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パナソニック・ホーム 現在のページは、isM トップ > の中の鍋に泣いた男たち 〜オールメタル加熱方式IH〜 > の中の其の四 「ひたすら銅線をよっていた日々」の巻のページです。

※過去に掲載された記事になります。内容は公開時のものであり、最新の情報とは異なる場合がございます。

writer 高木紀子
其の四:「ひたすら銅線をよっていた日々」の巻
ご苦労話には事欠かない「オールメタル加熱方式IH」。
ついに其の四に突入です。いよいよ感動のフィナーレ?
高木 「相原さんは何を担当していらっしゃったんですか?」
相原 「3倍共振方式のインバーターでも効率よく動く
磁力発生コイルを作るのが、私の使命でした。」
高木 「今までと同じコイルは使えなかったんですね。」
相原 「3倍共振方式は高電圧電流が流れますから、回路同様、
コイルもそれに耐えられるものが必要になったんです。」
高木 「ひとつ何かが発明されると、他にも新しく
作らなくちゃいけないものがたくさん出てくるんですねぇ。
やっぱり、コイルも簡単にはできなかったんですよね?」
相原 「そうですね・・・(遠い目)。
でも実は、そのようなコイルを作るためにはどうすればいいか、
理論的には20年前からわかっていたんですよ。
銅線をできるだけ細くして本数を増やせば良いんです。」
高木 「なぜですか?」
相原 「たとえば、1アンペアを乾電池の直流で流せば、
銅線のどこを切っても電流密度は同じなんですね。
ところが電流の周波数が数10キロヘルツまで上がってくると、
電流が外側に押しやられて銅線の芯には流れない。
外周にばかり流れよう、流れようとするんです。
表面に電流が集中するこの効果を表皮効果っていうんですが、
銅線が太い場合、線の内側が有効に働かない。
銅線を細く細くして、表面積を多くしてやった方が、
電流が均一に効率良く流れる
というわけです。」
高木 「なるほど〜。
太い海苔巻きを1本作ってもゴハンの部分に電流は流れない。
細〜い海苔巻きをたくさん作って、電流が流れる
海苔の面積を多くした方がいいということですね!」
相原 「・・・・・・まあ、当たらずも遠からずというか(苦悩)。
でもね、実際にそのようなコイルは長年作れなかった。
技術的に難しかったんです。」
高木 「技術的に?」
相原 「昔は、今のように細い銅線がありませんでしたから。
銅線は表面に絶縁被膜が必要なんですが、
線が細いとその加工も容易ではないんです。
しかも細い銅線は切れやすく、よることも難しい。
私が手がけた当時、有力視されていたのは平角線でした。」
高木 「平角線って、どんな線ですか?」
相原 「名前の通り平らな・・・・・・
えーと、私も海苔巻きに対抗して
例えるならば、きしめんみたいな
薄い板状の線です。
平らな面で構成して総面積を増やすことで、コイルを実現しようと考えていたんです。」
高木 「でも、きしめんでは上手くいかなかったと?」
相原 「そうですね。平角線でコイルを作るには、
よるというより接着するしかなかったんですが、
やってみると頭で考えるようにはいきませんでした。
で、結局、これはもう線を細くするしかない!
ということになった。」
高木 「でも、でも、細い銅線を作るのは
もっと難しかったんですよね。」
相原 「それがですね、3倍共振が発見されて
オールメタルへの期待が高まった頃、
ちょうど携帯電話が本格的に普及してきたんです。
最新の携帯電話に入っているモーター線などは、とっても細い。
電線業界の急激な技術進歩で、
かなり細い線でも量産ベースにのるようになった。
時代もついてきたんです。」
高木 「グッドタイミング!ってやつですね。
じゃあ、その頃からは順調に?」
相原 「いや、細い線が量産されるようになったといっても、
コイルを作るには線をよらなければならない。
よっても切れない強い銅線が私たちには必要でした。
そこで、電線メーカーさんに協力していただいて、
新しいコイルに最適な線を開発してきたんです。
これが、現在コイルに使用している線です。」
高木 「細い!髪の毛より細いかも!
でも、この細い銅線をよるなんて、本当に大変ですよね。
わざわざ銅線をよるのは、何か理由があるんですか?」
相原 「隣りあった銅線は反発しあう性質があるんです。
大量の銅線が密着すれば、電流は自然と上下に集中します。
でも、銅線をよることで、
ある時は上、ある時は下、と電流が均一になる。
