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携帯用会話補助装置 レッツ・チャット

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ページタイトル。「コミュニケーション」をサポートしたい。 言語障害者、上肢障害者向け携帯用会話補助装置 レッツ・チャット 「難病の皆さんにも、意思疎通の喜びを!」

スイッチ一つでできるコミュニケーション

移動するのが困難な人には車いすを、立ち座りしにくい人には手すりつきトイレを。つらい動作をラクにできるようにサポートし、障害者やご高齢者にも健常者と変わらない快適さを実現させることが福祉機器の理想です。

この数年、私・ライター宇都宮雅子は、土日はホームヘルパーとして様々なご高齢者とお会いしています。どのご高齢者も衣・食・住にいろんな要望を抱え、福祉機器を使って少しでも快適に過ごそうと工夫されています。その中でも、性別や境遇に関係なく、最も切実に求められるのは実は、「人とのコミュニケーション」なんです。

健常者ならば、容易に家族や友人たちと会話を楽しむことができます。障害者の方も、外出や会話が困難であっても、近年はパソコンというツールが浸透し、何らかのコミュニケーションを楽しむ方が増えています。では、もし声が出せない上に手も足も動かせず、手話もパソコンも使えなかったら?

ALS(エイ・エル・エス。筋萎縮性側索硬化症)は、まさにそうした状況に人を追い詰める難病です。脊髄の運動神経が侵され、じわじわと全身の筋肉が萎縮していき、手足が動かせなくなることはもちろん、最終的には自発呼吸すら困難に。人工呼吸器をつけることで生命は維持できますが、その代償として声を失います。会話も手話も筆談もできず、患者さんはありとあらゆるコミュニケーション手段を奪い去られていきます。脳機能の衰えはないだけに、自分の意思を伝えられないもどかしさは健常者の想像を絶するものがあるでしょう。

「ALSをはじめとして、障害で苦しんでいる人々に、少しでも健常者に近いコミュニケーションを楽しんでいただきたい」

そんな思いを松下電器産業の中から社内ベンチャーというかたちで実現した方がいらっしゃると聞き、どのようにこの難問に挑まれたのか、お話を伺いに大阪府守口市にある松下電器産業本社まで出かけました。

広々とした敷地に建つ巨大な開発研究棟の一室が、言語障害者、上肢障害者向け携帯用会話補助装置「レッツ・チャット」を開発販売しているファンコム株式会社です。

エネルギッシュな早口が印象的な松尾光晴社長は、2003年6月、松下電器の社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」に「レッツ・チャット」の企画を提案し、見事合格。社員4名のベンチャー企業の社長になりました。

ファンコム株式会社 代表取締役社長 松尾 光晴氏の写真
松尾 光晴氏
松下電器の社内ベンチャーとして設立された「ファンコム株式会社」代表取締役社長。
松下電器の社内ベンチャー制度について 新しいウィンドウを開く
(別ウィンドウが開きます)

「これがレッツ・チャットです」

と松尾社長が見せてくださったのは、文字板と液晶画面のついた長方形の機器。パッと見たところ、大きな電卓のような印象です。商品名は「レッツ・チャット」。「チャットしよう」、つまり、「お話しよう」という意味がこめられています。

2004年11月発売予定の新製品の写真
写真のモデルは2004年11月発売予定の新製品。B5ノートくらいのサイズで、約750g。本体価格は120,000円(非課税対象物品、オプション別)で、厚生労働省の日常生活用具給付対象に指定されている。

「ALSの患者さんは、車椅子に乗って移動できる方もいますが、基本的に寝たきりの生活を余儀なくされます。病気が進行すると、筆談や、パソコンのキーボードを打つことも難しくなります。人工呼吸器をつけておられる方は、話すこともできません。患者さんによって症状が違うので一概には言えませんが、自分の意思を伝えるためには、体のどこか動かせる部位を使うしかないんです」

