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音声ICタグレコーダ ものしりトーク

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ページタイトル。「モノの識別」をサポートしたい。 音声ICタグレコーダ ものしりトーク 「音声の名札」で広がれ、安心感

コンパクトで手軽な音声登録マシン

「鮭の缶詰、しょうゆ味です」

「これは風邪薬です。朝・昼・晩、1日3回、1錠ずつ服用します」

テレビのリモコンのようなリーダ(読み取り機)を、ICチップが内蔵された小さなタグ(目印札)に向け、リーダの「読む」というボタンを押す。すると、あらかじめ録音された説明が聞こえてくる・・・。

松下産業情報機器(株)が開発した音声ICタグレコーダ「ものしりトーク」に初めて出会った時、人の声の温かみを感じるとともに、その発想の斬新さに驚きました。

日常生活の中で、視覚障害者の方は身近な物を手に取り、触覚や音、匂いなどでそれが何であるかを識別します。しかし、中には識別の難しいものも多いのが現状。冒頭の缶詰や薬はその代表格です。

「ホタテの缶詰を開けたつもりが、実はミートソースだった。しかたがないのでメニューを変更した」

「肉を凍らせると、牛なのか豚なのか鶏なのか判別できなくなった」

「何か食品だと思ってチンしたら、実は氷。もちろん水になって溶けてしまった」

視覚障害者の方にとっては、食品に関する事柄だけでも、このような笑えない失敗は日常茶飯事。これが薬の識別になると、さらに事態は深刻です。

体調が悪い、風邪薬を飲みたい。でも家族全員出かけていて、自分ひとりではどれが風邪薬なのかわからない。こんなとき、全く別の薬を飲んだり、服用方法を間違えたりすると、大変な事態になりかねません。結局、つらい症状を我慢しながら家族の帰宅を待つことになります。

点字の札を付けたり、巻きつけた輪ゴムの本数で物を識別する方法もありますが、点字を打つのが手間だったり、輪ゴムでは識別できる数に限界があるなど、いずれも容易ではありません。

では、今、手にとったものがいったい何なのか、音声で教えてくれる機器があったらどうだろう?「ものしりトーク」はそんな発想から生まれた、全く新しい福祉機器です。

タグをつけた缶詰に、リーダを向けているところ
リーダをタグに向けて「読む」ボタンを押すと、「鮭の缶詰、しょうゆ味です」という音声が再生された。
リーダ本体を正面から見たところ
リーダ本体。
3種類のタグの写真
タグは用途別に3種類用意されています。

少し技術的なお話をすると、これは電波によって非接触で信号をやり取りし、個別の情報を識別・管理するRF(ラジオ・フリーケンシー)ID技術を応用したもの。と聞けばなにやら難しそうですが、その使い方はとにかく簡単です。

タグのアンテナとICチップの写真
タグの拡大写真に見える、ホコリのような粒がICチップ。その周囲を取り巻くアンテナは、極細の銅線を200回以上巻きつけたもの。

音声を登録したい時は、まず対象物のタグに向かって「読む」ボタンを押し、タグがあらかじめ持っている識別番号を読み取らせます。そして「録音」ボタンを押しながら、リーダ本体に向かって覚えこませたい内容を話せばOK。

リーダに「これは鮭の缶詰です」と声を吹き込む宇都宮さん

タグに登録された情報を読み取りたいときは、3〜4cm程度の距離にリーダを近づけて、「読む」ボタンを押すだけ。リーダがタグの識別番号を認識し、登録されていた音声を再生します。一つのタグに対して、最大3分間録音できるため、対象物の名前以外にも様々な情報を残しておくことができます。ちなみに、平均10秒の長さで録音した場合、約300個分のタグに登録することが可能です。

タグに登録された内容を読み上げるリーダ
リーダ内のSDカードの写真
登録情報は、リーダ内のSDメモリーカードに記録。万一、本体が壊れた場合もSDメモリーカードを取り出せば、新しい「ものしりトーク」でこれまでと同じように使うことができる。製品には32MBが同梱されているが、64MBのSDメモリーカードも使用可能。

