプ。
標準的なカナルタイプ補聴器の写真 最も需要のある標準タイプ。「カナルタイプ」と呼ばれている。
高度難聴者向けの大きめタイプ補聴器の写真 高度難聴者向けの大きめタイプ。

「聴こえ」とカタチはフィッティングで決まる

補聴器をいくつか見せていただくと、それぞれの耳孔に入る部分は、一つ一つ形状が全く異なります。先端がやや曲がったもの、丸い突起が出ているもの・・・見事にバラバラです。

先端の形状がそれぞれ異なる補聴器の写真
並べてみると、人によって耳孔の形がいかに違うかがよくわかる。

「同じ人の右耳と左耳でも、耳孔の中の形は全然違ってくるんですよ。オーダーメイド補聴器は、まず専門店でお客様の耳の型を取り、それをもとに製作していきます」

と説明してくださるのは、製造責任者の前野さんです。

前野 進氏の写真
前野 進氏
ヘルスケア社 医用システム事業部 製造グループ 補聴器製造チーム チームリーダー
補聴器に携わって30年。製造部門で最も経験豊富なベテラン。

「耳の中は奥へ行けば行くほど敏感です。でもオーダーメイドなら、お客さまの耳孔の太さ、曲がり具合にぴったり合わせられますので、出し入れ時に痛みを感じさせず、装着感のいいものが作れるんです」

なるほど。小さい上にオーダーメイドで自分の耳にぴったりフィットすれば、装着時の違和感を大幅に抑えることが可能でしょう。ここで再び吉住さんが、

「他人のメガネをかけて間に合わせる人なんていませんよね?それと同じで、補聴器も“聴こえ”やカタチをお客様ひとり一人に合わせるべきなんです。そのために私たちはオーダーメイドをおすすめしているわけですが、ここで欠かせないのが、丁寧で精密な“フィッティング”なんです」

「フィッティング」。この言葉、靴の専門店で自分にピッタリの靴を選んでもらう時などにも耳にしますが、補聴器の場合はどのようなことが行われているのでしょう。少し詳しく伺ってみました。

吉住 嘉之氏の写真
「“フィッティング”とは、お客様にとって最適の“聴こえ”を実現するための、カウンセリングのようなものなんです」

ここで言う「フィッティング」とは、お客様の「聴こえ」の状態を知り、補聴器の性能に落とし込む作業のこと。例えば視力の場合なら、機械を使って第三者が正確に測定することができます。ところが聴力は、本人の申告に頼る以外にそれを測るすべがなく、絶対的な物差しが存在しません。そのためフィッター(フィッティング担当者)は、お客様と面と向かってコンサルテーションをする必要があるのですが、これがなかなかに熟練を要するものだそうです。考えてみれば、他の人に自分の「聴こえ」について説明するのは、案外難しいもの。もしフィッターの方に「どんな音がうるさいと感じますか?」と質問されたとしても、「うるさい」という表現をどのようなシーンに使うのかは人それぞれ。答えは千差万別です。

仮に「昔から使っている補聴器なんだけど、食事の準備をしている時にうるさく感じるのよね」とお客様がご相談してくださったとします。するとフィッターは、その時に想定される様々な音を例示してみせます。「うるさいと感じるのは、シンクに水が当たってザーザー流れていく音ですか?それとも食器が触れ合うときのカチャカチャ鳴る音ですか?」といった具合に。こうしたやり取りの中から、フィッターには「この人には、この周波数付近の音圧レベルを下げてあげればよい」といった処方が見えてくるそう。その判断に基づいて、パソコンで音響特性パラメータを調整し、「うるささ」を取り除いていきます。

お客様が、その人なりの言葉で表現される「音」。それと生活の中に実在する様々な「音」を、物理的に結びつける深い知識・洞察力こそ、まさにプロのフィッターたるゆえんです。

「基本的なフィッティング手順やガイドライン、操作説明書などは存在します。でも、お客様が表現される言葉を、場面や環境を考慮して正しく解釈するには、やはり多くのお客様と接して経験を積む必要があるんです」

と、おっしゃる吉住さん。ふと見ると、彼の耳にも補聴器が。

「新製品の発売のたびに、自分用のモデルも作るようにしています。自分で装着して長時間過ごしてみることで、性能チェックはもちろん、お客様のおっしゃる“閉塞感”などもリアルに実感できるんです」

