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第6回 バリカム番外編・その2

『映画史100年・沈黙の革命』-デジタルシネマカメラ VARICAM- バリカムイメージ1
女性ライター:ますだきこがVARICAM開発チームの軌跡を追った
バリカムイメージ2
第6回 
バリカム番外編・その2
 
無鉄砲ながら着実に実績を積んできた
《バリカム》開発チーム。
そしていよいよ「突入せよ!『あさま山荘』事件」の撮影に
《バリカム》が使われる時がやってきました。
 
しかし、「あさま山荘」に
《バリカム》を使うことを仕組んだ阪本さんには
大きなプレッシャーがかかっていたといいます。
彼らの深い思いと苦労を一番知っているからこそ、
これで失敗すると
“みんなの苦労を水の泡にしてしまう”という不安…。
 
撮影監督阪本善尚さん

(瓜阪)
「“あさま山荘”のときにはプロトタイプが6台ありました。
  実際、撮影で使用したのは3台ですが、
  何かあったときには、すぐに対応できるようにはしていました」
 
えっ、撮影本番のときの《バリカム》は完成品でなく、
プロトだったんですか?
こわーっ!
 
(瓜阪)
「まあ、阪本さんは《バリカム》の生みの親ですし、
  操作に関しては一番熟知していた方ですから、
  僕達は安心していました」
 
安心していたって・・・のんびりしてません?
 
(河野)
「まず大泉のスタジオで1カ月ほど撮影がありました。
  もちろん、トラブルがあったときのために、
  代わりのカメラは用意していました。
  でもメインのカメラが凄く順調でしてね
  本当に、安心しました。
  このまま、極寒ロケも頑張ってくれよ!
  という気持ちでした」
 
極寒ロケ?ですかぁ
 
(瓜阪)
「そうなんです。
  昨年の12月、氷点下10度の新潟山中に浅間山荘のセットを造り、
  エキストラからメインの俳優まで、
  雪まみれになっての撮影です。
 
撮影風景02

  あの穏やかな阪本さんが、凄い形相で
  怒鳴り散らしながら指示を出していましたね」
 
えっー、氷点下何10度ですか!
 
(瓜阪)
「松下のスタッフは10人ほど、2日間、
  氷点下何10度の撮影現場に張りつきました。
  僕なんて上下5枚の重ね着、
  全身にカイロを貼り付けて現場にいたのですが、
  なんせ、八甲田山なみの環境ですから、
  そんなの全然役に立ちません。
  朝の6時から夜の10時までの撮影ですからねぇ。
  これ以上の過酷さはないだろう、という現場ですよ!
  そんな状況の中でも
  《バリカム》はメインの2台はもちろん、
  予備の3台目まで無事に働いてくれました」
 
撮影風景01 撮影風景02

凄い!タフな奴ですね。
 
(河野)
「ほんまですわ。
  終わりよければ全て良し。
  まあ、まだまだ僕達には終わりはありませんが!
  やはり、劇場用の映画を《バリカム》で撮影できたこと、
  そして日本でピカ一の撮影監督・阪本善尚さんが、
  このカメラを使った、ということが
  業界でこのカメラが知れ渡る一番のきっかけとなりましたね」
 
やっと、社内でも認められるようになったとか?
 
(瓜阪)
「パナソニックAVC社の社長がデジタルソフトラボに来られて、
  “君ら、ほんまよ〜遊んだな、
  今回のことで、君らがF1をやっているということがよくわかった。
  でも、赤字だけは出さないでくれよ”と・・・」
 
いやーっ、でもその一言は
この(裏)プロジェクトを
認めた!という一言ではないですか。
やりましたねぇ。
これで正々堂々の(表)プロジェクトになりましたね。
 
(竹内)
「やっと、という感じですね」

それで、その後の《バリカム》の
引き合いはどうです?
 
(河野)
「ガンガン行ってまっせー!」
 
(瓜阪)
「これが愉快なことに、
  S社の関連会社からミュージシャンの
  プロモ撮影に使いたいとのオファーがありまして、
  桑田圭祐の「東京物語」です」
 
ははは、それはとても愉快ですねぇ。
牙城のはじっこを少し削りましたか?
 