■ 3タイプのタグと使用例

タグ・標準タイプの写真
500円玉大の「標準タイプ」(直径30mm、厚み2.2mm)は穴に輪ゴムなどを通して、対象物に巻きつけて使います。
ハンガーにタグ・標準タイプをひっかけたところ
ハンガーに貼れば、かけている洋服の識別にも。
タグ・薄型タイプの写真
「薄型タイプ」(直径30mm、厚み0.6mm)は貯金通帳やCDケースに貼ったりして使います。
CDケースにタグ・薄型タイプを貼ったところ
「薄型タイプ」のタグを、CDケースに貼ってみました。タグの厚みはわずか0.6mm。貼った状態でケースを重ねてもかさばりません。
タグ・小型タイプと、それを入れる小袋の写真
シャツのボタンのように小さな「小型タイプ」(直径12mm、厚み2.0mm)は、小袋に入れて衣類に縫い付けて使え、そのままで洗濯やアイロンかけにも耐えます。
タグ・小型タイプを小袋に入れ、安全ピンでネクタイの裏側に留めたところ
ネクタイなら、裏側に「小型タイプ」のタグを安全ピンで留めればOK。
「ね、すごく簡単でしょう?視覚障害者の方にも、すぐに使い方を覚えていただけるんですよ」

一連の使い方を説明してくださったのは、久保さんと宮崎さん。「ものしりトーク」の生みの親といえるお二人です。

「シンプルだけど、親切。頼りになる相棒」。「ものしりトーク」の印象を簡単に説明するなら、こんなところでしょうか。物に「音声の名札」をつけることを可能にしたこの商品が、どのようなきっかけで生まれたのか、詳しくうかがってみました。

ものしりトーク開発者 久保 二郎氏の写真
久保 二郎氏
松下産業情報機器株式会社
情報システムビジネスユニット
「ものしりトーク」担当参事
ものしりトーク開発者 宮崎 かなめ氏の写真
宮崎 要(かなめ)氏
松下電器産業株式会社
パナソニック システムソリューションズ社
ソリューション本部 主事

薬袋を見て納得。
視覚障害者の物の識別を手助けしたい!

「ものしりトーク」を作る以前、久保さんは非接触タグ技術を応用した商品の企画・開発を担当。宮崎さんとはその時から付き合いがありましたが、企画・開発・販売までを一緒に行ったのは、この「ものしりトーク」が初めて。ですが、初めてとは思えないほど息の合った二人三脚で進んでこれたのは、しっかりした目標があったからこそ、と久保さんはおっしゃいます。

2002年の夏、2人のもとに、あるメーカーから「視覚障害者向けの物品確認装置を安く量産化したい」という相談が持ち込まれました。

「そうした装置の価値がいまひとつ理解できないまま、とりあえず現地へ向かいました」

そこで久保さんと宮崎さんの目の前に現れたのが、まるで電磁調理器のような機械。

「この装置、考え方は“ものしりトーク”と同じなんですが、とにかく大きくて持ち運びなんて到底無理。使いたい人は、常にその機器の前まで識別したいものを持ってこないとダメなんです。こんな商品、需要があるの?と思いました」

でも、久保さんがその会社の人に「例えば、こんな物の識別に使われているんですよ」と見せられたのは、病院で処方される薬袋でした。

「確かに薬は形が似たり寄ったリ。しかも飲み間違えると大変なことだぞ、と。そのとき初めて、視覚障害者の方の立場に一歩近づけたといいますか・・・。物を識別する機器の存在意義の大きさに気づいたんです」