補聴器を装着している吉住さんの写真
自分用のオーダーメイド補聴器を装着している吉住さん。コードは、フィッティング用コントローラと接続するためのもの。

お客様に本当に喜んでいただける補聴器を世に送り出すためには、本体の性能アップと同時に、フィッティングの技術も磨いていく必要がある、とおっしゃる吉住さんです。

さて、フィッティングがどんなに大切かはわかりましたが、補聴器を作るためには、まずお客様が専門店まで出向かなくてはなりません。ホームヘルパーとしてご高齢者と接していつも感じるのは、外出が難しい、または何かと敬遠なさる方が多いということ。もしそんなご高齢者が補聴器を必要とした場合、専門店までどうやってお連れすればよいのか、かなりの難問に感じてしまいます。

「そんなお客様のためにも、フィッターが楽に持ち運ぶことのできるフィッティング用コントローラを開発しました。これをお客様のご自宅に持参すれば、外出していただくことなくフィッティングしてさしあげることができます」

吉住さんが取り出されたのは、手のひら大の小さなコントローラ。このサイズに、最新のフィッティング技術に関する松下のノウハウが凝縮されています。

手のひら大のフィッティング用コントローラの写真
吉住さんが開発した、フィッティング用コントローラ。タッチペンによって、様々なパラメータを簡単に設定できる。

職人技が光る!オーダーメイドの製造現場

快適な「聴こえ」を実現するためには、プロフェッショナルの手によるフィッティングが欠かせないことがわかりました。では、それによって得たデータは、どのように個々の補聴器に反映されるのでしょうか?前野さんのご案内で、工場の補聴器製造現場を見せていただきました。

製造現場を案内してくれる前野さん
前野さんの案内で、製造現場へ。
作業中の組み立てスタッフ
各工程でスタッフが作業に没頭している。
フィッティングによって集められたお客様のデータは、注文書に集約されます。製造現場ではまず、この注文書をパソコンに入力するところから「ものづくり」がスタートします。
オーダーメイド補聴器の注文書を手にする前野さん
オーダーメイド補聴器の注文書。お客様の聴力をグラフで表わした「オージオグラム」と呼ばれるものをはじめ、耳のやわらかさ、耳垢の性質など、詳細な情報をまとめたカルテのようなもの。このシートと耳型をもとに、製品づくりが進んでいく。

補聴器の主な部品はアンプ、レシーバ、マイク、そして電池。一つとして同じ形状のないシェル(補聴器本体)の中に、これらの部品をいかに的確に配置するかが「ものづくり」のキーポイントです。

「耳の孔が特に小さいお客様の場合、かなり部品配置を工夫しないと、シェルに収まらないことがあるんです」

と、前野さん。

「シェルにレシーバのごく一部が当たってしまうだけでも、いわゆる“ピーピー音”と呼ばれるハウリングの原因となります。限られたわずかな空間に、各部品の干渉を避けるような向きや位置関係をきっちり決めて固定しなければなりません」

そのため組み立て担当者には、一つ一つ設計検討しながら組み立てる、という高度な能力が求められます。トップクラスの熟練工でも1日15台くらいしか作れないと聞くと、そのシビアさが想像できる気がします。

補聴器の内部構造写真
各部品をどのように設置するかは、シェルの構造、スペースによって全く違ってくる。

またスムーズな装着・取り外しのために、いかに耳孔にフィットしたシェル形状を作り上げるかも、組み立てスタッフの腕の見せどころ。何度もシェルの先端部分を削っては、お客様の耳の型に出し入れして、耳孔の中で無理なく収まるかを確認しています。

「オーダーメイド補聴器を手がけるまで、 私たちのものづくりに“削る”というノウハウはなかったんです。その技術を学ぶために、当初は製造スタッフが歯科技工士のラボに修行に行きました。ですから、現在使用している道具には、歯医者さんと共通のものも多いんですよ」

傍から見ていると、一見無造作に削っているように見えますが、慣れないうちはごっそり削ってしまい台無しに・・・という失敗も多いとか。一人前になるには最低5年。現在製造に携わっている方はみなさん、10年以上のキャリアを持つ精鋭ばかりです。

研磨用アタッチメント各種の写真
ずらり揃った研磨用のアタッチメント。多くは歯科医用と共通だが、中には長年の経験から生まれた独自開発のものも。

最近の傾向として、補聴器が小型化したおかげで「目立ちにくい状態で使える」と、40代〜50代の軽度難聴者の方が積極的に購入される場合も増えています。働き盛りのお客様の場合、「来週の会議で使いたいから大至急作って欲しい」といった緊急の要望も少なくないとか。こうしたリクエストに出来る限りお応えするため、前野さんたち製造スタッフは、時に週末休みや夏休みを返上し、作業に取り組みます。

