空気から、ストレス社会をこう変える!

気流の制御力で公共空間を変える

実証実験が駅待合室の常識を変えるきっかけに?気流制御の新しい可能性に挑戦

交通施設における空調の問題点とは

駅のホームは、待ち時間の長さによっては体力が低下して体調を崩したり、暑さや寒さによっては厳しい環境になることがあったり、快適性の面でまだまだ課題があります。とはいえ、公共空間に壁や扉を設置するのは容易ではなく、「人の流れを妨げずに空気環境を整える」ことが求められてきました。

交通施設の気流制御で空気をどう変える?

パナソニックの気流制御技術は、風で暖気や冷気を閉じ込め、扉がなくても空間ごとの温度環境を維持。ブース内の冷暖房した空気を外に逃がさず、快適空間を保ちます。人は自由に行き来しながら、気づかぬうちに快適な空気に守られているー そんなユニバーサルな空間を、駅という交通施設に実現していこうとしています。

1大阪ではじまる新しい事例「気流のおもてなし」実証実験

駅のホームで電車を待つー 日常の一場面です。しかし、夏は蒸し暑く、冬は底冷えするホーム環境に、知らず知らずストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。
そこで始動したのが、Osaka Metroとパナソニックによる実証実験。2025年2月から、中央線朝潮橋駅にて「扉のない駅待合ブース」の試験運用が始まりました。外気が吹き込む駅構内において、冷暖房した空気を“逃さず”に保ち、快適な待合スペースを実現する。しかも、前面には扉も壁もないー そんな一見矛盾をはらんで見えるような試みが始まりました。
この取り組みの中核をなすのが、パナソニックの「気流制御技術」です。

2Osaka Metroの実証実験から始まる、高齢者対策・熱中症対策の先進事例

背景には、気候変動と都市部の高齢化という、社会課題があります。ホームでの待ち時間はときに10分以上に及ぶこともあり、その間、熱中症や寒暖差による体調不良が懸念されます。特に夏場の暑さ対策は喫緊の課題。昨今の気候変動により猛暑日数が増加しており、熱中症被害も激増しています。たとえば大阪市の猛暑日(1日の最高気温が35℃以上の日)は、2024年に41日間計測されており、これは2022年の3倍の日数。とくに高齢者にとって、ほんの数分の「暑さ」が体調に与える影響は甚大です。
今回の実証実験では、駅構内の限られたスペースに「扉のない駅待合ブース」を設置。自然に人が出入りできるオープン構造ながら、その内部は冷暖房が機能しており、快適な体感温度となるよう維持されています。また従来の待合室にあった扉が無いので、扉の開け閉めの手間なく利用することができます。
「人の流れを妨げずに空気だけを制御する」ー これは、パナソニックにとっても新しいチャレンジです。そしてその実現には、高度な空調・気流設計のノウハウが求められます。

扉のない駅待合ブース(Osaka Metro中央線朝潮橋駅)
扉のない駅待合ブース(Osaka Metro中央線朝潮橋駅)

3パナソニックの「気流制御技術」で交通施設に新風を吹き込む

パナソニックが得意とするのは、空気を送り出すだけでなく、“気流をコントロールする”技術です。たとえば、冷気がブース外に漏れないように、ベンチ背面に設けた送風機器が冷気を「ゾーニング気流」によって閉じ込めます。また、ブース内の暖気・冷気がブース外に漏れるのを抑えつつ、ブース内の快適温度を維持します。

「人」フォーカスし、空調能力を最大化する気流設計
快適性を重視し、空調能力を最大化する気流設計

この気流設計は、空間全体に壁や扉を設けなくても、空間ごとに「空気のゾーニング」ができるという新しい発想に基づいています。従来は建築物として“囲う”ことでしか分断できなかった空間の境界を、今や風の力で描くことができる。これは、パナソニックが長年にわたり、産業用施設や大型商業空間でつちかってきた技術があってこそ可能になりました。

4待合室に扉なし!日本初※の「扉のない駅待合ブース」で省スペース&省エネにも挑戦

この「扉のない駅待合ブース」は、日本初※の取り組みです。大きな扉や仕切りを必要とせず、限られたスペースにすっと収まるため、既存の駅構造にも柔軟に対応できます。また、常時扉の開け閉めを伴わないため、可動部の劣化やメンテナンスの負担も抑えられます。
さらに、省エネという観点でも大きな期待があります。気流を的確に制御することで、ブース内の空調効率を高め、冷暖房エネルギーのロスを最小限に抑えます。実証実験の過程では、ブース内の温度分布や消費電力量の推移も細かく計測しており、多様な駅へと展開する際に必要なエビデンスが蓄積されていきます。
今後は、交通施設だけでなく、商業施設、公園などの屋外/半屋外の空間でも同様の技術展開が期待されます。「パナソニックの気流制御技術が、公共空間を快適に変える。」パナソニックは、そんな未来に向けて挑戦していきます。
※国内の駅ホームにおける冷暖房機能を有した待合室として。2025年2月当社調べ