ここから本文です。

※過去に掲載された記事になります。内容は公開時のものであり、最新の情報とは異なる場合がございます。

にぎりこぷしのエコの細道 松下の省エネ技術 第六回目 スターリングエンジン だれだのページ スターリングエンジンの実用化はある挫折から会社を飛び出しスターリングエンジン専門のベンチャー企業を立ち上げてしまったひとりの男の情熱からはじまった!

にぎりこぷしのエコの細道 トップページへ戻る にぎりこぷしプロフィール
  • 「なんだ」のページへ
  • 「なぜだ」のページへ
  • 「だれだ」のページ
2008年2月12日 公開

だれだ!? スターリングエンジンをつくっているのは!

スターリングエンジンを開発しているのは、2005年に松下電器のベンチャー支援制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」によって設立されたスターリングエンジン専門の技術開発会社、株式会社eスター。まずは、eスターの赤澤社長に会社設立の経緯について伺ってみよう。そういえば、社長直々のご登場は、このシリーズ初!

挫折からはじまった挑戦

赤澤社長はもともと松下電器の社員だったんですよね?

「1992年に入社しまして、空調研究所で主にエアコン用のコンプレッサーの研究開発をしていました。」

あかざわ てるゆきさん 写真
赤澤輝行(あかざわ てるゆき)さん
株式会社 eスター
CEO

スターリングエンジンとの出合いは?

「わたしが開発していた、潤滑油を使用しないオイルレス・リニアコンプレッサーが事業化に至らなかったんですね。このリニアコンプレッサーは高効率で往復駆動できるメカで、リニアモータで直接ピストンをダイレクトに往復駆動するので、潤滑油もいらない高効率技術なんです。それで、この技術をなんとか他に利用できないかといろいろ調べてみたんですが、そのなかでスターリングエンジンに興味をもちまして。」

「今ならいける!」 イラスト

じつは、スターリングエンジンは20年ほど前にも一時的に注目を浴びたことがあったそうである。そのときはまだ、地球温暖化のような環境問題が騒がれていなかったということもあって、大きな実用化の流れには至らなかったとのこと。しかし赤澤社長は、ご自身が培ったリニアコンプレッサーの技術を応用すれば、効率のよいスターリングエンジンが実現でき、実用化できるのではないかと考えたそうだ。社会の中で環境に対する意識が高まってきたということも追い風になっているという。

しかし、どうして松下を飛び出して起業しようと?

「もともと松下グループ内にはスターリングエンジンに関連する部署というのはありませんでしたので。最終的には、パナソニック・スピンアップ・ファンドとの検討会で、自分でケツをふけよと言われまして、外に出ることに。ハハハハハ!」

「起業する!」 イラスト

にこやかに語っていただいたが、スターリングエンジンにかける技術者赤澤の情熱は並々ならぬものがあったようで、上層部ともしばしば熱いバトルを繰り広げたとか。そういえば、赤澤社長、学生時代は炭素を爆発させてダイヤモンドをつくるという研究をしていたそうだ。学生の頃の専門分野の知識はたいして役立ってませんなんて言っていたが、研究開発のために会社を飛び出してしまうほどの爆発力……あながち無関係ではないかも。

赤澤社長がスターリングエンジンについて調べるなかで辿り着いたのが、独立行政法人 海上技術安全研究所の平田研究員。スターリングエンジンの権威ともいえる立場の大先生なのだとか。その大先生を口説き落として、協力態勢をとって開発を進めていくことになる。

というわけで、赤澤社長に案内してもらって、平田先生の研究室を訪ねてみることに。

永遠の工作少年

研究所 写真

向かったのは、海上技術安全……といいながら、海のない東京都三鷹市の研究所。緑あふれる広い敷地を歩き、着いたのは東大阪あたりにたくさん並んでいるような町工場風の佇まいの建物。

中へ入ると、まさしく町工場のごとく工作機械がゴロゴロと。
「すみません、こちらに平田先生というスターリングエンジンの権威……え? あなたが平田先生ですか!?」

「平田先生はいらっしゃいますかー」「私が平田ですが」

想像に反して、ずいぶんとお若い……。とにかくお話をきいてみることにしよう。

平田先生はスターリングエンジン一筋でご研究されているんですか?

「ほかの研究もしていますけど、スターリングエンジンの研究はずっとやってますね。」

ひらた こういちさん 写真
平田宏一(ひらた こういち)さん
独立行政法人 海上技術安全研究所
環境エンジン開発プロジェクトチーム
機関システム開発研究グループ長

そもそも、先生がスターリングエンジンに出合ったきっかけは?

「大学は機械工学科で、もともとバイクや車をいじるのが好きだったので、エンジンに関する研究室に行きたいと思っていたんですけど、たまたまその教授がスターリングエンジンの研究をしているひとでしたので。」

こどものころから、ものを作るのが好きだったとか?

