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※過去に掲載された記事になります。内容は公開時のものであり、最新の情報とは異なる場合がございます。

第1回 ビデオカメラで映画撮影

『映画史100年・沈黙の革命』-デジタルシネマカメラ VARICAM- バリカムイメージ1
女性ライター:ますだきこがVARICAM開発チームの軌跡を追った
バリカムイメージ2
第1回
ビデオカメラで映画撮影

 
5月の下旬、松下電器のT氏に一枚の映画のチケットを手渡された。
『突入せよ!「あさま山荘」事件』。 
原田真人監督、東映配給の作品。
"とりあえず観てきてよ"という言葉に見送られて、
やってきたのが道頓堀東映。(濃いなぁ)
そんなに混んではいないでしょう…という私の読みは見事にハズレ、
劇場内はナニワのおじさん、おばさんで一杯!
さすが、道頓堀。
 
『突入せよ!「あさま山荘」事件』ポスター表
発売中
発売・販売:アスミック

この映画は、
佐々淳行氏著『連合赤軍「あさま山荘事件」』を映画化したもので、
佐々氏自身の役を、役所広司が演じています。
 
実際の「あさま山荘事件」は、
1972年2月19日から28日までの9日間、
軽井沢の「あさま山荘」に連合赤軍が人質を取り籠城したという
昭和史に残る大事件。
 
浅間山荘の写真
浅間山荘事件(写真提供=毎日新聞)

映画では、この緊迫する現場の状況をドキュメントタッチで描いています。
当時、警察庁警備局付警務局監察官
(…長い!警察官の警察官というべき職)として
現場の陣頭指揮に立つ主人公が、
組織の矛盾にいらだちを覚えながらも冷静に、
しかしときには熱くなり、
事件の解決に向けて奔走する姿を追っていきます。
 
『突入せよ!「あさま山荘」事件』ポスター表 映画写真

 
大袈裟な立ち回りもなく、
淡々と事件の経過を写し出すこの作品、
あまりの淡々さにシニカルな場面が
コミカルにさえ見えてくる…
感動!というよりも、苦笑!ってカンジ?
と、チケットをくれたT氏に報告したところ…
 
「実はこの映画、パナソニックのデジタルビデオカメラ
  《バリカム》で撮影したものなんだよね。
  でも、ビデオで撮ったと思えないほど
  フィルムっぽい映像だったでしょう?」とT氏。
 
はぁ?
ビデオもフィルムも一緒じゃないんですか?
 
するとT氏はあきれた視線を私に投げかけながら、
「あ、あのなあ…。
  仮に今までのビデオカメラで撮ったものを、
  劇場のスクリーンで映したら
  ギラギラするし、走査線が出て、
  誰もが違和感を感じるはずなのよ…たとえ君でも!」
 
そうなんだ…私は全く違和感なく観ていましたが
これって凄いことなんですかぁ?
 
「そう、凄いことなのよ!その凄さ、判からない?
  そうかぁ…やっぱり君には無理かなあ。」
 
な、何が?
 
「実は…
  映画好きライターの君に、
  この《バリカム》の開発ストーリーを
  追ってもらいたいと考えていたんだが…。
  うぅ〜、あまりにも素人過ぎて無理かもしれないねぇ…」
 
えっ!それって
もろ"プロジェクトX"って感じですよね。
いや〜おもしろそうじゃないですか!
それじゃ私は、女性版"田口トモロヲ"として
レポートすればいいですか?
やりた〜い!
 
「ほんま、お気楽な奴やなぁ…。
  よし、判った。
  僕がレクチャーしよう。
  だからちゃんと脳味噌にインプットしてくださいよぉ」
 
ということで、映像ディレクターの経験があるT氏に、
基本知識をレクチャーしていただくことに…
 
「では『週刊こどもニュース』レベルで説明しましょう。
  いいでちゅか?大丈夫でちゅね?」
 
それじゃ赤ちゃんレベルでしょうが。
 
「映画、つまりフィルムは、
  撮影から上映までの流れはこんな風になっています」
 
フィルム→現像→編集→映画上映館用フィルム→上映(映写機)
 
