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パナソニック・ホーム 現在のページは、isM トップ > の中の鍋に泣いた男たち 〜オールメタル加熱方式IH〜 > の中の其の三 「初めてお湯が湧いたのは、去年の冬だった」の巻のページです。

※過去に掲載された記事になります。内容は公開時のものであり、最新の情報とは異なる場合がございます。

writer 高木紀子
其の三:「初めてお湯が湧いたのは、去年の冬だった」の巻
さあ、いよいよ連載も3回目。
「オールメタル加熱方式IH」の鍵を握る3倍共振インバーターが発見されて、
めでたく解決!かと思ったんですが、
どうもそんな簡単なことではすまなかったようです。
それでは、其の三のはじまりはじまり〜。
高木 「十数年かけて、ようやくアルミの鍋を熱する方法が
見つかったのに、“オールメタル加熱方式IH”が
完成するまでには、さらに数年かかったんですよね。」
藤井 「そうです。まず難しかったのは、
鉄とアルミをどう見分けるか、ということでした。
鉄は従来方式、アルミは3倍共振方式、
素材によって選ぶべきインバーターがちがいますから。
IHの上に鍋を乗せるだけで、これは鉄、これはアルミと
いった具合に材質を自動検知できるようにするという、
新しい課題が生まれたわけです。」
高木 「それは、何を手がかりに検知するんでしょう?」
藤井 「鍋に電圧を与えて、鍋から戻ってくる
電流や電圧の状態をチェックするんです。
鍋の種類で、電気的な反応がちがうんですよ。」
高木 「なるほど。鍋をIHに乗せて電圧を与えて、
アルミ特有の反応が出たらアルミのインバーターが
動くようにすればOKってことですよね。」
藤井 「そう。でも、鍋はアルミだけ、鉄だけ、というものばかりではない。
外がステンレスで中はアルミというのもあるし、
多層のものも実に多いんです。
IHの場合、まずは外側の材質と厚みが重要。
外側が薄ければ中の材質も関係してきます。」
高木 「で、どうされたんですか?」
藤井 「ひたすらデータを取りました。
いろいろな鍋を片っ端からIHに乗っけて、
こういう鍋の場合はこう、こういう場合はこう・・・という様に、
ひとつひとつ検証したんです。」
高木 「かなり地味な、いえ、地道な作業ですねー。」
藤井 「もちろん理論上の反応は、かなり予測がつくんですが、
実際には加熱しないとわからないことも多い。
すべての反応を追っていって、見分けるポイントを探すんです。
100種類くらいの鍋は検証したと思いますよ。」
高木 「100種類!鍋博士になれそうですねー。
でも、そんなにたくさんの鍋、全部購入されたんですか?」
藤井 「そうです。デパートめぐりとか、
大阪の道具屋筋めぐりとかして、みんなで協力して集めました。
オールメタルと言えるかどうか確かめたかったですし。
鍋のことが頭から離れる日はなかったです。」
岩井 「そうそう。休みの日、嫁さんと一緒に買物に行くでしょ。
鍋売場を通るとどうしても足が止まってしまってね。
この鍋はどうだろう?これはすでにチェックした鍋かな?
変わっているヤツがあったら買っておこうかなとか(笑)。」
高木 「月曜日は鍋を持って出勤・・・?」
藤井 「ハハハ。で、大量の鍋を色々調べていくうちに、
信号の検出方法自体、鍋によって変えねばならないとか
色々わかってきまして、扱う信号が多くなってしまった。
従来のシステムでは制御しきれなくなってしまったんです。
そこで登場したのが、従来のIH調理器等で
使っていたものよりかなり高速なマイコン。
コンデンサーを切り替えたり、マイコンでコントロールの
仕方を変えたりして、千差万別な鍋に対応できるようにしました。」
高木 「やった!ついに完成ですか!?」
藤井 「いや、まだです。
実は、IHの回路を組んで動かそうとしたら、
まともに動いてくれなかった。鍋を加熱できるレベルまで
パワーを上げていくと、あっちこっちで誤動作をする。
その結果、すぐに壊れまして、
本当の研究をしていく以前に先へ進めなかったんです。」
高木 「何でそんなことに?誤動作の原因は何でしょう?」
藤井 「大電流が狭いところを走りまわるんで、
ノイズが発生する。それが原因です。
IHの回路を動かすと、ものすごい電圧がかかるんです。
入力電圧はたかだか200ボルト。でも3倍共振インバーターの
最大発生電圧は、数キロボルトにまでなる。
数ミリボルトの世界で制御しているマイコンのすぐ近くを
数キロボルトという電流が走り回っているわけですから。」
高木 IHの回路って、カラフルで一見オモチャっぽいけど、
中は大変なことになってる
んですね。」
藤井 「ノイズでIH自身が壊れてしまうということについては、
つなぎ方をひとつずつ検証して、ノイズが出ないやり方を
試していくしかありませんでした。
部品の位置をひとつ変えても結果が異なるので。
しかも数キロボルトの電圧となると、
それに耐える部品がないんですよ。
部品を一から開発せねばならなかったんです。」
高木 「またまた、時間と労力が必要なことに?」
藤井 「コンデンサーにしても、最初に開発したのは
とても本体の中に入らないような大きさでした。
部品は産業用の部品メーカーに作ってもらってるんですよ。
3倍共振インバーターで発生する電圧のレベルだと、
産業用になってしまうんです。
いわゆる電力設備用コンデンサーの技術に近くなるわけです。」
高木 「ひゃー。わからないなりに、それはすごそうです。
家電品なのに、そうした技術を
利用しないとダメだったわけですね。」
藤井 「とにかく回路が継続的に動かないと、チェックもできない。
発売の目標もすでに設定されているし、これはもう、何としてもやるという気概はすごかった。毎日、深夜2時3時までやるのが当り前の日々でした。」
岩井 「2年前はまったくと言っていいほど動かなかったからな。」
高木 「え、そうなんですか?
2年後に発売できるとは思っていなかったと・・・?」
岩井 「本当に量産できるのかな、っていう危惧はずっとありましたよ。
理論的にはOKだったんで、すでにチームの外では
発売に向けて気運が盛り上がっちゃってるんだけど、
やってる本人達は、本当にできんのかよと(笑)。」
藤井 「1分間動かすのも大変でしたから。
初めてお湯が沸いたのは、去年の冬でした。」
岩井 「お湯が沸いた時は感動したよなあ。」
藤井 「その後、フライパンで炒め物ができるようになって。」
高木 「ということは、この1年のラストスパートがすごかったと。」
藤井 「そうですね。ほんと、そうです。実用化には苦労しました。」
高木 「長い道のりでしたねー。
あれ、でもまだ相原さんにお話を伺ってませんよね。
ということは、まさか、まだご苦労話があるとか・・・?」
岩井 「じゃ、相原くん、お話しようか。」
高木 「が〜ん。さすが画期的発明“オールメタル加熱方式IH”。
簡単には完成しなかったのですね。恐れ入りました〜。」
それでは皆さま、さらなるご苦労話が盛り上がる?
次回に、乞うご期待〜!

涙なしには
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