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ガンダーラ井上がモノづくりの現場を訪ね、技術と人のスゴさに驚きシビレる体験レポート。 身近な製品に込められた、数々のチャレンジと多彩なアイディアを追いかけます。

リアリティを徹底追及するメカニズム ジョーバ

リアリティを徹底追及するメカニズム ジョーバ
ジョーバに乗る筆者
皆さん、ジョーバってご存じでしょうか? 世界で初めてナショナルが生み出した乗馬フィットネス機器。 馬の鞍みたいなシートに腰かけて揺られることで筋肉をムリなく鍛えることができるという画期的なマシンなのです。 そもそもジョーバ開発のキッカケとは何だったのか? そして進歩しつづけるジョーバを支えている技術とは?  そんな謎を解き明かすべく、我々取材班はナショナルのヘルシー・ライフ事業部へと向かったのであります。

「乗馬療法」って何だ?

ジョーバのふるさとは滋賀県・彦根市。広大なナショナルの敷地には厩舎やコースがあるのではなく、 近代的な工場と開発施設に部材を搬入するトラックが行き交っておりました。 皆さまお馴染みのナショナル製マッサージチェアも、ここで開発・生産されているのです。 健康を科学し、元気な暮らしをサポートする機器を作り出すこと。それがヘルシー・ライフ事業部のミッションなのです。
 
「そもそものキッカケは、乗馬療法の再現でした」と、商品企画グループの遠山さん。 乗馬療法とは、馬に乗ってバランスをとることで筋力を強化し、腰痛の予防やバランス感覚の 改善が期待できる療法のこと。欧米ではリハビリテーションとして普及しているそうですが、 日本人にとって馬に乗るという行為そのものが馴染みのないものですよね。いかに乗馬療法が素晴らしくても、 馬がいなければ始まらない。それなら、電気で動く馬を作ろう! という発想そのものがユニークだし、 日本人ならではのアイデアだと思います。
初代モデルから4代目モデルまで歴代のジョーバ
2000年の初代家庭用モデルから4代目モデルまで歴代のジョーバがズラリ。進化の歴史にはどんなヒミツが?
1993年の秋、ヨーロッパの乗馬療法を視察してきた日本医科大学 (当時) の木村哲彦教授からの打診によりジョーバの 開発はスタートします。もちろんその時点ではジョーバという名称は考案されておらず、乗馬療法を生きている馬では なく電気で動く馬で再現するシステムを開発すべくプロジェクトが始動したのです。
 
開発チームが最初に取り組んだのは、乗馬療法システムの『お手本』となるリアルな馬の動きを知ること。 馬の鞍 (くら) に反射球と呼ばれるピンポン球みたいなボールを多数取り付け、モーションキャプチャーという手法で 特殊なビデオカメラを用いて動作をキャッチしたそうです。
商品企画グループ遠山 望さん
商品企画グループ  遠山  望さん
「まず、馬と人との動きを解析することから始めました」
そこで得られた馬の動きをデータ化し、忠実に再現するロボットを製作したのです。その名は『馬型6本足ロボット』。 生きている馬より足が2本多いじゃないかとツッコミたくなったその刹那、「ロボットの現物がありますので、試乗されますか?」 と遠山さん。もちろんです! ぜひとも試乗させてください!!
馬型6本足ロボット
これがジョーバの原型となった『馬型6本足ロボット』だ!
数千万円の開発・製作費を投じて完成したという伝説のロボットの乗り心地は、まさに馬そのもの。 6本足と呼ばれる理由は、アクチュエータという伸び縮みする部品を6本組み合わせることでリアルな動きを再現しているから。 これはパイロット訓練用のフライトシミュレータを支えている揺動システムに採用されている装置と同じ仕組みなのではないかと 感動してしまったのであります。コンピュータ制御された6本の足が伸び縮みすることで、前後・左右・上下方向への スライドと回転運動を再現する仕掛けは、ご覧のとおり大がかりです。大げさですが動きのデータさえ正確に入力すれば、 馬が歩いている状態も、かけ足している状態も再現できるのであります。
 
