Electronics Meets Crafts: Engraving Phenomena
こころに深く刻まれた体験

日本の感性とモノづくり思想が生み出す「未来の豊かなくらし」


日本の感性とモノづくりの原点を探り、未来の豊かさを探求する共創プロジェクト『Kyoto KADEN Lab.』
京都の伝統工芸後継者によるクリエイティブユニット「GO ON」との第二弾は、素材やテクノロジーだけでなく、人が心地よいと感じる体験を追求する中で生まれた「 Electronics Meets Crafts:Engraving Phenomena(こころに深く刻まれた体験)」。
遠い昔から続く人の営みの中で培われてきた、これからも変わらない豊かさに繋がる価値を探求した。

写真:左から Hi to toki・Soyo gu・To gaku・Kasa・Oto no kotowari

真っ赤に燃える火
ふき抜けるそよ風
濾過された滑らかなあかり
生き物のように発する光の瞬き
音とともに揺らめく水

時を超え、これらの自然の現象と接する時に、人は美しさや心地よさを見出す。
「こころに深く刻まれた体験」を出発点に未来のカデンを探求し、体験を導く5つの現象を表現した。

Hi to toki

写真:Hi to toki

うつろいゆく熾火(おきび)に魅入る心地よい時間

木の爆(は)ぜる音、絶えず揺らめく姿、大きなエネルギーを感じる熱のある明かり。人が遠い昔から安らぎや美しさを見出してきた火は、いま、暮らしの中から消えつつある。それとともに火のもつ独特の美しさや火に魅入る心地よい時間も失われているのではないか。エレクトロニクスによってもう一度暮らしの中に火を取り戻し、人々が忘れかけている感覚を呼び覚ましたい。枝竹炭と電気制御技術を組み合わせることで、自然のかたちそのままに浮かび上がる熾火と艶やかに仕上げた木炭の器の魅力的なリフレクションが、うつろいゆく熾火に見入る心地よい「ひととき」を演出する。

Soyo gu

写真:Soyo gu

こころを満たす優しいそよ風

竹籠の技法による竹のソフトカバーを用いた大型の送風扇。そよ風のような風が吹き抜け、竹で編まれたカバーが優しくそよぐ。そよ風という心地よい体験を『頭の先からつま先まで優しい風を感じること』『静かであること』『風にそよぐ草花の様子』という3つの要素に分解し、テクノロジーと竹工芸のコラボレーションにより再度編み上げた。

To gaku

写真:To gaku

心地よいあかりに包み込まれる場

日本建築において光と空間の関わり方は海外のそれとは違い、力強い太陽光を空間の要素である建具に反射や透過させることで、『淡く、滑らかでやさしいあかり』に変換し、暮らしの中に心地よい場を作り出す。例えば、障子によって濾過され滑らかになり垂直面に拡散されたあかりや襖や屏風の箔(はく)の色を吸い込み淡い艶のある色づいたあかりなど、ライトユニットとさまざまなパーツを組み合わせる事で手軽に作り出し楽しむことができる。ライトユニットはバッテリー内蔵のため従来の照明器具のように天井や壁にしばられることがなく、未来の暮らしの変化にも応じて手軽に心地よいあかりが楽しめる。

Kasa

写真:Kasa

反応することで人の振る舞いを引き出す灯り

刺激を与えると消えてしまう照明。生き物のように、手荒く近づいたり触れたりすると消えてしまう灯りが、人とモノの新たな関係性を築く。モノが人の振る舞いを引き出す。壊れないように補強を重ねるのではなく、使う人からモノをそっと置く動作を自然に引き出すことで、結果、そのモノを壊れにくくする。モノづくりの考え方や、人の所作を変えるきっかけになるかもしれない、人とモノの関係性から未来を考える実験的な試みを目指した。

Oto no kotowari

写真:Oto no kotowari

音に見惚れる水紋の囁き

振動、水、光で生じる音の波形を眺めることで、音の変化や余韻をより繊細に感じ取る。現在、インターネットでの音楽配信サービスの普及などによって、人はさまざまな音を聞き流して生活しています。その中で『暮らしの中の音ひとつひとつに意識を向けていくこと』が次の豊かなくらしの一つであると考えた。人の感覚の中で最も多くの情報を感じ取る“視覚”を刺激し、音を記憶に刻み込むような忘れられない体験の提供を目指した。

写真:Kyoto KADEN Labでの作業やミーティング風景 顔写真:左から順に、森 恭平、エンリコ・ベルジェーゼ、椋本 真由子、武松 大介、杉山 勇樹