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速く、美しく、乾かすということ。〜ヒートポンプ技術〜

  • 出会い。
  • 最新を知る。
  • ヒートポンプを知る。
  • 圧縮機を知る。
  • 技術力、融合。

其の一
最新洗濯機を知る。

松下ホームアプライアンス社の写真

まず私は、松下ホームアプライアンス社 ランドリービジネスユニット(大阪府豊中市)を訪問した。ここは、松下の洗濯乾燥機の企画・開発・設計・製造を統括する部門だ。

迎えてくれたのは、「ヒートポンプななめドラム洗濯乾燥機」のことならこの人!と言われている(らしい)、齋藤氏であった。優しく丁寧な物腰のなかにも、眼鏡の奥の眼光に鋭い知性が感じられる人である。

齋藤克哉氏の写真
齋藤 克哉(さいとう かつや)
松下電器産業株式会社 松下ホームアプライアンス社
家庭電化事業グループ ランドリービジネスユニット
商品企画グループ ランドリーチーム 主事

ヒートポンプで乾燥性能がぐんと良くなったという最新商品。取材開始直後、齋藤氏が興味深いCGを見せてくれた。はたして洗濯機の中にどんなシカケが入っているのか、まずはご覧いただきたい。

ヒートポンプユニットの構造と働き
(クリックすると別画面で動画が再生されます。音声付き。約37秒間・6,789KB)

ヒートポンプユニットの構造と働きイメージ図

動画では、「エアコンと同じ原理を利用した、ヒートポンプ乾燥方式」と紹介されている。実際、洗濯乾燥機の中で何が起きているのか、順を追って見ていこう。

ヒートポンプユニットの写真

洗濯後の衣類は大量の水分を含んでいる。そのため、ななめドラムのなかの空気も湿気を多く含んだ状態となる。そこで「ヒートポンプユニット」の出番となる。

このユニットには、空気中の湿気を水に変える、つまり除湿のできる「冷却器(冷却側の熱交換器)」と、その除湿後の空気を温める「加熱器(加熱側の熱交換器)」がある。

冷却器で、空気中の湿気が水に変わるイメージ図

湿気を含んだ空気は、冷却器によって冷やされ、水分が取り除かれ除湿される。

加熱器で、空気が温風に変わるイメージ図

湿気を失った空気は次に加熱器を通り、カラカラに乾いた温風に変えられる。その温風がドラム内に戻されて、衣類を乾かす。

そして乾いた温風が衣類から水分を吸収し、その湿った空気が冷却器に運ばれて除湿され・・・という空気の循環により、衣類が乾燥していくというわけだ。

ヒートポンプ技術による乾燥の仕組み イメージ図

つまり、空気を冷やして除湿を行い、次に温めて温風に変え、洗濯物を乾かす。その仕組みのことを「ヒートポンプ」と言うのだ。

「2006年11月に発売された商品には、このヒートポンプ乾燥方式がゆえのうれしい機能が盛りだくさんなんですよ」

ときほぐすように説明する齋藤氏

1洗濯乾燥時間が短い
従来機種と最新機種の乾燥時間の比較図「最新機種、NA-VR1100の場合、洗濯から乾燥まで合計145分(2時間25分)*1。朝の8時に洗濯をスタートした場合、午前10時25分に終了しますから、その後たたむ作業をしたとしても、午前中のうちにお買い物に出かけることもできます。ちなみに従来機種では、洗濯終了までにお昼近くまでかかっていました(洗濯から乾燥まで190分)」

*1 NA-VR1100の6kg洗濯乾燥時。社団法人日本電機工業会・自主基準「乾燥性能評価方法(2005年8月29日改訂)」による。

2電気代・水道代が節約できる
「7年前のランドリーセット(全自動洗濯機と衣類乾燥機の組合せ)と比較しますと、年間の電気代が約34,200円、水道代が約7,700円もおトク(*2)です」

7年前のランドリーセットと最新機種の電気代・水道代の比較図
*2 NA-VR1100と松下の7年前 全自動洗濯機NA-F70PX1+衣類乾燥機NH-D500(2回運転)との比較。洗濯6kg、おまかせ洗乾(水洗い)運転時の場合、(目安単価)新電力料金22円(1キロワットアワーあたり 税込)、(目安単価)新水道料金・下水道使用料 228円(1立方メートルあたり 税込)<内訳:新水道料金128円(1立方メートルあたり 税込)、下水道使用料100円(1立方メートルあたり 税込)>、洗剤価格単価0.35円(1グラムあたり 税込)で計算。[社団法人日本電機工業会調べ]

