全ての人のクリエイティビティを高め、最高のアウトプットを生み出す働き方をサポートする、そのような場所の在り方とは。この問いに、パナソニックのプランニング&デザイン・コンサルティング部門が向き合った。
WORKとLIFEが混じり合う、くらすように働く時代において、仕事での成果を生み出すことはWell-being(=幸福)なくらしを実現させる。まだ見ぬ価値の創造を求められる働き方において、SWiTCHという新しい文化を生み出すことでクリエイティビティを高め、最高のアウトプットを引き出すことが出来ないか。
そうして誕生したのが「SWiTCH SPACE」。単なる空間づくりではなく、人と場の関係性を紐解くことで導き出した、これからのワークプレイスの原型である。
「SWiTCH SPACE」とは?
近年、喫煙文化の衰退によりタバコ部屋が消えつつある。しかしこれにより失われる機能が2つある。ひとつは気分の切り替えを助ける「リフレッシュ」、もうひとつはWell-beingを向上させる「雑談」。「SWiTCH SPACE」はポスト・タバコ部屋として、雑談とリフレッシュの機能にプラスして「脳のスイッチ」をアシストする新しい概念の場所である。
「脳のスイッチ」とは?
クリエイテイブな人は脳の3つのサブネットワークを使い分けている。DMNは 「直観」を使って、アイデアの量をとにかく出すときに、SNは出たアイデアを「大局的」に3つに絞るようなときに、ENは絞られた3つを 「論理的」に1つに決めるときに使われる。クリエイティビティを高めるにはこのネットワークを使いこなす必要があるが、これらは回路スイッチのように簡単に切替えることができない。そこで活用するのが「SWiTCH SPACE」。自身が必要とするネットワークモードヘのスイッチをアシストする。
脳科学×空間により「脳のスイッチ」を促す
4ステップの行動デザイン
集中が途切れると、再度集中するまでに約23分かかると言われている。その中の約10分間に、脳科学に基づく行為と空間を掛け合わせた「Walk-Feel-Charge-Chat」の4ステップを体験することで 「脳のスイッチ」を促し、クリエイティビティや組織力向上をサポートする。
- step 01:Walk
- 有酸素運動の日々の習慣化により脳を鍛え機能を向上
- step 02:Feel
- 5感にゆらぎを与え脳をニュートラルな状態へ
- step 03:Charge
- スイッチしたい脳のモードに合わせSWiTCH FOODを選んでチャージ
- step 04:Chat
- 雑談による脳の活性化、生産性を上げるために雑談をしよう
新しい行動様式の文化
空間稼働率95.3%の高い利用率により、SWiTCHの文化が根付き始め、社員同士や上司部下でのコミュニケーションに変化が起き始めている。
常に利用者がいる状態が起きることで偶然の出会いが生まれ、偶発的なコミュニケーションとして雑談が生まれている。特に、疑似焚火付近での会話はリラックスした気持ちとなりやすく、喫煙を辞めたことにより会わなくなった同僚や先輩との偶然出会いや、上司と部下が相談を行う場に活用されるなど、コミュニケーションを通した組織力強化とアイデアの交換が行われている。短時間、複数回利用の利用者も多く、集中が途切れたからSWiTCHしにいく、という行動様式の文化が根付き始めている。
思考をエンカレッジする空間モデル「SWiTCH SPACE」
コロナ禍において働き方は最も大きな変化の最中にいる。自宅と仕事場、PRIVATEとPUBLIC、オンラインとオフライン、今までははっきりと分かれていたものが混じりつつある。境界が曖昧になりデジタルの波に飲み込まれる今の世の中で、ほっと一息ついて立ち返れる「間」が必要ではないか。そしてその空間は五感へのゆらぎを与える「SWiTCH SPACE」のような森的空間ではないか。
人類が誕生してから99%は自然の中でくらしてきた。未来を見据えることは過去に立ち返ることでもあり、脳科学の研究も遡れば人類が自然の中で生き抜くために培ってきた脳の機能に立ち返る。しかし、全てを過去に戻すことは難しい中、森的空間も膨大なコストをかけて室内でリアルな植栽を散りばめるのではなく、テクノロジーとの掛け合わせで様々な場所にインストール可能なモデルを探る必要がある。そして、そこには単なるリラックススペースではなく、人の機能をサポートしてあげられる仕組みが必要である。このような考えをコロナ禍の前から考え実現したものが「SWiTCH SPACE」である。
今後、SWiTCHという新しい文化を広めるべく、オフィスや自宅、サードプレイスに「SWiTCH SPACE」の要素を散りばめていき、新しい働き方を広げていければと考えている。