では、そういった患者さんは、この「レッツ・チャット」をどうやってお使いになるのでしょうか。

「レッツ・チャットを自分の見やすい位置に置いて 、固定します。電源を入れると、文字が順番に光っていきますから、こちらの入力スイッチを使って、選びたい文字を選択していきます」

と、松尾社長が取り出したのは、手のひらサイズの四角いスイッチ。ちょうどパソコンのマウスの、クリックするパーツ一つだけが存在している状態のものです。これをカチッと一回押し、離した瞬間に「決定」となる仕組みだそう。

手押し式 入力スイッチの写真
足踏み式 入力スイッチの写真
頬や唇などで押すタイプの入力スイッチの写真
入力スイッチ(オプション扱い)は、手押し式、足踏み式、頬や唇などで押すタイプなど、市場にあるさまざまな製品が選択できる。

「患者さんの症状によってどの筋肉が動かせるのかが違いますから、スイッチにもいろんなタイプを用意してあるんですけど、ここではひとまず、この四角いスイッチを使いますね。では、どうやって文字を選んでいくのか、実際に動かしてみましょう」

松尾社長の実演を元に、以下に簡単にまとめてみました。

ここでは「どうもありがとう」という言葉を伝えたい時の最後の文字「う」を入力する例でご説明します。

まずは文字板を左側・真ん中・右側の3つに分けて、左から右に順番に点灯を繰り返します。選びたい文字のある箇所が光ったら、入力スイッチを押します。

「レッツ・チャット」正面写真。文字板の真ん中が光っているところ

次に、選ばれた部分が一列ずつ、左から右に点灯を繰り返します。選びたい文字のある列が光ったら、入力スイッチを押します。

「レッツ・チャット」正面写真。文字板の「あ行」の列が光っているところ

今度は、選ばれた列の上から下へ、順番に一文字ずつ文字が点灯していきます。選んだ文字が光ったら、入力スイッチを押します。すると文字板の上にある液晶画面に選んだ文字(ここでは「う」)が表示されます。

「レッツ・チャット」正面写真。文字板の「う」の文字が光っているところ

文字板の「発音」を選択すると、作成した文章が音声で読み上げられます。

「レッツ・チャット」正面写真。文字板の「発音」の文字が光っているところ

松尾社長は操作の実演をされながら、こうおっしゃいました。

「パソコンのようにフリーズすることはないし、ソフトウェアのメンテナンスも一切不要です。たとえ操作を間違えても、動作がおかしくなったり、動かなくなることはまずありません」

フリーズしないシンプルな機器。それが松尾社長の、そして、誰よりも患者さんたちが求めておられたものだったのです。

したいのは「パソコン」じゃない!

「もとを正せば私の父がALSに侵され、7年間の闘病生活の末に亡くなったことがきっかけなんです」

お父様が10数年前ALSを発病。その介護体験を通じてALS患者の団体と親しくなった松尾社長は、工学科出身の知識を生かして障害者のパソコンサポートのボランティアに参加するようになりました。

そしてお父様の死後も、平日は松下電器「くらし環境開発センター」(当時)の技術者、週末はボランティアと精力的に活動していた90年代後半のこと。その後の人生を決定づける出会いが、彼を待っていたのです。

「僕と同い年の村上さんという男性がALSを発病。わずか半年で人工呼吸器をつけなくてはならなくなり、声を失ったんです。一級建築士として事務所を持ったばかりだったのに、仕事もあきらめなければならない。なのに彼はパソコンを通じて、新しい行動を起こそうとしていた。それにひきかえ自分はどうなのか。このまま漫然と生きていいのかと」

村上 真嗣さんの写真
村上 真嗣さん
松尾社長がボランティアで出会い、大きな影響を受けた同い年のALS患者さん。

時は1997年、世はすっかりパソコン社会に変貌を遂げ、障害者のコミュニケーションツールとしてもパソコンが大きな位置を占めていました。

「確かにパソコンはメールもできますし、便利かもしれません。でも、障害者の方が本当にやりたいことはパソコンじゃない。“コミュニケーション”なんです」

と松尾社長。

「そんな彼らにとって、意思伝達の道具は何よりもまず安定して動作してほしいのに、パソコンはどうしてもフリーズしてしまいます。体を思うように動かせない患者さんに、それを再起動させるのは至難の技。呼び出しブザー付のパソコンを選んでも、フリーズしたらブザー自体が機能しなくなる」

