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Behind the Scenes 2000年 シドニー エピソード2


サウンドがフィールドと客席をつなぐ

パナソニック RAMSA音響システム

連日盛り上がりをみせたボンダイビーチのビーチバレーボール会場

連日盛り上がりをみせたボンダイビーチのビーチバレーボール会場

シドニー大会16日間の熱戦は、シドニーのシンボル、オペラハウス前からにぎやかに幕をあけた。
この大会から正式競技となったトライアスロン。1.5キロのスイム、40キロのバイク(自転車)、そして10キロのラン。人間の体力の可能性に挑戦するかのような過酷な競技には、青く輝くシドニー湾、会場をつつむリズミカルな音楽、ハイテクを駆使したウェアやバイクが華やかに色を添える。104年のオリンピックの歴史の中で、またひとつ人々の注目をさらう新たな人気競技が登場したのだ。

オペラハウス前は各種目のスタートでありゴール。この、シドニーきっての観光地には大音量の音楽が鳴り響き、歓声がこだまする。スタートした選手たちがふたたび同じ場所に姿を見せるまで、観客は巨大なアストロビジョンに映し出される競技の経過と絶え間なく流れる音楽を楽しみながらゴールまでの時をスリリングに過ごすことができる。これも新しいスポーツ観戦のスタイルだ。

『これ以上良くなりようがない史上最高のオリンピック』
IOC(国際オリンピック委員会)のサマランチ会長が閉会式で絶賛したように、シドニー大会は数々の輝かしい実績を残した。世界から集まった国や地域は200。その中には個人資格で参加した東チモール、統一旗をかかげて入場した韓国と北朝鮮など平和へのメッセージを世界にアピールした国々があった。11,000人の選手は28競技300種目をハイレベルに競い合った。すべてがオリンピック史を塗り替えるスケールだった。

会場となった34の競技場、パナソニックのRAMSA音響システムとそのスタッフは、すべての会場で熱くわきあがる拍手や歓声を聞いていた。1984年のロサンゼルス大会以来、オリンピックをサポートしつづけてきたRAMSAにとっても、シドニー大会でのサポート規模は最大であり、新たな提案にあふれたものだった。

RAMSA担当 松下通信工業 AVマルチメディア技術部 主席技師 竹内 松巳

RAMSA担当
松下通信工業 AVマルチメディア技術部
主席技師 竹内 松巳

「オリンピックの競技会場の雰囲気は、大会ごとに驚くほど変わってきています。新しい競技ならなおさら。出場する選手にも観客にも、ノリや楽しさが必要とされるんです」
かつて、真剣勝負の競技会場では、音声といえば選手の名前や記録を伝えるアナウンスだった。いま、選手は、試合前には自分のお気に入りの音楽を聞きながらコンセントレーションを高め、客席の声援をエネルギーにスーパープレーを披露する。サウンドは、スポーツを牽引する重要な要素のひとつといってもいい。

「大会に先立って、34会場のすべてで、精密な音響シミュレーションを提案しました。屋内会場では、音の反響を考慮して、観客と選手がズレのない同じ音楽を聞けるように。野外会場では、いかに均質な音を行き渡らせながら不要な騒音を発生させないようにするか」
前回のアトランタ大会から正式種目として採用された新しい競技、ビーチバレーボールの会場でもRAMSAの真価は発揮された。

アトランタ大会では、ビーチから遠く離れた人工コートだった競技場は、シドニーで本物のビーチにやってきた。世界でも有数の美しさをたたえたボンダイビーチである。仮設会場としては最大の1万人を収容する観客席がコートをすり鉢状に囲み、選手たちの熱いプレーを間近で観戦できる。

高音質のホール用大型スピーカー

高音質のホール用大型スピーカー

“ボンダイ”とはオーストラリアの先住民族の言葉で「岩に砕ける波」を意味する。古来から美しさを失わず、世界中のサーファーがあこがれる波が寄せる海岸に、巨大なスタジアムが無粋に現れる。会場の建設には地元の抵抗もあった。

