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2章 匠の技で弧を描く、外刃。[マルチフィットアーク刃]

2章 匠の技で弧を描く、外刃。[マルチフィットアーク刃]

みなさん、こんにちは。
『ラムダッシュ』の実力のほどを解明するべく
滋賀県にある松下電工・彦根工場を訪問しました。
まだ雪の残る風情あふれる城下町で、
現場のスペシャリストたちの生の声をうかがい
ヒゲをスパッと消し去るという
『ラムダッシュ』の切れ味の秘密に迫りました。

まずは、マーケティング企画グループの若林善知さんと
広報部の奥瀬史郎さん、おふたりにお話をうかがいました。

滋賀県・彦根市の松下電工・彦根工場
     
  3つの世界一技術と新次元の刃を搭載。  
 
   
  1955(昭和30)年に、はじめて日本製の電気シェーバー(当時は電気カミソリと呼ばれていました)を世に送り出した松下電工が、50年間培ってきた技術や知識&ノウハウをすべて惜しみなく注ぎ込んだ記念モデル、それが『ラムダッシュES8176』です。その大きな特長とは、『30°鋭角内刃』、『リニアモータ駆動』、『全方位フロートヘッド』という、これまでの『ラムダッシュ』に搭載されていた3つの“世界一”に加え、『マルチフィットアーク刃』を新搭載したことです。
   
森 第1号機『MS10』誕生の際、松下電工の電気シェーバー開発スタッフは、相当苦労されたみたいですね。戦前からバイブレータや小型モータの技術はあったものの、電気シェーバーの刃やモータの開発は、まったくゼロからのスタート。しかも、電気カミソリは、なかなか世間にその性能を認めてもらえなかった。電気ヒゲ抜き機と陰口を叩かれたり…。辛い時代が続いたようですね。
   
佐藤 確かに、最初、電気シェーバーはなかなか価値を認めてもらえなかったようです。ま、僕自身、当時はまだ生まれていないし、実際に体験しているわけじゃないんですが。フィリップスと提携して回転刃のモデルを出したり、ヒゲコンテストやプレゼントキャンペーンを企画したり…。あの手この手で浸透策とファンづくりを繰り返した、ということは諸先輩から聞いています。もちろん性能のアップも常に図ってきたんですよ。特に、「深剃り」と「早剃り」、それと「肌にやさしい」ことには、ずっとこだわり続けてきました。
   
森 その集大成、50年間のヒゲ剃りに対するこだわりの答えが『ラムダッシュ』ということなのですね。それでは、順番に『ラムダッシュ』の詳しい技術、秘話を伺っていきましょう。まずは、外刃である『マルチフィットアーク刃』からスタートします。
   

マーケティング企画グループ若林さん

 

第1号機「MS10」

  顔のどんな曲面のヒゲもしっかりキャッチ。 複合鋭角刃の進化写真:カーボチタンV→ツイン&フロート→リニアスムーサー→ラムダッシュ
 
   
人の顔ってぜんぶ曲面でできてますね。しかも弾力もある。特にアゴの下の肌には、従来のフラット刃の電気シェーバーや安全カミソリでは、とらえきれない死角がありました。微妙な起伏を持つアゴ下の肌のヒゲを確実にキャッチするには、刃面に少し“曲面”を持たせることが効果的です。刃にふくらみがあれば、よりピンポイントに肌の起伏にフィットさせることができるので、刃面と肌の密着度を高めることができ、クセヒゲも起こしやすくなる…そんな発想から誕生したのが『マルチフィットアーク刃』です
   
  曲面と直面の比較
   
  半径21センチのゆるやかな曲面を持つ形状にしたことで、どんな部位のヒゲもしっかりキャッチできるようになりました。黒牙というニックネームで愛された『鋭角カーボチタンV刃』から『ツイン&フロート』、そして『リニアスムーサー』へと受け継がれていった複合鋭角刃の伝統。そのフィット感と切れ味が、さらに進化したというわけです。この『マルチフィットアーク刃』の誕生秘話を、電器デバイス綜合部/金型・刃部製造部の大谷隆児部長におうかがいします。
   
 
   
森 『マルチフィットアーク刃』の開発で、いちばん苦労されたのはどんなところですか?
   
大谷 どこが苦労というより『マルチフィットアーク刃』の開発そのものが大問題でしたね。ま、刃面を曲面にしよう!と決めた時点で、自虐的な判断だったわけです。これまでの外刃は、平面でつくって組み立て時にフニャッと曲げればよかったのが、新しい外刃は、最初から立体的につくらなければならいのですからね。外刃は、薄ければ薄いほど深剃り効果が高まるという理由から新聞紙より薄いステンレス鋼板を使っています。この割れやすく、キズつきやすい鋼板へ約1,000個・800方向もの複雑な穴を高精度に空け、それを立体的に成型しようというのですから無謀というよりほかないわけです。
   
森 そんな繊細な素材で、よくこんな精巧な刃がつくれましたね(刃を手にとってじっくり見つめながら)。喩えるなら、チョコを包んでいる銀紙に細工を入れ、立体的に引き伸ばすようなもんでしょ。いかに熟練した職人さんでも“それは無理だろう”と言うと思いますもんね。それを成功させた秘訣って結局なんだったんですか?
   