なるほど、それではいざという時に困ってしまいます。

「ワープロのように安定した装置がある時代はまだよかったんですよ。ワープロはフリーズしませんし、それ1台でプリントアウトまでできますからね。でも、ワープロがすっかりパソコンに取って代わられてからは、障害者は置き去りにされてしまった。使い慣れた機器が姿を消してしまったわけですから」

患者さんが日々パソコンを使ってコミュニケーションをしておられる場合、それがフリーズしたら意思疎通の手段を失ってしまいます。トイレに行きたくても伝えられない、身体が痛くても痛いと言えない、そんな状態がパソコンボランティアが駆けつけるまで続いてしまう・・・パソコンの不安定さに対する、患者さんやボランティアスタッフの不満を耳にするうちに、松尾社長の中でひとつの方向性が固まりつつありました。

「今、重度障害者に必要とされているのは、パソコンのような不安定さがなく、誰にでも簡単に使えるコミュニケーション機器ではないか?」

透明文字板を手にした松尾社長
パソコン普及前から使われているのが、この透明文字板。患者さんが見つめる文字を一つずつ追うことで意思を確認するもので、「レッツ・チャット」の最も原初的なカタチといえる。患者さんの視線を正確にスピーディに拾うには熟練を要するため、介護する家族にしか使いこなせないのが実状。
透明文字板を見つめる宇都宮さん
私も試しにやってみましたが、かなり難しい作業です。

シンプルな機能に患者さんたちの圧倒的な支持が

「シンプルで新しいコミュニケーション機器」のコンセプトを具象化させるヒントは、身近なところからもたらされました。

兵庫県のとあるALS患者さんが、電気機器に強いボランティアに頼んで、手作りのコミュニケーション機器を創作していたのです。

それは“あいうえお”50音を記したパネルの各文字の横に小さな光源を置き、スイッチ操作で伝えたい文字をひとつひとつ照らす文字板。「ほたる族」と名づけられたこの手作りの文字板は患者さんたちの間で話題になっていたそうです。

ただ、手作りであるだけに、「ほたる族」には物足りない部分もありました。

「ランプの明るさが足りなくて、どの文字が光ったのかわかりにくい。それに介護する側がご高齢だと、光った文字を順番に覚えていくのが大変。少し長い文章になると最初に光った文字を覚えていられなかったり」

そこは入社以来ずっとものづくりに携わってきた技術者。松尾社長はすぐに改良に着手します。

松尾社長手作りの初期の試作品
「ほたる族」をベースにした松尾社長手づくりの試作品。「文房具店で画用紙を買ってきて、チョキチョキ切ってフレームを作ることからはじめました」

やがて現在の「レッツ・チャット」の原型となる試作機が20台完成。市場調査を兼ねたモニターテストを行いました。

まずは試作機を持って、ベンチャーを志す大きな動機となった村上さんを訪問。ところが、村上さんの評価は手きびしいものでした。これは自分にとっては大き過ぎるし重過ぎる、ベッドの横に設置されると自分の上に落ちてきそうだというのです。

「こんな危なっかしいもの置きたくない。だめ。持って帰って」

しかし彼の批評は、松尾社長を落ち込ませるどころか、技術者魂に火をつけました。

「友人だからこそ遠慮なく厳しい評価をしてくれる。彼に納得してもらえる製品を作るのが、ひとつの目標になりましたね」

村上さんには酷評されたものの、シンプルな携帯用会話補助装置という発想自体は多くの患者さんモニターから支持を得つつありました。特に、パソコンを使っている人ほど、「パソコン以外に、やはりこういうシンプルなコミュニケーション機器があるとうれしい」と評価してくれたことが、大きな自信につながりました。

