テレワーク
2021.05.31
テレワークでモチベーションを維持するためには?アンケート調査からみる課題と解決策
新型コロナウイルスの流行から積極的にテレワークを導入する企業が増え、働き方が多様化しています。テレワークは会社にも社員にもさまざまなメリットがある一方で、「社員のモチベーションを維持するのが難しい」という課題も浮き彫りになってきているようです。
新しい働き方をうまく取り入れるには何が必要なのか。テレワークが持つ課題をみながら、解決策を考えていきましょう。
テレワークとは?働く場所や頻度に決まりはある?
テレワークは、インターネットなどを駆使した、場所・時間に縛られない働き方のことです。オフィスに出勤しない働き方のことを指しており、在宅勤務以外にも、サテライトオフィスを利用した勤務やワーケーションなどもテレワークのひとつです。
※サテライトオフィスとは
本社とは別の場所に設けたオフィスのこと。支店や営業所とは設置のための考え方が異なり、サテライトオフィスは従業員の働き方に焦点を当てて設置される。
※ワーケーションとは
帰省先や旅行地でテレワークを行うといったような、休暇と仕事を兼ねた働き方のこと。
また、現在テレワークを導入している企業でも会社によって実施の頻度はさまざま。基本的に常時テレワークの会社もあれば、週に数日もしくは月に数回など、状況に応じてテレワークを取り入れている会社もあるようです。
テレワークは比較的自由度が高いため、社員にとっては移動時間の削減やプライベート時間の充実など、さまざまなメリットがあります。
また会社にとっても、育児や介護などが理由での離職を防いだり、オフィスコストや通勤手当が削減できたりと、多くのメリットがあります。
アンケートからみるテレワーク下でのモチベーションの変化は?
メリットの多いテレワークですが、もちろん課題もあります。とくによく挙げられるのが、社員のモチベーション維持に関する課題です。
2021年に株式会社ネクストレベルが行ったアンケート調査(テレワーク導入中の男女300名が対象)によると、なんと97%以上の人がテレワーク中に「モチベーションが下がった・集中が切れたことがある」と回答しています。
移動時間の削減などがテレワークのメリットである反面、とくに在宅勤務であれば気持ちの切り替えが難しいこともあるようです。
また、2020年に株式会社リクルートキャリアが行ったアンケート調査(コロナ禍でテレワークを導入した2,272名が対象)では、テレワーク実施前後でのモチベーションが比較されました。
その結果、働くモチベーションが「やや低い」もしくは「非常に低い」と答えた人が、テレワーク実施前は14.1%だったのに対し、テレワーク実施後は22.5%まで増加しています。
反対に、働くモチベーションが「非常に高い」もしくは「やや高い」と答えた人は、テレワーク実施前は26.5%だったのに対して、テレワーク実施後は25.9%と若干ですが減少。やはりモチベーションの維持が課題であることがうかがえます。
では、テレワークにおいてモチベーションを維持するには、どうすればよいのでしょうか。解決策を探る前に、まずはモチベーションが下がる原因についてみていきましょう。
モチベーションが下がる原因とは?