大谷 いちばん大きかったのは、「鍛造」という技術の導入でしょうか。のちほど実際に工場でご覧いただきますが、膜みたいなステンレス鋼を打ち抜いて、焼きを入れて、曲げるわけです。温度や圧力を絶妙にコントロールしなければ、あっという間にお釈迦になってしまいます。そこで、金属を加熱し、カナヅチや水圧機で打ち延ばして形をつくり、ねばり強さを与える「鍛造」という日本の伝統技術を応用してみたのです。
   
森 鍛冶のイラストもしかして、時代劇なんかに出てくる刀鍛冶のトントントンってやつですか?真っ赤に焼けた鉄の塊を叩いて叩いて強くしていくっていう…。
   
大谷 まさにその通りです。それを現代風・工場風にして導入したのですが。実働させるまでには、とんでもない時間と労力が必要でした。プレスしたとたんに割れてしまったり、工作機械のほこりが原因でキズがついたり、曲面をつける段階で破れたり…。とにかく相手は、薄いですからね。何度も試行錯誤を繰り返し、徹夜も続きました。不思議なことですが、あきらめかけたらうまくいくんですね。もうダメだ、というときにベストのセッティングが見つかり製品として世に出せる成型ができたんです。
   

 

 

 

 

電器デバイス綜合部/金型・刃部製造部の大谷隆児部長

 

 

37ミクロンの銅板 これを曲面の刃面にします

  伝説の刃物鋼「安来鋼」を採用。  
 
   
  さっきから大谷部長の話の中には、『ステンレス鋼板』というワードがよく出てきます。電気シェーバーの外刃の素材には通常、ニッケル電鋳という加工しやすい素材が使われています。一方、ステンレス鋼板は、高価で加工しにくいため敬遠されがちです。なのに、なぜステンレス鋼板を使うのか。実は、ここにも松下電工ならではのこだわりがあるのです。外刃のシャープな切れ味と長寿命を実現するためにはステンレス鋼板の方が有利なのだそうです。安全カミソリもステンレス鋼を使っているくらいですから。でも、ステンレス鋼板は、加工しにくい。一般的な、金属を腐食させて成型する工法(エッチング方式)では適正な精度を出すことが難しい。だから、どうしても金型を使う工法(スタンプ方式)を採用しなければなりません。ところが、その金型をつくるのが至難の技なのだそうです。
   
大谷 幸い、私たちは1974(昭和49)年に発売したスピンネット以来、スタンプ方式でのステンレス鋼加工のノウハウを持っていたので、それをベースに開発することができました。それと、金型職人の技のチカラが大きいですね。彼らは顕微鏡を覗きながら、手作業で1000分の1ミリという高精度で金型をつくり上げます。機械にも真似することができない“匠の技”があったからこそ、『マルチフィットアーク刃』は現実のものとなったのです。あとで実際に金型を使って成型している様子を、工場で見ていただきますね。ところで、こんなにも手間や技術を注いでいるので、電器業界の中では「松下電工さんはアホやで」と言われてます。それは憧れの表現であり、ホメ言葉だと解釈していますが。いずれにしても、50年の歴史にかけて、“在り来たりのもの”なんかつくりたくなかったんです。
   
森 鍛造といい金型といい、なんか伝統的というか職人的なにおいのする「ものづくり」ですよね。
   
大谷 そうですね。伝統的なことといえば、もうひとつ、安来鋼を使っているということも話しておきましょうか。世界三大鋼産地ってご存知ですか?ドイツのゾーリンゲン、北欧のスウェーデン、そして日本の出雲・安来です。ここで生産される安来鋼は日本刀の材料として世界に知られている刃物鋼なんです。高価なことでも有名な素材を使っているのは、アホなうちだけですね(笑)。もっとも、ニッケル電鋳材の約3倍の耐摩耗性を持つといわれていますから、結局、お客様にとっては得なんですがね。それと、伝統的な“たたら製鉄”の技術も参考にしています。まさに、製法、切れ味ともに日本刀をモチーフにしているといってもいいくらいなのです。 だからさっきの森さんが言っていた刀鍛冶の喩えって、ぴったり当てはまってるんですよ。
   
森 第1号電気カミソリMS10を世に問うた1955(昭和30)年以来、50年間ステンレス刃にこだわり続けてきた松下電工の面目躍如というところですか。
   
大谷 そうですね。ものづくりにこだわる松下電工のDNAですかね。
   

 

スタンプ加工

 

 

 

スタンプ方式でのステンレス鋼加工(スピンネットES620)

  アゴ下のヒゲを制覇する絶妙の曲面。  
 
   
  クセのあるヒゲがたくさん生えているアゴ下。電気シェーバーにとって、もっとも能力を試されるエリアを制覇することをひとつの目標にして開発された『マルチフィットアーク刃』。これまで話をうかがってきて、改めて見てみると、この『マルチフィットアーク刃』は、ものすごい精度でつくられていることがわかります。例えば、こんなゆるやかな曲面を持つ外刃に対して、内刃も同じ曲面を持っているわけです。その内刃が1分間に13,000回も往復するのですから、ふたつの刃の間にゆがみやズレがあったら、たちまち切れ味は失われ、電気シェーバーとして機能しなくなってしまいます。ミクロの精度でつくらなければならないのです。そんな精度のお話は、おいおいうかがっていくとして、ひとつ、気になることが…。
   
森 なぜ、刃の弧は半径21センチに決まったんですか。もしかして、見た目とか勘で決めたとか…?
   
