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音楽と松尾社長 レッツ・サウンド
2009年7月28日公開

俺の名はにぎりこぷし。職業はロックスター! ……ではなくて、しがないイラストレーター。以前「レッツ・サウンド」という身体の不自由なひと向けの音楽プレーヤーの取材でお会いしたファンコム株式会社の松尾社長から、新しい商品ができたので見にくるようにとの呼び出し……もとい、お誘いが。今回は従来のものが使いにくいひと向けのテレビリモコンだという。どんなものだか想像はつかないが、溢れる情熱と鋭いアイディアで斬新な福祉機器を生み出すファンコムの新商品、見逃すわけにはいかないぜ!

にぎりこぷし氏 イラスト

というわけで今回も、レッツ・ゴーだぜ!! ……の前に、軽く前回のおさらいをしとこうか。

レッツ・サウンドと松尾社長 イラスト

自分にしかできない“なにか”をしたいと常々考えていた松尾社長。病気で身体の自由を失った父の姿を目の当たりにし、自分だからこそできる福祉機器の開発をしようと、パナソニックの社内ベンチャー支援制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」で「ファンコム」を立ち上げた。そのファンコムの第一弾商品「レッツ・チャット」のユーザーである田中あかりちゃんと、パナソニックの大坪社長との交流から生まれたのが、前回取材した「レッツ・サウンド」だ。

身体の不自由なひとにも音楽をきく楽しみを提供したい、そんな思いを実現するため、レッツ・サウンドにはファニーな外見からは想像もつかない、数多くの斬新なアイディアが詰め込まれていた。

レッツ・サウンドの特長 イラスト

福祉機器の開発になみなみならぬ情熱を注ぐアイディアマン松尾社長のことだから、今回もすんごい商品を見せてくれるにちがいない!

「と、いうわけで再びきたぜ!」イラスト

見た目は半分、でも実態は……

レッツ・サウンドを取材したオレの原稿を、自ら冊子にまとめ配って歩いたという松尾社長。さすがアグレッシブだぜ。そんな努力のかいもあって、レッツ・サウンドは「福祉機器コンテスト2008」で特別賞を受賞したそうだ!!

賞状の写真

というわけで、相変わらず狭い……じゃなくて、コンパクトなオフィスにやってきたぜ。

オフィスのイラスト

おっと、社員が増えてるじゃないか! これは商売が軌道に乗ってきた証拠か!? けっこうけっこう! それじゃあ、さっそくその新商品とやらを見せてもらうことにしよう!

「これがファンコムの第3弾商品、レッツ・リモコンです!」

レッツ・リモコンと松尾社長 写真

見た感じ前回のレッツ・チャットを使い回……

「レッツ・サウンドを半分に切っただけでは・・・」「全然ちがいます!」

な、なるほど、ということは統一されたデザインコンセプトでつくられてるって理解でいいのかな……。そのあたりもおいおい話がきけるだろう。

「かんたんリモコン」となにがちゃうねん!?

そもそも、障がい者向けのテレビリモコンをつくろうと思ったきっかけはなんだったのか。松尾社長、そこんところ、どうなんですか?

「レッツ・チャットのような独立した福祉機器とは別に、パナソニックの製品を障がい者対応にしていくというのもファンコムの仕事なんです」

パナソニックのオーディオプレーヤーに障がい者でも使えるリモコンを取り付けて操作できるようにした、前回のレッツ・サウンドはまさにそういう商品だ。でも、どうしてテレビのリモコンを?

「音楽はある意味、個人の趣味ですけど、テレビというのは単なる娯楽ではなくて、社会とのつながりや家族との会話を支える、貴重な情報源でもあるんです。とくに身体を動かせないひとにとってはより重要な存在なんです!」

なるほど、たしかに手足が不自由でも、寝たきりでも、画面さえ見ることができれば、そこから情報を得ることができる。新聞や雑誌、ラジオなんかに比べても、多くの情報を手軽に、かつ早く得られるメディアであることはまちがいない。

じつはわが家も最近、地デジ対応のテレビに買い替えたんだが、リモコンのボタンが多くて……。たしかにあんなボタンの多いリモコンは、身体の不自由なひとには扱いにくいよなあ。

一般的なリモコン イラスト

でも、パナソニックには「かんたんリモコン」という、機能をしぼって使いやすくしたリモコンがあるんじゃなかったっけ? それじゃダメなの?

