布で巻くという発想
紙パック掃除機

紙パック掃除機の外観全体写真

ただ軽いだけではない、機能を犠牲にすることなく、軽量化した掃除機を届けたい。
そのためには、内部構造はもとより、外観素材や工法そのものから見直すことが必要だった。
美しい素材を纏ったそのプロダクトは、身体的な負担軽減はもちろん、家事に向き合う心理的な負担も軽くすることを目指した。

紙パック掃除機のハンドル部分のクローズアップ写真

素材が導くカタチ

5.0kgあった本体重量を2.0kgへ。革新的な軽さを実現するためには、内部構造だけではなく外装をも極限まで薄くするということが求められた。しかし、外装を薄くすると、当然ながら強度を保てない。その二律背反する課題解決はPPFRP工法との出会いによって大きく前進した。
シート状のPPFRP素材を見た瞬間に「一枚の布で巻く」というデザインイメージが浮かびあがり、その思いは最後まで貫かれ、カタチとなった。
※ PPFRP(PP繊維強化樹脂): 特殊な繊維を織り込んだ先端材料。この素材により軽さと強度を両立させている。 特殊な繊維を織り込んだ先端材料(PPFRP)の写真

飾らないことで飾る

繊維強化樹脂であり、布のようにさまざまな織り方ができるPPFRPだが、そのままでは荒々しく、外観への使用には耐えられるものではなかった。
しかし、この素材が秘める可能性を信じて、繊維メーカーとタッグを組み、糸のつくり方から織り方まで提案。工場とも一体となって、試行錯誤を重ね、軽さと美しさ、丈夫さを兼ね備えることに成功した。
だからこそ「素材そのものを見せる」デザインにこだわった。白い色は、糸そのものの色。清く、艶やかな白を、飾らずにそのまま見せることで、掃除機に求められる「清潔さ」を表現している。

伝統と先進を纏う

織り方にもこだわり、日本の伝統的な手仕事のもつ優しさ、温かさ、豊かさを「綾織」で表現。また、綾織は引っ張ったときに縦横均等に加重が分散されるため、同時にその強度を高めることもできた。
あえて繊維が見えるようにつくられたその姿は、どこか懐かしく、でも新しい。この素材が生まれたストーリーを感じてもらい、愛着を持ってもらうことで、末永く大切に使ってもらいたいという思いを込めた。

紙パック掃除機のハンドル部分の写真

使う人の姿勢まで美しく

使いやすさへのこだわりは、本体の軽量化以外にも徹底して行われた。ホースやノズルなどの徹底的な軽量化や、中の部品レイアウトをゼロから見直すことで、段差や敷居が多く、狭い日本の住空間でも、持ち運びやすく、スムーズに取り回せる快適な掃除体験を実現させた。
最新機種ではPPFRPを延長管にも採用。また手元動作を考慮した新設計により、負担軽減はもちろん、使う人の姿勢まで美しく見せるデザインを心掛けた。

紙パック掃除機の外観全体写真

心を動かし、くらしをつくる

掃除は、つらい家事の代表格と言われる。
しかし、人を見つめ、誠実にデザインされた快適な掃除機は、掃除を楽しい行為に変える可能性を秘めている。
掃除という行為へ、一層の満足感と心地よさを。
これからもどんどん変化していく生活スタイルに合わせて、使う人のことをとことん考え抜いたデザインを生み出していきたい。