「実際にモニターされた方の話を聞きに行っても、“今のままでは大きすぎるけど、小さくて安くなれば絶対に便利”とおっしゃいましてね」

あの機器をもっと小さく安くしてあげられたら、視覚障害者の方たちがどんなに喜ばれることか・・・。会社に戻った久保さんは、さっそく機器の開発に着手しようとしました。

久保さんの写真
「実際に困っている人がいる。それならばウチの技術で何とか手助けしたいと思いまして」

ところが、社内ではこの新規開発に対する反対の声が多く、家電製品に比べてはるかに小さな市場規模に、「なぜわざわざ開発するんだ?」と尋ねられることもしばしば。そこで、久保さんと宮崎さんはその年の国際福祉機器展に参考出品し、世間の反応をうかがうことにしました。

試作機は、既存のバーコードリーダを改造した間に合わせのものでしたが、展示会場では行列ができるほどの大反響を呼びました。

ものしりトークの前身となる試作機を片手で持ったところ
2002年の国際福祉機器展に参考出品された試作機。「ものしりトーク」の前身といえる。

「望んでくださる人たちがこんなにいる。ぜひ製品として売り出したい!」

その勢いに後押しされるかたちで、ついに開発がスタート。ところが、ようやくプロジェクトが波に乗りはじめたそのとき、思わぬストップがかかりました。“経営上の判断により、進行中の新規開発はすべて中止”という社長命令が下ったのです。

他のプロジェクトが次々に棚上げされていく中、久保さんだけは開発中止に納得できず、社長に直談判。

「“ものしりトーク”の開発を止めるなら、私を会社から放り出してください。他の会社に移ってでもやりたいのです!」

以前から折に触れ「ものしりトーク」の開発意図を聞き、理解を示していた社長は特例として開発を了承。久保さんは試作機の検討を継続することができました。

「相手の胸に飛び込むことで開ける道もある、ということですかね」

わかっているつもりで仕様を作ってみたものの、やはりそれは机上のもの。試作品を実際に操作してみるとやはりどこか違う。納得するまで自分でボタンを触り続けるので、手が痛くなったことも。

「自分でやってみないことには、いいところも悪いところもわかりません。ボタン操作の順序などについても、何度も試しました。音声登録できる件数が700件、というスペックを持たせるなら、実際に700件、録音してみないといけない。特に私自身が間違えやすかったところは“これはあかん”と技術の人間とトコトン話しあいました。健常者であろうと視覚障害者であろうと、間違えやすいところは同じなんです」

こうして完成したモニター用試作機は30台。それらを30名の視覚障害者の皆さんに実際に自宅で使っていただき、使い勝手や追加すべき機能を洗い出すことにしました。

ものしりトークの試作機を正面から見たところ
「ものしりトーク」試作機。サイズはひとまわり大きいが、機能的には最終製品に近い。実際に視覚障害者の皆さんに使ってもらい、改善点を洗い出した。

「そしたら案の定、予想もしなかった指摘が次々に飛び出しましてね」

たとえば、リーダ本体のボタンのかたち。

当初、リーダには▼(下にとがった三角形)型のボタンがあったのですが、視覚障害者は指先で上から下に向けて触ることが多いので、ボタンの上の辺が直線になっていると、■(四角)との区別がつきにくいというのです。

「かといって▲(上にとがった三角形)にしてしまうと、押し心地がいまいち。いっそのこと◆(ひし形)にした方が、とんがり部分がわかりやすく、使いやすいのではないか」

熟考を重ねた結果、◆(ひし形)の形状に落ち着きました。

また、「ボタンは大きければ押しやすいというものではない。手の小さい女性にも使いやすい大きさがいい」と指摘され、改めて商品設計の奥深さを痛感したことも。

こうして試作機からさらに改良を重ねた「ものしりトーク」は、2003年9月、ついに発売となりました。

リーダにあるひし形のメモボタンの写真
モニターの皆さんのアドバイスをもとに生まれた◆(ひし形)の「メモ」ボタン。

「視覚障害者のため」イコール「点字」は固定観念

ところで、「ものしりトーク」には点字の表示が一切ありません。視覚障害者用なのになぜ? 