テレワークでモチベーションが下がる主な原因には、次のものが挙げられます。
気が散りやすい
在宅勤務の人はとくに「気が散る」と感じることが多い様子。他人の目がないため、ついテレビやスマホをみてしまったり、家事に手を出してしまったりするようです。
先ほどのアンケート(株式会社ネクストレベル)でも、モチベーションが下がった理由として「ついスマホやテレビをみてしまう」と答えた人は60.0%。24.7%の人が「家事が気になる」と回答していました。
また、家族の話し声や子どもの泣き声に意識が向いてしまうという人や、夫婦ともにテレワークの場合、お互いにオンライン会議などの音声が気になってしまうこともあるようです。
メリハリがつきにくい
こちらも在宅勤務にありがちですが、「メリハリがつきにくい」と感じる人もいます。テレワークでは勤務時間の自由度が高いことが多く、ダラダラ寝てしまうなど、なかなか仕事へと気持ちが切り替えられない人もいるようです。
これは、本来テレワークのメリットであるはずの「通勤時間がない」という部分が、反対に気持ちの切り替えをしにくくしているのかもしれません。
また、少し休憩するつもりでスマホやテレビなどをみはじめると止まらなくなってしまい、業務に戻りにくくなるということもあるようです。
仕事の全体像が把握しにくい
社員個人の意識にまつわるものとは別に、テレワークならではの業務の進め方が原因でモチベーションが下がることもあります。
テレワークでは、自分以外のほかの社員の仕事内容がなかなかみえてきません。そのため、「全体の進捗がみえにくい」と感じる人もいます。チームで仕事をしている実感を持ちにくく、それがモチベーションの低下につながるようです。
また、テレワークによりそもそもチームでの仕事が減った、もしくはコロナ禍で準備不足のままやむを得ずテレワークへ移行した会社もあるでしょう。こうした、今までと違う環境やそれから起きる不安などが、モチベーション低下につながることもあるようです。
上司や同僚とのコミュニケーション不足
テレワークを導入することで「上司とのコミュニケーションが取りにくくなった」と不安を抱く人もいます。仕事を進めるなかで、ちょっとした疑問点があったとしても「わざわざメールにするほどのことでもない」と聞きにくさを感じる人がいるようです。
テレワークにより社員個人がひとりで判断をしなければならない場面が増え、その結果、社歴の浅い社員はとくに不安に陥りやすくなります。同じ空間に上司や先輩がいるオフィスワークと比べると、やはり質問のしにくさが課題となるようです。
また、「仕事の合間のちょっとした雑談がしにくい」と感じている人も。雑談をメールなどで発信することは、疑問点の質問よりもさらにハードルが高くなるでしょう。こうした簡単なコミュニケーションの減少は、テレワークのメリットとして「ストレスが減る」と言われることもあります。しかし反対に、コミュニケーションの減少によりリフレッシュがしにくくなることもあるようです。
さまざまなモチベーションの低下の原因がありましたが、これらは、会社や社員一人ひとりの工夫次第で防ぐことができます。次からは、テレワークでモチベーションを維持するための具体的な解決策をみていきましょう。
【システム編】モチベーション低下を防ぎ、集中力をあげる解決策とは?
テレワークにおいて社員のモチベーションを維持するために会社側ができることを、まずは制度の面からみていきます。
コミュニケーションツールを活用する
テレワークでの業務を円滑に進めるためには、ツールの活用が欠かせません。
とくに、コミュニケーションツールは重要。なぜなら、モチベーション低下の原因となりやすい「コミュニケーション不足」を解消しやすくなるからです。
メールでのコミュニケーションは、いくら社員同士でのやり取りであっても多くの人が書き出しや件名などにも気をつかってしまいます。
その点、実際におしゃべりしている感覚でテンポよくやり取りができるチャットなどのコミュニケーションツールは、聞きたいことのみを文章にできるところがメリット。簡単な質問へのハードルがグンと下がります。
また「営業先でお褒めの言葉をいただきました」や「業務でこんな工夫をしています」など、誰かのちょっとした雑談が、ほかの社員のモチベーションをあげることもあるでしょう。
勤怠管理ツールを導入する
テレワークを成功させるためには、勤怠管理ツールも重要です。タイムカードの役割を果たし、働く側にとっては仕事とプライベートを区切るきっかけになります。
日報を送るシステムなどがあれば、みられている感覚もあり「ついスマホやテレビに…」といった現象を防ぎやすくなるでしょう。会社側にとっては、稼働時間・残業時間の管理がしやすくなるといったメリットもあります。
評価制度を見直す
テレワークの体制に移行するときは、人事の評価制度の見直しもポイントとなります。遠隔で仕事をするとなると、稼働した時間や作業結果などで評価を決めてしまうかもしれません。しかし、それだけではモチベーションが低下している社員を見落とす可能性があります。
どれだけ効率的に仕事ができているか、自身で目標設定ができているか、また会社の方針に沿った行動ができているかといった、結果に向けたプロセスはどうなのか、といった点も積極的に評価基準に加えていきましょう。
仕事環境を整備する
テレワークに移行するときは、慣れない環境に不安を感じる社員も多くいます。そして、不安を抱いていると、パフォーマンスを発揮しきれずモチベーションの低下につながることも。会社が仕事の環境を整えることは、社員の不安軽減につながります。
テレワークでは、会社側も「社員それぞれの業務の進み具合を把握しにくい」という悩みを抱えやすいです。一人ひとりのコンディションを把握できなければ、評価制度の見直しもなかなかできないでしょう。だからこそ、システムをうまく活用して進捗状況をみるようにすることが大切なのです。
コミュニケーションツールや勤怠管理ツールなどを通して細かく行動を分析したり、または組織内でのコミュニケーションを分析できるツールを取り入れたりするなど、環境を整備することはとても有効でしょう。
ほかにも、WEBカメラなどの機能を用いたオンライン面談を定期的に実施することで、社員が個人の悩みを吐き出しやすくもなります。
【メンタル編】モチベーション低下を防ぎ、集中力をあげる解決策とは?