「じつは、その“かんたんリモコン”と、このレッツ・リモコンは、そもそもの考え方が全然ちがう、まったく別の商品なんです」

松尾社長の説明を要約すると、


かんたんリモコン イラスト

「かんたんリモコン」というのは、リモコンのボタン・機能が多すぎたり、字が小さかったりして、どのボタンを押したらいいのかわからないというひとのために、ボタンや機能を減らして、使い方をわかりやすくしたリモコンのこと。

一方で、手が不自由なひとは、押したいボタンがわかっていても、そのボタンを押すことができない。こういったひとたちにとっては、どれだけリモコンの使い方がわかりやすくても、使うのは“簡単”ではない。そういうひとのためにつくられたのが、レッツ・リモコンなのだ! 

「通常のリモコンと“かんたんリモコン”を見比べてみると、“かんたんリモコン”はボタンの数が少なく、ボタンひとつひとつも大きめにつくられていて、通常のリモコンではわかりにくいというひとたちでも使いやすいよう工夫されています。ですが、身体が不自由で指がうまく動かないというひとは、そもそもボタンまで指がしっかりと届かないので、これでもまだ操作するのは難しいんです。」

リモコン集合写真

そこで、このレッツ・サウンドと同じオートスキャン方式のボタンが登場というわけだ!

「オートスキャン方式」なら、本体のボタンが押せなくても、音や光をたよりに入力スイッチで操作できる!

あれ? ボタンの形状がちょっと変わってない!?

レッツ・リモコンのボタンは真ん中がへこんでいる! イラスト

「レッツ・サウンドでは既製品のボタンを使っていたのですけど、ペンをくわえた状態などでもボタンの中心を確実に押せるようにということで、レッツ・リモコンでは、独自に設計したボタンを使うようにしたんです」

はー、同じように見えて、じつはけっこう進化してるんだなあ。

商品以上によくできた試作品?

「これは試作の段階でつくったものなんですけど……」

そういって松尾社長が見せてくれたのは、オートスキャン方式で障がい者対応ながら、ビエラリンクまで使えるという超高機能リモコン。しかも、かっこいい。

レッツ・リモコンの試作品 写真

正直、こっちのほうがパナソニックっぽいデザインで、売り物になるような気がするんだけど……

「現場の意見をきいてみると、ここまでの機能はいらないという声が多かったんですよ。テレビとリンク機能のあるレコーダーを持っている障がい者は少ないですし。なによりも、ネックは価格です。ここまで高機能なものになるとお安くご提供するのがむずかしくて……。」

ちなみにこの高機能スタイルのものを商品化すると、現状では価格は3万円以上になってしまうとのこと。小さなテレビが1台買えてしまう値段だ。

そもそも、リモコンはテレビを買えば付いてくるもの。つまり、おまけという意識のものだ。そんなリモコンをお金を出して買うというのは、一般的にはなかなかイメージしにくい感覚かもしれない。


「われわれは、テレビのリモコンをつくって売るんじゃなくて、テレビを自由に見られる環境を提供する、という考え方でやってるんです」

障がいのある部位やその程度はひとそれぞれ。リモコン以外にも、それぞれの障がいに合わせた入力スイッチ、リモコンを固定するためのアーム、見やすい位置にテレビを設置できるスタンド、そういったものが必要になるケースもあるそうだ。ファンコムでは、そのようなアイテムまで含めて、障がい者がテレビをより快適に視聴できる環境を手に入れられるよう、商品の開発やサポートをしているのだ。

豊富なオプション品 写真

そういった事情もあって、いかにして価格を下げるかが、レッツ・リモコンを開発するうえで一番苦労した点だったそうだ。

そして、話はこの形状に戻ってくる。レッツ・リモコンのフレームは、レッツ・サウンドと同じ金型を使うことで、コスト削減を図っているのだ。もちろん、それで機能性が落ちるなら元も子もないが、さすが松尾社長がこだわり抜いてつくった製品だけあって、転用しても抜群の威力を発揮している。

転用のイメージ図

もっとも、大きなボタン、もしくはそれぞれの障がいに合わせた入力スイッチを接続して使うという点は同じなのだから、使い勝手がいいのは当然なのだけど。


怒濤のアイディア・メドレー!