それにしても、ここまでくると一企業の社員というより、自分の手先ひとつで仕事をする、まさに“職人”。松下の製造現場といえばオートメーション工場で製品が組み立てられていく様子を想像していましたが、たった1人のお客様のための製品を、心を込めてコツコツと作り続ける・・・こんな職人仕事もあるのかと驚かされました。

オーダーメイド補聴器の製造工程

【専門店で型取り】
シリコン材を使用し、耳の中の型を取ります。

耳型をとるためのシリコン材の写真
型取り用のシリコン材は、約5分で固まる。
完成した耳型の写真
出来上がった耳型。

【受付】
全国の専門店からヘルスケア社に送られてくる耳型と注文書。パソコンに注文内容を入力すると同時に、次々と組立スタッフが作業を開始。

全国から到着した耳型と注文書の写真 耳型と注文書は1件ごとにトレイに分けられ、各工程へ。

【成型工程】
送られてきた耳型から必要な部分だけ切り取って、歯科医院で使われているものと同じ道具で耳型を削り、耳に出し入れしやすい形に整える。

耳型を研磨中の写真
繊細な指先の動きが、オーダーメイドならではのフィット感を生み出す。
アタッチメントを取り替えて耳型を研磨中の写真
アタッチメントを取り替えながら研磨し、微調整を加える。

形を整えた耳型をワックスコーティング。一つ一つの大きさや曲がり方が異なるので、どの部分にも同じように均一にワックスを塗布するのが職人技。

ワックスコートされた耳型を元に、シェルの抜き型を作る。この型に光硬化アクリルを流せば、肌色のシェル本体がようやく登場。

シェル本体を研磨中の写真
型から抜かれたシェル本体にも、さらに緻密な研磨が加えられる。
研磨用アタッチメント各種の写真
こちらにも、また種類の異なるアタッチメントがいっぱい。

さらに、耳に入れた時の閉塞感を軽減させるために、直径1.0〜1.3ミリのベント(通気孔)を設ける。シェルはこれで出来上がり。

シェルに通気孔を設けている写真 シェルに合わせて、ベントの直径も変える。0.1ミリ単位の作業だ。
【組立工程】
アンプ、レシーバー、マイクの3つの部品をケースに組み込む。どのように配置すればうまく収まるか、その場で設計検討を加えながらの作業になる。
小さな3つの部品をシェルに組み込んでいる写真
各部品の位置関係は、個体ごとに微妙に異なる。
組み込んだ部品を固定中の写真
部品を固定中。ペンと比べるとその小ささがよくわかる。

【仕上げ工程】
パソコンで、それぞれのモデルの基本音響特性をICに書き込み、お客様の聴力に基づいてチューニングするデジタルならではの工程。アンプ、レシーバー、マイクの3部品のバランスをふまえ、聞こえが悪すぎることも過敏すぎることもないように調整する。

その後、お客様の聴力をコントローラで入力してカスタマイズ。そのためのプログラムは吉住さんが開発した。このあたりの技術的なノウハウが、性能に定評のある「松下の補聴器」を形づくる。

フィッティング用コントローラで調整している写真 最新のコントローラは、「こもらなくする」、「自分の声を大きく」など、
より判りやすい言葉によるパラメータ設定ができる。
【完成・検査】
音響特性評価。テストボックスに製品を入れ、音響出力などのスペックを最終評価する。一個ずつに付ける性能評価書も作成。
密閉された音響特性評価室の写真
厚い扉で密閉された音響特性評価室。
音響特性チェック用のテストボックスの写真
テストボックスも、さらに外部からの音を厳重にシャットアウトする構造。
【出荷】
仕上がった補聴器は、ここで梱包・発送作業を行い、専門店へと出荷されていく。店頭では、お客様に一度装着していただき、再度フィッティングと微調整を加えた後、お渡しする。
出荷作業の写真 箱の中に見えるのが、補聴器を収めるケース。青色が左耳用、赤色が
右耳用と決められている。

聴力の大切さと、補聴器づくりにかける信念

小型化により目立たなくなった、とはいうものの、まだまだ「補聴器」イコール「年寄りくさい」、または「つけるのが恥ずかしい」と思い込まれておられる方も少なくないのではないでしょうか。またもメガネを例に挙げますが、視力不足を補うためのメガネは、世代に関わらず使われていることもあり、ファッション性に富んだデザインも多く、おしゃれのひとつとして一般的に受け止められています。それに比べて補聴器は・・・。

「“彩(AYA)PLUS(アヤプラス)”はそんな先入観をなんとか打破したいという願いをこめて開発しました。6色の電池カバーをその日の気分や洋服の色に合わせて付け替えていただいて、補聴器をおしゃれのアイテムのひとつとして楽しんでいただきたいと」