馬に乗って揺られていると、人の重心は前後左右に動かされます。その時、カラダが落ちないように反射的にバランスをとろうとして 腹筋や背筋、太ももの筋肉など、普段あまり使っていない筋肉が自然に鍛えられ、骨盤や背骨のまわりがほぐれるという効果が 乗馬運動にはあるのです。
 
それでは馬に乗っている人間はどんな様子で揺られているのか? さまざまな馬の速度を模して動く『馬型6本足ロボット』に乗った 人の筋肉の動きを計測した結果、"なみあし" とよばれる4拍子のリズムで馬がゆっくり歩いている状態で大きく揺られていると、 しっかり筋肉が動くと判明。こうして実際の乗馬療法でも "なみあし" が活用されていることは科学的に裏付けされたのでした。
モーションキャプチャーにより実際の動きを再現
馬の鞍に取り付けた反射球をビデオカメラで撮影してデータ化
6本足ロボットの脚部
6本足の動きで、馬の動きを忠実に再現
筋電測定中の様子
人間の筋肉が動く時に発生させる電流「筋電」を計って、ジョーバの動きが決定されていきました
乗馬中のシミュレーション画像
大きく「8の字」を描くジョーバの動きに、カラダが自然に反応します

馬並みのロボットを、家庭サイズに

大がかりな『馬型6本足ロボット』により再現され、その効果も検証されたとはいえ、一般家庭に6本足のロボットを導入するには 場所もコストもかかりすぎる。そこでナショナルが取り組んだのは、たったひとつのモータで馬の動きを作り出す "クランク機構" と呼ばれるメカへの転換でした。
 
メカ部分の開発・改良を担当している中西さんは、入社以来オーディオ用のタイマーなど機械部品の設計に携わってこられたとのこと。 6本のアクチュエータで動かされる馬型ロボットの複雑な動きを、どうやったらモータひとつで置き換えられるのでしょうか?  「たとえば時計だって、動力はひとつですよね。それを時針・分針・秒針それぞれの動きに振り分けています。 この原理を利用して前後・左右・上下で3次元の動きにすればいいんです」と、新型ジョーバの動く仕組みを説明してくれたのでした。
ジョーバのメカニズムを紙に書いて説明してもらう
さらさらさらっと描いて頂いた、ジョーバのメカニズム
商品開発担当 中西隆介さん
商品開発担当 中西隆介さん
「ひとつのモータで3次元の動きを生み出します」
何だかスゴイです。どんなカタチの部品を組み合わせれば、どんな動きが実現できるかをアタマの中で完全にイメージできる才能。 私は文化系の人間なので機械工学のことはサッパリなのですが、この開発のプロセスとは同じ意味の文章を簡単な言語に "翻訳" するみたいな作業なのではないかと感じました。何でもコンピュータのプログラミングで仕上げてしまうのが 当たり前みたいになっている昨今ですが、純粋な機械工学って美しい。中西さんの手にかかれば、 大がかりなコンピュータ制御の『馬型6本足ロボット』の動きもシンプルな仕組みで再現可能なのです。 もしかして、これはマッサージチェアの複雑かつ快適な動きと通じるのではないかと質問してみれば、 基本的な考え方は一緒だとのこと。実際にジョーバの3代目モデルまではマッサージ関係のパーツも応用していたそうです。 ジョーバはナショナルならではのノウハウの蓄積と、現代の匠 (たくみ) とも称すべきメカ設計者の頭脳により生み出されたのです。
ジョーバのメカニズムを見つめる中川さんと筆者
歴代ジョーバのあゆみ
馬型ロボット
1995年4月〜
コンピュータ制御された馬型ロボット。これがジョーバの原型です。
3代目ジョーバ
2000年10月〜
初代から3代目までは前後スライド+前後左右の回転で馬の動きを再現しています。
4代目ジョーバ
2005年5月〜
4代目ではシートの傾きコントロールを追加。ウェストシェイプに効果を発揮します。
5代目ジョーバ
2007年11月〜
5代目では上下スライド*とひねりが加わり、さらに運動効果を高めています。
( * EU7800のみ)