「レッツ・チャット」試作機を前にした松尾社長
改良を重ねた「レッツ・チャット」の試作機。文字をハッキリ照らす大きめのLEDを採用。さらに入力した文章を目で確認できるように液晶画面を装備。スピーカーや時計も搭載しています。

特許は取れないけれど、大切なこと

モニター調査を続けるうちに、松尾さんのものづくりの視点も確立されていきました。

「我々の場合、特許を競うような最先端技術のものづくりではないんです。本当の使い勝手というのは、テクノロジーよりアイデアの世界。いかに知恵を絞って、障害のある方にもストレスなく使えるものを創り出せるかが勝負ですね」

たとえば、文字板の単語の配置について。
日常会話で使う言葉をまとめた文字板には、「暑い」という単語の隣の列に、「寒い」という単語が配置されています。この文字の位置関係も“特許”とは無縁、でもきわめて重要な“アイデア”のひとつ。

「障害者の方が入力スイッチを押すタイミングが合わず、選びたい単語より上か下の単語を選んでしまうことがあります。そんなときその縦列に、逆の意味の単語が配置されていたらどうなりますか?本当は“暑い”と言いたいのに、ひとマスずれただけで、“寒い”を選んだ、と相手には伝わってしまう。この間違いが、命に関わるほど大変なことになる時もあるんです」

言われてみればその通り。介護の世界でも、対になる言葉の取り違えは大きな問題です。「寒いから、毛布をもう1枚かけて」と言いたいのに、介護者が逆の判断をしたらどうなるでしょう?毛布を増やしてもらうどころか剥ぎ取られてしまい、自分で毛布を動かせない被介護者は、ブルブル震えながら寒さを我慢する事態になりかねません。

「だから意味が対になる言葉は同じ列に配置せず、必ず横に並べるようにしました。これなら万一違った列を選んでしまっても、何も選択しなければいいだけですから。すると、点灯ランプはまた最初の区切りから光り始めますから、もう一度希望の文字列が点灯するのを待てばいい、というわけです」

お父様、そしてご友人の闘病生活を間近で支え、全国の患者さんと触れ合い、現場の声を聞いてきたからこその、こまやかな心配り。

文字板
「レッツ・チャット」でのコミュニケーションの核となる文字板。障害者の会話に欠かせない重要な言葉を厳選し、3種類に分類整理されている。
「50音表示」の文字板の写真
「ひらがな」を記した基本の「50音表示」。
「日常会話」の文字板の写真
使用頻度の高い会話を集めた「日常会話」の文字板。
「体調訴え」の文字板の写真
自分の症状を的確に相手に伝える「体調訴え」の文字板。
文字板を入れ替える松尾社長
文字板を入れ替えると、光センサーが文字板のアルミ片を感知。各文字板の違いを自動的に見分けて、読みあげ音声を変えてくれます。

同じく印象的だったのが、「レッツ・チャット」本体に内蔵されている時計機能です。文字板の「時計」を選択すると、音声と液晶表示で日付と時間を教えてくれます。

「寝たきりの患者さんが眠っていて、ふと目が覚めたとします。部屋は真っ暗。今が何時なのか、明け方近くなのか真夜中なのか、知ることができません。“テレビが観たいな、でも、家族を呼んでもいいのかな、夜中だったらどうしよう・・・”患者さんは常にそういった葛藤をお持ちなんです。もし“レッツ・チャット”があれば、患者さんは自分で時刻が確認できるので安心。気持ちに余裕が生まれます。真夜中なのを知らずに、家族を無理やり起こしてしまうこともない。よって家族の方のストレスも軽減されます」

