Panasonic ideas for life

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第4回 S社の牙城に“突入せよ”

『映画史100年・沈黙の革命』-デジタルシネマカメラ VARICAM- バリカムイメージ1
女性ライター:ますだきこがVARICAM開発チームの軌跡を追った
バリカムイメージ2
第4回
S社の牙城に“突入せよ”
 
フィルムカメラの遺伝子を受け継ぐ
デジタルビデオカメラ《バリカム》の開発に
寝食を忘れるかのように、
パナソニックの開発チームとかかわり続けた
撮影監督 阪本善尚さん。
 
『あさま山荘』の撮影を終え、
ハリウッドの総帥達が集まる“撮影監督協会”に出席した。
そこで自ら開発にかかわった《バリカム》の話をした。
しかし、フィルム撮影が当たり前の(ランニングコストは関係ない)
彼らには、ビデオカメラをわざわざ使うメリットはないので、
《バリカム》の魅力はなかなか理解してもらえなかったという。
 
ただ、協会の長老である巨匠ウィリアム・フビバー氏は、
帰り際に阪本さんに声をかけ、こう言ったそうだ。
 
「私の人生の中で、
  音(サイレントからトーキー)、
サイレント トーキー

  色(白黒からカラー)、
モノクロ カラー

  そしてデジタルという
フィルム デジタル
  3つの映画の革命期を経験することになった。
  音と色の革命は、観客にも目に見えて判る革命です。
  しかし、デジタルという第三革命は
  観客には映像がどう変化したのか判らない<沈黙の革命>ですね」と・・・
 
沈黙の革命・・・
 
そうですよね。
確かに、私が『突入せよ!「あさま山荘」事件』を
映画館で観たときも、
この映画はフィルムで撮ったのか、ビデオで撮ったのか、
なんてことは判りませんでした。
というより、
やはり観客はストーリー重視なんです。
ある意味、知ったことじゃありません状態ですよね。
 
しかし“あさま山荘”とほぼ同時期に公開された
「模倣犯」も、スター・ウォーズ エピソード2でも使われている
S社のデジタルシネカメラHDCA24で撮影されたそうです。
 
私達は知らないうちに、
デジタルビデオカメラで撮った映画というものを
観ているようです。
 
現在、映像におけるデジタルという技術革命は
(悲しいことに、素人目にはわかりません)
映画、テレビを問わず着実に進んでいて、
とくに日本の映画界にとっては、
見て見ぬふりができないところまで来ています。
 
また、《バリカム》が成し遂げた“技”は
映像界に大きな波紋を起こしています。
ただ、この“技”に辿り着くまでに、
いえ、阪本さんという強力なメンバーを得るまでに、
開発チームには並々ならぬ思いがあったようです。
 
その頃の思いやご苦労を、、
《バリカム》開発チームにお聞きすることにしました。
 
インタビューに答えてくださったメンバーは4人。
 
劇団☆新感線の看板役者、古田新太似の
国内営業グループ プロAVチーム、
チームリーダー 河野弘人さん。
 
甘いマスクの持ち主、
同、プロAVチーム主任 瓜阪裕一さん。
 
技術論を熱く語らせると止まらない、
デジタルソフトラボ ラボリーダ 臼井晶さん。
 
柔らな口調で優しく技術を説明してくださった、
デジタルソフトラボ 主任技師 竹内明弘さん。
 
阪本さんに“悪ガキ連中”と言わしめるだけあって、
なかなか個性の強い方々ばかりです。
 
(瓜阪)
「松下電器が放送機器に取り組み始めたのは約30年前。
  しかし、放送機器の分野ではS社が先行し、
  既に、全世界の市場に何万台という
  ベータカムが納められていて、独壇場でした。
  現在もS社の製品を使わなければ
  放送の仕事ができない状況が続いています」
 
国内営業グループ 瓜阪さん 河野さん
(左)瓜坂さん(右)河野さん

(河野)
「つまり、僕らはずーっと二番手なんですわ」
 
(竹内)
「パナソニックが放送機器分野で
  認知されるようになったのは、
  デジタルビデオカメラのDVC PROシリーズが
  機動性が高く、ENG(ワンマンスタイル)のカメラとして
  報道番組用に評価されて、
  たくさんの局で使われるようになってからなんです。
 
デジタルソフトラボ 竹内明弘さん
竹内さん

(瓜阪)
「しかし、あくまでDVC PROは
  報道番組用として認知されたカメラ。
  ドラマなどの番組制作部に営業をかけても、
  全く相手にしてもらえませんでした」
 
(河野)
「実際、僕たちも報道用以外のカメラにどんな機能ニーズがあるのか、
  よく判っていませんでした。
  それなのに、ひたすら売ろうとしていたんですわ。
  営業の“業(ごう)”ってやつですねぇ」
 
