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第2話 変わるUD、変わらないUD 〜照明器具/スイッチ/コンセント

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小川さんの写真
「第1話 UDの舞台裏」 「第2話 照明器具/コンセント」 「第3話 バスルーム」 「第4話 キッチン」
文 / 小川みやこ

第2話 変わるUD、変わらないUD〜照明器具/スイッチ/コンセント

UDの代表センシュを見に行こう

手元に、「住まいまるまるユニバーサルデザイン」というカタログがある。 前回ご紹介したUDの考え方が、どんな商品のどんなところに生かされているのか、一般ユーザーにわかりやすく説明したカタログだ。

中を開くと、最初のページに原寸大のスイッチの写真。プレートいっぱいの大きなボタン部分に子どもの手がのっていて、コピーが添えられている。

「ボクの家のスイッチが、ちょっと大きくなりました。
そしたらボクにも押せるようになりました。
目が悪くなったおじいちゃんにも押せるようになりました。
ママはおかいもののふくろを持ったまま、
ヒジでも押せるようになって、よろこんでいました。
パパはアタマで押して、ボクを笑わせてくれました。・・・・・」

ボタン部分が大きくて押しやすいワイドスイッチが、UDの代表として紹介されているのだ。
ワイドスイッチを押す男の子の手の写真

松下電工のUDに対する考え方がちょっと理解できたところで、「具体的な商品を見せてもらいに行こう」とキョロキョロしていた矢先に見つけた代表センシュ。

ならば実物を見せてもらいに行こう、開発のココロを聞いてみようと向かったのは、電情建デザイン開発センター。スイッチやコンセント、分電盤(ブレーカーが集まったもの)などをデザインしている栗林啓治さんにお話をうかがった。

くりばやし けいじさんの写真
栗林啓治(くりばやし けいじ)さん
松下電工株式会社 電情建デザイン開発センター
情報機器デザイングループ
副参事(デザイン企画担当)

「もっと操作性のいいもの、誰にでも押しやすいものをと考えて、スイッチのボタン部分を大きくしてみたのは22年位前です。最初はもう少し小さかったんですが、JIS規格で決められたプレートの中でギリギリのサイズにまで広げたのが今の商品です」

と言う栗林さんは、スイッチをずらりと並べて見せてくれた。

スイッチとコンセントが並んだ写真 従来タイプとワイドスイッチを並べた写真

昔ながらの小さなものから、カタログに掲載されていたのと同じタイプのもの、2つボタンが並んだもの、ブロンズやシルバーに仕上げた高級感のあるもの・・・。スイッチにこんなに種類があるなんて。現在主流のスイッチは、昔からのタイプと比べると、押せる面の大きさが全然違う。昔ながらのタイプしか馴染みのない私には、どれもこれもが新鮮で全部押してみたくなる、というか押してみました・・・と、軽い。操作部分が大きくなったワイドスイッチは、押しやすく、カチッと手ごたえはありつつも、軽い操作感が魅力的。

小川さんと栗林さんの写真
ワイドスイッチを試す小川さんの写真
小川さんと栗林さんの写真

これなら小さな子どもはもちろん、指先に力が入らない人でも押しやすい。両手が使えなければ肘でも大丈夫。一度押してオン、もう一度押すとオフというのもわかりやすい。おまけに小さなランプが常時点灯しているので、暗闇の中でも確認できる。さすがはUDの代表センシュ。

さらに昨年には、スイッチの操作部分が取り外せてリモコンになるタイプも発売された。名づけて「とったらリモコン」。例えばベッドで本を読んでいるとき、スイッチ部分を外して手元におくと、起き上がらずにそのまま消灯できる。翌朝起きて壁付けスイッチに戻せば、なくす心配もない。電灯の笠の下に長いヒモをたらしていた人(私です)必見。使いやすさはどんどん進化するのだ。

「とったらリモコン」の写真
コスモシリーズ ワイド21配線器具「とったらリモコン」。
「とったらリモコン」のリモコンを取り外した写真
スイッチ部分を外せば、それがリモコンに。
変わらないことも大事