大谷 最初は、18センチと21センチと25センチが候補にあがっていたんですよ。顔に接する面積の広さという論理的な理由と見た目にもアールがわかるという感覚的な理由、そして50人以上の人たちにリサーチして分析データから21センチに決めたんです。安易になんとなくで、このアールになったわけじゃないんですよ。営業的には見た目という要素も大きいんですけどね。
   
森 ときに、ものづくりには感性も大切ですから。見た目に頼るのも大切なことなのかもしれませんね。
   
奥瀬 森さん、いかがですか?やっぱり現場の声を実際に聞いてみると、『ラムダッシュ』へのこだわりがはっきり見えてきませんか?
   
森 そうですね。いい話ばかりで、少し疲れてしまいましたね。とりあえずここらで一服しましょう。
   
奥瀬 休憩が終わったら、続いて大谷部長に『マルチフィットアーク刃』と絶妙のコンビネーションを発揮する『30°鋭角内刃』の話を聴きましょうね。
   

あご下のヒゲを残さずキャッチ!

 

 

 

広報部の奥瀬さん

 

 

 
 
電気シェーバーと安全カミソリの違い

一般的に、電気シェーバーは、その剃り味では安全カミソリをめざしているといいます。しかし、ヒゲを剃る方法は大きく異なっています。安全カミソリが「つまんで」「引っぱって」「順剃り」するのに対してシェーバーは「押して」「絞り出して」「逆剃り」します。このやり方の違いが、それぞれの剃り味の違いになっているのです。
 
剃る方法の違い 安全カミソリ 剃る方法の違い 電気シェーバー
  電気シェバーの外刃によってお「絞り出される」ヒゲの動画
 

電気シェーバーの外刃がヒゲを「絞り出す」様子を、 動画でご覧ください。(少し気色が悪いです・・・)



コラム おひげまわりのトリビア、お楽しみ下さい!
ヒゲを切る令。
  ヒゲをつかまれると不利になるのです。

紀元前4世紀ころのお話です。マケドニアの王アレキサンダー(BC356〜BC323)が、「ヒゲを切る令」を発令しました。その理由は「戦争中にヒゲをつかまれると不利になる」とのこと。なんとものんびりした話ですが。でも、この令の影響で、ギリシアでもヒゲを剃るのが常識となったといいます。一説によると史上初の「理髪所」ができたのもこの頃だといわれています。続くローマ時代もジュリアス・シーザーの頃にはヒゲは剃るものという風習が定着していたようです。もっとも剃るといっても、当時はまだカミソリの普及が一般的ではなかったのでハサミで切ったり、抜いたり…とお手入れも大変だったようです。

《出典》ひげづきあいを愉しむ会

   
  洞窟壁画の身だしなみ男。
  石器などをカミソリにしてヒゲつみをしていた!

先史時代に描かれた洞窟壁画にはヒゲのない人物が登場しているものがあります。一目で成人男性とわかる人物にヒゲが描かれていないということは、ヒゲがなんらかの方法で処理されていたということを示しています。ヒゲ処理の方法は、各地で出土している石刃や石器などがカミソリの代わりとして使用されていたのではないかと推測されています。このように石器時代から弥生時代の頃までは、ヒゲ剃りというより「ヒゲつみ」といった感じでヒゲ処理が行なわれていました。では、彼らは、なぜヒゲを処理したのか?その理由については、飲食の際ジャマになった、寄生虫を防ぐ、死への接近を心理的に避けるため…などが考えられています。

《出典》カミソリ倶楽部

   
  ヒゲは強さの象徴。
  強さのシンボル「ヒゲまん」

戦国時代に頃になると、ヒゲは強さの象徴として賞美されました。大ヒゲを「ヒゲまん」と呼び、豊臣秀吉も立派なつくりヒゲをしていたと伝えられています。つくりヒゲといえば、江戸の中頃、貞享元禄(1684〜1704)の時代には下郎や若衆の間でヒゲを生やすことが流行り、ヒゲの薄い者はロウと松脂で作ったつくりヒゲをつけたり、墨で描く者まで現れたといいます。徳川幕府は、このヒゲの流布を危険視し、1670年と1686年の2回にわたって老人以外のヒゲを禁止しました。しかし効果は上がらず、刑罰を科すことにした後、やっとヒゲが姿を消しました。この禁令以降、江戸にはヒゲを生やした武士がいなくなったといわれています。

《出典》カミソリ倶楽部

   
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