実は、点字が読める視覚障害者は、全体の10%から15%と言われています。かつて私も点字翻訳のボランティアを目指し、ある福祉センターで視覚障害者の先生に点字を教わっていました。しかし現実には点字本の需要があまりないと聞き、結局志半ばで学ぶことをあきらめた経緯がありました。

実際に点字を打ったり触ったりした経験のある方なら想像いただけるかもしれませんが、指先の感覚だけで点字を読み取るのは事故や病気による中途失明者にはなかなか難しいもの。仮に私が将来、失明したとしても、点字を読めるようになる自信はとてもありません。幼い頃から点字教育を受けてこられた先生がスラスラと点字を読まれる様子を、感嘆の思いで眺めたものです。

「しかし、駅や公共施設には点字表示がある。視覚障害者用なら点字の説明を入れた方がいいのではないか」

開発中、社内でもそんな議論が持ち上がりました。しかし、「視覚障害者イコール点字」という健常者の固定観念を、久保さんは一喝。

「現場に行って聞いてこい! 点字を読める人がいったいどれだけいると思ってるんだ?」

その上、点字表示には通常の文字よりスペースを要します。そのせいで使いにくいボタン配置になることの方が、よほど問題なのでは?まさに現場を知っているからこそのコメント。言い返せる人はいませんでした。

ものしりトークを手にした久保さん
「リーダに点字を表示すれば、その分サイズが大きくなってしまう。それでは本末転倒ですからね」

お客様が創造する、「ものしりトーク」の使い道

久保さんも宮崎さんも、福祉機器を扱うのは「ものしりトーク」が初めてでした。しかし、視覚障害者が喜ばれ、さまざまなかたちで感謝の気持ちを伝えてこられることに、他の商品では経験したことのなかった新たなやりがいを感じています。

「商品体験会などでお会いした視覚障害者の皆さんが、口を揃えて、“たった10分で使い方がわかっちゃったよ!”と驚かれます。それくらい視覚障害者の方に何らかの機器の使い方を説明するには、時間がかかるというのが常識だったんですね」

「ものしりトーク」がいかに視覚障害者の方のことを考えた、シンプルな作りなのかがうかがるエピソードです。

展示会の予定がぎっしり詰まった年間スケジュール表
久保さんと宮崎さんは、土日返上で全国の展示会を駆けめぐる。開催数は年間80件以上にも及ぶ。
久保さんと宮崎さんの写真
「出張の多さは苦になりませんね。少しでも多くの方にご紹介して、喜んでいただけるのが何より嬉しいんです」

「ボタンの数が増えすぎると使いにくくなるだけ。できるだけシンプルに使える、というのがモットーでした」と久保さん。

「ただし、せっかくのしゃべる機械なので、できる限り音声読み上げ機能を活用できるようになっています」

そのひとつが「メモ機能」。先ほどご紹介した◆(ひし形)の「メモボタン」に続けて「録音」ボタンを押しながら、「今度の土曜日の待ち合わせは、2時に駅の切符売り場前」など、忘れてはいけない内容をしゃべるだけ。「メモボタン」を押すと再生します。この「メモ機能」、合計で20分間の登録が可能です。

「健常者は簡単にメモができるし、忘れてもメモを見ればすみますが、視覚障害者はそういうわけにはいきませんから」

そういえば、私も点字を教わっているとき、先生の記憶力のよさに何度も驚かされたことがありました。

点字を打つには必ず点字板が必要ですが、テーブルのない場所ではその板が使えないため、点字は急ぎのメモに向いていません。そのせいか、先生には、短い用件はその場で覚えこむという習慣が身についており、私よりもはるかに記憶力が研ぎ澄まされているように思われました。

