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05 ノンフロン冷蔵庫


 
「目指そう!魔法瓶を超える究極の断熱!」 〜真空断熱材〜
02.蛍光灯を断熱材に入れる
松下冷機で、ノンフロンに画期的な省エネ能力を付加した冷蔵庫を作ろうという企画が持ち上がったのは、2001年の2月頃だった。そのためには、今までにない高性能の真空断熱材の使用が不可欠だった。
真空断熱材には、大きく分けて2つの製品が存在していた。ひとつは、ジャーポットに採用された、シリカ粉末を芯材に利用したタイプ。もう一つは、グラスファイバーを芯材に利用したタイプ。
このグラスファイバーを入れた断熱材は、ある所員の勘違いから生まれた。ある日、上門さんの元に商社から和紙のような素材の見本が送られてきた。上門さんは、その材料を別の研究に使うつもりでいたのだが、とりあえず実験室の机に置いていたのである。それを見つけた研究所員が無断で、真空パックしてしまったのだ。1時間後、シリカ粉末ではなし得なかった断熱性能と遭遇することになる。粉末ではない、繊維を使った断熱材の誕生である。所員たちが真空空間を作る材料を理屈で作り上げていくこととは別に、手当たり次第に材料を真空パックしていたかが偲ばれるエピソードといえる。
その後の試行錯誤により、繊維はグラスファイバーに落ち着いた。グラスファイバーのタイプは、耐熱の上限が60度ということで、100度近くなるジャーポットには使用できない。だが、断熱性能はグラスファイバーを使用した方が上である。ノンフロン冷蔵庫には、このグラスファイバーを利用したタイプを使用することになる。これがS-Vacuaと呼ばれる真空断熱材で、熱伝導率は0.0045W/mKという数値を記録していた。ここまで、なるべく数字や難しい単位は出さないで進めてきたのだが、ここは我慢して頂きたい。W/mKというのは熱伝導率を表す単位で、
6000枚以上の試作品を作ってきた真空包装機。食品用の真空包装機に特注のポンプを取り付け、より高い真空度と様々な実験評価ができるように改造したもの。先日、修理を依頼したところ、メーカーの担当者が「まだ、使っているんですか?」と驚いたという。すでに、骨董的価値が出てきそうな年期が入った製品。これが、Theノンフロン冷蔵庫を生んだと言っても過言ではない。
「調べて、作って、性能測って、全員朝から晩までひたすら作り続けて。その状態が1年弱続きました」。松下冷機株式会社冷機研究所 事業開発グループ平井千恵
U-Vacua開発の功労者ともいうべき真空断熱材研究室の第三世代の面々
 伝熱量(E)=熱伝導する面積(m2)/物体の厚さ(m)×熱伝導率(W/mK)×温度差
という計算が成り立つ。つまり、熱伝導率(W/mK)の値が小さければ小さいほど、伝熱量は小さくなり、エネルギーのロスが小さくなるということになる。
ちなみに、ジャーポットに使用されているA-Vacuaでは、この熱伝導率が0.0050 W/mKとなっている。ノンフロン冷蔵庫では、しかし、S-Vacua の0.0045W/mKよりも高い断熱性能が求められていた。
実は、さらに高い断熱性能の実現は簡単だった。
「S-Vacuaで使われているグラスウールの太さが約3ミクロンなんです。さらに細い1ミクロン以下のものを使えば簡単に性能をアップさせることができる。でも、それではコストがかかりすぎる。ほぼ10倍の単価になるんです。それでは、冷蔵庫の価格に跳ね返ってしまう。ノンフロンで圧倒的な省エネで、しかも価格は据え置き、という暗黙の前提があったんです。1ミクロンを使うわけにはいかない。だったらどうするか、という戦いが始まったんです」(上門一登)。
左は、従来のS-Vacuaのグラスファイバーの繊維構造。繊維がランダムな方向を向いている。それを右のように層状に加工する。こうすることで、できあがった断熱材の熱伝導率は1/2に半減する
材料は、3ミクロンのグラスファイバーで固定しても、その加工法により能力の差が出ることはわかってきた。従来よりメーカーから購入しているS-Vacuaの繊維はバラバラの方向を向いている。このうち、熱の伝わる方向を向いているグラスファイバーが、熱を伝えやすくしているのではないかということがわかってきた。グラスファイバーを使う真空断熱材では、断熱材の体積中、約90%まで真空にすることに成功している。この真空の部分は非常に熱を伝えにくい性質を持っている。だが、残り10%を占める芯材が熱を伝えてしまっている。なんとか、繊維を同じ向きにする方法はないか。研究所では第三世代とも呼ぶべき若いスタッフ達の試行錯誤が始まっていた。
「実験としては芯材の加工にだいたい30分かかるんです。真空にするのに、5分。それから、その断熱材を性能テストするわけです。毎日20枚くらいの断熱材をひたすら作り続けていました。朝から晩まで。3か月くらいで解放されるかなと思ってたんですけど、結局1年以上続きましたね、そんな作業が」と語るのは、入社5年目の平井千恵さん。作った試作品の数は、6000枚をくだらないという。
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研究室の設備のひとつに、「目指そう! 0.0010kcal/mh℃以下のVIP!」の落書きがある。谷本さんがちょっとした茶目っ気で落書きしたものだそうだ。だが、これが研究所の壁に大書された会社のスローガンよりも強く研究所員を力づけたことはいうまでもないだろう。「S-Vacuaで0.0045 W/mKを実現したのでさえすごいてって言ってたときに、0.0010 kcal/mh℃(0.0012 W/mK)ですからね。あり得ない目標。こんなもんできるか!って」と記念すべき初の0.0010W/mK台のサンプルを作った同じチームの湯浅さんたちは笑うが、夢の0.0010への情熱がS-Vacuaの倍の性能に迫るU-Vacuaを生んだといっていいだろう。
どんな加工をすれば、繊維が同じ向きになるのかはこれこそ企業秘密ということで明かしてもらえなかったが、半年以上にも渡る試行錯誤が実を結び、普通のもやもやしたグラスファイバーから繊維を層状に並べたグラスファイバーを作ることに成功した。これによって熱伝導率をS-Vacua の0.0045W/mKよりも大幅にアップした0.0025W/mKのU-Vacua が誕生したのである。
こうした努力があって、ノンフロン冷蔵庫に使う真空断熱材・U-Vacuaの目標値が出たのが2001年の夏頃。実証ラインが完成したのが、2001年の年末である。そして、2002年10月のノンフロン冷蔵庫の発売に至るわけである。
「目指そう!魔法瓶を超える究極の断熱!」の落書き
作られた試作品は、すぐにこの熱伝導率計測器でテストされる。所員たちは、このモニターに表示される「数値」に一喜一憂するのである
ここでU-Vacuaがどのように冷蔵庫の外壁に装着されるのかを簡単に見ていこう。冷蔵庫の外壁は、もっとも外側の金属パネルと冷蔵庫内側のプラスチックパネルの2枚で構成されている。この空間に、通常は硬質ウレタンフォームを注入するのだが、U-Vacuaを使っている場合は、外側の金属パネルの内側にU-Vacuaを接着剤で貼り付けるのである。それから、硬質ウレタンフォームを流し込むのは同じ。つまりノンフロン冷蔵庫は、これまでの断熱素材と真空断熱材の合わせ技で驚異の断熱性能を獲得しているのである。
真空断熱材でクスノキ1本分のCO2

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