レッツ・リモコンは、その形状のみならず、障がいをもつひとたちが使いやすいように、さまざまな工夫がこらされている。そんなアイディアの数々をメドレーでお送りするぜ!

「怒涛のアイディアメドレーいってみよう!」
5つのボタンで6種類以上の操作ができる

レッツ・リモコンの5つのボタンはそれぞれ、電源、チャンネルアップ、チャンネルダウン、音量アップ、音量ダウンの5つの操作に割り当てられているが、

「設定を変更することで、5つのボタンが順に点灯したあと、5つ全部が光る動作を追加することができるんです」

たとえばこの5つ全部が光るパターンを呼び出しブザーに割り当てて、オプションの発信器を取り付ければ、テレビのリモコンで介助者を呼び出すなんてこともできるわけだ。

呼び出しブザー イメージ

「逆に、設定で機能をもっとしぼってしまうこともできますよ」

入力スイッチを押すとチャンネルアップ、長押しすることで電源のオン・オフというシンプル操作に変えることも可能だという。そうなると、スイッチさえ押せる場所に設置しておけば、リモコンはどこか見えないところに置いておいてかまわないということになる。

赤外線が2方向に!

身体の不自由なひとにとって、リモコンをテレビに向けるというのは、なかなか至難のワザだ。そのため、レッツ・リモコンは縦・横どちらでも使いやすい方向で操作できるよう、2つの側面に赤外線の出口が設けられている。

また赤外線の延長ケーブルを使えば、リモコンをテレビに向けなくても操作が可能だ。これなら、病院の大部屋全部のテレビが一斉に切り替わる、なんてことにもならなくてすむ。

「延長したときは本体から赤外線は出ません」
設定変更がかんたん!

取扱説明書は、レッツ・サウンド同様、本体裏の二次元バーコードを使って携帯サイトにアクセスすることで確認できる。介助者の負担を軽減するナイス・アイディア!
二次元バーコード 写真

テレビのリモコンでとくに面倒なのが、テレビのメーカーや年式に合わせて対応するよう設定を変更する操作。一般的なリモコンでは、裏に小さくメーカーと数字がびっしりと……。これをテレビと見比べながら、手動で打ち込むわけだ。

レッツ・リモコンも国内で販売されているほとんどのテレビに対応しているが、設定のしかたはちょっとちがう。

設定の様子 写真

1 赤、青、白、緑のボタンを同時に7秒間押して、設定変更モードにする
2 赤、青、黄のボタンを押したまま、白のボタンをゆっくり押す
3 白のボタンを1回押すごとに、ちがうメーカー設定の赤外線が順に出る
4 テレビのチャンネルが切り替わったら、そこで設定完了

このように、テレビのメーカーや年式をいちいち確認しなくても、リモコンをテレビに合わせる設定ができてしまうのだ。なるほど、こいつは便利だ! 二次元バーコードのアイディアと合わせて、いますぐほかのリモコンも採用すべきだぜ!!

それ以外にも、入院中にベッドの柵にぶら下げられるようストラップを通す穴がついていたり♪ カメラの三脚を流用して使えるよう裏面に三脚固定用のネジ穴が付いていたり♪ レッツ・チャットと接続して入力スイッチが共用できたり♪

レッツ・リモコンのストラップほか特長 イラスト

さーっすが松尾社長、細かいところまでぬかりなしだぜ!!

「すごいでしょ?」松尾社長 写真

というわけで、今回もアイディア盛りだくさんの商品、感服したぜ! 2009年4月のリリース以降、問い合わせが殺到しているってのにもうなずける。新聞でもけっこう取り上げられているらしいぜ!

そして、なんと大手家電量販店でも販売が始まるという! こういった重度障がい者向けの福祉機器が家電量販店に並ぶのは初めてとのこと! 今後の展開が楽しみだぜ!!

レッツ・リモコン パッケージ写真

ファンコムのさらなる新商品にも期待したい! 今度はどんなアイディアで驚かせてくれるのか、楽しみにしてるぜ、松尾社長!!

「次に来たときはさらに社員が増えてたりして」イラスト

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にぎりこぷし プロフィール
1975年生まれ、北海道出身。
大学卒業後、5年間の出版社勤務を経て、フリーのイラストレーターに。
風刺をきかせたイラストを中心に、雑誌、テレビ、インターネットなどさまざまな分野で活動中。
大阪在住。

著書『日々にぎりこぷし』(バジリコ)