松尾社長は、患者さんにとって「何の目途もなく待つ」ということがどれほど苦痛なのかについても教えてくださいました。

「ふと目が覚めた。ちょっと体の向きを変えてほしいな、家族を呼ぼうか、どうしようか。そんなときに時刻を確認できれば、“今、朝の5時半。毎朝6時には家族が様子を見に来てくれる、だからあと30分待てばいい”と余裕の心持ちで30分間待つことができる。逆に、何時かわからないままだと、“家族はいつ来てくれるんだろう?夜中かもしれないけど、呼んでしまっていいのかな・・・”と不安な気持ちのまま。たとえ30分後に家族が来てくれたとしても、不安な30分間と、“あと30分”と分かったうえで待つ30分間とは、気分的に大違いなんです」

日ごろお年寄りと接することの多い私ですが、ここまで意識できていたかどうか・・・。この「30分間を待つ気持ちの違い」については考えさせられました。

試作機に組み込まれた液晶時計
松尾社長が絶対に搭載したかったのが時計機能。試作機では小さな液晶時計が組み込まれていた。
「レッツ・チャット」の液晶画面(日時と時刻を表示)
現行の「レッツ・チャット」は時計機能を内蔵。文字板の「時計」を選択すると現在時刻を音声で知らせてくれ、液晶画面には日付と時間が表示される。

「会社経営のためにどんなに忙しくしていようと、患者さんから離れることだけはしたくない」

とおっしゃる松尾社長。彼の言葉を聞きながら、私は「暑い」と「寒い」が隣り合わせに収まった文字板を手にしました。見た目はただの透明な板。でもそこには、作り手の熱い想いが目一杯込められているのです。

便利な機器も「置けて」こそ意味がある

「レッツ・チャット」本体について様々な仕様が確定していく中で、松尾社長を悩ませる出来事が生じました。

「この機器自体はいいんだけどねぇ。私たち、置く場所に困るのよ」

モニタリングしていく中で、プロの介護スタッフから出たご意見。そう、機器をどこに、どうやって据えつけるのか?という問題です。

「レッツ・チャット」は患者さんがいちばん見やすい場所に設置しなくては意味がありません。ところが、患者さんがいちばん見やすい場所というのは、実は介護者にとって介護の邪魔になる場所であることが多いのです。

これを解決するために、松尾社長は「レッツ・チャット」専用の支持アームの開発に奔走することになりました。使えそうな部品を利用しては試行錯誤の繰り返し。支持アームを専門に作っている会社を探しては、全国各地を訪ねる日々が続きます。

「福祉機器は生産ロット数が少ない、そう言って尻込みされるお会社も多かったんですが・・・ある日、ついにお力を貸してくださる方と出会えたんです」

そのメーカーは長野県にありました。松尾社長が訪問したところ、いきなり役員の方が応対に出られ、「ぜひ詳しいお話を」とのお言葉が。実はその方には、障害を持つ娘さんがいらっしゃったそうです。そして熱心に説明する松尾社長に人一倍の共感をもち、即座に協力を申し出てくださいました。こうして、様々な環境に設置できる丈夫な支持アーム類がひとつ一つ、オプション品のラインナップに加わっていきました。

「開発中は、本当に人とのご縁に恵まれました。何か難関にぶちあたって、もうダメか・・・と思った矢先に、必ずこの時のように、快くご協力くださる方と出会うことができたんです。本当にありがたいことです」

「レッツ・チャット」を支持テーブルにセットしたところ
平らな場所ならどこにでも置ける支持テーブル。
テーブルに「レッツ・チャット」を固定した状態で、テーブルのアームを持ち上げている松尾社長
使わないときはテーブル上に折りたためます。取っ手部分を持てば、持ち運びも簡単。
フレキシブルアームの写真
自在に「レッツ・チャット」の位置を変えられるフレキシブルアーム。
車いすアームの写真
車いすに取り付け、自在に動かせる車いすアーム。コンパクトに折りたためる。

さらに松尾社長は、設置場所や支持アームについてリサーチを繰り返すうち、「音声ガイド」の必要性も強く感じるようになりました。

「寝たきりの患者さんは、床ずれ防止のため、一日のうちに何度も体位変換をします。しかし、そうして体の向きが変わる度に“レッツ・チャット”の位置まで変えるなんてことは、面倒でやっていられません」