モチベーションを維持するには、働く側もテレワークに合わせて意識を変えなければなりません。そこで、社員一人ひとりがどのようなマインドを持つべきなのか、会社から社員に対してできるアドバイスをご紹介します。
稼働時間や期日などのルールを設定する
自由度の高いテレワークでモチベーションを維持するには、自己管理能力が問われます。出勤時間の指定がなくても、社員それぞれが働く曜日や時間の目安を持ち、そのルールを守れるようにするといいでしょう。
ある程度業務のルーティンが決まっているなら、業務内容を細分化し「午前中にする仕事、午後にする仕事」と区切っていくと、モチベーションが下がりにくくなります。
また、会社が指定した仕事の期日よりも前倒しで提出できるように、働く側が自分のなかで新たに目標設定することも効果的です。そして、設定した期日は周囲にも伝えておくことで、ダラダラと働くことを防ぎやすくなります。
見られている意識を持つ
会社がツールを使って業務を管理していても、隣に上司や先輩の姿がないテレワークでは見られている意識を持ちにくいことがあります。誰とも顔を合わせない状況が続くと、部屋着やノーメイクのまま仕事をしてしまう人もいるかもしれません。
見られている意識を持ってもらうには、毎日WEBカメラを用いたミーティングを実施するなど、実際に顔を合わせる機会を作るのがおすすめです。着替えやメイクをきちんとするだけでも、仕事モードへ切り替えるきっかけが作れます。
仕事に向けて身なりを整えることは、モチベーション維持に一役買ってくれるでしょう。また、ほかのメンバーと話す機会を持つことで、連帯意識も感じやすくなります。
プライベートを充実させる
テレワークでは、移動時間など業務に関係のない時間を削減できるため、プライベートの時間を確保しやすくなります。そこで、仕事以外の時間を楽しんでもらうように配慮することも、モチベーションを維持するひとつの手です。
そのためには「プライベートの時間は仕事をしない」という空気を作ることも大切。テレワークではすぐにパソコンを起動できる状態であることも多く、気がかりなことがあると、業務時間外でもつい仕事に向かってしまう人もいるかもしれません。
しかし、プライベートの時間に仕事を持ち込むと「中途半端に常時オンの状態」になってしまい、モチベーションが低下しやすくなります。
仕事の心配ごとを残さないようにしようと思えば、仕事中に最大のパフォーマンスを発揮して、区切りのよいところまで業務をこなさなければなりません。プライベートを充実させるということは、結果的に集中力があがり、効率アップにつながっていくのです。
まとめ
テレワークの課題を解決するには、ツールなどを活用して環境を整備すること、そして新しい働き方に対する社員の戸惑いを払拭して、ルーティンを確立させることなどがポイントになります。テレワークがうまく機能するようになれば、社員の満足度も向上し、会社にとっても多くのメリットがあるでしょう。会社の環境整備と社員の意識改革でテレワークのメリットを最大限に活かしましょう。