「シドニー大会はグリーン・オリンピックと呼ばれる環境を重視した大会です。各会場には、景観や自然を損なわない工夫や、会場外への音もれを抑える工夫を随所に施しました。なかでもビーチバレーの会場は、大音量の音楽が周囲への騒音にならないよう細心の注意をはらいました。ノリのいい音楽なしのビーチバレーなんて考えられないですから」

やがて大会が始まった。ボンダイビーチの波音を耳に、きめ細かな砂を踏みしめながら観客席へと入場した人々は唖然とした。スタンドに一歩足を踏み込むと、いきなりそこは青空の下のディスコだったからだ。仮設のスタンドを揺するような大音量、身体に響く重低音。白い砂のコートを囲んだ異空間が現れた。一定の方向に音を伝える指向性の高いスピーカーが、緻密な設計により、場外への音漏れを防いでいたのだ。

インターバルには、コートの周囲をMC(司会)が走り回って客席にウェーブを促す。「ここからウェーブ開始!」「こんどはそっちから!」「次は早く!」「もっと早く!」「超音速で!」「こんどはゆっくり」。メン・アット・ワーク、クイーン、ビレッジピープルといったおなじみのロックのフレーズからテクノ、ワルツまでが飛び出す破天荒な選曲に、観客たちは大笑いしながら立ったり座ったりを繰り返す。

足下のスピーカーは防砂用ビニールで保護された

足下のスピーカーは防砂用ビニールで保護された

観客の応援を味方につけ、選手たちはリズムよくプレーをこなしていく。この会場に対する地元メディアの評価は一変した。
「完璧の出来」「ビーチバレーの歴史上、もっとも優れている」
ビーチバレー女子で4位に食い込んだ日本の高橋・佐伯組も、会場の雰囲気を「緊張せずにいいゲームができる」と絶賛した。8強入りを決めたチェコ戦では、観客の大声援を背中に受け、17センチの身長差がある大型ペアをわずか25分でかたづけた。

各会場に音響システムを設置したRAMSAスタッフにとって、シドニーでは忘れられないエピソードがある。

トライアスロンの開幕を前にしたオペラハウス。そこでは景観を損ねないよう、隣接する公園にスピーカーが設置された。オリンピックで初めて登場する競技のために、機器の調整を重ねていたRAMSAのスタッフは、最終チェックの日に、音楽がかかった広大な公園を40分かけてひとまわりし、ひとつひとつのスピーカーの音を確認してから、音楽を止めた。その時、小さな女の子を連れた女性がスタッフに声をかけてきた。

「誰がこの音楽を止めたんですか」

スタッフは、オリンピックのためにテストをしていたことを告げると、その女性が寂しそうに言った。
「娘がさっきの音楽を聞いて、すごく楽しんでいたのに……」

RAMSAが奏でた音楽は、公園でくつろぐ人々の耳に心地よく届いていたのだ。スタッフはその言葉を聞いて、これまでの準備がうまくいっていることを確信した。
母親と女の子に「オリンピックを楽しみにしていてください」と答えたそのスタッフは、あと少しだけ音楽を流し、今度はそれを聞いている人々を眺めてから、会場をあとにした。

2008年10月1日、“松下グループ” は “パナソニックグループ” に変わりました。
このページには、記事制作時のまま旧社名が表記されている部分があります。


エピソード

【納入情報】
シドニー大会を支えたパナソニック
国際放送センターの放送システム設計、機器納入、メンテナンスを担当
パナソニックDVC−PRO50が公式放送機器に採用される
16会場に19面の大型ビジョンを設置
34会場とIBCの音響システムを構築ほか
  • DVC-PROデジタルVTR1000台
  • デジタルカメラ/カメラレコーダー300台
  • モニターテレビ4000台
  • その他周辺機器
  • アストロビジョン19面
  • RAMSA音響システム34システムほか