開会式のサプライズを支えたワールド・チーム
パナソニック アストロビジョン

アストロビジョンから花火が上がり開会式が始まる
フィールドに水をたたえた神秘的なスタジアム、開会を待ちわびる場内が暗くなり客席のペンライトが輝きを増す。古代オリンピックで競われた最初の競技、短距離走者のイメージを背景に、10、9、8...。心臓の鼓動のリズムに合わせて映し出される大画面の数字を見つめ、7万2千の観衆がカウントダウンの声を合わせる。
1896年に第1回近代オリンピックがこの地で開催されて以来、108年ぶりに故郷に戻ってきたスポーツと平和の祭典。3、2、1、0!...観客の視線をひとつに集めていたアストロビジョンの画面が一瞬暗転して火花を吹きあげ、それを合図にスタジアムの屋根からもいっせいに花火が上がる。

オリンピックの聖地での荘厳なセレモニー
オリンピックの開会式は、大会を印象付ける趣向を凝らした演出や華やかなセレモニーが繰り広げられ、スタジアムの観衆だけでなく世界中の人々が期待を膨らませて待ちわびる。なかでも、聖火への点火がどのように行われるのか、それは当日まで極秘にされるトップシークレットだ。
この開会式の演出に、いまや大画面のアストロビジョンは欠かせない。カウントダウンで花火を上げたアストロビジョンが、また美しい映像を映し出したのを確かめて、パナソニックのスタッフたちはいっとき胸をなでおろした。たった一週間前には、まだこの画面は組み立て作業にかかったばかりだったからだ。

工事が進むメインスタジアム
開幕を目前に控えた会場では、24時間体制で工事の最終仕上げが続けられていた。会場が完成してから設営作業をおこなうアストロビジョンのスタッフにとって、工事の遅れはそれだけ、自らに残された時間が僅かになっていくということだった。今回のアテネ大会で、パナソニックはこのメインスタジアムの2面の大画面をはじめ、各会場に14面のアストロビジョンを設置することになっていた。
アテネでアストロビジョンの設置を担当するのは、ヨーロッパを拠点にイベントやスポーツ大会での設営をおこなう精鋭のスタッフたち。世界の様々な国から集まった技術者集団に日本からのスタッフも加わったワールド・チームには、限られた人数で、いくつもの会場の大画面を一気に組み上げるという課題が突きつけられた。

アストロビジョンリーダー、ヘルナンポブリート
イベント会場での大画面は、すべての人々の視線が集まる場所。決して失敗は許されない。まして、世界の人々が集うオリンピック。特に幕開けを告げる開会式では完璧すぎる準備をしてもやりすぎということはない。そのことを誰よりも知っているのは、アストロビジョンのスタッフを統括するリーダーのヘルナン・ポブリートだ。
「オリンピックでは間違いは絶対に許されません。特にこのアストロビジョンは、大勢の観客のいちばん目に付くところに置かれるものです。観客が選手を見た後に画面を見て、一部でも点いていないところがあれば、きっとみんなこういいますよ "あそこが黒いわ" って。私たちの仕事は裏方なのですが、最前列に立っているともいえる。それだけ責任は大きいんですよ」
カウントダウンの花火をはじめ、アテネの開会式ではアストロビジョンにからんだ演出のサプライズが用意されていた。責任はさらに重大だ。トップシークレットである聖火台への点火に関わる演出は、リハーサルさえ非公開で稼動確認をおこなうのである。タイトなスケジュールのなか、"絶対"を要求される作業に、アストロビジョンのスタッフは取り組んだ。

開会式のクライマックス、聖火台への点火
開会式で最初に登場したのは、400名の打楽器奏者だった。アストロビジョンが映し出す古代オリンピックが行われた競技場、そこに、同じ太鼓を持ったひとりの男。古代ギリシャの打楽器奏者と、スタジアムの奏者とのセッションが数千年の時を越えて、ここ、アテネで溶け合うという演出だ。やがてアストロビジョンの中の古代競技場から放たれた火が、スタジアムの水面に落ちて、炎で五輪のマークを描く。セレモニーの始まりだ。
DJが操るサウンドのなか、202の国と地域の選手達が続々と入場し、やがて日付も変わった頃、イベントのクライマックス、聖火台への点灯だ。アストロビジョンの背後にそびえ立つ聖火台への点火をどうやっておこなうのか、スタジアムの観客、選手だけでなく世界の39億の人々がテレビを通じて見守る。

開会式から閉会式まで、連日アストロビジョンに観客の視線が集まった
最終聖火ランナーが向かうその先には、静かに下に向かって傾く聖火台があった。巨大なアストロビジョンはいったん映像を映すことを止めて、点灯のじゃまにならぬようその角度を変えていたのだ。
オリンピックの歴史で初めて、世界の5大陸をリレーしてきた炎が再びこの地に戻って聖火台にともる。ゆっくりと頭をもたげた聖火がアテネの夜空に輝き、アストロビジョンが再び会場の映像を映し出すとき、パナソニックのスタッフにもやっと安堵と感動の思いがわきあがる。しかし仕事はこれからなのだ。17日間の戦いは始まったばかりだ。