そこで、「レッツ・チャット」本体を見ていなくても、スイッチさえあれば動作が行えるように「音声ガイド」を搭載することにしました。その結果、目が見えない方でも、ガイドの声に従って文章作成を楽しんでいただくことができるようになりました。

「言語、上肢、視覚の三重の障害を持っている人でもすべての機能が使いこなせる、そんなコミュニケーション装置は、他には無いと思いますよ」

「松下のベンチャー」という利点を生かしたものづくり

現場経験の積み重ねと、よりよく改良するための不断の努力。見た目にはわかりにくいものの、松尾社長のアイデアや工夫をいっぱい詰め込んで、「レッツ・チャット」は完成しました。

「安心して使えること。障害者が使いやすいこと。それ以外の価値は一切いらない。世界最速・最小・最軽量は、この製品には関係ない。あえて言うなら、世界一の使いやすさ。それに絞り込みました」

もちろん、社内ベンチャーという立場をフル活用する事も忘れず、松下製品の共通部品を採用。品質の確かな、大量に安く仕入れられた部品達が、「レッツ・チャット」の信頼性、そして低価格を実現してくれています。

一度は試作機を酷評された村上さんにも、完成した「レッツ・チャット」を外出先で使用してもらったところ、「機器の設置は家の中でも難しいのに、移動する車椅子に設置してもこれだけラクに使えるんだから、どこでも大丈夫だよ」と、松尾社長にとってはなによりの褒め言葉が。

その後、村上さんは「レッツ・チャット」を購入され、高校の同窓会に出席。なつかしいメンバーと積極的に会話を楽しんだそうです。

他にも「レッツ・チャット」を使い始めて、生活が変わり、笑顔がぐんと増えたとおっしゃる声は、いくつも松尾社長のもとに届いています。

吉田 春子さんの写真
吉田 春子さん
これまではパソコンで家族と対話されていた吉田さん。「レッツ・チャット」を使いはじめてから、どこでも家族と会話ができるようになり、皆と一緒に食卓を囲みながらおしゃべりが弾むように。
池原 久豊さんの写真
池原 久豊さん
透明文字板で意思を伝えていたときは、なかなか相手に伝わらずイライラすることも多かった池原さん。「レッツ・チャット」を手に入れて以来、まるで洪水のように言葉が溢れ出したとか。

「レッツ・チャット」で一番よく使われる言葉は?

最後に、単語がなにも印刷されていないオリジナル文字板(オプション)をご紹介しておきましょう。

これを見せられたとき、“私だったら書き込みたい言葉”がパッと頭に浮かびました。まずなんといっても家族の名前。親しい友人やヘルパーさんの名前も必要でしょうし、好みの飲み物や見たいテレビ番組を書くのもいい。つらい闘病生活に、そんな楽しい文字板が1枚あれば・・・しかし、こんな軽い発想も、次の松尾社長のひとことの前に吹き飛んでしまいました。

「でもね、いつでもどこでも、患者のみなさんがいちばん伝えたい言葉は“ありがとう”なんですよ」

“ありがとう”。ヘルパーとしてご高齢者のお宅を訪問するたびに、数え切れないぐらい言われたこの言葉。

どうか、1台でも多くの「レッツ・チャット」が必要とする人の手に届き、ひとつでも多くの“ありがとう”を伝えますように。

枠線だけで、文字は何も記入されていない「オリジナル文字板」
手書き文字が記入された「オリジナル文字板」
オリジナル文字板
患者さん独自のボキャブラリーをマジックなどで記入すれば、世界にひとつしかない文字板の出来上がり。「自宅用」「病院用」「外出用」など用途に分けて使えば便利 。
文字板に描かれた「にっこりマーク」。横には「ありがとう」の文字が添えられている
見せていただいた文字板にも、こんな絵が。
※「レッツチャット」の事業はパナソニック エイジフリーライフテック株式会社( http://panasonic.co.jp/es/pesalt/ )が引継ぎ、新製品も展開しています。(2014年3月記載)
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