馬の『なみあし』にちかづけるこだわり

家庭向けジョーバの初代モデルから3代目モデルまでは前後・左右・上下のスライドと回転という動きの6要素から、馬の動きとして 最も基本的な3つの要素を選んで再現。4代目モデルではシートの角度コントロールにより上り坂では主に腹筋、 下り坂では主に背筋を使うメニューを追加。新発売された5代目では上下のスライド*とひねりを加えた合計5つの動きの要素によって リアルでなめらか&運動効果を更に高めています。いずれの世代のジョーバも、動力となるモータはひとつだけ。メカ部分の改良によって 『馬型6本足ロボット』="本物の馬" の緻密な動きに一歩一歩近づきつつも、そのサイズは小型化されているのです。 *EU7800のみ
5代目最新モデル
5代目となる最新モデルEU7800(写真手前)では、5軸動作メカの採用により、 さらになめらかな乗馬の動きを再現しています。
ジョーバの動きを表す人形のモデル

最新型ジョーバの秘密

初代モデルと比べ、スリムでスタイリッシュになった最新型のジョーバ。
そのメカ部分の洗練された動きをご覧ください。
リンク機構
モータの回転はギアに伝わり、リンク機構という仕組みを通して様々な動きに変わります。
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47 sec.
新・8の字運動
「新・8の字運動」には前後左右の単調な動きだけでなく、「ひねり」「上下」運動が採用されています。
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19 sec.
5代目ジョーバにプラスされた上下のスライドとひねり運動。この動きを生み出すために、メカ部分全体のレイアウトを前傾させ、 さらに "二重偏芯カム" という仕組みによってよりリアルな馬の "なみあし" を再現しているのです。
 
初代ジョーバの基本的なメカニズムを継承しながら磨き上げ、ひとつのモータで5つの方向に動く仕組みを作り出すこと。 この技術的な熟成により、ナショナルはジョーバを追いかけてくる他社さんより何馬身もリードしているのです。
 
この設計センス、素晴らしいですね。これだけの技をもっているマスター級の人って、世の中にそう多くは存在しないですよね。 と、感心している私の横には黙って微笑む設計担当の中西さん。「たぶん、彼だけでしょうね」と自信を持って答えてくれたのは 商品企画の遠山さん。このやりとり、開発チーム各員が信頼と尊敬の念をもって仕事を進めてきた結果なのだと思います。 企画の提示するアイデアを、数多くの人に届く製品として設計すること。更にそれが末永く愛用される耐久力や使い心地であるかも徹底的に検証されているのです。
新型ジョーバの二重偏芯カム
ひとつのモータで動かされるメカ部分を前傾させたレイアウト。これが新型ジョーバの進化したポイントです。 二重偏芯カムという仕組みで、新たな動きを生み出しています。
その一例が、ジョーバに採用されている専用のブラシレスモータ。マッサージチェア用よりもトルクが出るタイプを 新設計して搭載しているので、乗り手の体重が違ってもジョーバはへこたれず、最大適応体重=120kgまでの人なら同じ動きをしてくれます。
馬型ロボットにまたがる筆者 新型ジョーバにまたがる筆者
ジョーバの原型となった『馬型6本足ロボット』と新型ジョーバを乗り比べてみれば、その動きはほぼ同等であり 乗り心地に関しては新型ジョーバの方がスムーズな印象でした。リアルな動きなのにコンパクト。 たったひとつのモータで再現される馬の "なみあし" に揺られていると、自然に姿勢も正しくなっていく感じです。 遠山さん、中西さんと筆者
ブラシレスモーターの断面模型
ブラシレスモータの断面模型。これがジョーバの心臓です。
取材後記
乗馬療法という、日本人にとっては贅沢なエクササイズを身近にしてくれたジョーバ。限られた人にしか得られない利便を、 もっともっと数多くの人々に届けるために使われるスゴイ技術。健康には馬が効く。という効く部分だけを見事に抽出し、 忠実に再現することを目指したフィットネス機器、それがジョーバなのです。名前はダジャレっぽいかもしれませんが、 モノづくりの姿勢に遊び半分なところは微塵もない。そのギャップも格好イイですよね。
ジョーバについてさらに知りたくなったら…