ふむ、ふむ。
 
「一方、テレビやビデオの撮影から放映までの流れは、というと、
  こういうこと…」
 
ビデオカメラ→編集→電波→TV(受像)
 
ふーん、そうなんだぁ。
こうして比べてみると、フィルムは目に見える「モノ」、
テレビやビデオは目に見えない「電気信号」、
同じ映像なのに、全く違いますねえ。
 
「じゃあ、少しだけ賢くなった君に質問!
  フィルムで撮ったものをビデオやテレビで放映することは
  あるでしょうか?」
 
それぐらい、いくら私でも判りますよ。
昔の映画を、テレビの「○○洋画劇場」なんかで放送してますよね。
 
「ピンポーン!
  レンタルビデオで借りる映画もそうなんですねぇ。
  つまり、『フィルム>テレビ・ビデオ』という変換は、
  昔からあるわけです。
  これがテレシネってやつ。
  テレビコマーシャルも、フィルムで撮影されたものが多いんだよね」
 
へぇ〜、そうなんですね。
 
「それでは、逆にビデオカメラで撮ったものを、
  映画館で上映することはあるでしょうか?」
 
うーん、どうだろう。
ホームシアターならビデオプロジェクターとか使いますけど。
 
「ふんふん、
  最近流行りのミニシアター系なんかでは、
  ビデオプロジェクターで上映するところもあるけど、
  大きな映画館のスクリーンで上映するには、
  まだフィルムでなけりゃ無理なんだよ」
 
それって、スクリーンの大きさによって変わるんですか?
つまり、何が言いたいの?
 
「何が言いたいかというと…
  撮影においても、上映においても、
  ビデオよりフィルムの方が表現力が“上”ってこと。
  だって、ビデオカメラは小さなテレビに映す映像クオリティで充分だけど、
  フィルムカメラは大画面になってもキレイに見えるクオリティが
  100年ものあいだ要求されてきたわけでしょう」
 

 
確かに、そりゃそうです。
 
「だから、テレビコマーシャルでも、音楽のビデオクリップでも、
  お金があればフィルム、お金がなけりゃビデオで撮影、
  となるのが、まだまだ常識なんですよ」
 
そうかぁ、映像表現メディアとしては、
ビデオよりもフィルムの方がエライってことですね。
それにお金もかかると。
 
「まあ、ビデオにはビデオにしかない映像表現の強みや魅力もあるけど、
  少なくとも『劇場用映画の撮影』という意味では、
  ビデオはフィルムに表現力で劣っている、と言っていいでしょうね」
 
うーむ、だとすると…
ビデオカメラなのに、劇場用映画の撮影ができる《バリカム》って
凄い奴だということが、私の脳味噌でも実感できましたぁ!
 
「どこで君は実感するんや…。
  で、《バリカム》の開発ストーリーを君に追ってもらうにあたり、
  まず、『突入せよ!「あさま山荘」事件』の撮影監督、
  阪本善尚さんに話を聞いてきて欲しいんです。
  実はこの人が、《バリカム》誕生のキーパーソンと言ってもいい。
  パナソニックのカメラ開発チームとともに、
  1年半の間、『フィルムライクなビデオカメラ』
  追求してきた人です」
 
おお、そんなスゴそうな方にお話を…。
 
でも…
ビデオより“エライ”というフィルム世界の巨匠である善尚さんが、
どうして格下のビデオカメラの開発に手を貸したんでしょうねえ…?
 
「そうなんだ!そこが取材のポイント!
  その謎を君に暴いてきてほしいのだよ。」
 
なるほど。
 
私自身が機械オンチ、という点で多少の不安はありますが…
え〜い、好奇心には勝てませぬ!
ひとまず《バリカム》開発プロジェクトにおけるキーパーソン、
フィルム界の大御所!撮影監督阪本善尚さんに
次回は当たって砕けろ!
(いえいえ、砕けてはいけません)

 

→第1回 ビデオカメラで映画撮影
→第2回 善尚さんは語る・その1
→第3回 善尚さんは語る・その2
→第4回 S社の牙城に“突入せよ”
→第5回 バリカム番外編・その1
→第6回 バリカム番外編・その2

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