「また、環境負荷の低減に配慮したすぐれた製品であることが認められ、2006年の『エコプロダクツ大賞』経済産業大臣賞を受賞しました。2004年受賞のトヨタ『プリウス』、2005年受賞の日立『エコキュート』に続いての栄誉を頂戴しました」

3振動・運転音をおさえる
「脱水時や乾燥時も含め、運転音を低減する工夫を施しています。夜中にどうしても洗濯しなければならないかたや、家の間取りの関係で洗濯乾燥機の音が近隣に漏れやすいご家庭などにご好評いただいています」

最新機種の運転音は、静かな公園などと同程度

4いろいろな衣類を仕上がりよく乾かせる
衣類の仕上がりの比較写真「65℃前後のカラカラに乾いた温風で衣類を乾かすため、100℃前後の温風で乾かす従来のヒーター乾燥方式に比べ、乾燥後の衣類の仕上がりが断然良くなっています。トレーナーのプリント部分の傷みや、くつ下のゴム部分の縮みなどをおさえることができます」

洗濯時間について、私個人のデータもご紹介しておこう。2槽式洗濯機を愛用している私の場合、通常、洗濯・脱水に60分、乾燥(浴室乾燥機を使用)に150分、合計210分(3時間半)かかっている。脱水後の「衣類を風呂場に干す」作業も結構手間だったりする。一方「ヒートポンプななめドラム洗濯乾燥機」なら、2時間半足らずで洗濯から乾燥までできてしまう。乾燥機能付き洗濯機を使っている人もそうでない人も、この数字には驚かれるのではないだろうか。

従来の乾燥方式を知る。

洗濯乾燥機そのものの特徴とそのすごさは良くわかった。それにしても、なぜこのような乾燥方式が用いられるようになったのか。

従来の洗濯乾燥機では、乾燥に1,000W以上の「ヒーター」を採用していた。この「ヒーター乾燥方式」の仕組みは、ドライヤーで濡れた髪の毛を乾かすのに似ている。つまり、ヒーターで衣類を加熱して温め、湿気を奪い取るのだ。

ところがこの場合、衣類に含まれていた湿気はなくなってしまうわけではなく、衣類の周りの空気に取り込まれることになる。そのままだと空気中の水分が回収できず、洗濯乾燥機内の空気の温度が下がるとともに、空気中の湿気が再び水に戻ってしまい、乾いた衣類をまた湿らせてしまう。

この問題を解消するため、ヒーター乾燥方式では、別に搭載したパイプに水を流し、そのパイプを周囲の空気よりも冷えた状態にすることで、空気中の湿気を取り除く(つまり除湿する)という方法が用いられた。

ヒーター乾燥方式のイメージイラストヒートポンプ乾燥方式のイメージイラスト

しかし、「パイプに水を流す」ということは、洗濯とは別の用途のために水が必要になるということだ。その分、水道代も余計にかかることとなる。2004年当時に発売されていた「ヒーター乾燥方式」の洗濯乾燥機は、乾燥時におよそ75リットルの水を使っていた。(*3)。

一方、2005年以降に登場した「ヒートポンプ乾燥方式」の機種では、乾燥時の水の使用量がゼロである。これは貴重な資源のひとつである「水」を大切に使うという意味でも、大きな進化だといえよう。

*3 NA-V81の6kg洗濯乾燥時。社団法人日本電機工業会・自主基準「乾燥性能評価方法(2005年8月29日改訂)」による。

松下は2005年11月末、初代のヒートポンプ乾燥方式の「ななめドラム洗濯乾燥機」NA-VR1000を発売したが、販売当初から量販店などで人気を集め、2005年度までの約3カ月間だけで7万台も売れる大ヒットとなった。そして、2006年はドラム式洗濯乾燥機全体の販売見通し台数32万台のうち、「ヒートポンプななめドラム洗濯乾燥機」が約7割を占めるらしい。価格帯が20万円を超える家電であることを考えると、商品によほどの魅力がなければ成し得ない数字である。

「ヒートポンプななめドラム洗濯乾燥機」は、ヒートポンプ技術によって効率的な熱の移動を実現し、静かに、すばやく洗濯・脱水・乾燥し、おまけに電気と水を大幅に削減できる。冒頭で「エアコンと同じ原理を用いている」とお伝えしたが、実際のところ、この技術を洗濯乾燥機に応用するのは、非常に困難なことであった。斎藤さんいわく「ヒートポンプの歴史においても、洗濯乾燥機の歴史においても、非常に画期的なこと」なのだそうだ。この仕組み、さらに調べてみると、もっと面白く、興味深い事実や発見がありそうだ。