電気設備の中には、他にも優れたUD認定商品があった。

まずは、「光るチャイム」。玄関のチャイムが押されると、室内でチャイム音が鳴ると同時に、フラッシュランプによる光でも来客を知らせてくれる。少し前のテレビドラマで、耳の不自由なヴァイオリニストがヒロインとして登場した際に、彼女の部屋で使われていて、ちょっと話題になった商品だ。

「光るチャイム」と栗林さん 「光るチャイム」の写真 「光るチャイム」と栗林さん

この商品は、発売からすでに7年。UDというよりはバリアフリーが盛んに謳われた時代に高齢者を意識して開発された商品だそうだが、白くて丸くてすっきりしたデザインは、そうしたイメージを感じさせない。先のドラマの中でも、おしゃれなヒロインの部屋に照明器具のようにとけこんでいた。

「かなり強く発光しますが、これには理由があります」

と、栗林さん。

この光は、壁に反射されることで人に知らせる仕組み。取り付け位置から5m以内なら、光源を背中にしていても充分に光を感じることができるほどの光量だ。なるほど、チャイムが鳴る前からコレをじっと注視している人はいない。だからライト本体が視野に入っていなくても、気づかせられるだけの明るさが必要なのだ。耳の不自由な人や高齢者はもちろん、騒音のひどい部屋に居る人やテレビやオーディオの音を大きくして使う人にもすすめたい。

もうひとつのイチ押しは、「マグネットコンセント」。 うっかり電器製品のコードに足を引っ掛けたとき、コンセントにささった部分がポロリと抜ける。差し込むのも簡単で、あまり力を入れなくてもピタッとくっついてくれる。ピンとこない方は電気ポットを思い浮かべていただきたい。ポット本体に電源コードをカチャッとはめるときのあの感じ、あれが壁にそのまま設置されている、と思っていただければよい。実は、ポットのマグネットコンセントも松下電工の発明で、それを応用した商品なのだ。

「マグネットコンセント」の写真 「マグネットコンセント」のコードに足をひっかけてみる小川さんの写真

足が上がりにくく、すり足になりがちな高齢者には、コードの引っ掛け事故が多いという。うっかり引っ掛けても転倒することなく、「あら、抜けちゃった」ですめば安心だ。

使いやすくて安心・安全への心配りがあって、誰にでも理解しやすいUDの代表センシュたち。でも実はこれらの商品は、UDが叫ばれる前にすでに開発されていたロングセラーだ。若干の改良が加えられているものもあるが、基本的にはあまり変わっていない。

「こういう商品は1度デザインを決めたら10年、15年と変わらないものがほとんどです。壁スイッチやコンセントなんて、そうそう買い換えるものではないですしね」

と栗林さんは言う。

「たまたま壊れたからスイッチひとつ買おうというときも、家の他の場所とデザインを合わせるために、あえて古いタイプのものを求められるお客様が多いですからね。デザイナーとしては、斬新なスタイルを次々と市場に送り込みたい気持ちはありますが、この世界では昔ながらのデザインを保ち続けることのほうが、実は重要だったりするんですよ」

栗林さんの写真

古いデザインが重宝され、いつまでもラインナップに残っている世界。栗林さんの葛藤も理解できるが、一方で、UDをつきつめた機能や優れたデザインがロングセラーとして売られ続けることは、当たり前のことだとも思う。

「そう、変わらないことも大事なんです。同じスタイルを踏襲し続ける、それもUDなんです」

という栗林さんの言葉は、「新製品」という3文字に弱い私の心に新鮮に響いた。

照明器具のUDって何だっけ?

さて、電気の出入り口であるスイッチやコンセントを見せてもらって、その先にある照明はどうなんだろうと、家の中のあかりを思い浮かべてみた。

でも、最初に頭に浮かんだのは、はてなマーク。
あかりの使いやすさって、あかりのUDって・・・、何?