「しかし、どんなに記憶力のいい方でもやっぱり“覚えていたつもりが覚えていないことがある”と聞いて、メモ機能も絶対必要なものだと確信しました」

この「メモ機能」で録音された音声を、そのままタグに登録できる、「メモ録の後付機能」についても教えていただきました。

「例えば病院で薬をもらうとき。薬剤師の方にお願いして、リーダに向かって薬の服用方法をしゃべってもらいます。これを“メモ機能”で録音して家に持ち帰ります。今度はその録音した薬剤師の方の声を再生しながら、タグを近づけ“読む”ボタンを押すと、その声がタグに登録されます。そのタグを薬の袋につければ、正確な服用方法を、簡単に確実に確認できます」

なるほど、これは確かに便利です。実はこの機能、開発当初からモニターとして様々なご意見を出してくださった、加藤満裕美さんのアイデアが生かされたものだそうです。

薬袋にタグを貼り付けたところ
ピンチにタグを貼り付けて、薬袋などにはさむ。
ものしりトークを手にした加藤 まゆみさん
加藤 満裕美(まゆみ)さん
日本点字図書館にお勤めの傍ら、久保さんの持参した試作機について細かな意見や改善提案をくださった。

他にも、本体の操作説明を音声で案内してくれる「クイックガイダンス」、そして、不意に落としてしまったり、どこに置いたかわからなくなってしまったりした時のために、手を3回叩くとリーダが電子音を出して答える「サーチ機能」も搭載されています。

ものしりトークに同梱されている、操作説明用のカセットテープ
「ものしりトーク」には操作説明用のカセットテープも同梱しているが、いざという時には、やはり本体の「クイックガイダンス」が頼りに。
「中には物の識別だけでなく、さらに踏み込んだ使いこなしをあみ出された方もいらっしゃいます」

俳句の先生でいらっしゃる磯野香澄さんは、ご自身の俳句集を編纂されるにあたり、編集や推敲作業の助けとして「ものしりトーク」を有効利用。1つのタグに作品1句とその解説などを録音し、編集テーマに合わせて、「ものしりトーク」で作品を聞きながら、順番を並べ替えていくのだとか。以前は、お弟子さんが吹き込まれた録音テープを聞いては戻し、行きつ戻りつしながらの作業で、大変に苦労なさっていたのが、「ものしりトーク」の登場により、ぐんと簡単になったそうです。

ものしりトークを使いこなす磯野 香澄さん
磯野 香澄先生
ご自分の俳句を編集中の磯野 香澄先生。「ものしりトーク」を存分に活用してまとめられた俳句集は、久保さんの元にも届けられました。
また、ある女性はお気に入りの洋服のタグにこんなメッセージを録音されていました。「このブラウスは赤いスカートと組み合わせると評判がよかった」

「これは我々が想定できなかった使い方ですね。洋服の場合、せいぜいクリーニングの時期や色・柄情報を入れる程度だと思ってました。でも、その女性が“ものしりトークでこんな風におしゃれができるんです。楽しいでしょう?”とおっしゃったとき、この機器がそこまで深い満足感を与えているのかと感動しましたね」

対象物に関する情報を豊富に登録しておくことで、その物に対する持ち主の想い、そして思い出までもが味わえる。「ものしりトーク」は「物の識別」に限らず、心もサポートしてくれる福祉機器なのだと宮崎さんは訴えます。

宇都宮さんの取材に答える久保さんと宮崎さん
「“ものしりトーク”をお使いの方は、私たちが想定していた以上の使い方をなさっていて、逆にこちらが勉強になります」

「物を識別する際に、いつも家族に声をかけなくてはならなかった人が、この商品を使うことで1人で判断できるようになる。そうしますと、識別作業とは関係ない、全く別の話題を家族と一緒に楽しもう・・・そんな心の余裕が出てきます。そして何より手にしたものが即座に判別できることで得られる安心感は、視覚障害者の方にとって最大のメリットです」

最後に、お二人の想いを語っていただきました。

「障害はある日突然訪れるもの。健康な人でも、例えば糖尿病にかかれば、早くて3ヶ月で中途失明してしまう可能性があるんですよ。私自身、“ものしりトーク”に関わることで、初めてその事実を認識しました。ですから、もっともっと身近に感じて取り組んでいきたいですね」と、宮崎さん。

