音にスポーツイベントの未来形を見た
パナソニック RAMSA音響システム

リフトに取り付けられたスピーカー
長野大会は、「美しく豊かな自然と共存する、ハイテクノロジーを生かしたオリンピック」をテーマに掲げていた。
音響システムを担当したパナソニックRAMSAにとって、このコンセプトをいかに実現させるかが課題だった。「環境にやさしい」音響とはどういうものか。
まずは、天然記念物であるアカハラやハチクマなどの鷹にも影響を与えないよう、近隣への音漏れを最小限に抑える必要があった。それでいて、会場のどこにいても最適な音量で聞こえなければならない。
スピーカーは、長野大会の1年前に行われたプレオリンピックで高い評価を得た指向性スピーカーが採用された。特定の方向だけに明瞭な音を飛ばす、野外イベントのスペシャリストだ。

屋外会場での課題に取り組んだ
屋外へのスピーカーの設置方法にも細心の注意がはらわれた。できるかぎり既存のリフトの鉄塔や、松の丸太、廃材などで作った柱に設置し、自然の木の場合は傷つけないよう、少しゆるめにとめていく。
しかし、すべての音響を計画通りにセッティングした後に最終チェックをかけたら、一部で音が聞こえない。
「おかしいと思い、もう一度その現場に立ち戻ったら、スピーカーが落ちて雪の下に埋もれてしまっていた」
その原因は、スキー競技が行われる深い山中を何度か歩くうちに、見つけることができた。――猿だった。自然の中に違和感なく組み込まれたRAMSAのスピーカーは、移動する猿たちにとって、一休みするのにかっこうのスペースとなっていたのだ。
「自然との共存」とともに、パナソニックがこだわったのが「ハイテクノロジー」の活用だった。
オリンピックの会場では、設置機器に様々な厳しい条件がつけられる。環境への配慮はもちろん、競技ごとに異なる屋内や屋外の会場での設営、刻一刻と変わる気象状況……その都度、柔軟に変化に対応し、あたかも最高の結果を弾き出すメダリストのごとく、タフネスでフレキシブルでなければならない。長野五輪でパナソニックが目指したのは「音響のトップアスリート」だった。

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スピーカーにもさまざまな工夫があった
深夜になるとマイナス20度まで下がり、1日の積雪量が2m近くになることもある豪雪地帯に設置するスピーカーには、特殊撥水加工された防雪ネットを採用し、また紫外線や温度変化に強い特殊樹脂製の外装によって、屋外での耐久性を格段に高めた。
リズミカルな音楽やライブアナウンスが、競技の演出に欠かせないスノーボード会場では、起伏に富んだ広いコースをいかにバラつきのないクリアな音質で繋ぐかが問題となった。
「デジタルでやってみよう。光ケーブルで伝送すれば、長距離の送信でも信号の劣化がない。これまでにないハイクオリティな音響演出が実現できるはずだ」
光ケーブルによる、サウンドのデジタル伝送システムは冬季オリンピック史上初の試みだった。
スタート地点とゴールとの標高差は290m。全長936mに及ぶコースのどこでも同じ音質、同じタイミングの音響を実現するために、コースに沿って18カ所36台の全天候型スピーカーが設置された。すべてのスピーカーは麓のゴール近くの音響室で一括してデジタル制御される。
「RAMSAならではの緻密な音響設計が、デジタルなら完璧に生かせる。目標は、“屋外で屋内会場並の音”の実現だ」

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音響室
標高が高く離れた場所にあるスピーカーへの信号は、まずコースの中間点にある無人の音響室へ光ケーブルによって送られる。そこで増幅され、スピーカーごとに最適なディレイがかけられることによって、コース上では均質な音となって聞こえるのだ。野外会場の複雑なサウンド調整も、デジタルシステムなら状況に応じてプログラミングされたデータを呼び出すことで、常に同じレベルで再現することができる。
選手がコースを駆け下りる時間はわずか1分ほど。しかし、その1Kmの間で複雑に変化するコース周辺のどこでも、音ズレのない明瞭な音が聞ける環境を作ることは想像するほど容易ではない。
『違和感のない心地いい音』それはオリンピック競技会場に集う選手や観客にとっては、あえて意識しないものであったに違いない。しかしその自然な音作りの背景にはRAMSAのハイテクノロジーと、スポーツイベントの未来形を模索する技術者たちの情熱が息づいているのだ。

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RAMSA担当
松下通信工業 AVマルチメディア技術部
主席技師 竹内 松巳
2008年10月1日、“松下グループ” は “パナソニックグループ” に変わりました。
このページには、記事制作時のまま旧社名が表記されている部分があります。