そんな疑問をもって次に訪ねたのは、住宅照明のUDに関わる方々。電情建デザイン開発センターで照明のデザインを担当する松田さんと、住宅照明事業部で商品企画を手がける正木さんだ。

まつだ はやとさんの写真 まさき ようすけさんの写真
左から順に、
  • 松田逸人(まつだ はやと)さん
    松下電工株式会社 電情建デザイン開発センター
    照明デザイングループ 住宅照明主担当
  • 正木陽介(まさき ようすけ)さん
    松下電工株式会社 住宅照明事業部
    商品企画グループ 主担当

「照明器具っていうのはキッチンや電器製品と違って、もともと人の手や足があまり触れない商品です。だから段差や出っぱりを取り除いてUDです、という発想ではなくて、"あかり"という基本機能自体がUDになることが多いんですよ」と答えてくれたのは松田さんだ。

例えば、同じ文字を読むのに若い人のおよそ2倍の照度が必要な高齢者にとっては、明るさそのものがUDになる。またメンテナンス面でいえば、ランプ交換のしやすさもしかり。

そういう意味でリーラー方式のペンダントは、ぴったりUD商品に当てはまる。

手で引っ張るだけで高さを変えられるから、普段はペンダントを高めに上げて空間を広く使い、食事をするときや高齢者が新聞など細かい文字を読むときはテーブルに近づけて照度を上げる。ランプの交換をするときは、さらに手元まで下げてくることもできる。

リーラーペンダントを上下させている写真

アプローチのし方は異なるが、「誰にでも使いやすい」というテーマにひとつの画期的な答えを出した商品もある。UDという言葉がまだ一般的に広まる前、'81年に発売された「ひとセンサ」付き照明器具。いわゆるスイッチのいらない照明だ。

ふつう照明のスイッチは大人の身長に合わせて取り付けられているので、背の低い子どもや腰の曲がった高齢者には手が届きにくい。でも、もしスイッチを操作しなくても自動的にあかりが点けば、そんな問題は解消される。

「手荷物がいっぱいで両手がふさがっているときや、料理をしていて手がぬれているとき、自動的にあかりがついてくれたら助かる」「消し忘れると、電気代がもったいない」というユーザーの声も背中を押した。

松田さんは言う。

「UDからの発想というより、あかりの基本性能を高めて使いやすさを考えた結果、必然的にセンサのあかりが生まれ、その後UDにつながったということです」

まさきさん、松田さん、小川さんの写真 まさきさんの写真 まさきさんと松田さんの写真 松田さんの写真
センサは広がる、進化する

センサ付き照明器具は当初、内玄関灯やキッチンの流し元灯(ながしもととう)として、人が近づくのを感じて点灯する超音波センサを搭載して開発された。それから四半世紀。センサの方式や機能・デザインは進化し続けて、現在は廊下やトイレ、エクステリアなど家の内外のあらゆる生活シーンで活躍している。

キッチンのあかりを見る小川さんとまさきさんの写真 流しもととうをのぞきこむ小川さんの写真
松下電工内の評価棟にある「あかり工房」。照明の提案の仕方を研修する場などに使われる。キッチンに近づいてみると、流し元灯がパッと点灯。

例えば玄関の「お出迎え点灯」機能は、周りが暗くなると明るさセンサが反応してほんのり20%点灯し、人が近づくと赤外線センサが反応して100%の明るさに。省エネや防犯、さらには「自分が帰ってくる時くらい、ホッとできるあかりで出迎えてほしい」というお父さんたちの切なる願いにも応えた商品だ。

「リモコンひとセンサフリーパ」を見る小川さんの写真

さらに防犯が気になる近年は、リモコンで防犯モードが設定できるタイプも登場。

「侵入盗には人の視線がいちばんの警告になる」という防犯の専門家のアドバイスを受けて、玄関に誰かがとどまり続けるとフラッシュやアラーム音を発して人の視線をひこうと企画された。深夜や外出時に防犯モードにしておくと、あかりがお留守番をしてくれるというわけだ。

ちなみにこのセンサのあかりも、安心・安全への心配りが評価されて、UD認定商品に選ばれている。

防犯モード(昼間の動作)
防犯モード(夜間の動作)
●侵入犯が侵入をあきらめる時間
リモコンとあかりのつき方を説明するイラスト リモコンとあかりのつき方を説明するイラスト 「侵入犯が侵入をあきらめる時間」の円グラフ
不審者が近づいたらアラーム音とフラッシュで撃退!