と、吉住さん。最初に見せていただいた時にも思ったのですが、シェルの色がこれまでの補聴器とは違い、少し濃いめの肌色になっています。

「これまでは、“目立たないように”なるべく皮膚の色に近づけていたのですが、この商品のシェルはあえて茶系にしています。どうですか?一見したところ、補聴器には見えないでしょう?」

確かに従来の補聴器とは全く別物。カバーのシルバー色のメタリック感と相まって、“新型のインナーイヤホン”と言われれば、私ならあっさり信じてしまいます。もともとサイズも小さいので、正面からは装着していることはまずわかりません。「おしゃれのアイテム」という表現にも納得です。

オーダーメイドデジタル補聴器“アヤプラス”のカラー電池カバー
補聴器という概念に変革をもたらした、斬新なスタイル。装着したまま携帯電話が使えるなど、「聴こえ」の技術も最先端。
従来の補聴器と“アヤプラス”の比較写真
左が通常の肌色。右が「彩(AYA)PLUS(プラス)」で、シェルはあえて茶系に。
“アヤプラス”を装着した写真
「彩(AYA)PLUS(プラス)」を装着したところ。従来の補聴器と比べ、かなりスタイリッシュ。

「業界にも、お客様の“補聴器”という概念にも、新しい風を送ることができたのでは、と自負しています」

しかしながら、目立つ、目立たない以前に、補聴器そのものを使われることに抵抗を示される方の数もまだまだ多いのが現状です。

「そうなんですよね。ですが、どうか“聴く”ことをあきらめないでほしいと思います。難聴の疑いのある方が何も対処しないままでいますと、聴力以外のところで支障が生じてきます。耳がよく聴こえないと、誰でも人と会話をするのがおっくうになりますよね。そうして人と話す機会がなくなると精神的な刺激が減って、ご高齢者の場合は痴呆が進行するとも言われているんです」

難聴の方が、人とのコミュニケーションや、社会の情報から隔絶されるのを防ぐためにも、補聴器の重要性をもっと認識していただきたい、と吉住さん、前野さんは声を揃えます。

吉住 嘉之氏の写真
「難聴で困っておられる方に、もっと気軽に補聴器を使っていただきたい。そしてより豊かな人生を送っていただきたいと思います」

最後に、「お客様と接する中で、こんな出来事がありました」と、前野さんがご自身の体験談を語ってくださいました。

1980年、松下が初めて骨伝導型補聴器(耳近くの骨を振動させて音を伝える補聴器)を発売した時、前野さんは販売店で先天性伝音難聴の男の子のフィッティングに立ち会う機会がありました。その男の子は当時小学2年生。この世に生を受けて以来、「音」を聴いた経験のない彼が、その骨伝導型補聴器をつけ、生まれて初めて「音」を聴いたのです。男の子は、その瞬間、表情がパッと明るくなり、喜びを全身で表現されたとか。

「そもそも、私たち製造部門の者は、実際に製品をお使いになるお客様のそばに立ち会う機会があまりないんです。そのせいもあって、そのお客様との出会いは本当に印象深いものになりました。お客様ひとり一人に合った製品をお作りして、それぞれの方に喜んでいただける。そんな経験は補聴器ならではだと思います。その現場に自分が関わっていることを誇りに思うと同時に、企業価値というものはこういうところにあるのだと改めて認識できました」

前野 進氏の写真
「これからもお客様の声を直に聞く機会を設け、品質チェックに生かしていきたいですね」

世にある福祉機器全般についても、本来は、使用者ひとり一人の要望に合わせて作り上げるのが理想です。例えば介護の現場で利用することの多い車いすひとつを例にとっても、体格にまるで合わないサイズを我慢して使うより、使用者の体格や体の症状に合わせて座幅や車軸の位置などを設定できる方が使いやすく、疲れにくいに決まっています。とはいえ、個人用に微調整した上で納品される製品はそう多くはありません。そう考えると、補聴器の世界で職人技で手がけられるオーダーメイドが当たり前になりつつあるのは、時代に先駆けた歓迎すべき流れではないかと思います。

もっと多くの人たちが肩肘はらずに補聴器を使える時代は、すぐそこまで来ているような気がします。自分仕様の心地よい「聴こえ」を得られると同時に、作り手たちの息吹まで聴きとっていただければ・・・小さな補聴器を手にしながら、そんなことを考えました。

補聴器の電池カバーを開けたところの写真 デジタル技術で小型化が進んだ
補聴器。その電池には、こんなに
小さいサイズでも交換を容易に
する細やかな配慮が・・・
「進化し続ける“包装”〜松下の包装技術〜」
第2回 ユーザーへの細やかな配慮
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