(河野)
「あさま山荘以来、劇場用映画にも
  結構引き合いが多くなりまして・・・」
 
えっ、もう映画も決まったんですか?
 
(瓜阪)
「夏休み上映の東映「仮面ライダー龍騎」も
  《バリカム》で撮影しています。
 
上映中の東映「仮面ライダー龍騎」
『仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』
©2002石森プロ・テレビ朝日・ASATSU-DK・東映

  モーニング娘の正月映画にも使われることになりました」
 
(河野)
「テレビはフジテレビの「恋愛偏差値」なんかもそうですね。
  この「恋愛偏差値」のクルーは、
  同局の「ナースのお仕事」を撮っていまして、
  今夏、公開された映画版は
  彼らがS社のデジタルカメラを使い撮影したものでした。
  ところがその後、あさま山荘の評判を聞いて、「恋愛偏差値」は
  《バリカム》で撮りたいということになって、
  現在、お使いいただいています」
 
あっ、そうなんですか。
私、あのドラマ観てました!
あの奥行き感がなんとなく違いますよねぇ〜
なんていいながら、よくわかりません。
なんせ、“沈黙の革命”ですから(笑)。
 
ところで、CMでもいっぱい使われていますよね。
当然、パナソニックのCMでも使っているのでしょう《バリカム》。
 
(河野)
「そりゃ当然ですわ!
  でも、ほんのつい最近からですけど」
 
プラズマタウのCM撮影現場

(瓜阪)
「最初は、テレビの制作になんとか入り込みたいと
  試行錯誤を繰り返し、いろんな人に助けられながら、
  また騙されながら・・・
  阪本善尚さんと出会い、
  同じ釜の飯を食べる!本当にそんな感覚で、
  みんなとこの《バリカム》の開発に賭けてきました。
  フィルムライクなビデオカメラの開発なんて、
  一見遠回りのようでしたが、
  映像の本質がやはりそこにあったからこそ、
  僕達にとっては近道だったようです」
 
(竹内)
「東映も、デジタルビデオカメラで
  フィルム的な質の高い映像が撮れるのかって
  最初は半信半疑でした。
  しかし、“あさま山荘”の成功で
  東映の岡田祐介代表取締役も
  今後、映画館のデジタル化や配信などを考えても
  《バリカム》の役割は大きいと認めています。
  もちろんコストパフォーマンス的にも」
 
映画館のデジタル化も進んでいる(シネクイント) 映画館のデジタル化も進んでいる(シネクイント)
映画館のデジタル化も進んでいる(シネクイント)

まあ、映画好きの私個人としては
コストパフォーマンスも大切でしょうが、
日本の映画製作会社はもっと
おもしろいものを創ってくれないと!
子ども騙しみたいな映画ばかり創ってるから
席が埋まらないのです。ブツ、ブツ…
すみません、つい愚痴ってしまいました。
 
やはり、次世代のクリエーターを育てるシステムづくりと
質の高いハードづくりが結びつけば、鬼に金棒!
日本の映画界と松下電器が手を組めば、
おもしろい映画がどんどん生まれてくるに違いない…
なんて勝手に夢を広げてしまいます。
 
(河野)
「僕達もこれでスタート地点に立てたところです。
  次は、S社と肩を並べ、その次には追い越し、
  そしてハリウッドさえ唸らせる、松下ならではの
  いろんなもん創りだしまっせ!」
 
かっこいい!
やはり最後は河野さんの
芝居かかった口上で終わってもらわないと!
でも「いろんなもん」って、
カメラ以外にもあるんですか?
 
えっー、今度は○○○○ですかぁ
 
このお話は、次の機会がもしあれば(?)
ご紹介できるかもしれません。
みなさん、楽しみにしてましょうね!
 
(終わり)

 

→第1回 ビデオカメラで映画撮影
→第2回 善尚さんは語る・その1
→第3回 善尚さんは語る・その2
→第4回 S社の牙城に“突入せよ”
→第5回 バリカム番外編・その1
→第6回 バリカム番外編・その2

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