「月刊HUDDLE MAGAZINE」Vol.108 2023年7月号にて、TE #87 西紋弘次選手のインタビュー記事が掲載されました。
『迷った時には挑戦する』
インパルスで培ったマインドです
TE #87 西紋弘次
近畿大学出身
パナソニック株式会社 空質空調社
マーケティング本部勤務
『一人のスターに頼らない全員フットボール』。2年連続ライスボウル進出を果たした強豪、パナソニックインパルスには創部以来貫かれている哲学がある。主力メンバーは大学時代の有名選手ばかりではなく、無名だった選手が欠くことのできない存在へと成長を遂げている例も少なくない。近畿大学1年時から負傷続き、4年時はディビジョン2でほとんど出場することができなかったTE西紋弘次は、インパルスで挑戦を重ね、日本選抜にまで成長を遂げた存在だ。
―― フットボールを始めたきっかけを教えてください。
西紋 中学生の時にケーブルテレビでNFL中継を見て激しいタックルや派手なパスプレーに憧れ、追手門学院高校でフットボールをはじめました。
近畿大学ではWR/TEで1年生の時から先発でしたが、ケガが多く、1年夏、2年秋、3年春と手首の舟状骨を3回骨折し手術しました。
チームは3年生のシーズンにディビジョン2に降格してしまい、主将を務めた4年生の時も入替戦で負けてディビジョン1に昇格できずに終わりました。怪我や若手の育成に力を入れるチーム方針もあって、試合になかなか出場できず、大学時代はまともに活躍できたという実感はありません。
それでもずっとフットボールが好きという気持ちは持ち続けていました。一度は日本一を争うチームでフットボールをやってみたい。当時近大のキャリアセンターにいらっしゃった鈴木仁GMにその思いを話すと「インパルスにチャレンジしてみたら?」と薦めていただきました。
—— インパルスにはどんなイメージを持っていましたか?
西紋 立命館大学や関西学院大学などの強豪校出身者が集まり、高い意識でフットボールに取り組んでいるというイメージでした。大学での実績がない自分が挑戦するのは勇気がいりましたが、ここでやらないと絶対に後悔すると考え、腹を決めました。面接では「就活を全部やめてきました。それくらい本気です」と、荒木監督に伝えました。監督には「ちゃんと他も受けた方がいいよ」と冷静に言われてしまいましたが(苦笑)。
コンバインはコンディショニング系のメニューが多く、大学で厳しい走り込みに耐えてきた成果が出せたと思います。
—— レベルの高い選手が揃う中で、自分は何で勝負しようと考えていましたか?
西紋 ブロック・ヒットは誰にも負けないという確固たる自信があり、貫き通した結果、1年目から出場することができました。自分の武器がインパルスでも通用したことは大きな自信になりました。
一方で、TEはパスキャッチもできないといけません。私はパスをとるのが本当に苦手で、3、4年目は足を速くしようとしてオーバーワークになってしまい、ハムストリングの肉離れに苦しみました。2019年のジャパンエックスボウル(当時)に、怪我で出場できなかった時は悔しかったですね。憧れていた日本一を争う舞台にたどり着いたにも関わらず、フィールドに立てない。その悔しさが、自分を奮い立たせてくれました。
—— 苦手だったパスキャッチは、どのように克服されたのでしょうか?
西紋とにかく数をこなしました。練習が始まる前にQBに協力してもらってキャッチボールし、練習がない日もほぼ毎日パスマシーンを使って100球キャッチを自らに課していました。1年間で高校と大学を合わせた数以上にキャッチしたと思います。
5年目ぐらいから練習が実を結んで徐々にパスがとれるようになり、ターゲットになる機会も増えました。
—— 現在の課題は?
西紋 社会人7年目にして恥ずかしいのですが、メンタルが課題だと思っています。練習では普通に捕れるパスでも、試合になると普段できていることができずボールを落としてしまう。試合でも安定してパフォーマンスできるように、最近は練習前に意識することを決めて書き出し、練習に臨んでいます。たとえばパスキャッチの時は捕った、落としただけではなく、手の出し方や目線の使い方など細かい所まで意識するようにしています。
—— インパルスの魅力は?
西紋 大学からのスター選手もいますが、インパルスで上達する選手が多いことです。私自身、確実に成長している実感があります。今年1月の『ジャパンUSドリームボウル』に全日本選抜チームに選ばれた時は、「遂にここまできたか」と感慨一入でした。
私もそうでしたが、大学で実績がなくても頑張ればうまくなれます。挑戦しようか迷っている人は、挑戦する道を選んでほしいと思います。
—— フットボールが仕事に役立っていると感じることはありますが?
西紋 たとえばLBにヒットする時、思い切り踏み込んで強くヒットするか、ミスしないように踏み込まずに待ち構えるかなど、フットボールではプレー中に判断を迫られることがありますが、私は迷った時には勝負することにしています。
営業の仕事も、たとえば、契約が取れれば大きな成果が得られる一方で、失敗するリスクの高いお客様が居られたとします。そういう時に少しでも可能性があるのであれば、私はアプローチし続ける方を選びます。実際にそれで契約に繋がったことがありました。可能性があると感じた時に、失敗を恐れずにチャレンジするメンタルは、フットボールで培われたものだと思います。
—— 今シーズンの目標は?
西紋 チームの目標は、もちろん日本一です。個人としては、自分自身が納得するプレーをして、他の人からも評価されるTEになりたいです。オールX選出を目指して頑張ります。
Koji Saimon
さいもん・こうじ。1994年10月29日大阪府吹田市生まれ。小学生の時は野球、中学生の時は剣道に取り組む。剣道は2段。追手門学院高校でフットボールをはじめ、TE/DEとしてプレー。DEとしても評価が高かったが、近畿大学でTEとしてプレー。4年時には主将を務めた。2017年インパルスに入団。2023ジャパンUSドリームボウル日本選抜。188センチ、100キロ。ベンチプレス155キロ、スクワット185キロ、クリーン140キロ。40ヤード走4秒8。仕事では空調設備の営業を担当している。