宮崎さんの写真
「“ものしりトーク”を通じて、福祉の世界をより身近に感じることができるようになりました。この商品の存在意義を、常に忘れないようにしています」

「とにかく福祉という分野でビジネスをするからには、“継続”することが必須です。もし我々の都合だけで販売完了、生産中止にしてしまったら、“ものしりトーク”を毎日の生活で活用してくださっている方々はどうなりますか。絶対に途中でやめるわけにはいかない。これが“日常生活用具給付金”対象になれば入手できる人が増えてもっと普及するでしょうし、待ってくださっている方々のために、がんばっていく気でいるんです」と、久保さん。

通常の福祉機器の場合、給付金対象に認定されることで広く障害者の間に浸透するのですが、「ものしりトーク」は発売時期の関係もあって厚生労働省からまだ認定が下りていません。

現在もさまざまな福祉団体から「給付金対象に早急に認定されるよう、国に働きかけてほしい」と要望されています。いくつかの団体は、厚生労働省に向けて署名とともに嘆願書を提出してくださったそう。そういった方々にも助けられ、久保さんたちは今、2005年度の認定を目指して努力されています。

久保さんの写真
「多くの方のご協力をいただきながら、“日常生活用具給付金”対象の認定を目指し、がんばっています」

「そして技術がさらに進めば、第2世代“ものしりトーク”もできるはず!」

久保さんが夢に描く第2世代「ものしりトーク」は、たとえばホテル・病院・役所の案内板への応用。お金の識別。新幹線や劇場での座席探し。美術館での絵画の説明や展示会での商品説明。スーパーやコンビニでも使えたらさらに便利です。

「視覚障害者の方が“ものしりトーク”を持ち歩くことによって、あらゆる場所であらゆる物の識別情報を容易に得ることができる・・・そんな社会になっていくように、働きかけていきたいと思っています。そのためにはまず、現行の商品をなるべく多くの方に使っていただくことが大切だと思っています」

そして久保さんは、「ICタグに音声記録する」技術は、健常者にとっても様々に便利さを発揮するものであるとおっしゃいます。

「例えば、美容院などでお客様の情報をパソコンで管理しているケースがよくありますが、忙しさに紛れて、その日のうちに情報を入力できないこともある。そこで“ものしりトーク”を活用いただければ、『今日、A様の髪型は、こんなご意見を元に、あんなスタイリングをした・・・』というように、簡単に記録を残せるんです。次にそのお客様を担当するスタッフは、タグを読み込むだけで、前回の状況が把握できる、というわけです」

さすが久保さん、私が思いもよらないような使い道をたくさん思い描いておられるご様子です。日ごろホームヘルパーとして活動している私の立場から見ても、久保さんのような技術畑の方がこうやってたくさんの夢を描いてくださらないと、福祉機器の進歩はないとつくづく感じます。インフラの整備、障害者に対する社会全体の思いやりやマナーの徹底など、クリアすべき難問は山積みですが、「発想を転換すれば簡単にできそうな気がする」という久保さん、宮崎さんのポジティブな姿勢を信じたい。そう思いました。
 

久保さん、宮崎さんのお2人は年間80件もの展示会に「ものしりトーク」を出展し、全国を飛び回る毎日。東京で開かれた去年の国際福祉機器展には、83歳のご婦人が来られました。中途失明された妹さんのために「ものしりトーク」を購入したいとおっしゃる彼女は、ご自分も脚が弱っているにもかかわらず他県から杖をついてわざわざ出てこられたそう。応対した担当者も「ここまで求められている商品が、他にあるだろうか?」と、感極まってしまったとか。

このような人々のためにも、1日も早く「ものしりトーク」が「日常生活用具給付金対象」として認可され、ひとりでも多くの視覚障害者が物の識別に悩まなくなるよう、願わずにはいられません。

久保さんの写真
「まずはこの“ものしりトーク”を1人でも多くの方に使っていただけるよう、努力していきたいと思います」
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