センサによる点灯の仕方で、悩みが多かったのはトイレだ。
人の出入りを感知して自動的にON・OFFする熱線センサは、消し忘れがなく省エネにはもってこいだが、トイレならではの微妙な問題があった。

「赤外線センサは人の動きに反応するので、ジッとしていると消えてしまうんです」

と、トイレ灯の苦労話を語ってくれたのは正木さんだ。

「最初の頃は『まだ中にいるのにあかりが消えてしまった』という声があがって、人の動きがなくなってから消灯までの時間を長くしようとしたんです。でもそうすると『なかなか消えないのはもったいない』というお叱りが出まして。そこで、消灯までの時間をその家によって設定できるようにし、さらにわずかな動作にも反応するよう、センサの感度を高めました」

それでも「急に消えるとこわい」「びっくりする」という声はなくならない。そこでもうひと工夫を考えた。

「完全に消える前に少しだけ暗くして、消灯をお知らせする機能をつけました。この間に少しでも身体を動かせば、また明るくなる仕組みです」

これなら子どももこわくない。お年寄りがドキッとすることもない。

さらに「夜中のトイレが明るすぎると、行ったあと寝付けなくなる」という声に応えて、深夜の点灯照度を昼間の15%程度に設定できる「ほんのり点灯モード」の機能もプラスした。

社内には睡眠など人の行動を専門的に研究している部門もあり、「夜中に明るい光を浴びると眠りのリズムを崩す」というバックデータも、商品化にはずみをつけた。

「日中の光の量と睡眠・覚醒の関係」の概念図

ユーザーの声と専門的な研究データが両輪となって企画が生まれる。そしてそれを魅力的な商品につくりあげていくのは、技術力だ。

2000年に開発された「NaPiOnセンサ(ナピオンセンサ)」は、高感度で世界最小レベルの小さなセンサ。それまでは照明器具の外側にデンと居座っていたセンサを、器具の中に収めることができたのは、その小ささならでは。上にかぶせるシェードも、センサを透過できるよう薄く均一に成型。センサの存在を感じさせないセンサ付き照明器具は、すっきりとしたデザインに便利な機能を搭載して、まだまだ進化を続けている。

ナピオンセンサ搭載の照明器具の写真
シェードを外すと、黒い目玉のような部品が。
ナピオンセンサの写真
これが松下電工自慢の「NaPiOnセンサ(ナピオンセンサ)」。
新たな期待にも応えたい

家族みんなが使う照明器具や、その出入り口となるスイッチやコンセントは、UDというかけ声があがる前にすでにその方向へと歩みを進めていた。

そしてUDという言葉がきちんと定義され、その要素や方向性も示された現在は、今までの商品をUDという枠にあてはめながら、その方向にのっとってさらに前へ前へと進んでいるように見える。

しかし、それだけでは満足できないのが松下マンのようだ。

「これからは機能はもちろん、ソフト面での提案がよりいっそう求められてくると思います」

と言うのは正木さん。「こんなデータがあるんです」と続ける。

照明デザイン室では'96年から3年に1度、100人の一般ユーザーを対象に、あかりに関する記述式アンケートを行なっている。その中に、最初の調査で「ろうそくを灯して入浴しています」という意見が1件だけあった。お風呂のあかりを消し、ろうそくのあかりで雰囲気を演出するのだという。ところが同じような意見が3年後には3件、6年後には4件と徐々に増えていった。そして9年後の今年は「お風呂のあかりをわざと消して入浴する」という意見が30件にもなった。

「明るさという機能だけではなく安らぎをもたらすインテリアとして、それだけあかりへの期待が高まっているということです。これからはそういうソフト面での豊かさも含めて、お客さまにどう提案していけるのかも、UDの一側面として考えていかなければならないと思っています」

まさきさんの写真 小川さんとまさきさんの写真 ダイニングのあかりを見る小川さんの写真 まさきさんの写真

変わらないものを守り続ける頑固さと、時代やライフスタイルに合わせて変わっていこうとするしなやかさと。照明器具のUDは、これからまだまだ奥の深さを見せてくれそうだ。



(2008年10月1日、“松下電工株式会社”は、“パナソニック電工株式会社”に社名を変更いたしました。)

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