安定したコイルを作るために不可欠な作業なんですよ。」
高木 「へぇ〜。そんなに大切な意味があったんですねぇ。」
相原 「この、よるという作業が、私にとって今回最大の難関でした。
何本ずつ、何段階にわけて、どうよるのがいいのか、
より方の可能性は無限にありましたから。
“オールメタル加熱方式IH”を実現するために
ベストなより方はどれか?
それを考えながら、ひたすら銅線をよる毎日でしたね。」
高木 「相原さんが、ご自身でよってらしたんですか?」
相原 「はい。二人一組になって、手作業でよるんです。」
高木 「え〜っ!この細い線を全部手作業でですか!?」
相原 「細いからこそ、手作業でやらざるをえないんです。
ひとりがよる。ひとりが巻き取る。
元々細い上に20メーター必要なので、どうしても切れる。
何本切れたかなんてわからないくらい。」
高木 「あ、今まちがえちゃったよ。とか言ったら?」
相原 「やりなおします(笑)。
何百というより方を試しましたよ。
もう、職人芸の世界。草鞋をよっているような・・・。
ひたすら手でやっていました。」
高木 「根気が要りますね〜。短気な人はできないですよね。」
相原 「どうでしょう(笑)。
コイルの状態にして初めて特性が計れるんですが、
合格ラインに到達するまで毎日そればっかり。
1年くらい・・・いや、もっとかなー。」
岩井 「おいおい、1年でええやないか。
それ以上や、いうと恥ずかしいぞ(笑)。」
相原 「私が参加する以前にも、よっていた者がいますから。
私は3代目なんですよ。担当も変わっているんです。
耐えきれなくて(笑)。」
高木 「・・・・・・あはは。
より方が決まって、後はトントン拍子ですか?」
相原 「それがですね・・・。」
高木 「きゃー、まだダメだったんですか?!」
相原 「きちんと動かしてみたら、コイルが壊れてしまったんです。
電圧でやられて絶縁破壊。ショートしちゃうんですよ。
50ミクロン線の絶縁被膜なんて知れてるじゃないですか。
せっかく苦労してよってコイルにしても、
動かすとブチッとかいって壊れてしまうんです。」
高木 「ブチッですか・・・泣いちゃいそうですね。」
相原 「本当に、涙が出そうになりますよ。
それじゃあ絶縁の被膜を厚くしようと
考えたわけですが、銅線は全部で約1600本。
1本についてほんの少し厚くしただけでも
とんでもなく厚くなってしまった。
そんな時・・・」
高木 「そんな時?!」
相原 「問題を解決する方法を思いついた者がいたんです。
当時、目標の期日が迫っていたので他の部所から
応援が来てくれていたんですが、
その中の一人がひとつのことに気づいてくれた。
破壊を防止するために、1本ずつ絶縁する必要はない。
コイル全体、約1600本の太巻きの
全体を絶縁物で覆えばいい、ということに。」
高木 「すごーい。道は開かれるものですねー。
あの、これでコイルは完成ですよね?」
相原 「はい(笑)。
細い銅線、より方の確立、約1600本全体の絶縁。
この3つで、コイルの問題は解決しました。」
高木 「よかったー。お疲れさまでした。」
相原 「コイルが壊れると回路まで被害を受けるし、
回路が壊れてもコイルの評価ができない。
それが、お互いちょうど同じ時期に完成に近づいた。
そしてついに“オールメタル加熱方式IH”の
誕生となったわけです。」
岩井 「IHクッキングヒーターの開発に取り組めたことは、
本当に幸せなことだったと思うんですよ。
こういうやりがいのあるテーマは、
一生に一度出会えるかどうかのもの。
しんどかったけどな。」
高木 「いやー私も今回は、脳のいつも使っていない場所を
フル回転させるような取材でしんどかったですけど(笑)、
お話、とっても面白かったです。
ところで、今後、このプロジェクトは?」
岩井 「もちろん、まだまだ進化する商品なので、
次のステップへと続きますよ。
メンバーは変えますが。疲れ果ててるんで(笑)。」
高木 「本日はお忙しい中お時間を頂き、ありがとうございました。
これからも、家事がさらにラクチンになるような新発明を、
よろしくお願いいたします。」
私たちを便利に、幸せにしてくれる家電品の進化の裏には、
たくさんの技術者の方のご苦労があったんですねー(しみじみ)。
さてさて、次回は「オールメタル加熱方式IH」でクッキング!
番外編として、お送りいたします。
最後までおつきあいくださいませ〜。


いよいよ大詰め
感動のフィナーレ!
ついに新商品を体験!次回は、
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