「古びた町外れにて」又は「台所」

Au vieux faubourg / La Cuisine

1937年 油彩(麻布で裏打ち)

場末の古びた台所を描いた作品。鍋には粗末な食べ物が煮え、薬缶の湯が沸いている。壁にはフライパンが3本、そして考え事をしているキリストらしき人物。印象的な赤い炎の上で煮える鍋の音―それは人間の日々の暮らしの音であり、人物はそれに聞き入っているかのようだ。ルオーは生涯、聖書風景と題する作品をたくさん残したが、特定の聖書の場面を描かず、人々の貧しく辛い営みが風景の中に組み込まれているものが多い。しかし、画家の信仰が強くなるごとにだんだんとキリストが画面に登場するようになった。小林秀雄が一度見て忘れられなかったと感銘を受けたルオー「聖書風景」の傑作の1点である。