(瓜阪)
「放送局は報道は100%社内制作、
  でもドラマなどの制作は7割が外注です。
  そこで制作プロダクションの人たちが
  どんな画を欲しがっているのかを知ることが必要でした」
 
(河野)
「そのために、映像を実際に製作する人たちに
  カメラを貸し出し、作品を撮ってもらうようにしたんです。
  そのとき、阪本善尚さんとの出会いのきっかけがあったんです」
 
(臼井)
「営業部隊がそのような動きを始めたのと同時期かなぁ
  1991年、パナソニックではプログレッシブの開発がスタートしました。
  プログレッシブはパナソニックのオリジナル開発なんです。
  1995年には日本テレビと共同で480pのカメラを開発し、
  報道用として納品しました。
  しかし、日本の全テレビ局の機材は全てインターレス。
  プログレッシブで撮った映像も、
  結局、インターレスで放送されてしまいます。
  ですから日本テレビに納品したカメラは、
  インターレスとプログレッシブのスイッチャブルでした」
 
デジタルソフトラボ 臼井晶さん
臼井さん
 
(竹内)

「また、2000年12月末に各放送局が一斉に
  BSデジタル放送を開始することになったのですが、
  720や1080といったHDに対応した編集室もあまりなかった。
  そこで、インターレス、プログレッシブ、720、1080といった
  全てのフォーマットに対応できる編集室を
  つくろうということになり、
  このパナソニックデジタルソフトラボを
  立ち上げたんです」
 
(臼井)
「全てのフォーマットに対応するということで、
  ここにはテレビ、映画を問わず
  あらゆるコンテンツを持つクリエーターが出入りします」
 
(河野)
「いろんな人たちが出入りする、ということは
  いろんな奴もいるわけで、
  カメラを借りるときは低姿勢で借りていくけど、
  撮り終われば、はいそれだけ。
  といういい加減な人間も一杯いました。
  僕らも見る目が甘いというか、最初はよう騙されました。
  最近はちょっと違いますよぉ(笑)」
 
国内営業グループ 河野弘人さん
河野さん

(瓜阪)
「僕達はその当時テレビ局だけを見て仕事をしてましたから、
  映画界の阪本さんの存在はある意味、
  “遠い世界の人”という感じでした。
  でも阪本さんが一番に僕達の存在を認めてくれたんです」
 
(竹内)

「阪本さんは、480iフォーマットのDVC PRO50で
  劇映画「6週間」を撮影されました。
  そのとき、480iでここまで出来るのなら
  より解像度の高い720、1080といったHDフォーマットを使えば、
  フィルムと同等の映像を撮れるのでは・・・と思われたようです。
  さらにこの作品のの技術試写会で
  松下ビデオカメラ研究所の田中尚樹と出会ったことが、
  私達との縁を深めたきっかけとなりました」
 
(瓜阪)
「その頃、パナソニックでは、
  720pカメラの開発に取りかかっていました。
  これは、デジタル放送の世界的規格基準が1080iと720pという
  ふたつの基準に決定したのを受け、
  松下では両方の機材を開発するが
  研究所ではS社がやっていない機材の開発をサポートをしよう、
  ということになったんです」
 
(河野)

「全米にネットワークを持つABCが、全てのデジタル放送に
  720pを採用することを決定したことも、大きかったですね。
  やはり、シェアを取りにいくならまずアメリカを目指すでしょ。
  いつまでも二番手はイヤですからね」
 
デジタルソフトラボの立ち上げ。
720pカメラの開発。
阪本善尚さんとの出会い。
そして、世の中の流れは、デジタルコンテンツの時代へ。
さまざまな条件が重なりあったとき、
《バリカム》へつながる道が見えてきたと言います。
 
彼らの強い思い!二番手からの脱却は
本来に狙っていた放送局という世界を飛び越して
映画という世界に突入していったのです、が・・・
 
この《バリカム》へつながる道、
実は会社には内緒の裏プロジェクトだったとか・・・
 
(河野)
「機材を売ってなんぼの営業マンが、
  わけわからん奴と何を遊んでるんや!
  という感じですよね。
  でも、クリエーターに技術を知ってもらうことが、
  一番の営業という考えはいまも変わってませんし、
  変えるつもりもありません」
 
いや〜、ほんとに劇団☆新感線の古田新太ばりの
大見得きってますやん!河野さん
かっこいいぃ
 
それぞれの決意と、思惑と、野望を包み込み
進み出した裏プロジェクト。
 
この全貌は次回に・・・

 

→第1回 ビデオカメラで映画撮影
→第2回 善尚さんは語る・その1
→第3回 善尚さんは語る・その2
→第4回 S社の牙城に“突入せよ”
→第5回 バリカム番外編・その1
→第6回 バリカム番外編・その2

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