台座から伸びる支柱に取り付けた羽根が回転し、風を生み出す。扇風機の基本的な構造は、誕生以来変わらない。それは日本人にとって、夏の情景を懐かしく思い起こさせるアイテムの一つでもある。
当社にとって扇風機は、1913年に国内で初めて交流式の民生用扇風機を発売、以降100年以上に及ぶ歴史ある事業の一つである。今一度原点に立ち戻り、暮らしに品よくなじむ究極の扇風機をつくりたい、暮らしの中に凛とした佇まいで溶け込みながら快適な風を届けるという扇風機の本質を究めたい、そのような思いからこのプロジェクトは始まった。
長く愛されるデザインを目指して
新しい技術がすぐに古くなったり、誰でも物が簡単に作れるようになった一方で、すぐに壊れたり飽きられたりする物も多い。扇風機を長く愛着を持って使い続けてもらえるために、上質な家具のような存在になれないだろうか。そこで出てきたキーワードは「美しいプロポーション」そして「美しい素材感」であった。
凛とした佇まい
まずは軽やかさを感じさせること。全体バランスを縦長にとり、スッと背筋の伸びるイメージで、見た目の心地よさを生み出した。 扇風機は通常、羽根の背後に首振りモーターを配置する事が多く、どうしても上部が大きくなりがちである。RINTOはモーターを台座部分に移動することで、その問題を解決。更に羽根とガードの距離をギリギリまで詰めながら、支軸部分をガードで包み込み、全体的に後ろに向かってボリュームが小さくなる円錐台シルエットとした。ネジやビスも一切見えず、360度どこから見ても美しい。また、台座部分にモーターを入れるとぐらつきがちであるが、ベアリングを2個入れるなどして強固に固定し、見た目だけでなく高い品質基準も実現している。
素材の追求
ポール部分には、家具にもよく使われる格調高い無垢材を採用。“暮らしになじむ扇風機”という考えに至った初期段階から「無垢の木目」というキーワードは出ていた。しかし本物の素材を使うには、台座部にあるモーターの動きを羽根に伝えるため、無垢材に真っ直ぐな穴がくり抜かれる必要があり、そこには量産に耐える精度の高さが求められる。それは技術的に難しく、当初は張り合わせしかできないと言われていた。そんな時に猟銃作りの老舗である匠集団、ミロクグループと巡りあい、実現が叶ったのである。 楕円形状で木目の美しさが際立ち、端部の金属調キャップがアクセントとなっている。
滑らかな手触りの台座
陶器のような質感の台座部分
指触りのよいリモコン
陶操作部はピクトのみで表現。手に取った瞬間しっとりと指になじむ触感。
そこに在るだけで、空気感を変える
ディテールや素材感の追求をゼロから積み重ね、単に涼しいというだけでなく、存在するだけで心地よい、空間の格調を高める“凛”とした佇まいを実現。プレミアムな扇風機のひとつの究極の形が提示できたのではないか、と自負する。しかしこれで満足することなく、これからも愛着を持って使い続けていただけるものづくりを目指していきたい。
*本製品は販売を終了しています。