「そうですね、プラモデルとか、ラジコンとか、好きでしたねえ。」

手のひらサイズのスターリングエンジン 写真

これは平田先生自ら製作した、手のひらサイズのスターリングエンジン。ヒータをガスバーナであぶると勢いよく動き出す。一度動き出すと、バーナを離してもしばらくは余熱で動き続ける。こんなのを自分で作れてしまうとは。幼い頃からの、もの作りに対する純粋な情熱が、先生の日々の研究の原動力なのかもしれない。

赤澤社長にいわせると、このように研究者でありながら、理論からもの作りまでわかっている先生というのは、なかなかいない貴重な存在なのだという。


ひらたさん 写真

スターリングエンジンが注目されるようになって、平田先生のもとを訪れるひとも増えているんじゃないですか?

「そうですね、大きい会社から小さいところまで、いろいろコンタクトはあるんですけど、赤澤さんのように自分で会社をつくってまでというひとはいないですね。」

赤澤社長の、会社を飛び出してまで開発をしたいというスターリングエンジンへの熱い思いが、平田先生の心を動かしたのだろう。

スターリングエンジンをエコのスターに

あかざわさん 写真

ところで、赤澤社長。一研究者から会社の経営もしなければならないというお立場になって、苦労も多いんじゃないですか。

「いや、それは楽しいですよ。それを苦労だと思ったらできないですからね。たしかに、研究者であればたぶん触れることのなかった、資金繰りなど経理のことなんかも考えなくてはなりませんが。」

夢に向かって努力しているときというのは、苦労を苦労だと思わないんだよね。ぼくもそういう仕事をしたいものだ。

会社を辞めることにしたとき、ご家族の反応はどうでした?

「家族には無断だったので、あとで妻に正座させられまして。一技術者で終わってもらってよかった、なんて。ハハハハハ。」

「この熱は発電に使えるかも」 イラスト

赤澤社長の平穏な家庭生活のためにも、このスターリングエンジンの開発、ぜひともうまくいってほしいものである。

スターリングエンジンについて、どんな未来像を描いてらっしゃいますか。

「まずは実用化すること。そして、21世紀の環境エンジンとして、だれしもがわかるエンジンにするということ。熱のあるところにはどこにでもこういったエンジンがついている、そういう世の中になったらいいですね。」

eスターでは、排熱回収システムの共同開発と同時に、NEDO((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受け、都市ガスを使い、スターリングエンジンとリニア発電機を組み合わせた、省エネ性の高い家庭用のコージェネレーション機器の開発も進めているそうだ。スターリングエンジンが、ぼくたちの身近なところで活躍するようになる日も遠くないかも。

エコのスター、イースター!

「eスター」という社名には「スターリングエンジンをエコのスターに」という思いが込められているのだという。意地の悪いひとには、スターリングエンジンを200年ぶりに復活させるの?(イースター=復活祭)なんて冷やかされているそうだが、200年前に発明された古い技術が、地球温暖化をはじめとした環境問題からこの星を救う新しいヒーローとなりうることはまちがいない。


というわけで今回は、熱さえあれば動くスーパーエコマシーン、スターリングエンジンについてお勉強してまいりました。200年も前に発明されていたのに、埋もれてしまっていたすぐれた技術が、現代の環境問題を見るに見かねて、時を超えてわれわれを救いにやってきた……そんな感じがするなあ。

今回ご紹介したディーゼルエンジンの排熱で発電するスターリングエンジンは、まさに捨てる熱を利用して発電するという画期的システム。捨てるものを、もう一度なんとか使えないか、なにか使い道はないだろうかと考えてみる態度というのは、環境問題を考えるうえで、とてもたいせつなポイントになりそう。

地球温暖化の問題は、もはや待ったなしの状態。悠長なことは言ってられない。使えるものはないか!? 身の回りを見渡せ! ごみ箱を漁れ! ぼくたちは、もっともっと、環境のためになりふりかまわず積極的に行動をおこしていかなければいけない! そんなふうに思いました。

それにしても、今回もしくみを理解するのに苦労したなあ……


〆の一句
知恵熱が 電気になる日 くるかしら?
お粗末様でした。またお会いしましょう(トップページへ戻る)

「株式会社 eスター」のサイトはこちら。
http://www.estir.jp/


にぎりこぷし

1975年生まれ、北海道出身。
大学卒業後、5年間の出版社勤務を経て、フリーのイラストレーターに。
風刺をきかせたイラストを中心に、雑誌、テレビ、インターネットなどさまざまな分野で活動中。
大阪在住。

著書『日々にぎりこぷし』(バジリコ)

にぎりこぷしホームページはこちら(別ウィンドウで開きます)
  • このページのトップへ
  • 「なんだ」のページへ
  • 「なぜだ」のページへ
  • 「だれだ」のページ